※編集部追記:こちらのお店は「甲州街道 賽(さい)」へリニューアルしました。
世の中のどんなものよりも酒が好き、最近射止めた旦那よりも好き。
そんな筆者(私)が最近気になっていたのが、新宿にあるという「美味いうどんと美味いビールの店」。
うどんと、ビール?20代前半のころは、よく泥酔中に勢いで『はなまるうどん』に入りビールの余韻に浸りながらうどんを食べたりもしたものです。
しかし「あー! 今日は美味いビールを飲みつつ美味いうどんを食べたい! 猛烈に!」……そんな気分になる人はいるんだろうか?
いるとして香川県の人なんじゃないか?
うどんとビールそれぞれにこだわりのある店なんて、ちゃんと成り立つのだろうか。
しかし、そんな疑問は店に足をふみいれるやいなや一発でふっとんだ。
断言しよう、ビールとうどんそれぞれに並々ならぬ熱意を注ぐ異色すぎる居酒屋『うどん居酒屋 武蔵野はせがわ』に足を踏み入れれば、「ビールときたらうどんでしょ!」となることを! ……ってのは、ちょっと言い過ぎだが、このふたつの同居がとても心地よいものであることを改めて断言しておく。
美しいうどん店! なのに居酒屋の気安さ!
『武蔵野はせがわ』の場所は、新宿駅南口から歩いて5分ほど、甲州街道沿いに建つビルの地下1階。駅から大きな道沿いに行けばすぐなので全然迷わない……のだが、それは駅をうまく出られてからの話。
筆者は少し迷った。日本有数の迷路である新宿駅をクリアするのが至難である。初めて行く際はナビ必須。
同じビル1階にもはなまるうどん系列のカレーうどん屋さんがあるので注意しよう。
『武蔵野はせがわ』は地下1階、地下1階だ。
「うどん居酒屋」を名乗っている同店。
足を踏み入れると、ものすごい清潔感&オサレ感に圧倒される。(※単に筆者が、赤ら顔のおっちゃんが店員さん相手にクダ巻くような店ばかり行ってるから)
ミニマルに整えられたカウンター席や半個室状のテーブル席など、約30席の静かな空間が広がっている。
ここは本当にうどん屋かつ居酒屋なのか……!?
オシャレとか高級とか女子力とかの類とは縁遠い筆者には場違い感がハンパなくてツラいと思っていたところ――
店員さんのシャツに、でっかく「UDON JUNKY」という文字が!
なんというか、「単にうどんバカなだけなんで」的なフランクさがあってすごく安心した。店員さんの話ぶりも本当にそんな感じで、気取ったところがどこにもない。
デートにも使えそうなオシャレさと、ひとり飲みにも適したフランクな居酒屋の雰囲気を併せ持つハイブリッドうどん店、ここに極まれり。
うどん屋さんなのに激レアクラフトビールのTAPがある!
このお店の看板は、なんといっても「うどん」だ。
そのスゴさにはちゃんとわけがあるのだが、それはあとで説明することにして。まずは筆者の得意分野、お酒から!
なんと!
ここはうどん屋さんなのに、レアなクラフトビールが置いてあるのだ!しかも月替わりで2銘柄をTAPで飲めるというスペシャルさ!!
クラフトビールとは、要するに「小規模なメーカーが造るこだわりビール」。有名どころだと「よなよなエール」など。
このお店が扱う銘柄は、どれもこれも都内ではあまりお目にかからないレアなものばかり。とくにTAPで出すものは、その時期に合うものを選んでいるのだそう。
筆者が取材した2017年4月のTAPは、
・「金鬼ペールエール」(北海道・登別市)
の2種類。
どちらも、筆者は瓶でさえ見たことがないものだった。それをTAPで……素敵すぎる!
山梨県出身の筆者としては「アウトサイダー」(よくよく考えるとすごい名前である)を選びたい!
……しかし、取材の日は残念ながら売り切れ。「金鬼ペールエール」のほうをオーダーした。
ビール専門店のマスターを思わせる流麗な手つきでサーバーから注がれる金色の液体、見ているだけで期待度が95%まで上昇!
やはり「UDON JUNKY」とプリントされたコースターとともに提供された輝かしい1杯で期待度は100%に到達!
クラフトビールにありがちなクセがなく、口当たりはまろやかでスーッと入ってくる感じ。鼻に抜けるシトラスっぽいフルーティーな香りが特徴的で、これがもう最高!
香りをつまみに何杯でも飲めてしまうレベルで、満足度は120%を記録!
素晴らしいビールを選んでくれて、素晴らしい状態で出してくれている……これが六本木あたりのビール専門店でなく、新宿のうどん屋さんだというのが本当に驚きだ!
タンブラーの形も面白い
表面に5つヘコミがあり、持つと指がフィットして滑らずシッカリと持ち上げられるのだ。シャツもコースターもお店のオリジナルなので、このタンブラーも?
