桜の花も名残惜しい、4月10日は酒盗の日。
発酵食品の伝統の味(その歴史はなんと300年!)を現代に伝えたいという願いを込めて、神奈川の総合食品メーカー、しいの食品により制定されました。
日付は『し(4)ゅとう(10)』の語呂合わせです。
ちなみにみなさん、酒盗ってなんだかご存知ですか?
お酒好きの方には、「当たり前じゃないか」と怒られるかもしれませんね。
かなりの酒好きを自負している筆者ですが、恥ずかしながらこの取材が決まるまで「酒盗」と「塩辛」の区別がついていませんでした……。
私のような酒盗初心者の方のために簡単に説明すると、一匹の魚から少量しか取れない胃と腸の部分を、1年間じっくり熟成したものが「酒盗」。つまり塩辛とは「使用している部位」と「熟成期間」が違うという訳です。
その昔、あるお殿様が「酒を盗みたいほど箸が進む」と言ったことがネーミングの由来ということもあり、酒盗には「お酒のお供」や「珍味」というイメージが定着しています。
そんな中、秋葉原の「駿河屋賀兵衛」さんは、酒盗をより幅広いお客様に受け入れられやすいものにするべく、様々なメニューを展開しているとのこと。「酒盗の日」にかこつけ、早速お邪魔してきました。
お店は、「旧万世橋駅」の歴史的な高架橋をリノベーションして2013年にオープンした商業施設、「マーチエキュート神田万世橋」の一角にあります。
ほのかにライトアップされた歴史的な高架橋。夕暮れのノスタルジックな雰囲気が、美味しいお酒と酒盗への期待を高めます。
まだ16時にもかかわらず、店内には既にたくさんのお客さんの姿が見えます。
見てください! この塩辛のラインナップを。全60種。この看板を一度見れば、通りかかった人はフラフラと店内に吸い込まれていくことでしょう。
16時までのランチメニューも充実しています。よく見ると、「お昼でも塩辛やお酒のご注文もできます!」なんて親切な注意書きも。
カウンターからの眺めも、酒好きにはたまりません!
お寿司もあるんですね!
個人的には、「隠し酒」が気になって仕方がありません。
店内には「厳選30種」のメニュー表。60種から選択肢は半分になったものの、やっぱり選びきれません。
苦し紛れに「おまかせ塩辛5点・大名」をチョイス。優柔不断の筆者は、店長さんに完全丸投げし、酒盗メニューを中心におススメを持ってきてもらうことにしました。
待つこと数分……。
おおー!
見た目も美しい、塩辛たちの登場です。
「駿河屋賀兵衛」は静岡に本社を構えており、素材も静岡の新鮮な魚を主に使用しているとのこと。数ヶ月ごとにメニューを更新する中、「いま」店長さんイチオシの5点だそうです。
早速実食…….と行きたいところですが、酒好きを豪語している身としては、やっぱり日本酒と合わせたい。
お店には40種類以上の日本酒を常備しているとのことで、さらに店長さんにワガママを言い、それぞれの塩辛に合う日本酒も持ってきてもらいました!
なんて豪華な絵なのでしょう……。
まだ食べていないのに、ここで塩辛と日本酒に埋もれて死ねたら幸せなんじゃないかと思ってしまいます。
さて、見とれてばかりはいられないので、右からひとつひとつ紹介していきます!
まずは、イカとサメの軟骨にカツオの酒盗と紀州産の梅を加えた、「骨春雪(こっこうせつ)」。居酒屋メニューでよく出てくる梅水晶にちょっと似ていますが、あそこまで梅の味がきつくないので酒盗の旨みがしっかり出ています。個人的には梅水晶のコリコリ感が少し苦手なので、イカが加わって食感が少しマイルドになっているのが嬉しい。これは女性に人気が出そう!
