こんにちは!ウイスキーを飲むことが大好きなライターのジョーです。
私とウイスキーの出会いは、村上春樹さんの小説『海辺のカフカ』。作中に出てきた「ジョニーウォーカー 黒ラベル」を飲んでみたのが初体験で、その芳醇な味わいに一発でハマってしまいました。
ただ、そのあと『1Q84』で登場した「カティサーク」を飲んでみたら、あまり美味しく感じられず……。しかし、2〜3年経ってから飲んでみると、同じウイスキーがものすごく美味しく感じられたのです。
出会うタイミングで味の感じ方が変わるって、おもしろいですよね。
▲「ウイスキーって何?」という方はこちらをざっくりご覧ください。
近年は海外でもジャパニーズウイスキーが人気。「響」「山崎」「白州」といった銘柄は、インターナショナル・スピリッツ・チャレンジという国際的な蒸留酒の品評会で毎年のように賞をとっています。特に、「山崎」は人気のあまり品薄で入手困難になっているほど……!
ジャパニーズウイスキーはスーパーやコンビニでも買えるお手ごろ価格なものもありますが、プレミアがついていて決してお安くないものも多いのです。
正直、ウイスキーを飲むこと自体は好きなのですが、「スコッチとバーボンもウイスキーの一種で、スコッチはスコットランド、バーボンはアメリカでしょ?」程度のふわっとした知識しか持ち合わせていません……。
昨今のジャパニーズウイスキーブームも手伝って、一度きちんと勉強したいなと思っていたところ、中野に「ジャパニーズウイスキーを出す立ち飲み屋さん」があると聞きました。
しかも、一番安いもので280円~、オーセンティックなバーで飲むハイボールに負けず劣らずな本格的な一杯を楽しめるらしい。
そこらでは手に入らないようなレアなウイスキーもあるそうで……それを立ち飲みで出していいの?いったいどういうことなの……!?
というわけで、ウイスキーにめちゃくちゃ詳しいバーテンダーさんのいる「泡」へ行ってきました!
お店に入ると、出迎えてくださったのはバーテンダーの佐々木さん。素敵なネクタイにアイロンのきいたベスト、いかにもバーテンダーという出で立ちです。ほ、本当にここは立ち飲みでしょうか……?
佐々木さんはとてもやわらかな物腰で、ウイスキーに関するちょっとした疑問にも笑顔で回答してくれます!
泡の角ハイは、いつもの角ハイと全くの別物だった
お店の壁にずらりと並んだジャパニーズウイスキー。
原料不足で品薄が続いていた「山崎」もあるし、人気の高い「白州」「知多」も置いてあります……!他が安すぎるせいで麻痺してしまいますが、山崎780円って相当お安いのでは……?
下段の「富士山麓」は2019年3月で終売が決定しており、もう市販では手に入らない代物。終売が決定してから業者が買い占めるなど、余計に入手しにくくなっていたのに、この価格って!!!
「旧角」というのは、文字通り角瓶の旧バージョン。2016年にリニューアルしていて、味もかなり変わりました。飲み比べできるというありがたさよ……。
このなかからお酒を選び、ストレート、ロック、水割り、ハイボールなど飲み方を指定するシステム。ジンジャーハイなど他の割り材もお願いできます。今回は店名が「泡」ということで、全てハイボールでいただいてみました!
まずお店の定番人気、角(280円)です。
角のハイボールが280円って、わりとよく見かける値段……ではあるのですが、こちらをご覧あれ。
まずアイスピックで氷を割る!!!
目の前でバーテンダーさんが氷を割ってくれるなんて、バーでは見たことあるけど立ち飲みでは初めて。もちろんこの氷、ナチュラルウォーターから作っているそうです。
この後も淀みのない動作で、グラスの中の氷をかき混ぜ、氷の溶けた水分を捨てます。これも、バーじゃないと見かけない動作ですね。
冷えたグラスにウイスキー、炭酸水を注いで、炭酸が抜けてしまわないようにそっとひと混ぜ。
最後に佐々木さんが取り出したのはレモン。グラスの中にレモンを絞るのではなく、フチにレモンをかけて香りをまとわせています。何この優美な仕草……!この一連の流れを見ているだけでもお酒が美味しくなります。
完成したのがこちら!そうです、湯のみなんです!
