ビールの味はグラスを変えるだけで簡単に変えられる!プロが教えるビールを美味しくするテクニックとは

ビールは温度や注ぎ方によっても味が変わりますが、使うグラスによっても味の感じ方が変わります。そこで今回は、サントリービール株式会社の醸造家・秀島誠吾さんにグラスによる味の感じ方の違いについて教えてもらいました。秀島さんは自宅に200種類以上のビールグラスコレクションを持っているほどのビール&ビールグラス好き。ガラス製のもの、錫製のもの、陶器製のもの、上部がすぼまった形のもの、ワイングラスのようなふくらみのあるものなどを用意していただき、形や材質によってビールの味がどう変わるのか?を検証してみました。(ビール 東京

ビールの味はグラスを変えるだけで簡単に変えられる!プロが教えるビールを美味しくするテクニックとは

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ビールの味はグラスによって変わるといわれています。しかし、いかにビール好きでもグラスにまでこだわっている人って、そう多くないんじゃないでしょうか?

そもそも、変わるといっても舌の肥えた人にしかわからないような、びっみょ~~な違いなのでは?

 

いえいえ、そんなことはありません!

実はグラスを変えるだけで、ビールの味がぜんっぜんちがうんです。

その噂の真相を確かめるべく、今回はビールの製造・販売を行うサントリービール株式会社に行き、その真相を探ってきました。

 

ビールグラスによって味が変わる理由って?

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お話を伺ったのは、サントリービールビールの生産・研究に従事している、醸造家の秀島誠吾さん。大学で醗酵工学を、入社後もドイツやベルギーの大学でビール醸造学を学んだ、ビールのスペシャリストです。ちなみに、自宅には200種類以上のビールグラスコレクションがあるそう

 

——さっそくですが、ビールがグラスによって味が変わるというのは、本当でしょうか?

 

秀島さん「本当です。いつも飲んでいるビールでも、グラスを変えるだけで味の感じ方が変わってきますよ」

 

——そもそも、なぜ味が変化するんですか?          

 

秀島さん「グラスの形によって、注ぐ時の泡立ちや飲む時の香り方に変化が生まれるからです。また、グラスの材質によっても感じ方は変わってきますよ」

 

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——では、ジョッキグラスを使うお店が多いのはなぜなのでしょうか? そんなに味が変わるなら、もっと色んなグラスがあってもよさそうな気がしますが……。

 

秀島さん「ジョッキグラスは丈夫ですし、たっぷり注げるので使用するお店が多いんです。それと、取っ手が付いているので、ビールを勢いよく飲むイメージと合っているのだと思います」

 

——なるほど。ちなみに、筆者のような「素人」でもグラスによる味の違いってわかるものですか?

 

秀島さん「もちろんです。今日はさまざまなグラスを用意したので飲み比べてみますか? 解説を聞きながら飲むと、より違いがわかると思いますよ」

 

ぜひ!

 

同じビールを複数のグラスで飲み比べ

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ずらりと並んだビールグラス。向かって右3つ以外はサントリービールが三越伊勢丹とコラボして作ったものなんだそうです。形から材質まで多種多様ですが、どう味が違うんでしょうか?

 

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なお、検証するビールは「~ザ・プレミアム・モルツ ~マスターズドリーム」(以下マスターズドリーム)。柔らかな苦味、深いコク、ほのかな甘み、そして心地よい香りと、さまざまな要素が折り重なる“多重奏で濃密な味わい”なため、グラスによる味の違いがわかりやすいそうです。

 

まずは、サントリービールがマスターズドリーム専用につくったというこちらのビールグラス。

 

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秀島さん「こちらはグラスの飲み口部分が薄くつくられているため、ビールの味を敏感に感じとることができます。グラスに若干の膨らみを持たせたのは、プレミアム感を出すためと、飲み進めていくうちに多重奏で濃密な味わいをより引き立てるようにするためです」

 

確かに、濃厚なビールの苦味や甘味、香りなどが強く感じられる……!

 

続いては、錫(すず)でつくられたというグラス。

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秀島さん「ビールは五感で楽しむものだと思っています。こちらのグラスは錫で出来ているため、触っただけで温度が伝わるんです。また、丸くつぼまった形をしているのは、ビールの香りを集めるためと、少しずつ口に入れワインのように舌で転がすことで、さまざまな細かい味を感じてもらうためです」

 

なるほど、こちらはのど越しよりも、ビールの繊細な香りや奥深い味わいをじっくり感じるためのグラスなんですね。うん、マスターズドリームの華やかな香りが、先ほどより強く感じられる気がします。

 

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こちらも上記同様、錫(すず)でつくられたビールグラス。先ほどのグラスよりも飲み口が広がっているようですが……。

 

秀島さん「口の中って、場所によって味の感じ方が違う構造になっています。飲み方によっても味の感じ方は変わります。このグラスは飲み口が広がっているため、一口で一気にビールの味と香りを感じることができるんですよ」

 

確かに、おいしいおかずを口いっぱいに頬張った時のような幸せ感がある……気がします。……って、さっきから「気がする」を連発してますが、こんなんでいいのかな……?

