ダメだった自分が仕事が続けられたのは四谷という町のおかげだった。四谷の名店を食べ歩いたら懐かしくて涙が出た話

四谷(四ツ谷)の「しんみち通り」から荒木町にかけて、美味しいお店がたくさんあります。ラーメン、洋食、和食、中華など名店がひしめき合っています。記事では、じんわり優しい味のラーメンがいただける「支那そば屋 こうや」、安くて美味しい味噌ラーメンの「旭川らあめん こもり」、人気洋食店から揚げ物のお店に転換した「かつれつ 四谷たけだ」、名店のオムライスの味を受け継ぐ「キッチンたか」、言わずと知れたたん焼の大人気店「たん焼 忍」を紹介しています。(四谷(四ツ谷)のグルメランチ

ダメだった自分が仕事が続けられたのは四谷という町のおかげだった。四谷の名店を食べ歩いたら懐かしくて涙が出た話

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私、ライターの榎並紀行は20代のほとんどを東京四谷で過ごした。JR四ツ谷駅から徒歩5分の会社に10年勤めたのだが、仕事がへたくそだったので土日出勤も多く、ひどいときには1年365日のうち315日くらいは四谷にいたと思う。

 

激務でやさぐれまくった心を癒やしてくれたのは、食である

四谷界隈には、そこにしかないスペシャルな名店が本当に多かったのだ。おかげでぶくぶく太ってしまったが、うまいメシに慰められつつひたすら働いたおかげで、仕事はそこそこできるようになった。

 

会社を辞めてからは(当時のブラックな日々がよぎり涙がこぼれるため)久しく四谷を訪れてなかったが、今日は7年ぶりに当時よく通っていたお店を巡ってみたいと思う。あの店やあの店は、果たしてまだ健在なのだろうか?

 

1.じんわり励ましてくれた優しい味のラーメン「支那そば屋 こうや」

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支那そば屋「こうや」は、当時最も通い詰めたお店だ。週2以上は通っていたので、たぶん通算900回は来店していると思う。

 

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仕事量が処理能力のキャパを超えると、現実を忘れるためついここへ逃げ込んでしまうのだ。つまり週2以上でキャパを超えていたという話になり我ながら気の毒だが、ここの支那そば(ラーメン)を食べれば不思議と残業に立ち向かう気力が湧いてきた。

丁寧に、丁寧に作られたやさしい味わいのラーメンが「おまえはやればできる子だよ」とじんわりと励ましてくれるようで、なけなしのやる気を振り絞ることができたのだ。

 

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とはいえ、仕事はたんまり残っている。当時は残業前の束の間をぬって、支那そばを慌ただしくすすることしかできなかった。隣でおじさんが食べている、うまそうなつまみもビールも我慢した。我ながら、意識の高い社畜だったと思う。

 

しかし、もはや残業を命じる上司はいない。

おれは自由だ。

 

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ということで、あのころは頼めなかったつまみメニューから、憧れの「皿雲吞」と「青島ビール」を注文した。自由の味がした。

(余談だが、写真を撮らせてほしいと言ったら、おかあさんが「あら、じゃあもっと綺麗なシャンツアイのせるわね」と、よそいきのパクチーにかえてくれた)

 

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この雲吞、形がおもしろい。真ん中に肉がきゅーと固まり、その両側に皮がびろーんと広がっている。この形はもしかしたら、肉と皮、双方の長所を存分に生かす、雲吞の最適解かもしれない。豚肉のうま味、皮のもちもち感、それぞれの持ち味をしっかり楽しむことができるのだ。

 

辛みそとネギをたっぷり絡めて食べてもうまい。

 

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そうこうしているうちに、支那そばがやってきた。7年ぶりの再会。泣いてしまいそうだ。

 

そうそう、青ネギたっぷりがうれしかったんだよなあ。

 

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そうそう、細麺だったよなあ。

 

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スープは美しく澄み切っていたなあ。

 

人生で最も多く食べたラーメンなので、どんな味かハッキリ覚えている。もう、見ただけで味がするほど覚えている。

 

もはや食べなくても満足だが、食べてみたらもっと満足した。やっぱりうまい!

