ビール好きなら「ピルスナービール」について語れるよね?四谷のチェコ料理店で異次元の幸せディナーを味わってきた

ピルスナーウルケル誕生当時の味をそのまま味わえるようにと、樽ごと専用冷蔵庫で冷やしていたり、低温コンテナで空輸していたり、提供時の温度管理を徹底していたり、店長さんのこだわりっぷりがハンパではありません。このこだわりのピルスナーウルケルを、炭酸が長持ちする「ナ・ドヴァクラット」、喉ごしが良くチェコでは最もポピュラーな「ハラディンカ」、クリーミーで甘みのある泡を味わう「ミルコ」という3種類の注ぎ方で飲めますよ。日本ではなかない食べられない本格的なチェコ料理も魅力。ソーセージのピクルスや家庭料理のじゃがいもパンケーキ、生ビールを贅沢に使ったシチューなどビールが進むフードが揃っています。

ビール好きなら「ピルスナービール」について語れるよね?四谷のチェコ料理店で異次元の幸せディナーを味わってきた

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海外旅行、それは庶民にとって贅沢な憧れの存在。知的好奇心をくすぐり非日常感まで与えてくれる、最高の娯楽です。

 

貧困フリーライターの筆者(シマヅ)は、到底手の出せないそれに憧れるあまり、家で発泡酒を片手に、薄暗い部屋でYouTubeの旅行系動画を見ながら「羨ましい……金さえあれば……金さえあれば私も海外に……」などとブツブツ言う日常を送っている。

 

なんて惨めなんだ! 私も異国を体験したい! 発泡酒じゃなく美味しいビールも飲みたい! 美味しいものも食べたい! でもやっぱり大金はない! どうすればいいんですかーーーー!!!

 

というようなときにオススメなのが、遠い国の料理を出すお店。よく知った街にあるお店でも、中に入れば日本とはちょっと違った空気を味わえるのだ。

 

筆者は大のビール好き。ビールといえばドイツだけど、なんとなく想像がついてしまうし、もう少し未知の国がいいな。じゃあ、チェコ料理のお店なんかどうだろう? チェコは大好きな映画監督の出身国なので昔から興味があった。そしてなにより、ピルスナービールの出身地でもある! よし決まりだ! チェコのお店に行こう!

 

と思って見つけ出したのが、東京四谷三丁目にある「だあしゑんか(ダーシェンカ)」さん。チェコビールの樽生にもこだわりがあるとのことで、ここは行くしかない!

 

雰囲気は完全にチェコです(行ったことないけど)

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都営地下鉄曙橋駅、あるいは東京メトロ四谷三丁目駅から歩いて5分ほどのところにある小さなビル、その地下にチェコ料理店「だあしゑんか」はある。酒のみの聖地・四谷荒木町エリアということもあって、期待が高まる。

 

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日本……というか東京そのものという感じの路地から階段を下りて店に入ると……そこはまさしくチェコ! 行ったことないけど、これこそチェコ!

 

と盛り上がってしまうくらい、東ヨーロッパの田舎の民家を思わせる温かな雰囲気がみごとに作られているのである。チェコ語の古い本が並び、テーブルにはオールドな柄のクロスがかけられ、イスには東欧の女性たちが手作りしたような刺繍のクッションが置かれている。内装は木が主体、もうそこは東ヨーロッパそのものだ。行ったことないけど。

 

ビールへの情熱がすごい店長

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店長の高野さんがチェコ料理のお店をやろうと思ったのは、ずばり「ビールが好きだから」だそう。チェコ料理はかつて青山にあったチェコ料理の名店で学んだとのこと。

 

●高野さん
「うちのタップはピルスナーの元祖『ピルスナーウルケル』です。ピルスナー誕生当時の味がそのまま味わえるレシピのものを扱っています」

  

ピルスナーウルケルを出すうえでのこだわりは何かあるんですか?

 

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●高野さん
「タップ用ビール樽というのは、ふつうは常温で管理するもの。これをサーバで冷却して出す、というのが普通。でもうちでは、樽ごと専用冷蔵庫に入れて冷やしています。もちろん空輸も低温コンテナで。ここまでする店はそんなには多くないはず、ちょっと自慢です。

そして、グラスに注いでお出しする温度は6℃くらい。ちょっと高めだけど、あまり冷やしすぎると麦の香りを味わえないので」

 

樽は冷やしているけれど、わざと高めの温度で出す!? これはすごいこだわりっぷりだ……。そのビール、一体どんな味がするんだろう?

 

注ぎ方でビールの味が変わる……チェコの技?

