まいど憶良(おくら)です。
色んな意味でインパクト抜群。
もちろん味も、値段も驚きの居酒屋があるという事で、大阪は京橋にやって来ました。
前方に人だかりが見えます・・・。
なんと、これが居酒屋さんなのです。
開店から2分と立っていないのに、
もうお客さんが一杯です。
この後も、続々とお客さんがやって来ました。
平日の3時半とは思えない盛況ぶり。
今日のおすすめは、ボードに書かれています。
トロ鉄火が600円ですって。
誰しもが頼む、人気のメニュー。
おまかせ3点セットは、貝とカニの酢の物・まぐろ・うにいくらのセットなんです。
まぐろは赤身、トロ、大トロから選べます。
赤身が美味しいという話は聞いているので赤身も食べたいし、トロも捨てがたい。
考えたすえ、今回は赤身一人前コース2400円を頼みました。
それからせっかくトロが1050円で食べれるという事なので、それも単品で頼む事とします。
目の前には定休日、営業時間のお知らせの張り紙が。
ふむふむ。 日月木と祝日がお休み。
平日は15時半から21時営業という事ですが、売り切れたら終了。
なるほど。
次の日に食材を回さないお店ではよくあるパターンです。
私はむしろ、新鮮食材の証のような気がして、こういう売り切れごめんのお店の方が好きだったりします。
と、それはいいんですが、ちょっと張り紙の横に気になる光景が。
なんと、すぐ裏手は墓地でした。
京橋駅から4、5分の距離にお墓があるのも知らなかったですが、この決して良いとは言えないシチュエーションの、しかも露天立ち飲み居酒屋で、これだけお客さんが詰めかけるというのには、本当にびっくりです。
と、同時によっぽど料理がおいしいんだろうなぁ、とハードルも期待も上がります。
おまかせ3点セットがスゴすぎる
調理場を覗いてみると、ちょうどトロを切っているところでした。
それが三点セットと同じ皿に、しかも複数のお皿に盛られています。
という事は、私と同じように三点セットプラスとろというオーダーも多いんでしょう。
そこに生うにが登場。
こっ、これは高いやつです。
それを無造作にガサッと半分すくうと・・・
かっぱ巻きの上に、がさっ、どさっ、と乗せていきます。
むむっ、これは私の注文したのとは違うのかも。
だって、ウニの量が半端ではありません。
その上にイクラが。
これまたどさっと、無造作に乗せられます。
貝とカニの酢の物が出来て・・・
はいよっ、おまちっ。
・・・。
と、いう事は、あのウニがあれだけ乗って、2400円って事?
これがおまかせ三点セット2400円、withトロ1050円。
なんとも豪華です。
別角度でもう一度。
ウニのクオリティが、見ただけでもお判りいただけると思います。
このウニ、普通この値段では出てこないですよね。
ビールはセルフサービスで!しかもキンキンです
このお店では、いくら待ってもお酒の注文をとりに来てもらえません。
実はセルフサービスで、好きな物を取りに行くシステムなんです。
しかも、そのビールは氷の中に埋まっているので、
キンキンに冷えています。
瓶ビールの蓋を開ける時って、なんだかテンションが上がってしまいます。
しかも、これが外で、というのがミソ。
開放感のある空間で飲むキンキンに冷えたビール。
これはもうパラダイス状態なくらいにテンションが上がります。
ビールを注ぐ音も心地よく、
カンパーイ!
気になるトロのお味は・・・
醤油をちょんとだけ付けて、醤油面を舌の上に。
ウッ・・・旨ッ!
舌の上でその名の通り、とろりと溶けて広がる脂が舌を覆っていきます。
「旨いっ」と言いつつビールをキューっと飲む。
という感じでなく、口も動かさず、暫くはこのまま幸せな時を感じたい、そんなお味です。
イクラも新鮮そのもの。
一口目は醤油なしで。
うーん、幸せな味。
二口目は醤油にちょんとつけて・・・と思ったらこぼれてしまいました。
赤身も旨いッ!
かなり厚切りで、食べ応えもあり。
これはもう、パクパクと食べて、ビールをキューっ!が旨いっ!
