まいど憶良(おくら)です。
テレビ番組なんかで、工場訪問なんかしたりして
「出来立ての練り天ぷらを、特別に食べさせていただきました。うっひゃ~!出来立ての熱々って、こんなにも美味しいんですねぇ、いやあ、このロケ来てよかったぁ。もう全く別物くらいおいしいです。皆さんにも食べてもらいたいくらいですねぇ」なぁんてシーンを見ては、「がるるるるっ、うらやましいっ、そりゃ出来立ては美味かろう!」と思っておりました。
今回ご紹介するのは、目の前で揚げられた、出来立て練り天が食べられるという貴重な居酒屋、練り天専門居酒屋の「八尾蒲鉾」。
ここなら、憧れの出来たて熱々が食べられるんです。中でもこの名物「ウッフ・ド・ロワイヤル」なる一品がとんでもない旨さなのだとか・・・・
大阪駅から環状線で一駅、関西圏以外の方はここ天満を天馬と同じTENMAと発音される方が多いのですが、正しくは看板の通りTEMMAと発音します。
ニュアンスで言うと「てんむぁ」です。
この天満という町は大阪駅の隣という場所ですが、キタやミナミ、裏難波やアメリカ村なんかとも違う、一種独特の雰囲気を持っています。
駅を一歩出ると、混とんとした雰囲気もあり、なんだか香港とか台湾みたいなイメージ。
美味しい物がゴロゴロとそこかしこにあります。
安くて気軽に食べられるお店には困らない。そんな美味しい物が大好きな人にとってはパラダイスといえる場所なんです。
中でも注目すべきは古くから栄えている天神橋筋商店街に続けと言わんばかりに盛り上がる、「裏天満」と言われるスポットです。
練り天専門居酒屋ってどんな居酒屋だろう
そんな裏天満エリアでも、いや、全国的に見ても珍しいのではないかというのがこちらの店。
揚げたて練り天専門居酒屋の「八尾蒲鉾」です。
カウンター席9席、テーブル4席と、決して大きい店ではないのですが、他所では食べられない旨い物を食べさせてくれるんです。
はい、いらっしゃいっ。
テーブル席もいいのですが、 目の前で練り天が揚げられる様子が見られるカウンター席もお勧めです。
豊富な焼酎類もスタンバイ。
白身魚のすり身にネタを包んで揚げるのがここのスタイル。
このすり身はスケトウダラをメインにして、 風味、味を調えるために他の魚を加えて作られます。
旨味と風味は当然大切ですが、どんなネタにも合う癖のなさも同時に兼ね備えている必要もあります。
包まれる魚、野菜など様々なネタと合わないといけないという、なかなか大変な資質が求められる、いわば研ぎ澄まされたすり身とでもいう、この店の命です。
まずはお飲み物から。ビールをお願いします。
練り天が揚がるまでは平均して7分程度の時間がかかります。それまでに何かアテにして飲みたいという方は、スピードメニューをどうぞ。
私は小食ですので、貴重なお腹のキャパシティを練り天以外で消費しない作戦に出ました。
メニュー全てを食べたいのはやまやまですが、ご主人さんにメニューの解説をしていただきながら慎重に注文する品を選びました。
こだわりの練り天とは、いかなる味なのか
まずはスップリコンビを注文。
これがどんなものかは、出来上がってからのお楽しみです。
続いて紅ショウガ天を注文。
関西ではオーソドックスな練り天メニューです。
ベースの練り物の味がよくわかる、そしてピリリとショウガの刺激がたまらないネタです。当然ビールとの相性もいいんです。
手早く目の前で混ぜ合わせられると、180℃の油の中に投入されました。
続いてゆずエビを注文。
何せ注文してから揚げます。そして出来上がりまで約7分。
目の前で作っているところを見ながら、楽しい「待ち遠しいタイム」を過ごします。
大体皆さんスピードメニューを頼んで、ビールでも飲みながら談笑して待つのでしょうが、私なんぞは出来上がりまでかぶり付きで見てしまいました。
手早く、包丁と箸でネタを包み込んでいきます。
当然、中に空気が入らないように。
もし空気が入ってしまうと、爆発して油が飛び散りかねません。
スピーディーですが、丁寧な職人技が必要とされます。
しかし、この手際の良さは、見ているだけでも楽しいです。
穴子天。上に乗っているのはワサビです。
ワサビは熱で風味が飛んでしまわないのでしょうか。
きっとほんのりと、ワサビの残り香がある状態で仕上がってくるのでしょう。
クルリッと、一瞬で包まれて、そのまま形を整えて油に投入。
これは珍しい、もやし天。
ブラックペッパーを振りかけて
包み込みます。
このブラックペッパーは、練り天とネタの癖を吸収し味の融合を図る、調整役という存在。
ネタによって、色々な小さなわき役が活躍しているんです。
カレーというメニューもありました。
カレーの天ぷらって、どんなの??
