こだわり1 手打ちそば

師匠の言葉を胸に、毎日蕎麦を打つ

店主の高橋定雄氏は「田舎せいろ」に使う蕎麦粉を、毎日使う分だけ乗鞍の石臼を使って手で挽いている。石臼が摩擦で熱を持たないように、ゆっくりと同じリズムで挽く。「力を入れると、粉も不自然なものになるので、自然体で力を抜いて挽いていきます」と高橋氏。それは決して楽な作業ではない。それを毎日続けているのだ。

  • 高橋氏は、この場所にあった蕎麦屋の3代目。父の代までは丼物も作り出前もするという地元密着の蕎麦屋だった。調理学校を卒業後、柏の名店で5年間修業し父の店を1年間手伝った後、2005年に店名もメニューも変えてリニューアルオープンした。店の前には「そばを打つ自分を打つ」という師匠からの言葉が飾られている。

  • 使う蕎麦は、長野安曇野、山形大石田来迎寺在来種、群馬赤城野良蕎麦、群馬黒保根という各産地のものを順番に使う。どれも一定の温度管理の下で保管されている。蕎麦を打つにはすべき仕事が多い。「蕎麦界の先輩たちがいて、自分は追いかける立場だからいい加減なことはできない。後輩も育ってきているので尚更だ」という。

こだわり2 職人技

蕎麦と香りと味を心ゆくまで愉しめる

「せいろ」は十割、キリリとしなやかに打つ。この店で使う水は3種類。打つ水はミネラルウオーターを使い、コシを生み出す。茹でる水は浄水器を通して貝殻の化石を入れて一晩寝かせた水を使う。焼き節を使ったつゆには、井戸水だ。清廉な人物の店主は、多くを語らないがこの水を使い分けるまでの、店主の努力が垣間見える。

こだわり3 そば粉

蕎麦屋で静かに酒を味わう大人の愉楽

夜だけ出される蕎麦前メニューはクオリティが高い。安曇野産の蕎麦を粗めに挽き、丹念に練り上げた「そばがき」は、蕎麦切りよりも香りが立ち肴に最適だ。日本酒は冷酒2種と燗酒1種があり、どれも店主が自分の蕎麦に合う味として厳選しているものだ。出される酒器の美しさに、店主の思いが溢れていて旨い酒を一層旨くする。

こだわり4 自慢の一品

食材選択の基本は「くどくない」もの

「たくさん食べても、毎日食べても飽きないものが、本当の旨いものだと信じています」と語る店主。玉子焼きには黄身の味の強くない卵を選び、蕎麦の出汁を加え、油の香りが薄い太白ごま油で焼く。ふんわりとした優しい味わいだ。店で使われる九条ネギや、紫辛み大根も厳選し「良い素材があって自分の仕事ができる」と言う。

じゆうさん