みんなのごはん読者のみなさん、こんにちは。駆け出し酒場ライター、さいころ文庫の山崎あやさです。
主な出没地域は都内立ち呑み屋さんのカウンター、好きな食べ物はビールです。
突然ですが、皆様のファーストオーダーの定番って何ですか?
ファーストオーダー……すなわち、最初のご注文です。
この注文を制するか否かで、その日のテーブルの流れが変わってきます。
しかしそんな重要な役目を担っていながらも、メニュー選抜に与えられた時間は短く。迫りくる空腹感がまたその判断力を鈍らせます。そんなピンチをチャンスに変えるため、一流の呑み助はたいていその心に、己のファーストオーダーの定番を潜めているのです(たぶん)。
出来る限り迅速に登場しテーブルを彩りつつも、胃の腑の準備運動的な軽いものが良い。
すなわち、奴、枝豆、トマトスライス……。
しかしながら、ここでお店の個性も味わえるとさらに嬉しい。
すなわち、漬物、出汁巻き、煮込み系……。
そして何といってもコレでしょう。
ポテトサラダ。
どこにでもあるメニューなのに、意外と手間がかかる。具材や調味料で味ががらりと変わる。
ほぼ脂肪と糖で出来ているくせに、サラダを名乗る。そんなあんちくしょう、ポテトサラダ。
今回はそんなポテトサラダを楽しめる都内の酒場をご紹介させてください!
【もくじ】
1. コンビーフが高々と乗ったビジュアルが美しい…! 新橋「立ち飲み 竜馬」のポテサラ
まずはこちら!
酒場天国、新橋においてその名を馳せ、都内の呑み助の間で知らない者はいないという。
「立ち飲み竜馬」さん。
キャッシュオンで分かりやすい会計システム、コスパ抜群の値段設定、安く、早く、そして旨い。当然いつ来ても満員御礼の、立ち呑みの教科書然としたお店です。ちなみにカウンター随所に、立ち呑みのオキテなるコラム記事も。勉強に、なります!
カウンターの後ろには、焼酎のボトルが、ずらり。
味のコメントが丁寧に書かれたメニューもありますが、日によってラインアップが変わるのでどちらかというと並んだボトルを見て注文した方がお早い。
驚くべくはそのお値段、プレミア焼酎と呼ばれる希少なる焼酎……魔王とか、佐藤の黒がなんと一杯500円で頼めちゃうんです。百年の孤独でさえ、一杯1,000円。う〜ん、スゴい。スゴすぎる。
そんでもっておつまみ。
このお店の名物は、マグロの中落ち、そしてポテサラコンビーフ。
ポテサラは、胡椒を効かせた、しかし優しさを残した緩やかな一品。適度に残った粒じゃがはほっこり。これにコンビーフが高々乗ったビジュアルが、美しい。美しすぎる。
コンビーフもポテサラも、それだけで十分なおつまみになるのに、これが合わさってしまうとは。あらコンビーフって案外お上品なお味がなさりまする。
しかしこれを!ソースで食べちゃう贅沢!
途端に増すジャンキー感、すなわちおつまみ感!コンビーフとポテサラが渾然一体となって、お酒を求めて攻め入って来ます!
なぜ出来たか。我々世代はコンビーフ馴染み深いんですよ、とマスター。若い人ってあんまり食べないでしょ?でも、我々世代の呑み助なら、好きなんだよねぇ。
確かに私も、それまではあまり馴染みがなかったコンビーフ。最近は自分でも買うようになりました!おかげでハマってしまいましたよ、コンビーフ。
してやられたり。
ちなみにせっかくなのでポテサラオムレツなどというメニューも頼んでみました。典型的なオムレツ型、よりは若干細長目の独特のビジュアル。
ふわっふわの口当たりの玉子と、ほっくりのポテサラ。意外と喧嘩しない家庭的な味。はじめて食べたはずなのに、なんだか懐かしい感じがします。このケチャップと卵とマヨネーズのごちゃっとした味わい。表現するのが如何ともしがたいのですが、これは日本の給食で育った人間に嫌いなやつはいないのでは。
1日50本限定の焼き鳥も、人気メニューの一つ。
ボリュウムがっっっつりの、どこまでも柔らかく、しかし柔らかいだけではなく、しっかりした肉感。噛み締めるとぎゅうぎゅうと旨味が溢れ、その甘味が噛みしめるごとに口の中に広がるのだ。
ポテサラの名店は、焼酎も焼き鳥も全部が名店すぎました。そんで安いとか。
家の近くにあったら、毎日通っちゃうだろうなぁ……。
紹介したお店
2. 店名に偽りなし!神田「貝呑」の貝の旨味をすべて受け止めたポテサラ
さて、次なる舞台は神田。
新橋に負けるとも劣らず、素晴らしき酒場が立ち並んでおります。
ご紹介する「貝呑」さんは、南口から徒歩3分ほど。
裏路地ながらもさすがは神田。良き飲み屋街の雰囲気が染み染みで、立ち並ぶ店々の街灯の誘いっぷりといったら。
そんな中でもひときわ目を惹く外観。
何と言っても魚屋よろしく、外に生きた魚貝が並んでいるのです。
さらには「貝」どどーんと潔い看板。
これに誘われずに、何が呑み助か!
