池袋は今日も騒がしい。
おれの名前は金田一まじめ。
池袋西口公園、通称「池袋ウエストゲートパーク」からこうして街の様子を毎日眺めている。
この街は一体いつになれば静かになるのだろうか・・・?
ぼんやりと池袋の未来を憂いていたその時、携帯電話に着信が入った。
「北口のバーで事件だ」
知人からの物騒な連絡を聞きつけて、すぐに北口へと走る。
「やれやれ・・・本当にこの街は・・・」
急いでビルの9階に上がり、件のバーの重い扉を開く。
「こ・・・これは・・・!!!」
若い女がとても恥ずかしい格好で倒れている。
「い…いったい何があったんだ!?」
「この子は常連で、『リカ』という名前の女子大生です。彼女はいつものように20時にここへ来て、いつものようにお酒を飲んでいました。…ところが、私がちょっと外に出ているスキに何者かに襲われたようで。戻ってきたら、こんなことに…」
「警察は呼んだのか?」
「さっき110番通報しました」
「この女、頭に殴られたような跡があるな…」
「ところであなたは?」
「俺が一体何者なのかって?」
「なーに、ただの探偵さ。通りすがりのね」
「た…探偵…!?初めて見ました。本当にいたんですね…」
「他に客は何人いた?凶器が落ちていなかったか?」
「そういえば近くにビール瓶が転がっていました・・・」
「よし、指紋を調べてみよう。ここに指紋採取キットがある」
「指紋のついていそうな箇所にこうやってアルミパウダーをふるうんだ」
「そうするとほら、くっきりと指紋が浮かび上がってくる」
「ほんとうだ・・・!刑事ドラマみたいですね」
「随分のん気だな」
「しかし、おかしいな・・・このビール瓶には、この女の指紋とバーテンの指紋しかついていない・・・」
「リカさんを殴った犯人は、手袋をつけていたということでしょうか?」
「・・・・」
「難しい事件になりそうね」
「リカさん!?」
「お、お前・・・生きていたのか!!!」
「あたしはいつものように20時頃ここへ来たの。最近恋人と色々あって・・・。とにかく、誰かに話を聞いてもらいたかったから」
「あたしは店に来てまず、『マントゥール』というお酒を飲んだわ」
「次に『プログレス』というメロンのお酒を頼んだ」
「それからこの店の名物であるワニの肉を食べて・・・知ってる? ワニの肉ってコラーゲンがたっぷりなのよ」
「コラーゲンのことはどうだっていい」
「松田優作似の男の子とずうっと話し込んでいたの・・・」
「それから後の記憶は全く無いわ。目が覚めたらあたしは床に倒れていた」
「『マントゥール』、『プログレス』、『ワニ』、『松田優作』・・・松田優作似の男とは一体何を話したんだ?」
「恋人のグチよ。ひょんなことがきっかけでその人、ストーカーになってしまったの。何度もケータイに電話してきたり、あたしの部屋に盗聴器をしかけようとしたり・・・」
「かなり悪質ですね・・・」
「その男と一緒にこの店に来たことはあるか?」
「あるわ」
「それならこの店にも、盗聴器が仕掛けられている可能性がある・・・」
「何ですって・・・!?」
「調べてみよう、この盗聴器発見機で」
「うちに盗聴器なんて、そんなまさか…あるわけない…」
「貸して。あたしが調べるわ」
「発見機が盗聴器に近づくと、『ピー』という音が出るんだ」
「松田優作の帽子の中には無いみたいね」
「テーブルの下も反応ナシか・・・」
「ピー」
「あっ!反応してる・・・!」
「こんなところに盗聴器・・・」
「誰がいつこの店にやってくるか筒抜けってわけですか・・・」
「こわい・・・本当にこわいわ・・・狂ってる」
「うーむ・・」
探偵はいつものように腕組みし、頭をひねった。
「マントゥール、プログレス、ワニ、松田優作、ビール瓶、盗聴器...」
「探偵さん・・・?」
「…みなさん静粛に」
「犯人が・・・分かったのですか・・・?!」
「時にバーテンさん、あなたさっき、『警察は呼んだ』って言いましたよね」
「え、ええ・・・」
「おかしいと思いませんか。あれから30分以上経っているのに、まだ到着していないなんて」
「き…きっと渋滞しているから、パトカーが動かないんですよ」
「今日、僕は西口公園からここまで走って来たんですがね。道路はいつにもまして空いていましたよ。それに警察署からこのバーまでは車で来る距離でもない。自転車で十分だ」
「・・・!」
「『マントゥール』はフランス語で『嘘つき』…ワニは『危険』の象徴です」
「嘘つき(マントゥ―ル)の進行役(プログレス)は危険(ワニ)。
進行役ってのはつまり、あんたのことじゃないのかい、バーテンダーさん」
・・・!