さっそく、こだわりのビール(ピルスナーウルケル)を頼もう。あら、注ぎ方を選べるみたい。

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ビールの注ぎ方で味が変わる……おやおや? 筆者には聞き覚えのあるお話(後述)。

 

●高野さん
「ナ・ドヴァクラット、ハラディンカ、ミルコの3種類。それぞれ、『ストレートに注ぐ』『炭酸を抜きめに注ぐ』『泡を注ぐ』感じ。これはピルスナーウルケルのメーカー自身がオススメしていて、指南書もあるんです」

 

以前筆者が取材した、中野銀座の「注ぎ方でビールの味が変わる」っていうお店、ルーツはピルスナーウルケルの指南なのかな。でも、その2店の「ビールは宝物」といった雰囲気とは違って、このお店ではもっとずっと親しみやすさを覚える。

 

まず「ナ・ドヴァクラット」を注文。 

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おー! ピルスナーの元祖、初めて飲んだけど美味しい! 麦の香りがとっても美しくて香ばしくて、ホップの苦味もビシッとしていて最高!

キンキンに冷えた爽快なビールとは違い、適切な温度がピルスナーの旨味をゆったりと味わわせてくれる!

 

では次、「ハラディンカ」。チェコで最もポピュラーな飲み方らしい。 

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……わーーーこれ、ものすっごくスムーズで飲みやすい! これこれ! 私これ気に入りました! おかわりお願いします!

 

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●高野さん
「ハラディンカという言葉がまさに『スムーズ』といった意味なんですよ。でもこれ、失敗すると単なる気の抜けたビールになっちゃう。あと泡が多くなるから、このあいだチェコ人に『少ないよ!』って怒られた。この、ピルスナーウルケル専用グラスの線までちゃんと注いでるのにね」

 

あははは! いいなー、たぶん現地の人たちはそういうやり取りも楽しんでるんだろうな。

 

フードは見慣れないけど激ウマなものだらけ

 「ビールが好きだからチェコ料理店を始めたんです」とさきほど高野さんは言っていた。え、ってことは、料理にはそんなに力を入れていないのかな……? と思いググってみたら、このお店、料理の評価もめちゃめちゃ高いじゃないの!

 

●高野さん
「チェコの料理はドイツや東ヨーロッパの影響を受けているものが多く、かつ内陸国なので、肉と野菜を多用します。そこにハーブをしっかり使うことが特徴で、とくにマジョラム(オレガノに似たハーブの一種)の使い方はほかに見られない要素だと思います」

 

うーん、正直あんまり想像がつかない感じ。というかまずは、ピルスナーウルケルによく合う面白いおつまみってありません?

 

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●高野さん
ソーセージのピクルスかな。文字通りソーセージを酢漬けにしたものなんだけど、これは自宅ではあまり作らない、居酒屋メニューっていうところですね」

 

ソーセージのピクルス……聞き覚えがある。以前、チェコの隣国・スロバキアの女子にインタビューしたときに聞いたやつだ。そのときは食べられなかったけど。

 

●シマヅ
「それってすごく不吉な名前のやつじゃなかったでしたっけ」

 

●高野さん
「そうそう、ウトペネツっていうんだけど、直訳すると『溺れちゃった人』、ぶっちゃけ『水〇体』っていう名前なんです」

 

●シマヅ
「うへーなんでそんな名前にするんだろう?」

 

●高野さん
「漬けてるところがそんな感じだからじゃないかな。あ、漬けてるとこ見てみます?」

 

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お、おう、野菜にからんでマリネ液に浮かぶソーセージさんが何となく「それ」っぽいですね……ていうかそう言われてから見るとそうとしか見えません! 食欲落ちます!

 

●高野さん
「それじゃ実際にどうぞ」

 

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おっ、中に自家製ピクルスをはさんである。見た目的には、ちょっといいオードブル。

 

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いただいてみよう……わ、これは面白い! ものすごくしっとりしたソーセージがピクルス味になっているという、まんまじゃないかよって感想が出るお味。食感は魚肉ソーセージに近いかも。そこはかとなく素朴、東ヨーロッパの田舎風景が目に浮かぶ味。ピルスナーウルケルとは……ものすごく合う! 

 

お好み焼きっぽい「ブランボラーク」

チェコの代表的な食べ物ってどんなものがあります?

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高野さん「よく家庭で作られているのが、ブランボラーク。じゃがいもパンケーキ、あるいはお好み焼きといったところかな。じゃがいも小麦粉、ニンニクを中心に丸く成形して揚げるように焼いたものです」

 

メニューにはいろいろな味のブランボラークがあるようだが、ここはいちばんシンプルなプレーン味のものを食べてみよう。

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待つことしばし、出てきたブランボラークは……けっこうでっかい。Lサイズのピザくらいある。皿の横には、タルタルソースがついています。

 

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いただいてみると、かなりハーブ(たぶんマジョラム)の香りが強く、ほかのどこでも味わったことのない味と香り。パンケーキというよりはお好み焼きを思わせる食感と味だ。そのままだとまさしく主食っぽい感じで、おつまみとしてはタルタルをつけるとベストマッチ!