1階は立ち呑み、2階は座り。どちらも開放的で、間接照明や木製の壁、テーブル、樽のインテリアまでがなんともオシャレな感じ。
1階は本当にキッチンの目の前。嬉しいんですよねぇ、これ。
なんせ自分で頼んだものが、自分のために調理されてるのが丸見えなんだもん。
ちなみにドリンクはセルフサービス。
1杯ずつの自己申告制で、自分で取りに行ってスタッフさんにお伝えする、変わったシステムです。
「分かりづらいことをあえてやるのも、新鮮で楽しいでしょ。でも、お客さんが迷うばっかりじゃいけない。そんな時にはじめてのお客さんに手を貸してあげれば、ほら、コミュニケーションになるでしょ」
と店長さん。なるほど、ドリンク1つがなんともエンターテイメント。
そんでもって、自分で注ぐから、なみなみし放題なんです。むふふ。
さて、そんなこのお店のポテサラは統括料理長が考案したメニュー。ホタテと白ワイン蒸しのアサリ、その汁ごと練りこんだという、贅沢な逸品です。
それがSサイズで300円Mサイズで480円とは恐れ入る。
丁寧に滑らかに潰されたポテサラは、とにかく貝の旨味をすべて受け止めたしっかりした味わい。ホタテの食感にあたると、ラッキーってなるのが楽しい。アサリも、良い味出してます。
一番人気は活貝のソテー。
数種類の中からその貝の種類と数、そしてソースを選んで作ってもらう、やはりちょっと変わった趣向のメニューです。
毎度毎度、めっちゃ悩むんだよなぁ、コレ。いや、それが楽しみでもあるんですけどね。
この日はムール貝とアサリ、ホタテの稚貝を、一番人気の焦がしバターで。
そんでもってさらにこの後のお楽しみが、残ったソースで作るリゾットです。実はこのリゾット目当てでソテー頼む人も多いとか。
キッチンから漂う貝の良い香りも、大量の注文を裁く調理スタッフの機敏なる動作も、美味しさに一役買う素晴らしきスパイスです。
メニューすらもおつまみになりそう……あら、貝だけじゃなくって、魚メニューも豊富ですな。
そんな神田にある貝の楽園。皆様も是非一度。
紹介したお店
3. ジャンクと燻製のバランス光る、吉祥寺「コパンダ」のポテサラ
はてさてお次は吉祥寺。
ハモニカ横町の中の、なんともハモニカ横町らしいお店。「コパンダ」さんです。
屋台とかガード下とか、そうゆう屋外感をゴリゴリ感じる、狭い中にぎゅうぎゅうと人もモノも詰まっている、そんなお店です。若い可愛いおねぇさん2人組もいれば、昼間に何してるか想像もつかないおっさんもおります。
いやもう、おもちゃ箱の中に突っ込まれたようでワクワクしますね。
こういうお店はえてして、何食べても美味しいし、なんなら不味いもの出てきたらそれはそれで楽しい。
サッポロビールがキンキンです。こりゃ嬉しい。
ここの名物ポテサラは、くんせい卵のポテサラ。400円。
やや褐色の、おつまみの雰囲気たっぷりのポテサラがご登場いたします。コンビーフ、玉ねぎ。上にかかっているのはフライドオニオンかな?さくさく食感の+アルファって、いいよねぇ。
ボリュームもしっかりたっぷりです。
そんなポテサラ。口に入れた瞬間、がっつりのジャンキー感に襲われます。思いがけず濃い味。どどん。
しかしそれを後から漂う燻香が、きれいにまとめている。そう、丁寧に潰され一瞬存在感を消した燻製卵ですが、しっかりとこのポテサラの底味を支えているのです。ほんのりとした卵のまろ味、甘みも全体の調和に一役買っていて。バランスの良さが光ります。
他には、飲み物とおまかせおつまみ3品のおつかれセットなんてのも頼んでみました。
登場したのはおでん3種、大ぶりの小鉢、揚げシュウマイ串。このお値段でこのボリューム。
キンキンのビールといい、そのお値段に反する量といい、サービス精神の旺盛さを感じました。
そしてやっぱり何食べても美味しかった。うふふ。なんかお得な気分です。
紹介したお店
4. 「オレ流のポテサラ」作るなら、自分でジャガイモつぶせる「串カツ田中」
はてさて次なるポテサラは、実は都内至るところで楽しめるポテサラです。
というか、日本全国で楽しめるポテサラです。
なぜかって?
ご紹介するこちらの「串カツ田中」さん、オープンから僅か10年ほどで、あれよあれよと全国に店舗を展開した物凄い勢いのある串カツ屋さんなのです。
皆様も一度や二度ならず、その外観を見たことがあるのでは?
なんなら一度や二度ならず、そのサックサクの揚げたて衣を堪能したことがあるのでは?
