ビールとはなにか。それは、1年中さまざまなシーンで私たちを癒してくれる、黄金の美酒のことである。
特に、夏に飲むビールは最高に美味しい。しかし、冬に飲むビールも美味しい。つまりビールは美味しいのです。誰が何と言おうと、ビールはとにかく美味しいのです!!
……と、強く主張したいところですが、先日筆者(私)がとある居酒屋さんで「生」を頼んだところ、とてもビールとは思えないシロモノが出てきて愕然。その液体は、微妙にぬるく、変な酸味といやな苦みがあってとてもじゃないが飲めたものじゃありませんでした。
裏切られた……全幅の信頼を寄せていたビールに裏切られた……と絶望感に打ちひしがれていたところ、見かねたのか同席の友人が「中野にビールがメチャクチャ美味い店がある。あの店のビールを飲んだら、ほかの店のビールが飲めなくなる」と、話し出しまして。
そこはなんでも、ひとつの銘柄のビールを使い、注ぎ方によってさまざまに味を変える、しかも全部ありえないほど美味しい、というビールを極めきったお店なのだそうです。
え~~~それよく自称ビール通がウエメセで言う「ビールはねェ、注ぎ方で味が変わるんだよフフフ」っていう(しかも全然味変わらない)アレじゃないの? でも、もしかしたらそんな技は実在するのかも? ともかく最高に美味いビールが飲みたい、ビール不信地獄から生還したい~~~~~!!!!
ということで! 中野『麦酒大学』さんにうかがってきました! 果たしてビール不信は治るのか!?
「人生観を変えるビール」ってなんだ!?
中野駅から徒歩2分、坂になっている路地を少し入ったビルの2、3階に『麦酒大学』はあります。
「人生観を変えるビール」ですって……! 看板から自信のほどがうかがえる!! 入る前から気分はウキウキ。
店内は、2階がカウンター席、3階がテーブル席。筆者は2階にお邪魔しました。
オシャレな店内の壁には黒板が設置され、ビールの説明や豆知識などが書かれています。チョークの使い方が、なんだか学生時代を思い出させる……! まさに、大学。
学長にしてビアマスターの山本さんは、20年間ずっと酒屋さんで飲食店向けの営業を担当、さまざまなお店に「こうやったらビールがおいしくなりますよ」とアドバイスをしてきたという、まさにビールの生き字引。その培ってきたノウハウを生かしたお店をやってみようと思い始めたのがこの大学、とのこと。なるほど、よぉし学長さん、その腕前、とくと見せてもらおうじゃないか!
注ぎ方だけで表情をどんどん変えるビール!
ビールのメニューは週替わりビールも含めると13種類。なんと、週替わり以外のビールはすべて同じ銘柄、キリンラガービール! それを、「サーバー」と「注ぎ方」だけで、すべて違う味にしているんだそうです!!
右が「平成のサーバー」。現在ビールを出すお店ならどこにでもあるサーバーだそう。出せるビールの味はいちばん身近なものになるけれど、温度管理やサーバー・グラスの洗浄を徹底的に行うことで格段にクリーミーな泡ができるもの。
真ん中が「昭和のサーバー」。昭和8年の設計図を基に復刻したサーバーで、泡がすごく柔らかく、かつシュワシュワとした口当たりも出せることが特徴。
左は「ヨーロッパのサーバー」。このサーバーはキリンラガーではなくゲストビール用、週ごとに違う銘柄のビールを扱うそうです。
まずは、平成のサーバーから注がれる一番人気の『麦酒大学注ぎ』をいただこうじゃないか!
大学の講義のように、ビールの説明などをしながらビールを注いでくれます。
粗い泡を後から出てくるきめ細かな泡で押し流すと――
『麦酒大学注ぎ』の完成!
何とキレイな泡!!
飲んでみると、ほんっとうにクリーミー!!!! 絹のような舌触り(絹舐めたことないけど)とはまさにこのこと!! そしてクリーミーさのあとにビール本体のしっかりした味が飛び込んでくる、経験したことのない衝撃的な美味しさ!