いきなりざわめきが起きる……その正体は?
さてさて、この辺でウニを・・・、と思っていると、突然店全体がざわめき始めました。
何かが始まるようです。
「はーい、ちょっと下がっててねー」と、親父さんの一言とともに、ガスバーナーに点火がされました。これも名物の、マグロ頬肉の炙りです。
豪快、且、豪快という感じ。
マグロが、ぐおぉぉおっ!と、ちょっと恐ろしい音を立てて、炙られていきます。
下から、上から、炎に挟まれたマグロがいい匂いを立ててきました。
すると、思わず目を疑う、恐ろしい光景が・・・
突然、親父さんが何かの液体に手を突っ込みました。
と、驚きの行動に!
ナント、手で炙ったマグロをかき混ぜ始めました!
先ほど手を突っ込んだのは氷水なんです。
って、なんか、炎の中にも手を突っ込んでない?
も、燃えてますやん。
いや、「いえ~っ!」じゃないよっ。
・・・って、よく笑ってられますね。
このパフォーマンスはマグロ頬肉の炙りの注文が溜まったら見られるみたいです。
常連さんなんかはこの動画を撮っていました。
後ろを振り返るとお客さんが満面の笑みを浮かべながら拍手しているという光景が見えたのですが、モザイクだらけの写真になっちゃうのでカットしました。
さて、これを食べようと思っていた矢先のパフォーマンスだったんです。
いよいよ食べるぞ!ウニのお味は・・・。
美しい・・・。
美しい物が嫌いな人がいるのかしら・・・と思ってしまうような、メチャきれいなウニです。
つぶが1つ1つはっきり、しっかりしていて、スーパーで見かけるウニではなく、高級なお寿司屋さんで見るようなウニです。
そのお味は・・・。
甘ぁ~い、とろける旨さ。
ちょっとお安いウニって、溶け出すのを防ぐためにミョウバンに漬けて型崩れを抑える処理をしているので、なんか変な味になってしまう事があるんですが、ここのウニはミョウバン臭さなしです。
ウニ本来の甘みがありました。
ウニの食用となっているところは雄の精巣と雌の卵巣だそうで、雄の方が濃厚な味がすると言われています。
聞くところによると、黄色が強くて粒がはっきりしているのは雄の精巣、オレンジがかっていて、トロっとしているのが雌の卵巣、らしいですが、素人が見極めるのはむつかしいようです。
私に言えることは、とにかく、旨いっ。
という事だけです。
酢の物の貝は、ホタテでした。
酢はあまりきつくなくて、上品な味。
貝ひもも食感がいい。
旨い。
ほんの少しワサビを付けても、美味しい。
貝柱と、カニ身。
ウニの直後にたべるとさすがに美味しさも薄れますが、時間をあけて食べると、繊細な味がとっても美味しい一品です。
カニ身だけをたべると、すごく甘みを感じました。
たまらずビールの追加です。
氷の中からじゃらっという音とともに出てくるキンキンのビール。
スポンッ!と栓を抜いて、再度の乾杯。
アルコールメニューはセルフで持ってきて、席にある瓶の数で清算するシステムです。
マグロ頬肉の炙り到着。
頬の部分と、トロの筋が入った部分を一緒に炙っているので、お得感ありですね。
頬部分は、お肉の感触。
そのまま食べてもいいのですが、ワサビと醤油とか、
七味と醤油なんかがとても合います。
トロ部分はゼラチン質の食感も良し。
うまく火を入れる事で、筋の部分もとっても食べやすく、美味しくなります。
ボリュームもあって、これで600円でいいの?って感じです。
ネギと大葉、トロの方には大葉が合います。
うんまいっ!
