まいど憶良(おくら)です。
今日は居酒屋通が通う、ぽんしゅ(日本酒)と鶏の旨い店があると聞き、大阪は梅田にやってきました。
どんなお店なのかというと、ドリンク、料理のほぼすべてが350円、2000円で美味しく飲めて帰れるのにメチャクチャ美味しい、毎日でも通えるお店です。
世界が平和でありますように。そして今日も美味しいお酒が呑めて、美味しい物をいっぱい食べられますようにとお祈りします。
ちょっと道を戻ると、今回の目的地「たに 梅田お初天神店」に到着しました。
大阪の居酒屋通なら知っている、旨くて安い立ち呑み「たに」。
洞窟のような階段を下りていきます。
子供の頃に味わった、秘密基地に向かう心境です。秘密基地の扉の様な入り口。もう気分はワクワクです。
地下で鶏を焼いているのなら、そこかしこに油がこびりついているのは仕方なし、と思いながら入ったのですが、店内は清潔そのもの。
振り向くと、座れる席もありました。ふらっと立ち呑みだけでなく、ちょっとした宴会利用も出来そうです。
ぽんしゅのそろっている店という事で、メニューも豊富。
でも、スタートはやっぱりビールです。
ドリンク、料理のほぼすべてが350円という破格のお店。しかも、安いわりに旨いのではなく、旨いのに安い店なのです。
さて、自慢の鶏メニューからおまかせ串3種を注文です。左から「そりれす」、「ハラミ」、「ツナギ」。
「そりれす」は、フランス語で「愚か者はそれを残す」という意味。モモの付け根、骨盤の窪みにあたる部位で、取り出しにくいという理由で、扱ってない店もある希少部位です。
独特の弾力と旨みのある部位なので、見つけたら頼んでみてはいかがでしょうか。
「ハラミ」は最近スーパーなんかでも取り扱われることが多くなってきました。横隔膜の背中側。こちらも歯ごたえが良く、ジューシーです。
「ツナギ」は心臓と肝臓の間の血管。ハツ(心臓)を取り出すとき、切り離されてそのまま捨てられる事もあって、これも希少部位です。ハツの元、ハツモトと呼ぶ店もあります。
そのままでは弾力があり過ぎ、細かい包丁を入れないと食べにくいこともあって、これまた面倒なので捨てられてしまう事がある部位です。
弾力をどのくらい残すのか、ほんのコンマ何ミリの切り込みで変わってくる世界なので、処理の仕方も楽しめる部位とも言えます。
さてさて、いつもはビール党で、ビールばっかり飲んでいる私ですが、今日は折角なので、ぽんしゅを行かせてもらいます。
宮城の「祐星」は、究極の食中酒を目指して作られたという、食事に合うお酒。
「山法師」は山形のお酒。軽快な吞み口、スキッとしたお酒です。店長さんのトークも楽しく、お酒にも詳しくなれそうな店です。
気持ちも乗ってきました。そうなるとアテが欲しくなりますね。そこで注文した「ももタタキ」。高知の親鳥を使ってます。
親鳥は身が固いので好きじゃないという人もいますが、噛みごたえがあり、また味が濃いので私は大好きです。
店長さんの言うには、「同じ親鳥でも、もちろん個体差があります。特に脂のノリについては毎日食べても、今日は脂がのってて濃いい味わい、今日はあっさりヘルシーな味わい。などと変化があって楽しい」とのこと。
なるほど、奥が深い。
ということは脂のノリによって、それに合うお酒を呑み分ける、なんていう楽しみ方も、もう一歩先にある気がします。
そうなると、通への道が開けそうですね。
この「モモたたき」ですが、皮は、パリッと、どころでない、パリパリっと、です。それでいて、真ん中ピンク。
それからわき役のニンニク。これがまた旨い。
ニンニクのお代わりをしたいというお客さんも多いとの事ですが、その気持ち、分かります。
食べている合間にちょっと焼き場を覗いてみますと、これが実に楽しそうに焼いていました。
これ、絶対に、「うまそーだなぁ、ああ、うまそーに焼けてきてるやん、あともうちょっとで、もうめっちゃ旨くなるやん」と、想像しているに決まってます。
それでいて、手さばきと焼き加減は、確実です。親鳥のタタキ、後に出てくる上肝の火入りでもしっかりと感じました。
希少部位が食べられるのも魅力。でも人気があるので品切れにも注意
続いて銀皮、ふりそで、ヤゲン軟骨を注文。
銀皮は砂ズリ(砂肝)の外側にある白い部分。コリッコリの食感が楽しいだけでなくって、脂肪分ゼロ、低たんぱく高カロリーで鉄分豊富の上、コラーゲンたっぷりという、なかなかヤル部位なんです。
