社内恋愛って「デメリット」だらけじゃない?
あなたは社内恋愛は賛成派ですか? 否定派ですか? 筆者(29歳女性/独身・彼氏なし)はバリバリの否定派です。だって、仕事仲間が恋愛の相手だなんて、デメリットだらけじゃないですか?
グループウェアや業務改善アプリを手がけるサイボウズさんは、なんと1997年の創業以来、社内結婚のカップルが30組もいるんだとか!
社内恋愛で結婚したご夫婦に実態を聞いてみた
いったいどうしてこんなに社内結婚が多いのでしょうか? そんなにいいことがあるのでしょうか? そこで、社内恋愛で結婚をした方々に話を聞いてみることに。集まってくれたのは鶴村さんご夫婦、江藤さん(妻)の3人です。
左から鶴村さん(妻)、鶴村さん(夫)、江藤さん(妻)
付き合ったきっかけは?
――付き合ったきっかけを教えてください。
鶴村さん(妻):
「入社当日に、目の前でパソコンをつなげてくれた姿がかっこよくてひと目ボレでした(笑)。それからずっと思いを寄せていたんですが、周りの人の協力もあって、みんなでカラオケに行ったことが、2人が近づいた一番のきっかけになっています」
江藤さん(妻):
「部署は別なのですが、同じプロジェクトをしたことが大きなきっかけです。打ち上げの飲み会や、彼は野球部、私はバスケ部とお互いの部活を通じて交流するようになったんです。最初は、叱られたりと怖い部分もあったんですが、たくさん話すうちに彼のやさしさに気付いて…。ギャップにやられたのかもしれません(笑)」
――ノロケでお腹いっぱいです! でも、最初は会社内での恋愛に抵抗もありましたよね?
鶴村さん(夫):
「あー最初はありましたね。周りにバレると面倒ですし…当初は隠してました」
鶴村さん(妻):
「私は全然なかったです。むしろ、隠すよりオープンにした方が仕事もしやすくなると思ってましたし」
江藤さん(妻):
「先輩同士でお付き合いされている方もすでにいらしたので、全く抵抗はなかったです!」
――鶴村ご夫婦は、隠していたのにどうしてバレちゃったんですか?
鶴村さん(夫):
「彼女のお父さんが亡くなったときに、仕事を休んで葬儀に参列したんです」
鶴村さん(妻):
「しかも、親戚の席に座ってもらったので、会社の上司が参列してくださったときに、『なんでアイツが親族にいるんだ!?』って、バレちゃました」
鶴村さん(夫):
「彼女がつらいときでしたし、ここはそばで支えなきゃなと思って」
公私を分けられないってつらくないですか?
――なんとも男気あふれる行動! 鶴村さん(夫)の好感度が一気に上がっちゃいましたね。
鶴村さん(夫):
「バレてみると、隠さないでいるほうが断然、やりやすいなと(笑)。隠しているときは、彼女とのことを勘ぐってくる同僚をごまかさなきゃいけないし…。ウソをウソで固める感じでつらかったですね」
鶴村さん(妻):
「夫と付き合う前、恋愛相談していた仲のいい同僚や先輩に、ちゃんと報告できなかったのもつらかったです」
――社内恋愛は面倒ごとを避けるためにも隠すものと思っていましたが、それはそれでめんどくさいんですね。でもやっぱり社内恋愛だと、プライベートでも相手の顔を見ると会社や仕事のことを思い出したりするし、デメリットもありますよね?
江藤さん(妻):
「うちは夫婦の会話がほとんど仕事のことばっかりで。これでいいのかなって悩んだりもしましたけど、お互いに仕事が大好きなんですよね」
鶴村さん(夫):
「僕もデメリットに感じたことはなくて、他部署の様子やこういうシステムがあったら便利とか、仕事上のアイデアや相談が気軽にできて助かるくらいですよ!」
鶴村さん(妻):
「本当にそう。今、在宅勤務させてもらっているんですけど、自宅で仕事する上で、機材やネットワークの設定をしてもらえるので、彼の知識や力を借りられて、仕事がスムーズに進みますね」
自分の行動が丸わかりになるのってイヤじゃないですか?
――でも、同じ会社で働いていると、相手の行動が丸わかりになるじゃないですか。スケジュールの面で不自由さは感じませんかね?
