これぞ究極のおつまみ!? 崎陽軒のシウマイ弁当を最大限楽しむ方法【中川淳一郎の「今も飲んでいます」第六回】

先日最終回を迎えたテレビドラマ『食の軍師』。こちらで主人公たちが「崎陽軒」の「シウマイ弁当」を食べながら旅をし、対決するという回があったのですが、本連載執筆の中川淳一郎さんも、シウマイ弁当の召し上がり方に関してはこだわりをお持ちのようです。たっぷりと語っていただきましょう。(新横浜のグルメ中華

これぞ究極のおつまみ!? 崎陽軒のシウマイ弁当を最大限楽しむ方法【中川淳一郎の「今も飲んでいます」第六回】

中川淳一郎、『食の軍師』を見て大いに語る

先日オンエアされた『食の軍師』(TOKYO MX、6/24放送終了)を観たのだが、私としては「分かる! 分かる!」という部分に加え「違うよ!」という部分も多少残る展開となった。同ドラマは同題の漫画(泉昌之)が原作で、主人公・本郷播が一回の食事の組み立て(何から手をつけ、いかにして食べ進めていかにフィニッシュし最大限の満足感を得る)を軍師(諸葛孔明風男)の助言に従うも、毎度パーカー姿の青年・力石馨の見事な食の進めっぷりに撃沈する展開が繰り広げられる。

 

 

 

f:id:g-gourmedia:20160411195515j:plain

ドラマ版「食の軍師 兵法の十一 弁当の軍師」で登場したのは、崎陽軒のシウマイ弁当。まさに東京・横浜発の出張・旅行の定番弁当である。作中では一緒に旅することになった二人が揃ってシウマイ弁当を用意し列車の旅に臨むが、コレを選ぶ段階でお互いに(本郷が勝手にライバル視しているだけで力石は意識していないだろうが……)「デキる」と思うところから始まる。

 

 

『食の軍師』で「崎陽軒のシウマイ弁当」はどう食べられたか

本郷はシウマイ弁当の食べ方こそ「知力、兵力、センスも丸見えになる」と語るが、これは私も同感だ。それでは、私による決定打の「ビールを楽しむための食べ方」を紹介する前に、前座としてドラマ中での二人の進め方を振り返ってみよう。

 

f:id:g-gourmedia:20160411195523j:plain

 

本郷は2つの「計」を思いつく。一つは「シウマイ追い込みの計」である。これはカマボコ、玉子焼き、唐揚、タケノコ、紅ショウガ、昆布、鮪照り焼き、シウマイ5個の順番で食べていくやり方だ。いわば、ご飯と様々なおかずを交互に食べつつ、主役たるシウマイは一気に最後の締めとして連続で食べる、というものだ。

 

そしてもう一つが「シウマイ連環の計」である。これは、シウマイ弁当の豊富なおかずとシウマイをワンセットとして食べ進めていくやり方だ。ドラマ中では以下の順番となっていた。カマボコ、シウマイ、玉子焼き、シウマイ、紅ショウガ、昆布、シウマイ、鮪、シウマイ、タケノコ、シウマイ、唐揚。

 

そして本郷はシウマイに辛子を一つ一つつけていき、余った辛子をカマボコにつけ、酒の肴にする。実際の食べ方としては後半のコメ不足を心配しつつもシウマイ→ご飯→タケノコ(しょっぱい)→メシ(後半に食うとコメ不足になる)→鮪照り焼きと言った形で米とおかずを交互に食べる手法を取る。そして、こってりとした唐揚には紅ショウガをのせサッパリ食べる。ラストは「とにかく食うべし」と秘技「蒸気機関車食い」をし、「金メダル」である杏の甘煮を食べてシウマイ弁当を終わらせるのだった。

 

ドラマでは力石にまたもや敗北する本郷、という体を取るのだが、そりゃそうだ。力石の方がシウマイ弁当の本質を分かっている。本郷も酒飲みであり力石も酒飲みだが、力石の方が2枚も上手である。

 

 

なかったことにする「茶碗蒸し理論」とは?

力石はビールを飲んでいたのだが、その「前座試合」として「ホテイの焼き鳥缶・たれ」を食べながら来たる本丸・シウマイ弁当に備える。さぁ、ビールと焼き鳥缶を食べ終えたところでついに本戦開始! 力石はシウマイ弁当を広げ、「なかったことにするため」に杏を食べる。これを「茶わん蒸し理論」と言うのだという。旅館の夕食では茶わん蒸しがつくことが多いが、正直いつ口にしていいのかが分からない。だったらサッサと食べてしまい、「なかったことにする」というのが力石にとっての茶わん蒸しの扱いだ。

 

シウマイ弁当における杏の役割も同様だと力石は言い、本郷が最後の最後まで大事に取っていた杏を一気に「片づけてしまう」のである。そして、力石は遮二無二早食いをするのだが、これを本郷は「早い……。早く食うことで味覚を敏感にする食い方」と表現し、唖然とするのであった。

 

しかし、塩味の強いおかずが大量に残っていることに気付く。残っているおかずは唐揚、鮪、シウマイ少し、タケノコだ。これを見て本郷は「コメ不足を起こしている」とほくそ笑むも、なんとここで力石は赤ワインを頼み、これらのおかずをワインのつまみとする有段者の振る舞いをし、本郷を完膚なきまでに打ちのめすのである!