 

●高野さん
「チェコの人はタルタルつけないんですよ。これはうちのオリジナル」

 

●シマヅ
「ええ……」

 

映画で見た謎の食べ物「クネドリーキ」と看板の「グラーシュ」

チェコ料理紹介、まだまだ続きます。

 

●シマヅ
「そうそう、思い出した! チェコの映画で、人々が肉まんみたいな? パンみたいな? そんな謎の白いカタマリを食べていたんですが、あれってなんでしょう?」

 

●高野さん
「たぶん、チェコの人たちが主食っぽく食べる『クネドリーキ』ですね。よくこねて発酵させたパン生地を沸騰したお湯に入れて作る、いってみれば『ゆでパン』的なものです。これはチェコ独特のものなので、ぜひ食べてみてください。うちではグラーシュなどのつけあわせとして出してます」

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グラーシュ?

チェコを代表する料理であり、そしてこのお店の看板メニュー、それがグラーシュ。って、どういうものなんですか? 

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●高野さん
「牛肉のシチュー的なものです。牛肉をパプリカビールでやわらかくなるまで長い時間煮込んで作ります」

 

●シマヅ
「そんなの絶対うまいでしょ……あっ、もしかして煮込むのに使うビールって?」

 

●高野さん
「はい、ピルスナーウルケルです

 

●シマヅ
「わーーーなかなか飲めないタップのピルスナーウルケルで煮込んだお肉! それは! うまい! に違いない!」

 

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さあ、筆者あこがれのクネドリーキがついたグラーシュ、いただきます! さっきのブランボラークもそうだけど、ここの料理は1人前がでっかい!なのでハーフサイズで。

 

グラーシュは、ものすごく濃いソースに、よく煮られたお肉が入っているというルックス。高級店のビーフシチューを思わせる。

 

シチューのような濃いブラウンのソースがなんといっても、とても美味しい。

濃厚、といっても脂っぽいわけではなく、むしろ意外とあっさりしている。強いとろみはパプリカなのだろうか。そして、肉とビールの旨味があとから広がってくる。たぶんマジョラム、あまりなじみのないハーブの香りも。すごく美味しい、食べたことのない味。

 

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そしてお肉。相当やわらかくなっていて、ものすごく美味しい。

 

●高野さん
「もともとは、食べられないと思われていた余った部位の肉をなんとかおいしく食べたいと、ビールでしっかり煮込んでやわらかくしたものなんですよ」

 

これは作るの大変そうだ……。

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あ、そうだそうだ、あこがれのクネドリーキ! ソースをたっぷりからませて食べると……

ふんわり! もっちり! そしてソースの旨味がたっぷり! あああああこれは美味しいわ……! ビール! ビールがほしい!

 

まとめ

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世界のおいしい料理というものはほとんど食べてきた気がしてたけど、チェコ料理は久しぶりの「めちゃめちゃ美味しい、知らない味」だった。

ビールは、マスターがこだわっているだけあって最高の風味。でも、そこは良い意味での田舎なのか、どことなくなつかしいような、暖かいような雰囲気がいつもある。

 

それにしても、取材とはいえ……女子ひとりだとビールを飲みつつ何品も頼むのはつらい。メニューを見た段階ではお料理の値段、「ちょいと高めかな? 珍しい料理だからしかたないかな」と思ったけど、なんのことはない、それにふさわしい量が出てくるのだ。だからどちらかというとかなり安い。とくにグラーシュ。

 

●シマヅ
「チェコの人ってたくさん食べるんですか?」

 

●高野さん
「よくチェコの人が来てくれるんだけど、やっぱりたくさん食べる印象です。グラーシュも今回お出ししたハーフサイズではだめで、フルサイズのじゃないとだめみたい」

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そのあたりも含めて、現地感がしっかり再現されているお店だ。取材のあとは、映画や絵本の話、食文化の話など、いろいろと話をさせてもらった。なんという居心地のいい場所なのだろう。最高のビールと最高の料理、知らない世界への冒険、あったかい人々がそこにあった。

 

ちらかった部屋で干からびそうだった自分が、この店のビールと料理ですっかりよみがえった。ありがとう、だあしゑんかさん! この日の体験について「お金をかけなくても海外旅行気分が味わえる最高のものだった」と、家に帰り夫に報告したら「でも、パスポートは今のうちにとっておいた方がいいよ。顔写真、何年も変更できないから」と女子的には何かムカつく助言をされ再び心が干からびたので、近々再訪したいと思う。

 

紹介したお店

だあしゑんか
住所:東京新宿区舟町5−25−B1F TSI舟町ビル
TEL:03-5269-6151
お店のTwitterアカウント:https://twitter.com/bar_dasenka

 

著者プロフィール

                             
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