【豚骨編】ラーメンと音楽が好きすぎるから、ラーメン屋をミュージシャンに例えてみた

ラーメンマニアや音楽好きの間で話題となった、「ラーメン店をミュージシャンに例える」記事の第二弾です。前回の天下一品・青葉・ホープ軒・蒙古タンメン中本に続き今回は「豚骨編」。まずは東京人の博多豚骨ラーメンの登竜門「博多天神」、そして東京で食べられる福岡の本物の味でラーメン好きが今もっとも注目している高円寺の「ラーメン健太」、最後に独自のスタイルで日本中にファンがいる「ラーメン二郎」についてたっぷりと語り合います。前回同様、議論は満場一致から喧々諤々まで、白熱して一触即発なんていう状態にまで盛り上がりました。ぜひ皆さんも膝を叩いたり「ちげーよ」と言ったりしてお楽しみください。(目黒のグルメラーメン

【豚骨編】ラーメンと音楽が好きすぎるから、ラーメン屋をミュージシャンに例えてみた

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「Queenはポップでありながら唯一無二の存在。あれだけ個性的なのにちゃんとメジャー路線に乗っている。それが、ポピュラーでありながらオリジナリティのある天下一品と共通している」

 

これは「第1回  メジャーラーメン店をミュージシャンに例える会」の一部始終を記した記事の一文。この記事は公開後、局地的に話題となり、ごく一部から共鳴を呼び、ローカルで呼応し合いました。

 

その後、ダメ元で第2回の備忘録も「みんなのごはん」に掲載したいと打診したところ、なぜか許可が下り、こうして記事化が決定。

 

今回の討論のキーワードとなったのは「豚骨ラーメン」

博多ラーメンの地方性」と「U2の音の奥に潜むアイリッシュ魂」に共通点を見出したかと思えば、「豚骨スープの中の肉骨粉」と「Tom Waitsのハスキーボイス」を重ね合わせる。そして、「ラーメン二郎」がJames BrownなのかMetallicaなのかで大モメする。

ラーメンと音楽に狂う大人たちによる、4時間に迫る大激論の模様をお伝えしよう。

 

【参加者】前回同様、ラーメンと音楽をそれぞれの形で愛す4名

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高山 洋平(たかやま ようへい)

1978年生まれ。特異な広告を制作することでお馴染み、株式会社おくりバントの代表取締役。ホームのラーメン屋は「ラーメン二郎」。どんなに多忙であってもラーメン屋に行く時間を捻出することに全神経を注ぎながら生きている。音楽とラーメンについては、そこそこの知識を持つ。

 

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MANNER-CHUNK(まなーちゃんく)

1981年生まれ。独特なグルーヴを生み出す「skillkills(スキルキルス)」のボーカル。ホームのラーメン屋は「ラーメン二郎」。3年前に心酔していた「めん処 渚」が閉店してから、しばらく自暴自棄になるも「ラーメン二郎」にハマってからは、スマホを手に取るように「ラーメン二郎」のことを想っている。

 

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矢川 俊介(やがわ しゅんすけ)

1976年生まれ。月刊音楽雑誌『ミュージック・マガジン』の編集者。ホームのラーメン屋は六本木の「天鳳」。ラーメンに関してはメジャーどころを抑えている程度の知識ではあるものの、音楽に関しては一般人を置いてけぼりにするほどのビックデータを脳に保有する。文化人枠として参戦。

 

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亮太(りょうた)

1983年生まれ。営業マン。「中野の天才ラーメン少年」という異名を持ち、年間250杯程度のラーメンを食す軽度のラーメンオタク。ホームのラーメン屋は中野富士見町の「麺好」。ここが閉店したら生きる気力を失う。バンド「太陽民芸」のベーシストとしても活躍し、主にロックやパンクを好む。

 

東京人の博多豚骨ラーメンの通り道「博多天神」をミュージシャンに例えるなら?

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高山:皆さんお集まりいただきありがとうございます。今回も熱い議論を繰り広げていきたいと思います。今日議論するのは、

  • 博多天神」
  • 「ラーメン健太」
  • 「ラーメン二郎」

の3店。まずは「博多天神」から話し合っていきましょう。

 

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高山:俺は博多天神はGreen Day(グリーンデイ)一択だと思ってます。何故なら、ポピュラーなGreen Dayは洋楽の通り道にいる存在だと思うから。博多天神も誰もが馴染みやすい味で博多豚骨ラーメンの通り道にある存在だよね。

 

マナーチャンク:ポピュラーか。確かにまだ音源のジャンルを全然知らなかった頃は、Green Dayのこと明るいNirvana(ニルヴァーナ)だと思ってたもんな。

 

高山:あと、替え玉無料券をはじめとする博多天神のサービス精神と、Green Dayの手厚いファンサービスも通じるところがあると思います。

 

矢川:Green Dayのファンサービスって?