そんなとき、またもやざわざわとした雰囲気に。
どうやら、酔ってしまって、ちょっと暴れているお客さんがいる様子。
ざわざわとした雰囲気が広がりそうになったその瞬間、
「あ~、あかん、あかん。みんな、楽しゅうに飲んでるんや」
一番に酔ったお客さんを制したのは親父さんでした。
ちょっと詰め寄ってきたお客さんに、
「な、もう今日はやめとき。こんな感じで飲んでも、毒にはなっても薬にはならん」と、笑顔で応対。
結局それ以上もめる事もなく、お客さんは帰っていきました。
私の席は店の一番端っこだったのでそのお客さんが帰るときの言葉が聞えたのですが、
それが文句なんかではなく、
「そうやなぁ、やっぱり俺らが悪かったなぁ」
というセリフでした。
店を追い出された、腹立つっ!という感じはなく、すぐ反省したお客さんもえらいと思いますが、笑顔一発で解決した親父さんも凄いです。
普通なら、商売の邪魔だとか、他のお客さんに迷惑だ、という止め方になりそうですが、ここで、あなたの毒になるからもうやめておいた方が良いよ、と、そのお客さんを気遣う言葉が出てきたところが響いたんだと思いました。
もう何秒と立たずに、先ほどの出来事について話す人もいなくなり、楽しい雰囲気を一瞬で取り戻したのも流石ですね。
さて、振り向けばトロ鉄火600円。
そのビジュアルに、もの凄く筋が多くて食べにくいのでは。と思いながら食べましたが、心配した筋は残りませんでした。
これが1つ100円っていうのも凄い。
コスパ、凄い事になってます。
うまいっ!
良いものだけを仕入れている…素材へのこだわりがハンパではない
店長さんにお話を聞きました。
憶良 : 平日の昼間から凄い大盛況ですね。
場所も恵まれているとは言えない状況で、これだけ人が押し寄せてきて、しかも待ちが出てるっていうのは凄いと思います。
人気の秘密は素材の良さですか。
店長さん : 素材は確かに、良いものを使っています。中央卸売場や鶴橋から仕入れますが、良い物だけを仕入れている自信はありますね。
憶良 : ウニなんて、めちゃくちゃ美味しかったです。儲けなんて、ほとんど出ないのでは、と思ってしまいます。
店長さん : そうでしょう、美味しいでしょう。今日のウニは1900円で仕入れて1800円で出してますから。
注文が入るほど、赤字になります。あっはっはっ。
憶良 : ええっ、そんなことってあるんですか。
店長さん : どうしても、良い物しか入れたくないんです。
もちろん仕入れ値は一定ではないですが、今日のウニみたいに赤字になるメニューも珍しくはないです。
憶良 : いや、入れたくないって・・・。それは、意地的な物なんですか。
店長さん : そうですね。
ここに来るのを楽しみにして、遠方から来られる方もいます。
そういう人の気持ちを、万一にも裏切れないですからね。
ですから、納得の行くものを仕入れたい、そこは曲げたくないんです。
憶良 : それで、赤字になっても?
店長さん : 信用を失うよりは、赤字の方が良いです。
憶良 : 意地ですね。
店長さん : ポリシーです。
憶良 : サービス精神も凄いですね。
あの、親父さんのパフォーマンスなんて、もはやショーですよね。
店長さん : お客さんが喜んでくれるというのが、やっぱり嬉しいんでしょう。
憶良 : 親父さん、文字通り燃えてましたね。
あれ、本当は熱いですよね?
店長さん : いや、本当に熱いです。
バーナーを持ったままでカメラを向けられて、ニコッと笑ったら、バーナーの炎が手を直撃したりして。ほら、私も。
なんだか嬉しそうに火傷跡を見せる店長さん。
そして、なんだかわからないけれど、ちょっと自慢気。
憶良 : それでも、お客さんが楽しんでくれるなら、という感じですか。
店長さん : そうです。
結局はそこに尽きると思っています。
こんな立地で、こんな店ですが、お客さんが味も、値段も、店の雰囲気も、スタッフとの会話も楽しんでくれたら、また次がありますし、お友達を誘ってくれたりもします。
憶良 : こういうスタイルの居酒屋さんっていうのも、珍しいですよね。
店長さん : そうですね、昔はもっと小さかったんですが、徐々に多くの方が来てくれるようになりました。
憶良 : やっぱりいい物を仕入れているから?