ラーメンというのはどちらかというと「攻撃的な」料理だと思うが、こうやの支那そばは「ボランチ」みたいな安定感がある(サッカーに疎いので、なんとなく書いています)。

 

塩気をほんのりまとわせたスープ。ひと口目はやや物足りない。しかし、食べ進めると気づく。そのどこまでも深く、やさしい滋味に。

 

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うっかり雲吞を放置しカピカピにしてしまっても、スープにひたすと復活する。

 

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なお、近くには姉妹店の「徒歩徒歩亭(とぼとぼてい)」もあるので(名前がいい!)、こうや混雑時にはこちらへどうぞ。

 

〈紹介したお店〉

TEL:03-3351-1756

TEL:03-5269-7717

 

2.「旭川らあめん こもり」の味噌ラーメンがパワーをくれた

ラーメンでいえば、しんみち通りの「旭川らあめん こもり」にも行きたおしていた。

 

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四ツ谷駅前から伸びる飲食店街「しんみち通り」。その奥のほうにあり、こちらも評判のいいラーメン屋だった。

 

ランチタイムのピークを過ぎた13時、こちらも7年ぶりに来店してみた。

 

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店内はカウンターのみ。僕のおすすめは、入口側の端っこだ。

厨房の見通しが良く、手際よくラーメンを作る店長の職人技を眺められる。また、店長による「全部入りはチャーシューで花びらを作るように」といった、新米スタッフへの熱い指導も見える。見えたからなんだという話ではあるが。

 

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こちらがその「全部入り(味噌らあめん)」1000円。指導の甲斐あって、美しい花が咲いている。わーい。

 

花びらの中央には白髪ネギがこんもりと。のり、煮玉子も入っていてごちそう感がすごい。

 

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ちなみに、オーソドックスな「味噌らあめん」は580円。安いのに分厚いチャーシュー2枚という気前の良さ。安くてうまいラーメンといえば、今でも真っ先に思い浮かぶのがこもりだ。

四谷で過ごした10年間ずっと金欠だった僕にとって、安価ながら満足度の高い味噌ラーメンがどれだけ活力になったことか。

 

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麺は「中太」がデフォルト。きしめんのような幅広タイプの平打ち麺も選べる。

 

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スープは濃い。これぞ旭川ラーメンという、ガツンとうまい王道の味噌。

 

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その濃厚スープを煮卵にねっとりからめて食べれば、もうね……。

パンチの利いた一口一口に、元気がもりもりにみなぎってくるのである。「こうや」とは別のアプローチで、パワーをくれるラーメンだ。

 

残業前の癒しを求めた「こうや」に対し、「こもり」はランチでくることが多かった。午後に向けてがっつりとカロリーをチャージし、うず高く積まれた仕事の山に挑むのである。しかし、定時までに登りきれたことは、ほぼない。だから今度は「こうや」に行く。そりゃ太るはずである。

 

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なお、「こうや」「こもり」ともに同行した後輩ライターの小野くん27歳は、「ぼくはこもりのほうが好きっす」と言っていた。さすが20代、胃が若くて頼もしい。

 

〈紹介したお店〉

TEL:03-3341-5305

 

3.姿は変わってもマジメさは変わらない「かつれつ 四谷たけだ」

しんみち通りには他にも行きつけの店が多数あったのだが、特に「エリーゼ」という洋食店への思い入れが強い。何でもうまかったが、オムライスがえらく絶品で、狂ったようにこればっかり食べていた時期があった。

 

しかし、ある日「エリーゼ」は突如、「かつれつ 四谷たけだ」という看板に変わり、僕が愛したオムライスもメニューから消えた(本当に1日でお店が変わってしまったのだ)。

同じくエリーゼファンの同僚が仕入れてきた情報によれば、オーナーもそのまま、スタッフさんもそのままだが、揚げ物に特化したお店にシフトし、店名も新たに再スタートすることになったのだという。

突然の別れ。どんな有名洋食店のオムライスをもってしても、その喪失感を埋めることはできなかった。

 

結局、新しい店には一度も足を運ばなかった。

 