と思ったら「それは市販品です」と店長さん。オチまで用意してくれるとは、ありがたいぜ。
おつまみにも並々ならぬ熱意が!
お酒にばかり感心している場合ではない。
フードはどうなのか。おつまみを頼んでみよう。一番人気だという『癖になるクリームチーズのかえし漬け』をオーダー。これは、うどんつゆの味を決めるタレ=「かえし」にクリームチーズを漬けたものだ。まさに、うどん屋さんならではのおつまみ。
“かえし”の複雑な香味やうまみ、クリームチーズのまろやかさなコクが見事に合わさり、深みのある味わいが舌の上で溶けて広がっていく。そこにビールを流し込むと、もう頭の中に花が咲き乱れて止まらない!
なんという恐ろしいひと皿……!
続いて、『季節野菜のピクルス』と『きんぴらゴボウ』を注文。
ピクルスは、野菜自体の味、シャキシャキした食感や甘みなど「地」のテイストをきちんと活かした上で、ハーブやスパイスの香りが見事に立っているという珠玉の出来ばえ!
きんぴらゴボウは、「おふくろの味」系。どこか懐かしいホッコリとした味付けだ。お酒とはもちろん合うし、うどんともとっても相性がいい。まさに「お母さん」のような存在だ。
クラフトビールもおつまみも、「うどん屋だけど居酒屋でもいいっすよ」なんて軽いノリじゃない、本気の本気で居酒屋をやっている味。これでは、うどんを食べなくても満足してしまいそうだ……!
ひとくち食べればうどんのトリコ!その美味さには驚きの理由が!
とはいえ、ここは「うどん居酒屋」。
うどんをいただかずに帰るなどありえない。ということで、『肉汁うどん』を注文。
武蔵野うどんとは、東京・埼玉の武蔵野地域で受け継がれてきたうどんだ。地元の小麦を使った麺は、コシが強くて太いのが特徴。「もり」の形で出して、糧(かて)と呼ばれる肉や薬味のつけ汁につけて食べるのが一般的とのこと。
麺を口に入れた瞬間……これはすごい!
弾けるような弾力に、つるっとした喉ごし、口から鼻に拡がる小麦の香りが最高!
シャツやコースターにUDON JUNKYってプリントしちゃう気持ちが分かる!UDON JUNKYになる気持ちが分かる!!
というか一口食べただけで筆者もすでにUDON JUNKYになっている!!!!
これは危険だ……これから毎日うどんを食べるようになるぞ……などと思っていたところ、フと麺を見ると生地にところどころ茶色い粒子のような物が。
これもお店のこだわりで、麺は武蔵野産(埼玉県の入間産)の小麦粉と全粒粉の入った讃岐の小麦粉をあわせており、茶色の粒子のようなものの正体は全粒粉とのこと。
武蔵野産と讃岐のハイブリッド麺とは恐れ入った。さすが、ハイブリッドうどん店である。
6種のだしを使ったつけ汁は、やや甘く、そしてうまみがかなり強い。コシがあって太いうどんに負けない、存在感があるつけ汁だ。
ここまでレベルの高いうどんが提供できるのには、ちゃんと理由があった。
こちらのお店は、あの『手打ちうどん はせ川』の、暖簾分け1号店なのである。世界に名を轟かす武蔵野うどん店で修業したご主人が、己のこだわりと美学を追及して新たに開いたお店だ。ハンパな品を出すわけがないのだ。
【まとめ】わるいところが何ひとつみつからない、クラフトビールとうどんの名店! 昼から飲めるし!
▲全面禁煙ということもあってか、お子様連れのファミリーの利用にも向いている。女子会での利用も多いとか。
「お蕎麦屋さんで、色々と頼みながら呑む文化ってありますよね。一方で、うどんの場合は”メシを食う”という印象が強い。でも、こだわりの酒と、料理と、自慢のうどんと、落ちつける店の雰囲気があれば、皆さん喜んでくれるんじゃないかと思ったんです」と店長の熊谷さん。
たしかにお店は隅々まで綺麗でオシャレ、ビールも料理も絶品!
昼から飲めることもあってか、ひとりでサクッとランチで昼飲みをするお客さんも多いという。
2016年11月にオープンしたばかりだというのに、すでに大人気のこのお店。食べてみて、飲んでみて、人気の理由に納得したのは言うまでもない。比較的すいているという土曜の昼と平日の13時すぎに、再度訪れようと決意した筆者であった。
それでは、最後にひとこと。うどんとクラフトビールの極上ハイブリッドが味わえるのは、新宿『うどん居酒屋 武蔵野はせがわ』だけ!!
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著者・SPECIAL THANKS
ライター/シマヅ
1988年生まれ。フリーライター。 武蔵野美術大学造形学 部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタ ビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行う。