ふりそでは、手羽元と胸筋の間のお肉。手羽と比べて脂が少なくて、肉汁が多いんです。この肉汁が上品な味。というのも特徴です。
ヤゲン軟骨は薬研(やげん)という漢方に使う、生薬をすりつぶす道具に似ているということからその名が付いた部位。低カロリーで意外とコラーゲンも豊富。ポリポリとした食感も楽しい。
鶏以外のメニューもたくさんあるのですが、あまりに鶏が美味しいので(もう一つ理由があるのですが、それは後で)頼んだのはこれだけでした。
季節メニューから秋鮭のバターポン酢。
鮭がふわっとした食感で食べられる上に、バターはあまり主張せずにコクだけ追加して、ポン酢が全体の味をまとめている感じ。
そして最後に残った汁を吸った鮭を口に入れると次の酒が欲しくなるという、無限天国への入り口のような味でした。
次々と色んな酒が呑めるぞ、呑める。ぽんしゅ天国。
奈良の酒、「百落門」は超辛口にしてゆったりとした香りと米の旨味の強さが特徴。本醸造のお酒はあぶらもんの料理に合うんよ、と店長さんが勧めてくれたお酒です。
静岡のお酒「磯自慢」は低温でゆっくりと発酵させたお酒。吟醸香がふわっと鼻孔を刺激し、呑むとやさしい丸みのある味です。
色んなお酒があってあれもこれも呑みたいのですが、それはまた次の機会にして。と、我慢します。
名物、とり天です。
下味が付いているのでそのままでも美味しいのですが、せっかくお皿に乗っているので、塩とワサビでいただきます。
うんっ、これも旨い。
そして、秘伝やみつき皮。皮を絶妙の温度で揚げ、秘伝のタレに絡ませました、なんて、一体なんてことをしてくれるんですか。
ビールを飲まないと、いられないじゃないですか。
仕方ありません、最後にビールをもう一杯だけ注文する事として、お酒は我慢することとします。
その勢いで、上肝を注文。
この焼き加減が、いい。
最後につくね。
じゅわっと旨みが口に広がります。
我慢できずに再度、日本酒を注文してしまいました。
広島の「瑞冠 新鮮組」は機械で絞らず、もろみを袋に入れて、自重で垂れるしずくを集めてそのまま瓶詰にするという時間と手間のかかったお酒。
ちょっと濁りのあるお酒ですが吞み口はビジュアルとは違って繊細で、切れも良い。
はい、切れも良い所で終了としましょう。
最後に店長さんにこだわりとか、お店のコンセプトについてお聞きしました。
こだわりは、串ものです。と、きっぱり。特に串ものは串から外さずに食べてほしいですねとも仰っていました。
えっ、それはまたなぜ?と尋ねますと、
例えば味付けが塩だと、串で食べる事を考えた塩が振ってあるんです。
塩がかかった場所、かかってない場所が口の、舌の、どの部分にあたるかによって、味の感じ方が変わってしまうので、外さずに串のまま食べてほしいんです。
なるほど、そこまで考えて、そこまでのこだわりを持って作っているんだ、と驚きました。
また、コンセプトについて聞きますと、
梅田という立地や、店の大きさを考えると、本当なら客単価を上げる事を考えるべきかも知れない。けれど、そうではなくて、2000円で美味しく飲めて帰れるお店を目指しています、との事でした。
そのかわり、気軽にまた来てもらおうと。
なので、日替わりメニューや、季節のメニューにひと工夫をいれて、毎日でも楽しんで貰える店を目指しています。
今回取材に際しての条件として、日替わりメニューは極力遠慮してほしいと言われたのも、ネットで見て、これが食べたいと思ってきてくれたお客さんの期待を裏切りたくはない、という理由でした。
日替わりメニューは色々あるよ、という書き方をしたらだめですか、という交渉にも、きっぱり「だめです」と。
こういう裏表なく、非常にストレートな性格もこの店の魅力だと思いました。
だから、安くてもひと手間がかかったメニューを真っ正直に維持し続けられるんだなぁと感じながら、お店を後にしました。
今回紹介したお店
著者・SPECIAL THANKS
憶良(おくら):
元ゲームプランナー、元ゲームプロデューサー。
ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。
休日は名古屋から鳥取あたりの温泉に浸かり、地元スーパーで珍しい食材を買っては料理する。その際食べ歩きにも積極的と、食に対してはかなり貪欲。
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