和風がコンセプトだから?と思いきや、それだけではないのだとか。
開店時、いろいろなグラスを試した結果、湯のみがベストだと判断したそう。手の温度が伝わりづらく、長い間冷たい状態でハイボールを楽しめるということです。
一口いただいてみると……飲み慣れた角ハイとは全然ちがう!
シュワっとしていて、ひたすらさっぱりした飲み物というイメージだったのですが、この角ハイはまろやかさ、コクがしっかり感じられます。アルコールっぽさはレモンが打ち消してくれていて、ウイスキーの芳醇な香りが立ち上ってくるような……何度も確認しちゃうけど、これが本当に280円でいいのでしょうか……?
日本のウイスキーは素晴らしいと若い人にも知ってほしい
ここまでこだわれるのか……というほど本格的な一杯なのに280円。いったいなぜこんなに安いのでしょうか?
「系列のお店にシガーバーがありまして、そのお店で提供しているものと技術的には同じものになります。
お値段はたしかにかなりお手頃になっていますが、これはウイスキーを楽しむための入り口になれればと思ったため。
今の若い人は、バーの文化になじみがない人も多いので、こうしたお酒の楽しみ方を知るきっかけになればと、このお値段で提供させていただいています」
――なるほど。ウイスキーってよくわからないし、とっつきにくいなぁと思う人でも、ここに来ればそのイメージは覆りそうですね。
ジャパニーズウイスキーをメインでお店を始めようと決めたのはなぜなのでしょうか?
「とにかく日本のウイスキーを知ってほしいという思いですね。ジャパニーズウイスキーは海外からかなり注目されています。山崎などのブランドが原料不足で品薄になっています。世界五大ウイスキーのひとつでもあります。
日本のウイスキーがこんなに優れていて美味しいということを、もっと多くの方に知っていただくためにも『和』をコンセプトとしたジャパニーズウイスキーメインにしました。だから大手ブランド以外のウイスキーも置いています」
こんな素敵なお話を聞いたら、佐々木さんご自身がどんなウイスキーがお好きなのかが気になりました。そこで出していただいたのが「ツインアルプス」(330円)です。
長野県にある「マルス信州蒸溜所」で作っているウイスキーです。名前の由来は、蒸留所のある「中央アルプス」と「南アルプス」の二つの山なのだとか。
「ビスケットやクッキーのような甘い香りがすると思います」
おおお!たしかに!今までに飲んできたハイボールよりも、ずっと香りが甘いです!
まろやかな口当たりにも驚き。 炭酸水で割っているにもかかわらず、ちょっととろみがあるような気もします。
自家燻製のおつまみ
おつまみも何かオススメを!とお願いして、出していただいたのが燻製卵(150円)と、燻製チーズ(300円)です。
半熟加減も完璧……トロットロです!
燻製したことで水分がとんで、濃厚な味わいに。燻製の香りが黄身の旨味も引き立っています。もちろんウイスキーとの相性も抜群!ウイスキーと卵、両方の燻製香ががっちりタッグを組みました。
燻製チーズは温かい状態で出していただけます。チーズがとろりと溶けて、燻製の香りがふわぁ~~~!
ウイスキーに燻製はよく合います。
そのため、こちらのお店でも燻製したメニューを多く取り揃えているんです。玉子とチーズのほか、燻製のたくあんも用意されています。メニューは変更される場合もあるので、訪れる日によっては別の燻製があるかも……!
なんとお店の方がご自身で燻製しているのだとか!店の建物の屋上で、燻製器を使い桜チップで燻製をしているそうです。
ツインアルプスには、炙り牛干し肉(330円)を注文。
こちらの炙り牛干し肉も自家製!
