スペインでは仕事後に同僚と飲みに行くのは良しとされない【日本人が知っておくべきスペイン式飲み会マナー】

渋谷区青山で40年近くも営業しているスペイン料理の老舗「エル・カステリャーノ」。こちらのお店でスペインから来日している美女にスペインでの飲み会事情と海外からみた日本の飲み会文化についてどう見えているのか聞いてみました。(渋谷 ビアガーデン)

スペインでは仕事後に同僚と飲みに行くのは良しとされない【日本人が知っておくべきスペイン式飲み会マナー】

外国人の飲み会っていったいどんな感じなのだろうか?

世界と日本における飲み文化の違いを、筆者(シマヅ)が探っていく企画、第5弾。

過去のアメリカ編、台湾編、ベトナム編、スロバキア編でも、意外とわたしたちが知らずにいた「飲み文化」を知ることができた。

 

今回、紹介するのはスペインの飲み文化。

「スペインって知ってる?」って聞かれたら「当たり前でしょ!」って答えたくなるけど、企画を進めるにあたりちょっと調べてみたところ、分かったのは人が陽気、サッカー強い、フラメンコ踊る、ごはんがおいしい、くらいで、具体的なことはよく分からなかった。

知っているようで全然知らない国、スペイン。

でも「陽気な人」と「おいしい料理」で盛り上がるのがスペイン飲み会なら、きっと楽しいはず!


なんだか豪快なスペイン

エル・カステリャーノ

今回協力してくれたのは、カルラさん。

10年ほど前に留学生としてスペインから来日、現在はスペイン語・日本語・英語・フランス語の通訳や翻訳を生業としている才女だ。

目鼻立ちのはっきりした美人である。

彼女と会った瞬間に、結構本気で「(スペイン人として生を受けたとしても美人になれるかどうかは分からないが)スペイン人に生まれたかった」と筆者は思った。

エル・カステリャーノ

選んだお店は、渋谷青山にある「エル・カステリャーノ」。

かれこれ40年近くも営業している、東京におけるスペイン料理の老舗中の老舗なのだそう。青山という場所柄だ、オシャレなカップルとか多いはず、と思ったけれど、お店からは圧倒的なスペイン感が沸き出していて、お客さんもスペインを熟知している、あるいはスペイン料理が本当に好き、という人が多そうだった。

スペインの方と思われるお客さんも多くいた。

エル・カステリャーノ

テーブルには、イベリコ豚の生ハム原木が置いてあった。

きょうび、ちょっとオシャレなバルならどこも生ハム原木を置いていて若い店員が「お切りしますねー」なんて声をかけてくるものだけど、ここの「ホンモノ感」たるや、開店当時からずっと置いてあるんじゃないかと思えるくらい、重厚な存在感がある。

 

ちなみに、席に座ったら「じゃあ下げますね」と、生ハム原木は店の奥に消えた。

ただのウェルカム演出らしいが、粋である。

 

スペイン人、とにかく陽気

エル・カステリャーノ

まずは、スペインのビールで乾杯。

スペイン人の店主さんに「おススメのビールは?」と尋ねたところ、「スペインのビールなんてどれも同じ味だから!好きなもの頼めばいいよ!」と、めっちゃ明るくアバウトなお返事を頂いた。

 

さてここで、この企画恒例の質問を。

 

シマヅ:

スペインでは、相手にビールを注ぐなどのマナーはあるんですか?

 

カルラ:

やらないよ!

みんな勝手に飲むだけ!っていうか、メモなんかとっていたら楽しく飲めなくない? お食事の場では会話を楽しまなきゃ!

 

なんと、筆者の仕事である「取材のメモをとる」ことにダメ出しが……! 

「仕事は二の次。食事はとことん楽しむ!」がスペインの飲みの基本とのこと。しかし、私は仕事(インタビュー)をしなければならない。

「ですよね!」などと言いながらも、仕事を続行。 

エル・カステリャーノ

シマヅ:

カルラさんは、どうして日本に興味をもったの?

 

カルラ:

それ、日本の人がみんなする質問だよね(笑)。

私の場合、翻訳の仕事をしたいと思っていて、そうなると大学でいくつかの言語を勉強することになるのね。で、ふつうのヨーロッパ人ならドイツ語とかイタリア語とか取るんだけど、ちょっと違う言語もできないと仕事を見つけられないんじゃないかなと思って。それで、大学の講座一覧を見たら、日本語があったの。

 

シマヅ:

じゃあ、翻訳の仕事をするために、珍しい言語も……ということで、日本に興味を持ったんですね。

 

カルラ:

そう、たまたま日本語の授業を見つけたから。

子供のころ、名前は忘れちゃったんだけど日本のアニメも見ていたし、日本の文化は海外での需要もあるし。面白そうだなと思って日本語初級の授業を受けたのね。そしたらホントに面白くて、2年3年とやっていくうちに上達して、そろそろ留学しなければなと思って日本に来た、っていう感じ。

 

シマヅ:

日本に来たとき、びっくりしたことってありました?