 

しかし、力石に真っ向からケンカを売るのがこの私である。

 

私から言わせれば、酒飲みとして力石のこの食べ方よりも上級者向けの食べ方があることをお伝えしよう。まさにシウマイ弁当をめぐる三国志の開幕である。本郷(蜀=劉禅・諸葛亮)、力石(魏=曹叡・司馬懿)に私・中川淳一郎が「呉=孫権・陸遜」として割って入る。それでは我が呉軍のシウマイ弁当攻略を見よ!

 

我が兵法は基本的にはサッポロ黒ラベルの500ml缶2本と350ml缶1本を、新幹線の車内で仕事しながらゆっくりと食べ、至福の「動くオフィス」体験をすることである。正直に告白するが、私がこれまでに書いたすべての書籍は酔っ払って書いているのである。どうも酔っぱらわないと原稿が書けず、じっくりと時間をかけビールを飲み、つまみを食べながら本を仕上げていく。これぞ人生最高の時間である。

 

 

f:id:g-gourmedia:20160411195702j:plain

ここにPC、サッポロ黒ラベル、シウマイ弁当の三種の神器が揃った! さぁ、弁当の封を開けるか! チッチッ、甘い!

 

シウマイ弁当の前にこれで1本  

f:id:g-gourmedia:20160411195802j:plain

これまた新幹線の定番、味付けゆで卵を一緒に買っておくのである。力石は「ホテイの焼き鳥・たれ」を用意したが、ボリュームたっぷりなシウマイ弁当の前にはボリューミー過ぎる。本丸・シウマイ弁当を攻める前に、ライトなゆで卵で500ml缶を1缶飲んでしまうのが、本格派である。

 

 

f:id:g-gourmedia:20160411195915j:plain

 

f:id:g-gourmedia:20160411195921j:plain

ゆで卵の殻はレジ袋に捨てよう。付属の紙に殻を乗せてしまうと、ひょんなタイミングで新幹線の机(でいいのか?)をドーンと膝で押してしまったり、新幹線が揺れたタイミングで殻が床に飛び散ってしまう。しかも、殻とゆで卵を同じ紙の上に乗せると本体に殻がついてしまったりするので、紙はあくまでも「ゆで卵置き」として使おう。

 

見よ、この黄金の切り口

f:id:g-gourmedia:20160411195957j:plain

それではビールいきまーす! プハーッ!

 

f:id:g-gourmedia:20160411200016j:plain

見よ! この黄金の切り口を!

 

f:id:g-gourmedia:20160411200056j:plain

500ml缶を1本飲み終えたところでまだここまでゆで卵は残っているのであるっ! これぞ省エネ摂取法である。本格的酒飲みはいかに少量のツマミで大量の酒を飲むかが勝負であるっ! この残ったゆで卵はシウマイ弁当に含めてしまうのだ。

 

いよいよシウマイ弁当が登場。ポイントは「箸の長さ」と「醤油の量」

f:id:g-gourmedia:20160411200114j:plain

ジャーン、ついにシウマイ弁当登場! 脇にはゆで卵も。しかも、必殺の2つのアイテムを用意しておくのである。

 

f:id:g-gourmedia:20160411200126j:plain

セブンイレブンでカップラーメン等を買った時にもらえる割り箸である。シウマイ弁当を食べると数日前に決めたのであれば、箸にも万全を期さなくてはならない。シウマイ弁当自体はたいへんウマいのだが、若干の不満はある。それは箸の長さが短いことだ。やはり、固いシウマイを割るには長い箸の方が力が入るし、全体的に食べやすい。崎陽軒の箸はいざという時のために取っておく程度にしておこう。さらに、もう一つ事前に準備しておくべきものがあるのだ。

 

f:id:g-gourmedia:20160411200135j:plain

醤油である! 持ち帰り寿司やスーパーの惣菜コーナー等で1つ多目にもらっておき、シウマイ弁当を食べる時に使うのだ。どうも、シウマイ弁当に入っている醤油は正直量が足りない。シウマイ5個に対して使うにしても塩辛いのが好きな私にとっては若干少ないし、他にも醤油を求めるおかずがあるからである。だから、この醤油の小袋が途端に輝きを放つことがあるのだ。