 

高山:子どもをステージにあげてギターを弾かせたりするんですよ。しかも2曲くらい一緒に演奏してくれる。

 

マナーチャンク:それこそ、うちのバンドのスグル(※skillkillsのベーシスト)は高校生のときステージにあげてもらって一緒にベースを弾いたことがあるよ。

 

矢川:へえー!

 

高山博多天神は替え玉無料券だけじゃなくて、キクラゲラーメンを頼んだりすると相当キクラゲが乗ってくる。

 

亮太:デフォルトでも結構入ってますしね。

 

高山:そうそう。そのサービス精神が博多天神とGreen Dayには共通しているんじゃないかな、と。

 

高山Green Dayは分け隔てなく、誰にも開かれてる。それは博多天神も一緒

 

博多豚骨ラーメンロードは、ブタメンから始まり、なんでんかんでんを通り博多天神を辿る

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矢川:ちなみに俺は、博多天神はU2のイメージ。博多ラーメンの地方性と、U2の音の奥に潜むアイリッシュ魂が共通しているんじゃないかな、と。ポピュラーな存在で、熱心なファンが多くいるところも同じ。

 

高山:初期は政治色が強かったよね。アイルランド解放戦線の曲もあるし。

 

マナーチャンク:iTunesのプレイリストにU2のアルバムがデフォルトで入ってた時期もあるよね。

 

高山:あれは、U2のボノが後に謝罪してたよね。

 

矢川:そう、そのiTunesにデフォルトでU2のアルバムが搭載されていたのが、博多天神でもらったその日から使える「替え玉無料券」に繋がっている気がして。

 

高山:それは違うんじゃないんですか? 自動的に送られてくるU2のアルバムと違って、博多天神は頼まないと替え玉はでてこないもん。

 

矢川:それは無理あるか。でも、熱烈なファンが多いところは通じてるよね。

 

マナーチャンク:ファンは多いですよね。

 

高山:俺も昔は歌舞伎町にある靖国通り沿いの店舗に通ってたなあ。

 

マナーチャンク:気楽なんですよね。そういう意味では博多天神は、東京の人の豚骨ラーメンの入り口かも。ブタメンから発展して博多天神に進化するって感じじゃないですか?

 

高山:いや、ブタメンから一気に博多天神じゃなくて、九州じゃんがらは通ってるでしょ(笑)

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矢川:なんでんかんでんも博多豚骨の切り込み隊長じゃない?

 

マナーチャンク:なんでんかんでんは免許とったら環七の店舗に皆で行く店ってイメージだな。

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高山:確かに、大学生以降の青春だね。となると東京ではブタメン→九州じゃんがら→なんでんかんでん→博多天神という順番で博多豚骨の味を知る人が多いのかも。

 

矢川:そうだね。

 

曲の短さ、単調さ、そこに潜む技術。博多天神はRamonesと共通している

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亮太:ジャンルは同じくパンクにはなるんですけど、僕はRamones(ラモーンズ)を推したい。曲のキャッチーさが、博多天神の取っ付きやすさに共通しているかなと思いました。主張の要はGreen Dayとだいたい同じだけど、博多天神は東京ローカルだから、Green Dayだとちょっとワールドワイドすぎるかなって。

 

マナーチャンク:Ramonesも結構ワールドワイドだけどね(笑)

 

亮太:それだけじゃなくて、Ramonesの曲の短さと、博多天神の提供の速さも通じるところがあります。

 

高山:吉野家より早いときがあるからね。

 

マナーチャンク店に入る直前にもう麺茹で始めてるもんね。

 

亮太:あと、博多天神の店内には

「お出ししている超原液状態の濃縮スープは、コーヒーでいうとブラック。お客様の舌で、カウンター上の具を入れ100%の味をお作り下さい。具は全部入れて少量ずつ。一番おいしい。」

って標語が貼ってあるんです。これ、つまりRamonesのことなんですよね。

 

矢川:……なぜ?