・・・!
あんたは多分、このリカって女に二股をかけられていたんだろう?
リカのもう一人の恋人の妄執がどんどんエスカレートしていくので、怖くなったリカはあんたに別れを告げにきた。
そう、俺がここへ来る前、リカはあんたに別れ話をしていたんだよ。
それに激昂したあんたはビール瓶でリカを殴った。
ずばり、犯人はお前だ!バーテンダー!
「ふ・・・ふふふ・・・」
「ふははははは!」
「なんだ・・・何がおかしい!?」
「いかにも素人考えの稚拙な推理だな、金田一まじめくん」
「お、俺の名前を何故知っている!?」
「それはな・・・」
「俺が探偵だからだよ」
「お、お前が探偵!?いったい何を言ってるんだ?」
「近頃『探偵』を騙っている男が西口公園をうろついているとのタレコミがあってな。こうして事件を装ってそいつを呼び出そうと思ったのさ。常連のリカには協力してもらった」
「…ごめんね」
「俺が…偽物の探偵だって言うのか? 俺は、金田一家の末裔だぞ!」
「お前は金田一家の人間なんかじゃない。お前の本当の名前は『大野ヒカル』なんだよ。東響大学法学部の四回生だ。お前は司法試験に落ちたショックから現実逃避するために読んだ『名探偵コナン』と『金田一少年の事件簿』にハマり過ぎた結果、自分自身を探偵だと思い込んでいるだけだよ」
「う…うそだ…!」
「お前の母親が、お前の部屋から漫画とアニメDVD全巻が見つかったと教えてくれた」
「母さん・・・!」
「探偵業を始めるには、探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)により、都道府県公安委員会に『届出』をする必要があるんだ。お前のようにコナン気取りの偽物が出回るのは、本物の探偵にとっても、世の中にとっても良くないんだよ」
そう、ここ「探偵カフェ&バーPROGRESS」は、現役の探偵さんが働いているという世にも珍しいお店です。
オールバックがキマっている遊佐さんも、
看板娘の千花さんも、本物の探偵さんなのです。
千花さんは探偵になる前、世界一周をしていたらしく、4か国語が話せるとのこと。
金田一まじめくんやリカちゃんがやっていた「指紋採取」や「盗聴器発見」も、このお店で体験できるよ! 今回は御厚意で、勝手にいろんなことをやらせてもらいました。
ちなみに浮気調査も出来ます(この薬品を男性の下着に付ける)
探偵が使うアヤシイ道具も見ることが出来る。コナンマニアのアナタも、盗撮マニアのアナタも満足できること間違いなし。
探偵さんのリアルな話も聴けちゃうぞ。
- 探偵映画や漫画にあるような派手なことは殆どやらない
- 「探偵学校」に入って探偵になるのが一般的
- 長時間トイレに行けないことがあるのでオムツをつける探偵もいる
- 女性の探偵は重宝される(男2人で張り込みしていると怪しまれるが、男女ならカップルだと思ってもらえる)
- 合コンで「探偵やってる」と言うとモテる?
折角なので現役の探偵さんに逆ナンを試みてみる。
「探偵さん、暇な女子大生は好きですか?」
「本当に暇を持て余している女子大生なら歓迎するけど、見たところ貴女は女子大生でも暇でも無さそうだ」
『ぎく…さすがに鋭い』
「まあ、貴女が本当に暇な女子大生だったとしても御免ですけどね」
「え…じゃあどういう人がタイプなんですか」
「石原さとみ」
一見アブノーマルな探偵さんでも、女性の好みは超ノーマルでした。
探偵カフェ&バーPROGRESS
住所:東京都豊島区池袋2-47-12 第2絆ビル9F
電話:03-6698-2263
ちなみに、この日の翌日はこんなことやってました。
【暇な女子大生】暇だからソロ活でボクシングジムの無料体験に行ってみた - ソロ活 / レッツエンジョイ東京
暇な女子大生(id:aku_soshiki)
「暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ」を書いている女子大生もといフリーライター。好きな男性のタイプは洗濯物の畳み方が几帳面そうな人で、好きな食べ物はエビチリです。
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