 

 カマボコと玉子焼きが最高のアテに変身

f:id:g-gourmedia:20160411200307j:plain

おっと、その前、私も力石同様、杏をさっさと「なかったこと」にしてしまおう。力石はその点よく分かっている。

 

f:id:g-gourmedia:20160411200157j:plain

それは、シウマイ弁当の中のおかずとしてはいかにも「小者」然としたカマボコと玉子焼きである。この2つはおかずとしても酒のつまみとしても若干中途半端な味わいであるため、醤油をかけてしまう。すると! なんとも立派な酒のアテとなるのだ! ここは本郷が言う通りカマボコにはカラシを塗ると良いだろう。この2つを交互に食べ、ビールをぐびぐびと進めていくっ! 気分はまさに老舗ソバ屋だ!

 

f:id:g-gourmedia:20160411200207j:plain

ここでスッキリとさせるべく紅ショウガが有効である。この段階ではご飯には一切手をつけていない。あくまでも酒、酒、酒! である。

 

おつまみパートはクライマックス。陰の主役も登場

f:id:g-gourmedia:20160411200220j:plain

 

ここで怒涛のつまみラッシュへ! ご飯の上に乗っかっているカリカリ梅、鮪の照り焼きを少しずつかじり、またビールへGO!

 

f:id:g-gourmedia:20160411200146j:plain

ここでつまみパートのクライマックス! 鶏の唐揚へGOだ。この唐揚は冷めてもウマい。醤油系の味もしっかりついていて、これ1つで350mlのビールぐらいであれば余裕で1本飲めてしまう。

 

f:id:g-gourmedia:20160411200355j:plain

ジワジワとつまみにはしていた煮たタケノコだが、ここでようやくご飯に乗せて食べるのである。それにしてもシウマイ弁当の陰の主役はタケノコだろう。

 

f:id:g-gourmedia:20160411200407j:plain

こうして中途半端に少しずつ飲みながら食べ、シウマイも1つ食べた様子がコレだ。

 

f:id:g-gourmedia:20160411200420j:plain

大事に大事に取っていた唐揚の残り半分を食べる段階で、ついに最後のビール・350ml缶の登場。ここから一気呵成に攻めていく! シウマイも醤油をダボダボとつけて食べ進めるっ!

 

結果、おかず不足に……。どう乗り切る、軍師!?

f:id:g-gourmedia:20160411200430j:plain

ビールは飲み終えた。でも、ちょっとちょっと……。ご飯が多過ぎないか??? この量でどうやってご飯を食べるんだよ、お前! さぁ、本郷が心配した「コメ不足」ならぬ「おかず不足」の事態到来!

 

f:id:g-gourmedia:20160411200438j:plain

ジャーン! なんと、呉の軍師・陸遜はセブンイレブンの「ふりかけ詰め合わせ」の小袋を軍に2つ用意してくれていたのである。小袋といえば、諸葛亮や曹操が有名だが、陸遜もキチンと用意していたのだっ! 今回は「さけ」と「緑黄野菜」である。

 

f:id:g-gourmedia:20160411200445j:plain

一気に形勢逆転! 少々のタケノコ、昆布、紅ショウガに加え、シウマイ1つ! そこに燦然と輝くさけふりかけのお姿! ビールは終わったが、あとは「締め」のシウマイ弁当じゃ!

 

シウマイ弁当を最大限楽しむ方法、これにて完結。

f:id:g-gourmedia:20160411200456j:plain

というわけで、日本屈指の「新幹線ビールのお供」であるシウマイ弁当を最大限楽しむ方法だ。これにはさすがの力石も尻尾を巻いて逃げるしかあるまい。ガハハハハハハ。我が呉軍の水軍(ビール飲み)は天下無双である! 夷陵の戦いでは劉備を完膚なきまで倒し、赤壁で曹操に決定的ダメージを与えた余こそ、真の中原の覇者であるっ!

 

f:id:g-gourmedia:20160411200502j:plain

※3DS三国志、孫権でプレイし、天下統一間近の様子

 

 

 

著者:中川淳一郎(なかがわ じゅんいちろう)

f:id:g-gourmedia:20150420210617j:plain

ライター、編集者、PRプランナー

1973年生まれ。東京都立川市出身。
一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社し、しばらく無職となったあとフリーライターになり、その後『テレビブロス』のフリー編集者に。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々な、ネットニュースサイトの編集者となる。主な著書に、『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)、『夢、死ね!』(星海社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。割と頻繁に物議を醸す、無遠慮で本質を突いた物言いに定評がある。ビール党で、水以上の頻度でサッポロ黒ラベルを飲む。

 

前回までの「今も飲んでいます」はこちら。 

                             
ページ上部へ戻る