 

カルラ:

それもみんな聞くけど、誰がどんなところに行ってもそういうのってあるよね。

とりあえず私が思ったのは、「電車の中でみんな寝る」こと。スペインだったらそんなの危なくて絶対無理! 絶対にサイフがなくなるよ!

 

シマヅ:

ああ、同じようなことは日本人の私でも思います。カバン全開サイフ丸見え状態で寝ている人を見ると「この人、スリに遭ったらどうするんだろう」とか。ところで、スペインでの飲み会マナーについてなんですが……

 

カルラ:

そんな、かしこまって仕事の話をするなんて全然楽しくない! 

せっかくの飲み会なんだから、仕事の話は一切なし!今日は楽しく飲むよ!

 

シマヅ:

!?

エル・カステリャーノ

カルラさんから、事実上の「取材禁止令」を出された筆者。

なので今回は、「スペインの飲み会事情」の紹介ではなく「スペイン人と日本人がお互いの国の話で盛り上がった」という内容になることを、今ここで謝罪させていただきたい。

 

しかし、スペインについて驚きの事実が(奇跡的に)明らかとなったので、最後までお付き合いいただけると嬉しい。

 

→食事はあくまで楽しく! 仕事の話は止めよう!

 

温泉大好き!お魚大好き!でもやっぱり……!

カルラ:

日本人であるシマヅさん(筆者のこと)にこんなことを言うのは申し訳ないけど、日本人より日本のこと知っていますよ!

 

シマヅ:

例えば?

 

カルラ:

温泉の素晴らしさ! 

ずっと「入ってみたい」と思っていたんだけど、公共の場で裸になるのってスペインでは一般的とはいえなくて抵抗があった。最初は恥ずかしかったけど、まずは夕方とかの人が少ない時間で練習して少しずつ慣れていったの。

そしたら、いろんな人が話しかけてくれたりして、温泉って本当に素晴らしくて面白い場所だと実感した! 

特に広島県の「厳島」は最高! 

日本で一番好きな場所かな。私はスペインの北のほうの出身だから、お魚はいっつも食べていたんだけど、厳島のお魚は本当に美味しいし温泉も素晴らしいの。

 

シマヅ:

私は日本人ですが、温泉は少し苦手で。なんでかというと、カルラさんの仰っていた「人前で裸になる」ことに抵抗があるのと「どんな人が入ったのか分からない湯には入りたくない」ってのがあります。温泉に対しての後者の発想は、日本人にしかないのかも知れませんね。

 

カルラ:

そうだと思う。

 

シマヅ:

その国に住んでいるからこそ、「当たり前」になっている贅沢を享受できない的な……。そうすると、今回のお店って、スペイン人のカルラさんからすると「当たり前」になりますか? 

私からすると、本場っぽくてすごい! という「特別感」があるのですが。

エル・カステリャーノ

▲生ハム盛り合わせ。濃厚な肉の味わいと絶妙な塩加減が最高。手でそのまま食べるのがスペイン流。

 

カルラ:

日本人の好みに合わせて多少はアレンジしているかもしれないけど、スペイン人が日本に住んで、ああ久しぶりにスペインの味が食べたいなって思ったら、迷わず来るレベルだよ。

テーブルクロスとかもね、自分のおばあちゃんが使っていたものみたいで、空間ごとスペインっていう感じかな。日本にいるスペイン人も、語学とかフラメンコやっているようなスペイン好きの人も、みんな来るようなお店だから。

日本での暮らしは好きだけど、母国が恋しくなるときは必ずある。そういうときは必ずここに来るよ。

 

→どんなに日本が好きでも、やはり母国が恋しい!

 

アレのせいで日本が危機に!?

エル・カステリャーノ

▲エビのアヒージョ。あつあつプリプリうまうま!ビールよりワインに合います。

 

カルラ:

最近、日本ではスペイン風のバルが流行っているのか、よく見かけることが多いけど、スペイン人の私からしたらイマイチなところがほとんどだよ。

例えばこのあいだ、あるスペイン風バルに行きトルティージャを頼んだの。そうしたら、キッシュみたいなものを出されて。これトルティージャじゃなくてキッシュだよ、って言っても、作っている人は「なにが違うの?」って感じでね。

決めつけは良くないけど、そういうお店ってだいたい、メニューのスペイン語も間違いだらけなの!腹立つ!  

翻訳ソフトそのまんまの場合が多くて、ほんと見てられない。

 

シマヅ:

(トルティージャとキッシュの違いは私も分からないけど)海外の和食屋さんのソレと同じだ! 