 

亮太:Ramonesってどの曲も単調で「金太郎飴みたいに同じ曲に聴こえる」って評価されがちなんですが、実は違って細かいアイディアが散りばめられているんです。独特なリフだったり、ところどころに感じるビーチ・ボーイズの影響だったり。少しずつ色んな要素が足されていって一番美味しい状態に昇華され、ファンが拡大している

 

高山熟練された技術や節々に感じるルーツが、博多天神の卓上に置いてあるおろしニンニク、紅生姜、ごま、高菜ってことか。

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紅生姜と辛子高菜が乗った博多豚骨ラーメンに「Welcome to the Jungle」

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マナーチャンク:僕はGuns N' Roses(ガンズ・アンド・ローゼズ)です。皆にとって博多天神は豚骨ラーメンの通り道かもしれないけど、僕にとっては登竜門なんですよね。だから、ロックの登竜門的な存在であるガンズ・アンド・ローゼズにしました

 

高山:なるほど。

マナーチャンク替え玉無料っていうウェルカム感と、紅生姜や辛子高菜をトッピングしたラーメンのジャングル感で「Welcome to the Jungle(ウェルカムトゥーザジャングル)」。

 

矢川:おおー! でも、バンドじゃなくて曲になっちゃった(笑)。

 

マナーチャンク博多天神のラーメンを空から見ると、ジャングルだったんですよね。

 

亮太:ちなみにGreen Dayにも「Welcome To Paradise」って曲がありますね。これで、全員の意見が出揃いました。

 

高山:これまで聞いてきてU2はないかなあ。

 

矢川:でも皆の意見、ハードロックとかパンク色が強くない? 博多天神って、もうちょっとソフトなものだと思うんだけど。

 

高山:いや、U2の方がパンクでしょ。

 

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矢川:それは政治的な思想がでしょ? サウンドの話よ。サウンドがスープだとしたらGreen Dayはハードすぎる気がするんだよなあ。

 

マナーチャンク:でも、Green Dayの柔らかいディストーション感は豚骨スープに通じるところがあるかもしれないですけどね。

 

矢川:……確かに。ディストーションはすごく効いてるけど、耳障りはソフトな歪みだよね。そうか、そう考えるとGreen Dayは近いのかも。

 

亮太:でもGreen Dayはバンドとして世界的すぎると思うんですよね。グラミー賞も取ってるし。博多天神って東京にしかないし、そもそも博多の人からしたらちょっとおかしな店名ですよね。

 

矢川:「博多」と「天神」って場所が違うしね。「渋谷池袋」みたいなことだよね。博多天神って世の中にどれくらい知られてるのかな。

 

マナーチャンク:じゃあ、ここにいる全員の両親に、博多天神とGreen Dayを知ってるか電話で聞いて調査してみます?

 

高山:誰も何も知らないと思うよ。

 

亮太:それに、ファンサービスとかって言ってますけど博多天神の寡黙さや職人らしい麺さばきはRamonesのストイックなステージを彷彿とさせますけどね。

 

矢川:でもRamonesはニューヨークパンクのオリジネーターじゃん。一方で博多天神は博多で誕生したわけではない。

 

亮太:うーん……それはそうか。じゃあ、僕の主張と同じベクトルではあったのでGreen Dayにします。

 

マナーチャンク:俺のガンズも曲名になっちゃってたし、Green Dayに一票で。

 

高山:わかりました。では皆さん今日から博多天神をミュージシャンで例えると?」と聞かれたら全員一致で「Green Dayです!」と答えてくださいね!

 

癖になりすぎる味。有識者4名の心を掴んで離さない高円寺の本格派「ラーメン健太」

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高山:次に「ラーメン健太」について話しましょうか。ここは元々「中洲屋台 健太」っていうラーメン居酒屋だったんですよね。

 

亮太:オーナーの健太さんが、福岡にある「駒や」の味に感銘を受けて修行を直談判、短期間の猛特訓ののちに、本場仕込みの味でリューアルオープンしたんですよね。

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ラーメン健太の「ラーメン」

高山:居酒屋時代からラーメンはあったけど、今のラーメンとは別物だったよね。最近は毎日のように通ってる。初めて食べたときは感動したなあ。

 

マナーチャンク:福岡出身の人間も「福岡の味だ!」って感動して通ってますからね。

 

亮太:ラーメン健太は、“ひっそりと営業している町中華にたまたま入ったら美味しかった”という感じではなく、確実に今東京で流行りつつある店ですよね。ラーメンデータバンク取締役会長、日本ラーメン協会発起人の一人、東京ラーメンショー実行委員長でもある大崎さんという人がいるんですけど……。

