七条木屋町。高瀬川が静かに流れる繁華街からはすこし離れたエリア。小川のそばにしっとりと、2018年3月末にオープンしたビアバーがありました。ここKyoto Beer Lab(キョウト ビア ラボ)はビール醸造所とバーが一緒になったブリューパブ。和束茶(わづかちゃ)を利用した茶ビールを提供するお店です。
……ところで、和束茶ってご存知でしょうか。京都市の南東に位置する和束町で生産されているお茶のことなのですが、実は宇治茶として出回っているお茶のうち、40%近くは和束産。生産量は京都府内でもっとも多く、京都ならではのお茶なのです。
京都産のお茶を使った京都産のクラフトビールを飲めるお店、Kyoto Beer Labについて、京都に住んで8年目のライター・ゆりりーがお送りします。
ほうじ茶、わさび塩…気になるクラフトビールがたくさん
高瀬川に沿って、小さな小道を歩いてゆく。ゲストハウスや旅館に並んで、すこし洒落た建物が見えてくる。ここだ、京都ビアラボ。
ガラス扉をあけると、さっそくメニューとカウンターが目に入る。京都駅から近いという場所柄、観光に来ている国外からのお客さんも多いそう。
壁一面、圧巻のメニュー。なにやらおいしそうなビールがずらりと並ぶ。うーん、お茶のビールも気になるけれど、わさび塩なんてのも気になるぞ……。
お店には醸造所が併設されていて、1~7番が店内で醸造したもの、8番のみがゲストビール(ほかの醸造所で作られたもの)。
お茶が入っているものは1番の「ほうじ茶スタウト」。定番ラインナップは3番「KBLペールエール」と4番「わさび塩ゴーゼ」。日によってラインナップは変化するそうだけれど、できるだけ幅広い味わいのものをチョイスしているそうです。
なかなか決められないわたし。勧められるがままに、3種類を小さなグラスで試せるテイスティングセット(1,400円)を頼む。
はい、やってきました。鳥獣戯画モチーフのグラスにあざやかな3色。
わたしが頼んだのは左から、和束茶を利用した「ほうじ茶スタウト」、限定ビールの「琥珀淑女」、定番ラインナップの「わさび塩ゴーゼ」の3種類です。
まずはほうじ茶スタウトから。お茶!という感じの味わいを想像していたけれど、スタウトらしい濃厚な味わいに、ほんのりとお茶の香りが漂っていい気持ち。
続いて定番わさび塩ゴーゼ。こちらは爽やかで飲みやすい。乳酸菌入りのサワービール。ああ、これ暑い日にはぐびぐび飲んじゃって危険なやつだ……。女性に人気があるのもこのビールだそうです。
ちなみにわたしがいちばん好きだったのは真ん中の琥珀淑女。ほどよい苦味とコクのバランスが心地よい。期間限定で、もう飲めないのが惜しいな……!
奥で醸造している様子を眺めながら飲む……というのが、またいいですよね。
そうそう。クラフトビールといえばやっぱりこれ。
うん、いいね。ビールのタップがずらーっと並んでるの、何度見ても嬉しくなっちゃうな。しかも取っ手が木でできてるなんて、かわいい!
あとでお伺いしたところ、お茶の木でできているそうです。そこまでこだわってるなんて……!
ビールが進みすぎちゃう危険なフードたち
せっかくおいしいビールを飲んでいるのだから食べ物も楽しみたい。わかります。京都ビアラボ、食事もおいしいです。お客さんは、わざわざクラフトビールのお店に来ているくらいなので、食べ物にもこだわりのある方が多いそうで。
いくつかオススメのものを注文してみました。ほくほくで素材の味がする自家製フライドポテト(450円)。
いくらでもビールが進んじゃう、肉食系のぼくらも大満足のハーブソーセージ(450円)。
そしてこちら。京都で親しまれている焼肉の店「弘」のベーコンソテー(680円)。
これがさ、たまらなくおいしくて……!
京都ビアラボに来たらぜひとも、いや、必ず食べてほしい。ベーコンだけなのに、なぜだかカルボナーラを想起する、そんな濃厚なお味でした。
鳥獣戯画モチーフの理由
つまみがおいしくて、どんどんお酒が進んじゃう。次は6番の「トロピケール」(M:700円 / L:1,000円)。IPAの中でもアルコール度数と苦味が少ない、最近の流行の味わい。
ああ、爽やかで飲みやすい。アルコールが強すぎないのも嬉しい。それにしても鳥獣戯画のモチーフがかわいいです。京都の醸造所だから、ということなのかな?
なんと、鳥獣戯画が伝わる京都・高山寺で日本ではじめてお茶が作られたことに由来しているのだとか!
京都のモチーフであり、お茶のモチーフでもある。それがクラフトビールのお店に使われているなんて……素敵だな。
ビールを作る工程を紹介した巻物風のシールまで見せてくださいました。いいないいな、これ、なんとかして手に入らないですかね…?
さてさいごは5番の「ホップダーム」(M:700円 / L:1,000円)で締めましょう。
先ほど飲んだものとは違ってしっかりとした味わいでした。この日いちばんのアルコール度数7.5%のIPA。牛すじの土手煮(600円)と一緒に。
それにしても、クラフトビールのお店でしっかりとした煮込み料理って、すこし意外というか。
メニュー考案の方法を尋ねてみると、一軒目にも行けるお店にしたかったとのことで。確かにちょっとつまむものだけだと、お腹はふくれないもんね。 濃厚な煮込み、ごちそうさまでした!
お店のディレクターの村岸さんは、元々和束町で町おこしや空き家をなおす活動をされていたそう。和束のお茶を使って何かできないか……ということで好きだったビールを組み合わせたのだとか。
度重なる試作や祇園祭等での限定販売を経て、ついに京都市内でいつでも飲める店をオープン! 熱い想いのこもったビールなんですね。和束町の人たちからもこの地域の人たちからも、応援されるといいな。
今後このエリアに、別のクラフトビールのお店が増える予定もあるそうで。クラフトビールエリアの始まりかあ。このへんを歩いて飲んでが楽しみになっちゃうな。
紹介したお店
書いた人
ゆりりー
京都で働くデザイナー、ライター。web実装もやっています。京都、食べ物、物件が大好きです。
Twitter:@yulily100