タレに漬け込むところからお店で行っているのだそうです。提供前に、目の前で炙ってくれます。
ビーフジャーキーみたいなものかと思いきや、食感は半レアの牛肉といった感じ。
炙りたてなので牛肉の脂肪がとろけて柔らかい状態に。牛の脂の甘さと、甘い漬けダレの相性がよく、さらに香ばしさが加わることで、ウイスキーにぐっと合うようになります。
変わり種に挑戦してみる
ジャパニーズウイスキーがとても美味しいということがわかったので、中でも少し変わり種のものを飲んでみたい!とお願いして出していただいたのがこちらの「鳥取バーボンバレル」(480円)。
輸入したスコッチ原酒をバーボン樽に入れ、焼酎の仕込みにも使われる伏流水などを使ってブレンドしたウイスキー。バーボン樽は内部をバーナーなどで焦がしているため、香ばしい香りが加わります。
鼻を近づけると、たしかに香ばしい香りが漂ってきます。口に含んでみると、日本の水を使っているからか、口当たりは柔らかく感じます。少し辛味があってスッキリした印象。
おつまみには燻製たくあん(150円)を。もちろんこちらもお店で燻製しています。
たくあんを燻製といえば、いぶりがっこですが、これはまた違った味わい。
甘いたくあんに、桜チップのスモーキーな香りが加わっています。和の漬物なのに、燻製の香りが加わることで、まるで誂えたかのようにウイスキーのおつまみにピッタリになります。
甘みが強いので、この鳥取バーボンバレルのように少し辛いウイスキーに合わせるとさっぱりとして美味しいです。
ここまで飲み比べてきて、ウイスキーの味の違い、奥の深さにびっくりしました。
しかし、こんなに違うからこそ気になるんですが……いったいどうやって自分の好きなウイスキーを見つければいいのでしょうか?
「お店に来ていただいて、甘いのが好き、辛いのが好き、こういう香りが好き、といった具合で伝えていただければ 、お好みに合わせたウイスキーを出しますよ。
バーに来るにはたくさん勉強をしなければならないと思っている方もいらっしゃいますが、飲んでみて自分の好き嫌いさえわかれば十分です。
そこから、もっとウイスキーのことが知りたくなったら、とにかくたくさんの種類を飲んでみるのがオススメです」
「たくさんの種類を飲めば、だんだんと違いも判るようになってくるし、その中で自分がどんな香りや味が好きなのかも把握できるようになってきます。
世界五大ウイスキー(スコッチ、バーボン、アイルランドウイスキー、カナディアンウイスキー、ジャパニーズウイスキー)から、それぞれ代表的なものを飲んでみるのもいいかもしれませんね」
知識がないから……と敬遠するのではなく、実際にいろいろなウイスキーを飲んでみて好き嫌いを探ってみることがまず大切!
今回、泡に来て本当にそう思いました……!
泡でしか飲めないオリジナルな「中ハイ」
このお店ならではのこだわりの逸品を、と最後にお願いしたのが「中ハイII」(400円)。
「中ハイ(泡の中野ハイボール)」というメニューがあり(こちらはウォッカを使ったもの)、それに次ぐメニューが「中ハイII」だそう。「チューハイ」と読んでしまいそうですが、「ナカハイ」が正しい読み方です。
この作り方が、またもやこだわりに満ち溢れていました……!
- お店の方ご自身で、ウイスキーをブレンドする(ハイニッカがベースだそうです)。
- 1を使ってハイボールを作る。
- 別でブレンドしたスモーキー系のウイスキーを、2の上に加える。
▲工程3で加えるスモーキー系のブレンドをしているところ。
これを考案したのは佐々木さん。ウイスキー好きが高じて、自らブレンドまでしてしまうとは……!
一口飲んでみて、その美味しさにびっくりしました。甘さと辛さのバランスが良く、ウイスキーらしいスモーキーな香りがありつつも、めちゃくちゃ飲みやすいのです。
ウイスキーをブレンドと聞くと、複雑そうな印象を受けてしまいますが、口当たりや喉ごしはスッキリ爽快。スムーズに口の中に入ってきてしまう。これは飲みすぎるやつだ……。
おでん(各種100円〜)を合わせてみます。
これがまた、ただのおでんではないんですよ……! 自家製の麻辣醤(これも佐々木さんの手作り)がのっているのです。
柔らかく煮込まれた大根に、お箸でも簡単に崩れるくらい煮込まれた手羽元。ソーセージも麻辣醤によく合いそうです。
口に残るピリッとした刺激がウイスキーに…合う……!鼻を抜ける麻辣醤の香り、それからウイスキーの香りがなんとも言えません。
これだけ食べ飲みして、お会計は2,880円。
本当に驚愕のコスパです……!
まとめ
「立ち飲み処 泡」は、中野駅の北口を出て、ロータリーの道路を渡ってすぐ。
狭い裏路地を通るのですが、こんなところに、こんな雰囲気のあるお店が!?と驚くこと間違いなしです。
驚愕のコスパの良さながら、たしかな技術力のバーテンダーさんによって、ウイスキーの奥深い世界を知ることのできる名店でした
16:00から営業しているので、0次会にもぴったりです。ぜひ立ち寄ってみてくださいね。
紹介したお店