 

矢川:ラーメン界の大御所だね。

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亮太:そうです。大崎さんは長年「TRYラーメン大賞」(※)の主要審査員だったんですが(2019-2020をもって卒業)、日本最大級のラーメン専門口コミサイト「ラーメンデータベース」上の「今日の一杯」という自身がラーメンを論評するコーナーで、「新店として扱えるなら豚骨部門上位入賞は間違いなさそう」と明言していました。

※TRYとは、「東京ラーメン・オブ・ザ・イヤー」の略称。「東京で一番旨いラーメンを決めようじゃないか」を合い言葉に情報誌『TOKYO★1週間』(現在は休刊)誌上にて2000年にスタート。審査対象エリアは、東京・神奈川・千葉・埼玉の一都三県。現在はアワード本として年に1回MOOKを発売。

 

矢川:そうなんだ。もうすでに行列店になってるもんね。

 

高山:とにかく癖になるんだよ。

 

矢川:健太のスープは一見ドロドロなのかと思いきや、シャバシャバ系なんだよね。

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マナーチャンク:そう。”極悪スメル”って店内のボードにも書かれてる通り匂いは強いんだけど、一口飲んでみるとすごく優しいんだよね。

 

高山:オーナーの健太さんも見た目と違って優しいんだよねえ。

 

マナーチャンク:そうそう。子どもに「ゆっくり食べな」とか言ってて。

 

高山:しかも、ラーメン健太はコメの自由化を取り入れてて、白米でもおにぎりでも持ち込めるし。

 

亮太:コメがないほうが替え玉で稼げそうなのに、持ち込み自由は良心的ですよね。

 

マナーチャンク:「コメは持ち込み無料になったけど、それでもお前は替え玉しちゃうんだぜ?」っていう自信を感じられるよね。実際俺はリスペクトもあって毎回替え玉してる。

 

高山:半替え(半玉替え玉)できるのもいいんだよ。

 

亮太:すごいな、これだけ話してまだ誰も本題に入っていかない

 

マナーチャンク:めちゃ長いイントロになったね。

 

矢川:それだけ皆の思い入れが詰まってる店なんだよね。

 

替え玉を何度も何度も「One More Time」。明日も明後日も「One More Time」

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高山:そろそろ本題に入りましょう。俺はラーメン健太はDaft Punk(ダフト・パンク)だと思う。だってラーメン健太はどこまでいっても「One More Time(ワン・モア・タイム)」だから。

 

マナーチャンク:それ言ったら「The Neverending Story(ネバーエンディング・ストーリー)」でもあるじゃないですか。

 

高山:Limahl(リマール)のね。でも、健太の場合は替え玉を何度も何度も「ワンモアタイム」だし、一回行ったら明日も明後日も「One More Time」なんだよ。それに健太さんの機械的な動きもDaft Punkに通じると思う。

 

亮太:「Digital Love(デジタルラブ)」ですね。

 

▲Yamasuki「Kono Samourai」

 

高山:そう。健太さんの機械的な所作と心地いいリズムはまさにDaft Punk。それにDaft Punkの父親はYamasuki(ヤマスキ)じゃないですか。健太の親は「駒や」。そういう先代から遺伝子を継承しているところも共通しているよね。

 

矢川:なるほどね。ちなみに俺はThe Band(ザ・バンド)。ラーメン健太の豚骨ラーメンの味って、今まで東京では食べたことがなかったんだよね。食べたことがないのに、「あ、これ多分本物の味だな」っていうのが分かる。これがThe Bandのファーストアルバムを聞いたときの衝撃と同じだったんだよ。

 

マナーチャンク:めちゃめちゃ個人的な理由ですね。

 

矢川:The Bandの音楽ってそういうものなんだよ。当時、皆そういう想いで聴いたと思うんだよね。ちなみに俺はラーメン健太には「サイケデリックの時代に現れた桃源郷のような豚骨スープ」っていうキャッチコピーをつけてる。

 

高山:ちょっと、抽象的じゃないですか?