でも、日本人はメニューがデタラメな日本語で書かれていても、笑うだけのような気がする。

 

カルラ:

私は翻訳の仕事をしているから過敏になっているだけかもしれないけれど、言葉は「その国の文化」の集大成でもあると思うの。

日本人の「平和を重んじる精神」は本当に素晴らしいけど、許せないものは許せないってキチンと伝えられない限り、日本人は外国人とうまくやっていけないと思う。たぶんね。

 

シマヅ:

すみません。でも、許せないレベルの翻訳間違いを見たことないので、何とも言えません。

 

→翻訳ソフトに頼りっきりだと国際問題に発展するかも!?

 

有名な某料理はスペインの“ソウルフード”じゃない!? 

エル・カステリャーノ

カルラ:

スペイン風オムレツ、これは絶対に食べたい!

 

シマヅ:

好きなんですか?

 

カルラ:

好きというより、私たちのソウルフードって感じ。

各家庭で色んなアレンジをしていて、私のおばあちゃんはよくイワシを入れてたよ。でも、どの家庭でも必ず入れる食材がジャガイモ。どのくらい定番かというと、お寿司にお米とネタがあるのと同じくらい。 

絶対にオムレツにはジャガイモが入ってないとダメね。 

エル・カステリャーノ

▲しっかりとジャガイモが入っています。

 

シマヅ:

私からすると、おつまみのイメージが強いのですが……

あ!スペインといったらコレ! 

パエリア!パエリア頼みましょうよ!!

 

カルラ:

パエリアは違うよ。

そんなに“ソウルフード”じゃない。パエリアはスペインのバレンシア地方の料理で、一般的とまでは言えないかな。だけど、日本人はお米が好きだからパエリアを受け入れやすく、しかも見た目が派手だから「スペイン=パエリア」ってイメージが根付いたのかもね。

 

シマヅ:

ごめんなさい……!

 

カルラ:

謝らないでいいよ! 

でも、そういう「ステレオタイプなスペイン人」のイメージを壊したいとは、ちょっと思う。

 

→食文化の決めつけ、NG!

 

「シエスタ」は絶滅危惧種?

エル・カステリャーノ

シマヅ:

そうそう、スペインでいちばん憧れるのが、「シエスタ」! 

中学生時代に教科書で習ったので、たぶん日本人はほぼみんな知っているんじゃないかな? 

平日の暑い時間にお昼寝するっていう習慣! 日本にも持ち込んでほしかった!

 

カルラ:

待って、待って! それも違うから! 

スペインでも、シエスタができない人ってたくさんいるんですよ! 

スペインは、ヨーロッパで一番、働いている人が多い国なんですよ!

 

シマヅ:

えええええええ!?

 

カルラ:

驚くってことは、「スペイン人は怠け者」って思っているね?

 

シマヅ:

ごめんなさい。そんなんじゃな……えっと……

 

カルラ:

だいじょうぶ、世界のみんながそう思っているから(笑)
あとは、スペインの男性って、あんまり働かないんだけど、その代わりに育児や家事には協力的なの。

子育てに参加しない男性なんて、スペインでは論外だよ。……とはいっても、ノルウェーやスウェーデンに比べたら、男性の子育てについては、まだまだ遅れているんだけどね。日本は……どうなんだろう?

 

→今の教科書には「シエスタ」って載っているんでしょうか?

 

せめて、まとめだけは「取材」らしく…。

美食の国・スペイン、お酒も好きそうだし、毎晩のように会社のみんなで飲み会でもしているのだろうと思っていた。

 

しかし、どの地域も職場の飲み会などはあまり開かれておらず、細かく言えば地方によって色々と異なるらしいが「会社の同僚と食事に行く事は、ほとんどない」という。基本的に仕事とプライベートは別で、仕事が終わってまで同僚と飲みに行くのはあまり良しとされておらず、帰宅してから友人と飲むのだそうだ。

同僚と食事に行くとしても年に数回のパーティー等だけで、断っても全然OK。

とにかく「働くために生きるのではなく、生きるために働くのだ」という考えが浸透しており、日本人は仕事を人生の中心に置きすぎだと指摘された。しかし、スペインの人は今、ほとんどシエスタをしないなんて……飲み会文化よりも、そっちのほうに驚かされた。


【取材協力店舗】

※掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。

 

合せて読みたい海外飲み会シリーズ

 

こちらは子育て家庭を持つのアメリカ人パパに飲み会事情。「早く帰ってこい」「飲み会出席しにくい」というプレッシャーはアメリカにもあるのでしょうか?

 

著者・SPECIAL THANKS

シマヅ

ライター/シマヅ

1988年生まれ。フリーライター。 武蔵野美術大学造形学 部芸術文化学科を卒業後、2年ほど美術業界を転々としていたが現在は主にWEB上で文章を書き生計を立てている。女性向けコラム、インタ ビュー記事、グルメレポート、体験記事など、幅広い分野で執筆活動を行う。

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