合わせる日本酒は、黒いラベルが粋な「王祿 丈径(おうろく たけみち)」。適度な酸と辛みが「骨春雪」とマッチして、あっという間に飲んでしまいました。
次は、駿河屋賀兵衛一番人気の塩辛、「賀兵衛 虎白(こはく)」。白造りのためその食感はまろやかで、塩辛独特の塩気がほとんどありません。店長さんにうかがうと、独自製法で塩分を2~3%にまで抑えているとのこと! 毎日の晩酌をやめられないお父さん、塩分を気にせずいくらでも食べられますね。
合わせるのは、究極の食中酒といわれる、「喜久酔(きくよい)」。虎白の上品な旨みを邪魔しません。
3つ目は、取材日の4月5日に販売を開始したばかりの新製品、「楽盃(がくはい)」。その名の通り、お酒好きの人にお酒をどんどん飲んでほしい、という願いをこめて造られた塩辛です。カツオの酒盗をイカでしめて熟成させた、濃厚な味わい。合わせる日本酒は「不老泉(ふろうせん)」。熱燗でつけるのがお勧めです。
すこしほろ酔いになってきた4つ目は、眠気を吹き飛ばすほど辛い「焔(ほむら)」。見た目からして辛そうですが、ホントに辛いです!付け合せのワカメがもっとほしい!と思ってしまいました。焔は、白いご飯と一緒に食すのがお勧めとのこと。日本酒とどうしても合わせたい場合は、辛さに負けない濃厚な日本酒を熱燗でどうぞ。今回合わせたのは、しっかり熟成された「田从(たびと)」です。
色からして日本酒の熟成感が伝わりますね!
最後はちょっと趣向を変えて、「つぶ貝酒盗ガーリック」。北海道の上質なつぶ貝を使用し、カツオの酒盗の旨みを惜しみなく引き出したもの。ガーリックと酒盗が、喧嘩せず素晴らしいマリアージュを提供してくれています。さっぱりした味わいで、ワインやビールにも合いそう。合わせる日本酒は、フルーティな「美和桜(みわざくら)」。こちらのお酒は温まると旨みが半減してしまうようなので、冷でどうぞ。
もっといろいろ試してみたいのですが、酔っぱらってきてしまったのでここで終了。今度はプライベートで来たいと思います。
今回の取材にあたって色々教えて頂いた、ハンサムな店長の渡邊さん。
「酒盗の日をきっかけに、塩辛の新しい感性に触れてみてください。塩辛や酒盗が苦手な人にも一度来店して頂きたいです」とメッセージをいただきました。
「予算を仰っていただければ、それに応じて臨機応変にメニューをカスタマイズできます」とのことなので、オーダーに迷ったら何でも相談してみてください。
また、秋葉原CHABARA内には、「塩辛屋賀兵衛」があり、駿河屋賀兵衛の塩辛を購入することができます。
こんな感じで、瓶詰め状態で販売されています。
今回は食べられなかったのですが、酒盗を使った「熟成かつおバーニャカウダ」や駿河湾でとれたしらすを贅沢に使った「生しらすの塩辛」もお薦めだそうですよ!
遠方にお住まいの方、Web上でも購入は可能なので、ご安心ください。
「お酒の席って色々あるから面白いのよね。お酒を飲んで、くだを巻いて、そしてまた明日から頑張れるの」
隣のカウンターのお客様のこの一言が、とても印象に残った筆者なのでした。
美味しい料理とホスピタリティー溢れる接客に、明日への元気をもらえる場所、駿河屋賀兵衛。お酒が好きなあなたも、そうでない方も「酒盗の日」をきっかけに是非お立ち寄ください!
駿河屋賀兵衛
住所:東京都千代田区神田須田町1-25-4 マーチエキュート神田万世橋内 S9区画
電話:03-5295-0310
塩辛屋賀兵衛
住所:東京都千代田区神田錬塀街8-2 秋葉原CHABARA内
「人と料理の交差点」をテーマに、単なる料理の技術を学んでいただくための教室ではなく、お友達や家族に笑顔を届けてもらえるようなレッスンを展開中。笑顔と歓喜溢れるレッスンには、毎回多くの人が集まる。
HP: https://www.facebook.com/23fanDecookrentoLiaoLinoJiaoChaDian?pnref=lhc
文:23番地cook専属ライター 佐藤 結衣(さとう ゆい)
好奇心旺盛なアラサー女子。好き嫌いと二日酔い経験がないことが自慢です。接客業で培った人見知りしない性格を武器に、食に関するみんなの「知りたい」をカタチにしていきます。