 

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矢川:いやいや、The Bandと健太は辿ってきた歴史もちゃんと共通しているところが多いんだよ。The Bandにはロニーホーキンスっていうアメリカ南部のシンガーのバックバンドをしていた時代がある。それが健太の居酒屋時代。そのあとThe Bandはボブディランと一緒にウッドストックにこもるのね。それが駒やでの修行時代。つまり、駒やがラーメン健太から見たディランだね。そのあとThe Bandが独立して、誰も知らないサウンドを見つける、というストーリーも一緒。さらにThe Bandの音が持つ中毒性は、ラーメン健太の味が持っている中毒性と同じものを感じた。細かいこと言うと健太のコシの強い細麺はロビー・ロバートソンのピッキングハーモニクスを彷彿させるし、健太のスープはリヴォン・ヘルムとリック・ダンコの隙間を埋め合うようなベースとドラムに通じる。

 

高山:抽象的なのか具体的なのか、もうなにがなんなのかわからないな。

 

高速ギターカッティングは、硬質なストレート細麺。フルボディスープはローの効いたリズム隊

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マナーチャンク:僕はTom Waits(トム・ウェイツ)ですね。つっけんどんな歌声だけど優しい曲も歌えるTom Waitsの魅力が、媚びないけど優しいオーナーの健太さんに共通している気がして。スープの中の肉骨粉が、ハスキーボイスを表してるとも思う。

 

亮太:スープを飲み干したあとに丼の底に残るザラザラですね。

 

マナーチャンク:そうそう。ボーカル一人でやってるのも健太さんに通じるんじゃないかな、と。あと、僕はあの調理場がピアノに見えるんですよ。

 

矢川:健太さんは、弾いてるんだ。

 

マナーチャンク:そうです。あと、開店前に並んでると店から健太さんが出てきて「すみません、タバコ吸っていいですか?」ってタバコに火を付けるんですよ。その様もまさにTom Waits。

 

高山:かっこいいなあ。

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亮太:店を閉めたあとも店内で健太さんが独りタバコ吸ってるのを見ました。その様子はまさにTom Waitsの「Closing Time(クロージング・タイム)」かも。

 

マナーチャンク:そういうことです。

 

亮太:ちなみに僕はDr.Feelgood(ドクター・フィールグッド)かな、と。Dr.Feelgoodは、イギリスでパンクロックが勃興する直前に生まれたパブロックというシーンを代表するバンドです。

 

高山:パブロックって何?

 

亮太:ローカルなバンドがパブを巡ってアメリカのブルースやカントリー、R&Bなどに影響を受けた曲を演奏していたのが始まりみたいです。

 

矢川:Dr.FeelgoodはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT(ミッシェル・ガン・エレファント)に多大な影響を与えてるんだよね。

 

亮太:そうですそうです。Dr.Feelgoodのギタリスト、ウィルコ・ジョンソンが来日したときのライブではミッシェルがオープニングアクトを務めたこともあったみたいですね。

 

矢川:アベフトシさんのギターはほぼウィルコに生き写しだよね。

 

マナーチャンク:あのカッティングはそうなんだ。

 

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亮太:そうそう。で、今回なぜDr.Feelgoodを挙げたのかというと、圧倒的な潔さが共通していると思ったからです。ラーメン健太ってメニューが「ラーメン」一つしかないじゃないですか。普通、塩とか味噌とかつけ麺とかラインナップを揃えちゃいそうなもんだけど、ラーメン健太はそうじゃない。それがDr.Feelgoodの潔い音に共通してる。

 

マナーチャンク:メニューがラーメンしかないのに健太さんが「ラーメンですか?」って聞くのすごい好き。

 

矢川:俺も初来店のとき、あの店構えだからちょっと緊張してたら「ラーメンですか?」って聞かれて安心したし、「はい」って答えるのすごい心地よかったな。

 

亮太:うんうん。それにDr.Feelgoodのボーカル、リー・ブリローのドスのきいた歌声は健太さんから滲み出る凄みを思わせるし、ギタリストのウィルコ・ジョンソンの高速カッティングは、硬質なストレート細麺を彷彿とさせる。それにテクスチャーはしゃばしゃばしてるけど「極悪スメル」の漂うフルボディスープは、ボトムが重たいローの効いたリズム隊と共通しています。

 

矢川:すごい分かるけどさ、それってThe Bandも同じじゃない?

 

亮太:いやそれだけじゃないです。これはただの連想ゲームなんですけど、健太といったら福岡、福岡といったらめんたいロック、めんたいロックといったらウィルコ・ジョンソンの盟友・鮎川誠さん。鮎川誠さんと健太さんってちょっと顔似てないですか?

