みなさんは、「地獄」というものの存在を信じていらっしゃるだろうか・・・
釜ゆで・・・
串刺し・・・
阿鼻叫喚・・・
そんなものはおとぎ話だと笑うかもしれない。
しかし私はタイで本物の地獄を目の当たりにした。
釜ゆで、串刺し、阿鼻叫喚…地獄絵図がそのまま立体化したような世界。
ここはバンコク中心部から車でおよそ2時間半のところにある「地獄寺(ワット・パイローンウア)」。『悪事を働けば死後酷い仕打ちが待っている』ということを子供にも分かりやすく伝えるために、このようなオブジェを作って見せているのだという。
肉体を芋虫に食い尽くされて白骨化?
地獄の門番
しかし地獄寺に来ている子どもたちの様子を見るにつけ、恐ろしがっている子はひとりもおらず、むしろキャッキャキャッキャと喜んでいる。グロテスクの中にもポップさが見受けられるオブジェはどれも面白く、珍スポットマニアたちの格好の餌食と化している感さえある。
観光地化された地獄など生ぬるい。
私は更なる「地獄」を求めて日本へと舞い戻った。何でも、日本では10月が終わりに近づくとモンスターの格好をした男女が夜な夜な現れ、街の風紀を乱しているのだという。
中でも、「ギロッポン」にある「倶楽部」というところにその妖怪たちは集うという噂を聞いた。私は友人の女一名を引き連れてその「倶楽部」に乗り込むことにした。
店の入り口には黒服を着た地獄の門番たちが目をぎらつかせている。
地獄の通行証(顔写真つき身分証明書) を見せて中へ入る。
ドレスコードとして魔女の格好をしてきたつもりなのだが、「倶楽部」内では少し浮いていたかもしれない。
ミイラに悪魔、血まみれナースや呪われた花嫁など、噂通りに妖怪たちが集っている。
けたたましい騒音、眩しい閃光。 人々は音に合わせて激しく体を揺らしている。
気づいたら一緒に来た友人が男にナンパされていた。周りを見渡すとダンスフロアにいる男も女も浮かれ騒いで出会いまくっている。精神的苦痛。-まさに地獄だ。
暇「あのぅ・・・」
「ちっちゃな魔女さん、こんばんは。ホウキはどこに置いてきたの?」
暇「ホウキは無いの。だってダンスの邪魔になるでしょう?」
「それもそうだ。ねえ、お酒でも飲まない?」
暇「ちっちゃいお酒・・・」
「こんなかわいいお酒飲んだことない・・・」
「はっはっは・・・」
「テキーラだよ、飲んだことなかったの?」
「味わうんじゃなくて、一気に飲み干すんだ。その後にレモンをかじるのがテキーラの飲み方だよ」
その後も男の子に促されるままに3杯、4杯とテキーラを流し込んでいると、色々なことがどうでもよくなってきた。周囲がぼんやりしてくる。
「お化けも人間も、みんなで踊れば関係ないよプチョヘンザ!」
テキーラのおかげで、コスプレに身を包んだパーティーピーポーのこともムカつかなくなってきた。皆で踊ったり歌ったりしているうちに、だんだん『この人達はみんな自分の仲間なんじゃないか』という感覚に陥ってきた。
「楽しくなってきた。楽しくなってきたよ」
「・・・ちっちゃな魔女さん、ボクはキミのトンボになれるかな?」
「え、なにそれどういう意味?」
「抜けださない?・・・ふたりで」
日本の「倶楽部」は地獄ではなかった。「パラダイス」に近かった。
ただ、ここへ来るメガネ男子は私の理想とするメガネ男子ではない。慣れないお酒を何杯も飲ませて、2人でGo to heavenしようとするタイプのメガネ男子だ。
我々が本当に気を付けるべきはハロウィンに浮かれ騒ぐパーティー・ピーポーではなく、天使の顔した悪魔なのである・・・
今回の判定:引き分け。
暇な女子大生(id:aku_soshiki)
「暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ」を書いている女子大生もといフリーライター。好きな男性のタイプは洗濯物の畳み方が几帳面そうな人で、好きな食べ物はエビチリです。