店長さん : いえいえ、旨いもんが安く食べられるだけでは、特にこの大阪では、人は来てくれても、定着してくれません。
どれだけお客さんが楽しんでくれるか、満足してくれるか、いつも考えている結果が、この光景に繋がるんだと思います。
憶良 : 先ほどの、赤字が出ても、信用を失うよりはまし、という考え方ですね。
店長さん : お客さんは、旨いものを知ってるし、お金の大切さも知っている。
だから、お客さんが先生なんです。
憶良 : 先生、ですか。
店長さん : そうです。例えば、このクオリティのイクラだったら、ちょっと仕入れたくないなぁ、でも全くイクラがないというわけにも行かないので、仕入れた。
すると、「今日はイクラがイマイチだったね」とはっきり言ってくださるお客さんもいる。
言ってもらえるのは優しくて、また今度があるという事。
厳しいのは言わずして、二度と来てもらえない、というお客様。
もうこれは、結果をはっきりと出してくれる、だからお客様の反応にはやっぱり敏感になります。
もう、それが分かっていますから、例えばお勧めセットでいいトロが入っていれば、素直に今日はトロがお勧めですよと言いますし、今一つのトロが入っている日は、今日は赤身がお勧めですね、と、安い方のメニューをお勧めします。
せっかく注文いただいても、今日のウニはイマイチですよ、という事もあります。
これはスタッフの誰でもしている事。
仕入れ額がどうとか、コストがかかっているからどうこうという気持ちは二の次です。
その辺は自慢してもいいかなと思いますし、こういうポリシーの店だという所を楽しんでいただければと思います。
是非、お越しください。
お待ちしています。
楽しそうに働くスタッフさんたち
もう一つの特徴は、スタッフが楽しそうに動いている事です。
「色んな世代の方ともお話が出来ますし、忙しいとか、体力的にキツイとかいう事と同時に、働いていて楽しいという実感もあります。
逆に暇な方がしんどいですね。(疲れますの意)」
「営業が終わって、クタクタな状態でも、かたずけしている時が楽しいんですよ。
こういうお店だからこそ、とにかく力を入れて掃除をします。
スタッフの仲もいいし、いい雰囲気があるので、この「とよ」という空間自体が楽しい場所なんだという所が、自然とお客さんにも伝わるんだと思います」
なるほど、空間も味の内ですね。
では、最後に親父さんからも、一言、お客さんにメッセージをお願いします。
親父さん : メッセージ? あらへんあへらん。逆にお客さんから、メッセージを頂きたいんです。より満足度の高い店になるためのお言葉を頂戴出来たら、もうそれがなによりですわ。
なるほど、繁盛店である事に満足せず、こういう姿勢を貫けるというのが強みなんだなぁ、と感じなから、帰途につきました。
あぁ、それにしても、旨かったなぁ。
関西圏以外の知り合いを、一度は連れて行きたいお店にまた一つ出会う事が出来ました。
冒頭でも言いました通り、色んな意味で凄いお店でした。
京橋駅から居酒屋とよまでのルート
初めての人にはちょっとわかりにくい場所という事で、お店までご案内します。
まず、京橋駅の北口を出て商店街に背を向けて進みます。
道沿いに進んで、パチンコ屋さんが見えたらそのままこの道を、まっすぐ進みます。
この辺には立ち飲み屋さんが多く、昼から多くのお客さんがお酒を楽しんでいました。
ちょっと寂しい感じの道になりますが、そのまま道沿いに、右手にくるりと曲がると
この道に出ます。
この人だかりになっている場所が「居酒屋とよ」です!
紹介したお店
居酒屋 とよ
06-6882-5768
[火・水・金]15:30~21:00
[土] 14:30~20:00
定休日月 木曜、日曜、祝祭日
大阪京橋の忘年会おすすめ店
プロフィール
憶良(おくら) : 元ゲームプランナー、元ゲームプロデューサー。
ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。
休日は高速道路を使わずに名古屋から鳥取あたりの温泉に行って浸かり、道中や行先の地元スーパーで珍しい食材を買い込むと例え深夜に帰ったとしても料理する。
その際食べ歩きにも積極的と、食に対してはかなり貪欲。
「美味しいものを食べている時、美味しいものについて話している時に悪いことを考える人はいない。」という持論を持っている。
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