 

矢川:人類を8つくらいに分けたらね。

 

普段は厳しいけど不意に優しさを見せるTom Waitsと健太さん

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高山:全員の意見を聞いてみて俺はTom Waitsだと思った。不動産屋で働いてたとき、当時の上司に「辞めたいです」って相談したら「映画を見ろ、Tom Waitsを聞け、現実逃避しろ」って言われたのを思い出したんだよね。ラーメン健太も俺にとって嫌なことがあったときに現実逃避させてくれる存在だから。毎日いってるけど。

 

マナーチャンク:めちゃめちゃ匂いは強いのに、味は優しいもんね。Tom Waitsもラーメン健太も、普段は厳しい人の不意に見せた優しさを感じる。

 

亮太:幽遊白書のOP曲「微笑みの爆弾」の歌詞みたいなこと言ってますね。

 

矢川:Tom Waitsは一人で活動してるから、そこは健太と通じるものがあるかも。

 

亮太:確かにバンドじゃない感はありますね。

 

矢川:ラーメン健太の場合は、健太さんのパーソナルな部分が結構絡んできたね。

 

高山:Tom Waitsも健太さんも哀愁があるところが共通してるね。

 

亮太:確かに。

 

高山:では、健太はTom Waitsに決定しましょう。今日から「ラーメン健太をミュージシャンで例えると?」と聞かれたら全員一致で「Tom Waitsです!」と答えてくださいね!

 

マナーチャンク:ありがとうございます。一つ言いたいのは、健太さんは背が高い割に店の作業場が低いから腰には気をつけてほしい。

 

全国に熱狂的ファンを抱える「ラーメン二郎」をミュージシャンに例えるなら?

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高山:いよいよトリの「ラーメン二郎」です。

 

矢川:高山さんとマナーチャンクはめちゃめちゃ通ってるよね。

 

マナーチャンク:一昨年でいうと高山さん108回、俺は78回くらいかな。

 

矢川:それでも自分達のことをジロリアンとは言わないんだよね。

 

高山&マナーチャンク:当たり前じゃないですか。

 

マナーチャンク:年間400杯とか食べてる諸先輩方もいますからね。もちろん数だけじゃないけど。

 

高山:そうだね。俺達は単なるいちファンで、決してレペゼンではない。

 

矢川:謙虚だな。ちなみに俺はこないだ目黒店に初めて行ってきた。そもそもここで語る資格なんて俺には全くないんだけど、人生初めての二郎でした。本当にすみません。すごいラーメンでした。

 

亮太:僕は5回くらいは行ったことがあります。

 

矢川:二郎って並んでる途中に食券を買うんだね。それで列に戻ってしばらくしたら店員さんに「食券見せて」って言われて。

 

高山:そこで茹でる麺量を決めてるんですよ。麺を減らしてほしい人はそのタイミングで「麺少なめで」って伝える。

 

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ラーメン二郎目黒店の「小ブタ」

矢川:そこで言わなくちゃいけなかったのかあ。「小ラーメン」だから通常の半量くらいかと思ったら、普通にあの量の二郎ラーメンがきてびっくりした。

 

亮太:僕はそのタイミングで言わないといけないことはわかってたんですが、単純に緊張して言えなかったです。

 

高山:しかもさ、並んでたときは皆静かだったでしょう? あれは近隣住民に迷惑がかからないようにしてるんだよ。それでラーメンを食べ終えたら、カウンターに丼をあげて台拭きでテーブルを拭く。ちなみにこれはフィニッシュムーブっていうんだけど。

 

亮太:フィニッシュムーブ……。

 ※高山によるフィニッシュムーブ再現動画

 

高山:二郎って一見粗野に見えて道徳が詰め込まれてる店なんだよ。

 

矢川:確かに皆、何か見えないものを守っている感じがあった。

 

マナーチャンク:二郎は偏った世界ではあるけど、だからこそ得られる快感があるんですよ。

 

知名度とリスナーの数が比例しないKing Crimsonが、二郎を彷彿とさせる

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高山:初来店を終えた矢川さんは、二郎をどんなミュージシャンだと思ったんですか?

 

矢川:俺はKing Crimson(キング・クリムゾン)だと思った。King Crimsonってファーストアルバム「クリムゾン・キングの宮殿」のジャケットがすごく有名だけど、あそこまで有名な割に実際にクリムゾンをちゃんと聴き込んでいる人って意外と少ないと思うんだよね。

それって、どこか敷居の高さを感じる部分があるからだと思っていて。その反面、狂信的な信者もたくさんいる。そういうところが二郎と共通しているなと思った。あと、90年代以降のクリムゾンって、ドラムやベースが何人も居たり、常軌を逸して過剰なところがある。そういうマシマシ感。

 

高山:なるほど。亮太くんは?