江藤さん(妻):
「社内のグループウェアでスケジュールを見ることができるので、相手の行動を把握できるんです。私の場合は、『今日、飲み会入っているから夜ごはんいらないんだ』とか、メリットになる部分が多いですね」
鶴村さん(夫):
「相手の行動が丸わかりになるのは、むしろメリットなんじゃないですかね。やましいことさえなければ(笑)」
鶴村さん(妻):
「そう。相手の行動がわかるから、いちいち説明する手間や連絡が取れない不安がないんです。まじめな話をすると、同じ会社だと産休や育休制度も同じなので、子育て環境がスムーズに整います。別会社の場合、制度を確認しあうだけでも手間だと聞くので。それに、自分が外せない会議のときに夫の予定がすぐ分かるので、保育園のお迎えもぱっと頼めるのは心強いです。子どもがいる私たちにとっては本当にありがたいですね」
――相手の社内での評判や様子も丸わかりになりますよね。そういうのって、照れくさくて気まずくなりませんか?
鶴村さん(妻):
「いえいえ。自分で探らなくても相手の人柄が伝わってくるんでありがたいです。仕事に対する丁寧さや、『つるちゃん』と周りから慕われている様子などを知れて、『ああ、この人は本当にいい人なんだな』と思いました。結婚してからは、夫のことで私が褒められることもあって、ちょっと照れくさいけどうれしいですね」
江藤さん(妻):
「付き合う前から人となりを知れるので、私たちは結婚自体も早かったです(笑)。付き合って半年くらいで結婚しましたね。結婚決めたのは1カ月くらいでした!」
――あの~、どぎついデメリットのエピソードもほしいんですけど、本当にないんですかね?
鶴村さん(妻):
「うーん、考えても見つからないんですよ~。同僚が夫のことも知ってるから、愚痴を言うときも話が早いし(笑)」
鶴村さん(夫):
「そうですね。言うとすれば、社内恋愛だったから結婚の覚悟が決まったってことですかね」
――それ、メリットって言うんですよ! けんかしたら社内で会ったときにきまずいとかありませんか?
江藤さん(妻):
「うち、けんかしないんです。あっても1年に1回くらいなもので…すみません」
――ソウデスカ、なんだか熱が出てきました。皆さん、今日はたくさんのオノロケをありがとうございます。
社内恋愛に向いている人は「○○が好き」な人?
“仕事や会社が好き”だということがお話の端々から伝わってきたインタビューでした。こういった環境であれば、社内恋愛のデメリットはメリットに変わるのかもしれません。もしかすると、サイボウズさんは「社内結婚ボーナス」みたいな福利厚生があるのかも!? その疑問を、サイボウズの広報担当者に聞いてみました。
広報:
「とくに社内結婚でボーナスが出るとか、特別な制度はありませんね。結婚式に社長からコメントが出るくらいでしょうか…」
――では、社内結婚が多い秘密はどこに隠されているのでしょうか?
広報:
「和やかで明るい雰囲気、チームワークをとても大切にする企業風土にあるのかもしれません。だからこそ横のつながりはもちろん、経営陣との距離も近く、コミュニケーションが活発な点も社内結婚が多い理由になっているのだと思います」
――そもそも社内コミュニケーションに力を入れる理由は?
広報:
「2005年に離職率が28%と高い水準になった反省から“より多くの人が、より成長して、より長く働ける環境を提供する”とポリシーを定めました。それから、多様な働き方を可能にする仕組みを整え、ワークライフバランスに配慮した制度や、社内コミュニケーションを活性化する制度を採り入れてきました」
――具体的にはどのような制度がありますか?
広報:
「“横のつながりの活性化”の取り組みとして、本部をまたいで社員を5人以上集めて部として活動をすると、部費が支給される部活動制度などがあります。仕事以外でも社員の交流が多くあるので、結果として社内恋愛&結婚が多いんです」
なるほど。新しいことを常に取り入れるサイボウズさんの柔和な姿勢が社内恋愛を自然に生み出しているんですね。筆者も、社内恋愛&結婚の見方が少し変わりました。「社内恋愛は、風通しのいい会社でならデメリットが少ない」と。社内恋愛について、ほかにもメリットやデメリットがあるという方はぜひ教えてください。次回は匿名インタビューで聞いてみたいと思います!
サイボウズ
http://cybozu.co.jp/
著者・SPECIAL THANKS
取材・文=フルーティー馬場 編集協力=プレスラボ 企画協力=CAREER HACK