ここで、学長から指導が。「前かがみにならず、泡と液体が同時に口に入るようにしてください。そうすることで、液体が空気に触れて酸化するのを泡が防いでくれるから、最後まで美味しく飲めるんです。あ、上手に飲めてますね! その証拠が、ほら」そう言ってグラスを指すマスター。
このようにリングができるのが、美味いビールを上手く飲めている証なんだそうです。
続いて、別の注ぎ方いってみよう。『二度注ぎ』。泡の粒が円いのが炭酸感をくれる泡で、
これをクリーミーな泡に豪快に置き換える!
そして完成! 『大学注ぎ』に似てるけど、泡の質感が柔らかく泡とビールの一体感はこっちのほうがだんぜん上。
同じキリンラガーなのに、確かに味が違う! すごい!!
次は『三度注ぎ』。完成まで5分ほどかかる注ぎ方です。勢いよく泡を立てながらビールをグラスに入れていくこと3回、出来上がったのが――
こちら! 泡がモコモコ!!
飲んでみると――
泡が!!!! 苦いーー!!!! しかし、液体だけを口にすると――
あれ? 甘みが強くてめっちゃめちゃ飲みやすい!! 『三度注ぎ』とは、泡のほうに苦みを持っていく注ぎ方であり、液体の方ではビールの甘みを強く感じられるものなのだそうです。これほんとに面白い! でも泡がマジで苦い!!
泡が苦いと連呼していたら、「それでは、こちらを」とマスター。
『ミルコ』という注ぎ方だそうで……泡! ほぼ泡!! なにこれ!?
飲んでみると、すごくクリーミーで、そして甘い! でもこのクリーミーさと甘さは何かに似ているなぁ……と思ったら、『ミルコ』とはミルクのこと、つまり牛乳のようなビールという意味だそうです! なるほど、既飲感はミルク感だったのね!
しつこいですが大切なので再度言います、これらすべて、キリンラガービールなんです。それがわかっていても、同じビールとは思えない! 『人生観変える』が、ガチなレベルです……!
最高のビールには最高のおつまみを!
こんな素敵なビールたちに合わせるフードはどんなものなんだろう? まずはソーセージの盛り合わせをいただくことに。岩手県産ホップの新芽が入ったもの、「いぶき」というホップが練りこんであるもの、そして岩手県産豚100%のものという3種類。
新芽のソーセージは、ジューシーかつホップの香りが芳醇な逸品。
いぶきのソーセージは、少し苦みが感じられて新鮮かつ美味しい。
豚100%は、クセがなく食べやすい。マスタードと合わせるとまた美味い!
続いて、串焼き盛り合わせ。かなりボリュームがあります!
卵黄に絡めて食べる「すき焼き串」など、凝った串ばかりで楽しい!
どれもこれも単品でも充分美味しいのですが、やはりビールとの相性が抜群で最高!
「生」について衝撃の事実発覚……!
「湯呑でビールを飲むとシュワシュワの泡になって美味い」など、ビールの雑学も教えてくれる学長。そこで「先日、とある店で生を飲んだら不味くて仕方なかった」という話をしたところ―――
「それ、『生中』とか書いてありませんでした? 生中だとビールじゃなくて発泡酒の可能性もありますよ。生ビールが飲みたければ、ちゃんと『生ビール』って書いてあるか確認して、注文時も『生ビール』って言わなきゃだめです」
なんと、「ビール」と書かれていない「生中」は発泡酒の場合もあるとのこと! 筆者が絶望したのはビールじゃなかった(かもしれない)のね!! こんなことまで教えてくれるなんて、麦酒大学すごい!
まとめ
『麦酒大学』という店名には、ビールの面白さ、奥深さを知ってもらいたいとのマスターの思いが込められているとのこと。
看板のとおり「人生観が変わる」ほどに美味しいビールが飲める、しかもビールの知識から雑学までたっぷり教えてくれる中野『麦酒大学』。みなさんもゼヒ足を運んでください!
余談ですが、取材の後プライベートで何度も足を運ぶほど筆者はハマってしまったのですけど、行くたびに毎回マスターがお客さんに同じ説明をしているので、留年して同じ必修授業をまたとることになった大学生の気分になったりならなかったり。
紹介したお店 ビール注ぎ分けのお店 麦酒大学(ビールダイガク)
著者・SPECIAL THANKS
ライター/シマヅ
1988年生まれ。フリーライター。 武蔵野美術大学造形学 部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタ ビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行う。