 

秀島さん「最初は“そんな気がする”程度の理解で大丈夫ですよ。私たちも初めは、先輩の醸造家から教わりながら飲んで、少しずつ理解していきましたから。そういう違いを意識しながら飲み続けていくと、だんだんハッキリわかるようになってくると思います」

 

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お次は、ザラザラとした触り心地が特徴的な陶器グラス。ビール以外に焼酎にも合いそうな見た目です。

 

秀島さん「ビールは自然の恵みから作られているということで、こちらは『土』をイメージしたグラスになっています。素焼きをしているので表面にザラっとした凹凸があるんですが、この凹凸がビールを注ぐ時にクリーミーな泡をつくってくれるんですよ」

 

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秀島さん「こちらは底部を素焼き、上部に釉薬(ゆうやく)を施したビールグラス。こちらも、まろやかで細かな泡が味わえます。さらに、時間の経過による味わいの変化も楽しむことができますよ」

 

この2つはまるでサーバーから注いだような泡立ち。一口飲んだら、泡のヒゲができました。「泡」を存分に楽しみたいという人は陶器グラスがよさそうです。

 

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最後は、麦の模様が描かれた「江戸切子」のグラス。ワイングラス型と三角錐型があります。

 

秀島さん「ワイングラス型(写真左)はワインと同じように、細かな香りの違いや変化が感じられると思います。一方の三角錐型(写真右)は、喉までダイレクトに伝わる“のどごし”が強く感じられると思いますよ」

 

なお、ビールは味や風味はもちろん、色などの『外観品質』も大事とのことなのですが、“液体の厚み”によってその見え方もまるで変わってくるそうです。

 

秀島さん「径(グラスの直径)の大きいワイングラス型は液体に厚みができるのでウイスキーのような(濃い)琥珀色、それよりやや径の小さい三角錐型は(少し薄めの)鮮やかな黄金色になります。先ほど申し上げたように、これもビールを五感(視覚)で味わってもらうための要素の一つですね」

 

というわけで、まとめると

 

【飲み口部分が薄く、フォルムに若干の膨らみがあるグラス】
濃厚な苦味や甘味、香りなどビールの味が敏感に感じられる

 

【丸くつぼまった形をした錫(すず)のグラス】
繊細なビールの香り、奥深い味わいなど、細かい風味をじっくり感じられる

 

【飲み口が広がった錫(すず)のグラス】
一口で一気にビールの味と香りを感じ取ることができる

 

【ザラザラした手触りの陶器グラス】
凸凹がつくるクリーミーな泡を味わえる

 

【底部が素焼き、上部に釉薬(ゆうやく)を施したグラス】
まろやかで細かな泡が味わえ、時間の経過による味わいの変化も楽しめる

 

【江戸切子(ワイングラス型)】
ワインと同じように、細かな香りの違いや変化が感じられる

 

【江戸切子(三角錐型)】
喉までダイレクトに伝わるのどごしが強く感じられる

 

 と、数種類のグラスだけでもここまでビールの個性の引き出し方が違うとは驚きです。いや、じつに奥が深い! みなさんもぜひ、色んなグラスで飲み比べてみてください。

 

ビールの種類によってグラスを使い分けよう

 

さて、同じビールを色んなグラスで飲むのもオススメですが、ビールの種類によってグラスを変えるのもアリなんだそうです。なんでも、ビールの味わいによって適したグラスは変わってくるのだとか。

 

秀島さん「ホップの苦味と爽快な喉越しが特徴のピルスナー系ビールは日本でも定番ですよね。ピルスナーには、細くて長い、ピルスナーグラスがオススメです。飲み口が狭い分、ビールの味と香りがダイレクトに感じられ、一気に流し込んでもシャープな味わいになります」

 

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ほかにも、芳醇な香りが特徴のペールエール系ビールには香りが強く感じられるワイングラス、苦味や酸味が強く重厚なコクが特徴のスタウト系ビールには飲み口の広いグラス、泡立ちの良さが特徴のヴァイツェン系ビールには中央がくびれた長いグラスが合うそうですよ。

 

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秀島さん「エール系ビールやフルーツビールには香りが最後まで楽しめる、ワイングラスがピッタリです。私は途中まで飲み終えると、ワインのように回して、さらに香りを引き立しています」

 

それはすごい! 最後の一滴まで余すところなく楽しもうという、その姿勢。ビール好きの鏡ですね。

 

家やお店で「もっと美味しいビール」を飲む方法

 

最後に「せっかくなので、家で美味しくビールを飲む方法をお教えしますよ」と秀島さん。

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秀島さんによれば、注ぎ方にポイントがあるそうです。

 

秀島さん「コツとしては、やや高い位置から注いで、先に泡を立たせることですね」

 

——え? 泡は最後につくるんじゃないんですか? 先に立たせちゃっていいの?

 

秀島さん「いいんです。少し待つことで、上層部の粗い泡がどんどんときめ細かいクリーミーな泡になっていきますから。良い泡はビールの酸化を防ぐので、最後まで美味しい状態に保ってくれるんですよ」

 

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また、外で飲む場合、そのお店が美味しいビールを出すお店かどうかを見分ける方法もあるのだとか。

 

秀島さん「ぜひ、飲み干した後のグラスに注目してみてください。グラスに泡が輪になって残る『エンジェルリング』ができていたら、そこは美味しいビールを提供する店と考えていいと思います。なぜなら、エンジェルリングはグラスをしっかり洗い、ビールサーバーをキレイに保ち、さらには注ぎ方が上手くないと生まれないんです」

 

***

 

やはり、ビールの美味しさを存分に味わうためにはグラスが大きなカギを握っているようです。別に高価なグラスでなくてもいいから、形や材質、厚みなどを意識して色んなタイプのものを用意しておくと、ビールライフがさらに充実しそうですね。


紹介協力

SUNTORY
ホームページ:https://www.suntory.co.jp/

 

プロフィール

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小野洋平(やじろべえ)

1991年生まれ。編集プロダクション「やじろべえ」所属。服飾大学を出るも服が作れず、ライター・編集者を志す。自身のサイト、小野便利屋も運営。

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