 

亮太:僕は大御所のメタルバンド、Manowar(マノウォー)だと思いました。二郎といえば、あの破壊的なボリューム、どでかい豚肉、過剰なニンニクや背脂、極端な極太麺、そして新規のお客さんが入りづらい店構え。そんな二郎はラーメン界ではエクストリームな存在だと思うんです。音楽でエクストリームな立ち位置のジャンルはやっぱりメタル。そこからなぜManowarに辿り付いたかというと、まずManowarが掲げてるスローガンが「偽メタルに死を」なんですよ。

 

一同:(笑)

 

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亮太:それに付随する「世の中にはメタルかそうでないものの2種類しかない」というマノウォー創始者であり、ベース担当のディマイオ閣下の名言が、二郎イズムに通ずると思うんですよね。二郎のインスパイア系の店って多くあるけど、二郎に通っている人たちにとっては、「二郎と二郎以外」という考えですよね?

 

高山:そうだね。

 

亮太:先日ラーメン二郎亀戸店がTwitterで、部下に大食いハラスメントをする客に苦言を呈してたけど、二郎って大食い目的じゃなくて、美味いから行くわけじゃないですか。

 

高山:そうそう。美味いから行くわけであって、拷問的な使い方なんて本当にありえないよ。論外の蛮行だよ。

 

マナーチャンク:自分の身の丈……っていうか胃の丈を知らずに、大盛りを頼んで残すのもダメだよね。食い物を粗末にするな、が二郎のスタイルだよね。

 

亮太:ディマイオ閣下が言っていたのもそれです。食べ手を含めて偽物は許されない。

 

マナーチャンクメタルを粗末にするなってことか。

 

車に轢かれたような重さを身体に受けた、初めてのラーメン二郎とMetallicaの音楽

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高山:二人の意見には納得するところも多かったな。でも俺は同じメタルでもMetallica(メタリカ)だと思っていて。二郎を初めて食べたときとMetallicaを初めて聴いたときって全く同じ衝撃だったから。身体にドーンとくる重さだった。

 

マナーチャンク:車に轢かれたみたいな。

 

高山:そうそう。あと、メタルって完璧に計算され尽くした理系の音楽だよね。さらにMetallicaはその中でも技巧派。それって実は二郎もそうで。ニンニクや脂の量、ソリッドな醤油、豚チャーシューの旨味、小麦の中毒性。その全てが実は繊細で完璧なバランスで成り立ってるんだよ。

あと、これはKing Crimson、Manowarにも共通してるんだけど、知名度の割にMetallicaを聞いてる人はいないんだよね。たまにメタルなんて聴いたことないおばちゃんもMetallicaのTシャツ着たりしてるじゃん。それくらい世間には浸透している。俺はもう、Metallica以外にはあり得ないと思ってますね。二郎はどう考えても、絶対にMetallicaですよ。

 

矢川:ちなみに高山さんが最初に聴いたMetallicaの曲はなんだったの?

 

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高山:俺は3作目のアルバム「Master Of Puppets」(邦題:メタル・マスター)の「バッテリー」だった。二郎は俺のバッテリーでもあるから、そこもリンクしてるよね。ちなみにMetallicaっていうのはあくまで三田本店を指してる。三田本店がMetallicaだったら、目黒店はMegadeth(メガデス)

 

マナーチャンク:「目黒です」がそう聞こえるだけでしょ。

 

亮太:目黒です、めぐろです、めぐです、メガデス。

 

マナーチャンク:確かに、メタルは歪んだ音のイメージがあるからインパクトが強いですよね。でも二郎の強さってそういう質の強さじゃないと思う。もっと原始的で漠然とした自然の厳しい摂理というか。そこで俺は戒律の厳しさとエンターテインメントを両立しているJames Brown(ジェームス・ブラウン)だと思いました。

James Brownってパフォーマンスする側(罰金制度)のシビアな緊張感を経たゴージャスなエンタメ、オーディエンス側へはフィジカルとDNAへ直接訴えかけてくるグルーヴのパワーと興奮があるんです。例えばラーメン二郎目黒店で言えばコラコラの積乱雲がニンニクの稲妻と共にアブラの雪崩を引き起こし、ヤサイとブタの大地は割れ、非乳化な土石流からデロ麺が龍が如く轟く天変地異の衝撃が体中を駆け抜けて暴れまくり、リアルタイムじゃ処理しきれないくらい情報の連続があって。否応なしのグルーヴとパワーに気がつけば頭真っ白の汗だくで貪り、興奮に血糖値はブチ上がり。食後暫くして改めてその美味さ、凄さが余韻と共に押し寄せてくる。このダイナミックな野性味が共通点かなと思いました。Like a SEX MACHINE!!!!!!