想像しただけでも唾が湧き出します。
使われていたのはアイスクリームをすくう時に使うような道具。
すり身を詰めると
窪みを作って、
開いた部分に
水分の少ないカレーを投入。
たこ焼きの具のような感じでカレーが収まったら、
その上にすり身を
かぶせて
形を丸く整えます。
上にレンコンをセットしてから 油に投入。
そしてこれが名物メニュー。 その名も八尾蒲鉾店流ウッフ・ド・ロワイヤル。
今度は穴の中に卵の黄身をセット。
同じように
すり身で覆います。
具材によって火の通る時間が違うのはもちろんですが、
複数のネタをどんな順番で投入すればちょうどいい時間で出来上がるかを計算しながら
揚げていきます。
「先ずはスップリコンビが揚がります。その後続いて3品揚がります」と、ご主人。
揚がり時間はインプット済みの様子。
具材によって火の通り方は違うでしょうが、たくさんのお客さんが注文するネタを全て的確な揚がり時間に出すのは大変かと思います。
チキンライスの天ぷらとドライカレーの天ぷらが激ウマ!
「どうぞ、スップリコンビです」
すっ、スップリコンビとはなんぞや。
フォークとナイフで切り分けてお楽しみください、との事でしたので切ってみると、
なんと中からチキンライスと、
ドライカレーが出てきました。
こんな練り天、初めての体験です。
なるほど、ライスコロッケ=スップリに見立てた一品。
果たしてこれが旨いかと言われると、
うむっ。
旨い。
ビールも来ました。
揚がり時間に合わせて
出してくれました。
乾杯です。
続いて、これは。
中を見るのも楽しみです。
カレーでした。
なるほど、なるほど。
こういう仕上がりになるのか。
いや、たのしい、そして、美味しい。
穴子と、もやし。
別角度。
もやしの天ぷらって、想像したこともない。
だが、これが、美味しい。
シャキシャキとした もやしがほんのりと甘く感じられます。
穴子天。
コイツは美味い!踊りたくなるくらい旨い!
予想に反して、穴子の上に乗ったワサビがちゃんと効いているんです。
ご主人 : 「練り天の中に閉じ込められていると、風味は消えないんです」
へぇぇっ。知らなかったぁ。
食べるものほぼすべてが人生初の衝撃
うに海苔。
旨っ!
というか、レポート「旨い」しか言ってない気がします。
いやいや、旨い。←(反省はしないタイプ)
ショウガ天に、ウニ海苔の海苔をまぶして。
食べなれているショウガ天も、出来立てだと全然別物の旨さ。
ハフハフと熱いのでビールを飲みたいのですが、美味しいので流し込んでしまうのがもったいない。
結局口の中で冷めるまでハフハフ言いながら食べてしまいます。
ゆず海老。
プリッとしたエビと、ゆず胡椒がふわっと香る。
あはははは。
笑っちゃう美味しさ。
幸せです。
名物「ウッフ・ド・ロワイヤル」の圧倒的な旨さ
真打登場、ウッフ・ド・ロワイヤル。
玉子の黄身が練り天に入っているんですが、 これがまたいい感じの半熟状態。
注文された方は、写真なんて撮ってないで、素早く開いてください。
この半熟が美味しいんです。
もたもたしていると余熱がまわって、単なるゆで卵天になってしまいます。
お味は・・・。
すんません、また言います。
「旨いっ!」
白身は角切りにして、ポテトチップスと共に周りにちりばめられています。
食感の楽しさもプラスされ、大満足です。
いつもの感じで言うと、もう食べられません、残りはお持ち帰りとさせていただきました、という所ですが、この店ではお持ち帰りはできないシステムとなっています。
さて、ここでクイズです。
お持ち帰りが出来ないのは、何故なんでしょう。
答えは店主さんのインタビューコーナーで。
一通り注文したものは出揃い、あっという間に消えてしまいました。
まだビールが残っています。
と、いう事で、追加注文してしまいました。
ご主人とのお話の中で、私が小食であることは伝えています。
ご主人 : 「大丈夫ですか、まだ食べられますか」
憶良 : 「はい、大丈夫です。美味い物は入ります。」
という事でジャガイモと
餃子を注文です。
餃子をまるまる
くるっとくるんで揚げます。
折角ですので焼酎も飲みましょう。
莫祢氏(あくねし)は黒麹の香ばしさをMAXに活かした逸品です!