お邪魔したのは高田馬場店。思いがけず、広い店内。打ちっ放しの壁や配管むき出しの天井が、なんともワイルドな雰囲気です。
ぶら下がる角ハイボールの提灯も、貼られたポスターの数々も、なかなか良い感じじゃないですか!
串カツを、食らってやろうという気持ちにさせてくれます。
場所柄さぞや学生が多かろうと思いきや、お子様もご一緒のご家族連れがご予約。
ほほう、意外と地元に愛されてるお店なのね!
はてさてここのポテサラですが、まずはそのビジュアルからお楽しみください。
すりこぎが添えられたすり鉢の中に、ふかしたじゃがいも、完璧な茹で具合の煮卵、ベーコンのチップ、マヨネーズが入って出てきます。なんと、自分で潰して仕上げるニュータイプのポテサラなのです。
お好みの硬さに潰せるのが嬉しい。
しっかり潰して滑らかにも、ざっくり潰してホクホクにも、如何様にもなる俺のポテサラ。
そこで騒ぐ、呑み助の血。どちらも味わいたくなってしまう食いしん坊。
ふふふ、やっちまいましょう。
ジャガイモと卵を半分取り出し、まずはゴリゴリとよく潰します。これで滑らかの出来上がり。
残りを戻して、今度はさっくりと。これでホクホクも味わえちゃいます。
まだほんのり温かいポテサラは、ほっくり優しくややも芋の甘みが際立っています。
しっかり潰したやつをアスパラにのっけても美味しい。
さっくりをキャベツといただくのも乙。
やりたい放題堪能させていただきました。
そういえば、ここにはチンチロリンハイボールというのがあります。
2個のさいころを振って出た目の合計が偶数で半額、奇数でWサイズ倍額、そんでもってなんと。ゾロ目は1杯無料になっちゃう!
美味しくて、楽しくて、お得になっちゃうやつ。行ったら是非注文してみてください!
串カツ・ポテサラとも、相性抜群です。
紹介したお店
5. シンプルで上品。素材を感じるポテサラと言えば、新宿「居酒屋ふらっと」
はてさて、最後にご紹介するお店は、なんと某テレビ番組「マツコの知らない世界」の「絶対おいしいポテサラ」で、1位に輝いたポテサラを誇る人気店。
新宿から徒歩5分ほど。ビルの奥にあって、分かりづらい。入りづらい。
しかしこの入りづらい入り口に反して、実はものすっごいアットホームなんです。
とにかく店主はじめスタッフさんが気さくで、優しい。
そんでもって、そんな優しさが料理にも溢れ出ちゃってる。
見て下さい、このポテサラ。
ナイスボリュウム!
美しき白き巨塔の如く。
玉ねぎとキュウリのシンプルで、上品な感じすらするビジュアルです。丁寧に作られてる感がひしひしと伝わってきます。
一口食べてみると玉ねぎが、しゃっくしゃく!歯ごたえが凄いです。香る辛味も一役買っています。
そんな中、その存在感を主張するやや粗めに潰されたジャガイモ。
きゅうりとマヨネーズは、ごく控えめに。素材の旨みが味わえる、そんなポテトサラダでした。
ちなみにこちら、鹿児島料理のお店。独自ルートで仕入れるというお魚も、レアな焼酎もいただけます。
しかしながら、実はファンが多い、私も大好きなメニュー……それがこれ、お通しの干しえのきの素揚げです。
ありそうでない、はじめての味。ものすごくキノコの味が凝縮されていて、言うなれば旨味の塊の様なモノ。噛みしめると、香ばしさの奥からエノキ感が染み出してきます。
乾杯ビールから焼酎まで、どんなお酒にも合うんだな!
お会計後は、お店の外までスタッフさんがお見送りしてくれました。
お酒にもお料理にも、なんなら店内が優しさと美味しさで満ち満ちたお店です。
誰でも気軽に“ふらっと”入れるようにとつけられた店名。
うぅ……前とか通りかかったら、絶対ふらっと行っちゃうよなぁ。
紹介したお店
ふらっと
そんなわけで、今回はそんな都内のポテサラが美味しいお店5軒を紹介させていただきました。
ファーストオーダーの定番、と冒頭で書きましたが、ポテサラは重すぎず軽すぎず比較的どんなお酒とも相性が良いところが素晴らしい。
ファーストオーダーで小腹を落ち着かせるも良し、中盤にそっと挟むも良し、なんなら最後の〆に寄り添ってもいただける。そんな懐の広い、優しい子なんです。
是非皆さんも、お気に入りのポテサラ、探してみてください。
さいころ文庫 プロフィール
編集・ライターの山﨑あやさとデザイナー・イラストレーターの上坂俊吾の2人組。東京都内の立ち呑み屋を紹介する情報誌「東京女子立ち呑み」などを発行。女性にも入りやすい酒場を探して、都内近郊を日々呑み歩いている。
Twitter : https://twitter.com/saikorobunko
さいころ文庫の過去の記事:さいころ文庫記事一覧