 

何百杯というラーメン二郎をてめーの肉体で食ってきたんだろうが!!

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矢川:なるほど、すごい分かるな。そうすると、二郎がメタル的な重さか、ブラックミュージック的な重さかっていうことになってくるね。

 

高山:えー。分かりやすくいうとメタルだと思うよ。しかもMetallicaの何がすごいかって、年取ってもかっこいいんだよ。年齢を重ねてもハードなことをやり続けてる。

 

マナーチャンク:南極でライブやったりね。客が10人くらいしか来なかったんだよね。

 

高山:あとMetallicaって91年にモスクワ近郊で開催されたコンサート「モンスターズ・オブ・ロック」に参加してるんだよね。で、その3ヶ月後にソビエト連邦が崩壊してるの。つまり、体制をもぶち壊したんだよ。二郎も俺の中のラーメン体制の根本を崩壊させた。それは二郎を知っている人ならきっと皆そう。

 

亮太:Metallicaとソ連崩壊は関連性あるのかな……。

 

マナーチャンク:いや、でもやっぱり、James Brownはディストーションの機械的な激しさというよりかは、内臓の激しさや喜びを与えてくれるものだと思うんだよね。

 

矢川:そうそう。

 

亮太:肉体的なものってことですよね。そう考えると、メタルに捉われなくてもいい気がしてきました。

 

高山:いやいや、でも技術のすごさはメタルの綿密さの方が継承されてると思う!

 

矢川:うーんでも、それはJames Brownを知らなすぎでしょう。JBの音楽がいかに肉体的、技術的にストイックかっていうことを。……そうだね、そういう意味では、俺もMetallicaよりも完全にJames Brownな気がしてきたな。

 

亮太:ディストーションの重さっていうより、ファンクの重さですよね。

 

高山:3対1だ……。でもでも、俺は二郎でバイトだってしたことあるんだよ! 皆バイトしたことないじゃん! 俺がこの中で一番二郎食べてるじゃん!!

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亮太:降参手前でマウンティングし始めましたね。

 

矢川:もちろんMetallicaが単純にエフェクターを踏んだだけの機械的な重さだとは決して思わないけど、でも、高山さんが今まで何百杯と食べてきた二郎が、機械的なヘビーさか肉体的なヘビーだったら、どっちだと思うのよ。

 

高山:……。

 

マナーチャンク:おいおいおい、てめーの肉体で食ってきたんだろうが!!

 

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高山:……肉体的な重さだと思います。

 

矢川:ってことは二郎は?

 

亮太:いや、最後は皆で言いましょう!せーの……。

 

全員:ラーメン二郎はJames Brownです!

 

ずっと実態がないのに、何故か発言の輪郭だけくっきりしている議論

約4時間の間、自称有識者たちは自分の意見が採用されたとて何の利益にもならないことを忘れ、議論を白熱させ続けました。議論のテーマが妄想であるからして、自ずと妄言を繰り広げる有識者4名。それでもそれぞれの意見に不思議な説得力が生まれていたのは、ラーメンと音楽に携わってきた膨大な時間、そしてそれに裏打ちされた知識が、言葉に熱を持たせていたからかもしれません。

 

また、大幅な話の脱線や、大穴の番狂わせ、大人の大喧嘩もこの「ラーメン屋をミュージシャンに例える会」の醍醐味。ぜひ読者の皆さまも、ラーメンと音楽を自身の譲れないテーマに変換し、有識者を募って議論してみてはいかがでしょうか。

 

紹介したお店

ラーメン健太

〒165-0034 東京都中野区大和町1丁目66-6

https://twitter.com/ramenkenta

 

ラーメンをミュージシャンに例えた第一回はこちらから

 

ライタープロフィール

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いちじく舞

フリーライター・編集・企画。小心者だけど羞恥心はあまりない。散らかった経歴を経ています。とうもろこしと大学いもとものづくりが好き。

                             
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