と、メニューに書いてありました。
そして兼八(かねはち)。香ばしくドライ、麦チョコ代表?という解説がメニューにありました。気になって、注文です。
莫祢氏はお湯割りで、
兼八はロックで飲みます。
兼八は大分の四谷酒造が、はだか麦とはだか麦麹から作った、麦の味と香りを最大限に引き出すことを目標として作られた焼酎。
これこそが本物の麦焼酎!と言い切るファンも多い焼酎としても有名です。
莫祢氏は大石酒造が「しろゆたか」という芋と黒麹で作った焼酎。
大石酒造の地元、鹿児島県は阿久根市あたりを治めていた豪族の莫祢氏がその名の由来なのだそうです。
ロックでも、お湯割りでも美味しい焼酎です。
餃子が揚がりました。
餃子の練り天は九州ではおでん種としてメジャーな存在なのだそうです。
もちろん揚げたて。これをポン酢と柚子胡椒でいただきます。
すり身を薄めに乗せて揚げているのでパリパリとした食感も楽しめて、これもまためちゃウマでした。
ああぁ、とうとう最後の一品。
じゃが揚です。
レモンバターがかかっていて、これもまた美味しい。
もちろんバターとジャガイモが合うのは想像できるのですが、熱い練り天にバターという組み合わせは面白い。
油々してくどくなるかと思ったのですが、レモンが加わることでさっぼり爽やかさがプラスされて、とっても美味しいです。
いやぁ、大満足です。
店主さんに突撃インタビュー
憶良 : こういう形態の店をしようと思ったのはなぜでしょうか。
ご主人 : 実家が蒲鉾屋さんだったというのがそもそもの理由です。
実は原油高騰の時期がありまして、蒲鉾の材料となる魚を獲りに行く船の燃料代が高すぎて蒲鉾の原料が高騰してしまい、業界全体が大ピンチになった時があったんです。
蒲鉾を作って店に卸していたのでは食べていけないくらいの状況になった時、もう飲食店に鞍替えをしようと思ったんです。
で、ダメ元くらいの気持ちで、蒲鉾屋さんの店頭で作りたて蒲鉾を販売したところ、反応が良かったので、こういうスタイルでやってみようかと思いました。
憶良 : ネタがとっても個性的なんですが、こういうのは「この組み合わせはどうかなぁ」と、楽しみながら開発していったんですか。
ご主人 : いやいや、もう片っ端から試して、自分で食べてという開発の仕方です。
試して、試して、いいものだけが生き残るみたいな。
憶良 : 今までやってみて、「これはなかったなぁ」と思ったものはありますか。
ご主人 : スタッフが発案した、アイスクリームの「ピノ」を揚げたらどうだろうという物が、一番なかったですね。
試す前から、「これはさすがにあかんやろう」と思いながら作ってみて、食べてみて。
結果・・・。ピノはそのまま食べるのが一番、と思いました。
憶良 : アイスクリームの天ぷらなんかがあるので、そんなに合わないとも思わないですが。
ご主人 : アイスクリームをネタにして、というのは美味しい組み合わせも出来るんです。今はメニューとして出していないですが。
憶良 : 今後も新ネタを作ってもらって、どんどん美味しい驚きが増えて行くことを期待しています。
ところで、持ち帰りはできないんですよね。それは何故なんでしょうか。
ご主人 : 持ち帰りが出来てしまうと、作り置きが出来る蒲鉾屋さん、練り天屋さんと同じになってしまうので、色々出来た美味しいネタの中でも、揚げたてが特に美味しいメニューを提供している、というのが答えです。
例えばもやし天は、揚げたてはシャキシャキして美味しいのですが、時間が経つと水分が出てべしゃべしゃし、もやしはクタクタになって美味しくない。
半熟卵は揚がってすぐは美味しいけれど、暫くすると熱が回ってしまって単なるゆで卵天になってしまうなど、
もしも持ち帰っても美味しさが損なわれてしまうというのがその理由です。
憶良 : 意地でも、持って帰らせないぞ、というメニューなんですね。
ご主人 : その通りです。
ご主人の言うとおり、揚げたての練り天の旨さは、折り紙付きです。
是非、この場所でしか味わえない旨いもんを食べてほしいと思いました。
憶良 : では、最後に、この記事を読んで頂いている皆さんへのメッセージをお願いします。
ご主人 : 私のお店だけでなく、この裏天満のエリアにはたくさんの美味しい店があります。
この店でこれを食べて、次はここでこれを食べて、と、ハシゴで楽しむのが良いかと思いますので、この店だけでなく、界隈全部を楽しんでいただければ嬉しいです。
と我が店だけでなく、地域愛にも満ちたメッセージを頂きました。
私も裏天満エリアからは目が離せないな、と思いながら店を後にしました。
今回紹介しました、八尾蒲鉾さんの場所などはこちらから。
プロフィール
憶良(おくら) : 元ゲームプランナー、元ゲームプロデューサー。
ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。
休日は高速道路を使わずに名古屋から鳥取あたりの温泉に行って浸かり、道中や行先の地元スーパーで珍しい食材を買い込むと例え深夜に帰ったとしても料理する。
その際食べ歩きにも積極的と、食に対してはかなり貪欲。
「美味しいものを食べている時、美味しいものについて話している時に悪いことを考える人はいない。」という持論を持っている。
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