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なお、エリーゼは気取ったグルメ雑誌なんかにも度々登場する有名店で、いつも行列ができていたため営業不振によるテコ入れ的なリニューアルではない。あくまで「揚げ物を極めたい」という店主の信念によるものだ。

 

とはいえ、人気店の看板を下ろすのは相当な覚悟が必要だったに違いない。僕のように、食べてみることもせず距離を置いた、薄情な常連もかなりいたのではないかと思う。

 

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それがどうだ、今やエリーゼ時代と同じ、もしかしたらそれ以上の行列が「かつれつ 四谷たけだ」にはできていたのだ。11時の開店前から行列が生まれ、開店と同時に満席になった。

 

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カウンターに大量のキャベツをスタンバイさせ、テキパキとオーダーをさばくスタイルは昔と変わっていなかった。また、満席で密集度は高いのに、どこかゆったりした居心地の良さも「エリーゼ時代」そのままだ。忙しいのに殺伐としていない、優雅な雰囲気がいいのである。隣のお父さんは、トンカツをつまみに昼から瓶ビールを2本空けていた。

 

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ポークカツレツ定食1300円。やわらかな熟成豚ロース肉は脂が甘くて、卓上のテキサス岩塩とよく合う。テキサス岩塩とはテキサスでとれた岩塩である。塩でとんかつ食うなんてしゃらくさいと思っていたが、食通がやたら塩を推してくる気持ちが分かった。いい肉は塩だ。

 

とはいえ、特製デミグラスソースがたっぷりかかった部分も、それはそれで超うまい。ソース上のエダムチーズで、もうひとつ味の階層を重ねてくるところもニクい。

 

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また、定食のライスに+120円でちょいがけしたカレーが、これまたとんでもなくうまかった。軽い気持ちでちょいがけしてしまったことを申し訳なく思うほどに、本気のビーフカレーだった。

カレーを口に含み舌先でちょいと転がすだけで、ビーフがほろほろとほぐれる。よっぽどいい肉を使うか、うんざりするほど煮込まないと成し得ないほろほろだ。揚げ物専門店としてはメインではないはずのカレーへの取り組み方にも手抜かりがなく、このお店のマジメな姿勢を物語っていると思う。

 

栄光の看板を一度捨てて個性を尖らせ、再び行列店となった「かつれつ 四谷たけだ」。

その心意気、僕も見習いたいものだ。とりあえず、3年前にバズった記事を何度も読み返し栄光をこすりまくるのは、今日で終わりにしたいと思う。

 

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ちなみに、「かきバター焼」など、エリーゼ時代の人気メニューも少し残っているようなので、今度はそっちを攻めてみたい。

 

〈紹介したお店〉

店名:かつれつ 四谷たけだ
住所:東京新宿四谷1-4-2 峯村ビル1F
TEL:03-3357-6004

r.gnavi.co.jp

 

4.あのオムライスをもう一度「キッチンたか」

 しかし、である。やっぱりもう一度だけ、エリーゼのオムライスが食べたいんや!

 

……ということで、インターネットでしつこく調べた結果、しんみち通りから10分ほど歩いた荒木町というところに、「エリーゼの元従業員がやっているお店がある」との情報をキャッチした。オムライスもあるという。

 

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それがこちらの「キッチンたか」さん。カウンター5~6席ほどの小さなお店で、料理は全て店主一人で作っているようだ。写真を撮っていいですか? と聞くと無言でコクリと頷いた。寡黙だがいい人なんだろうな。

 

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そして、念願のオムライスが登場。オムライスを端に寄せ、中央にケチャップの海を配した独特の盛り付けにこだわりを感じる。その見た目や、キャベツとポテサラがついてくるところはエリーゼのオムライスをほうふつとさせる。

 

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そして、スプーンで割ってみると、おお! これこれー。

 

ケチャップライスの色はうすめで、バターライスとか、ピラフのそれに近い。酸味は抑えめで、中央のケチャップで好みの味に調節できるスタイル。玉子はしっかり焼かれている感じなのに、なぜかとろっとしているんだよなあ。おいしい、おいしいなあ……。

 

思い出のオムライスに「再会」できたことが余りにも嬉しくて、会計時、おかみさんに思いのたけをぶつけた。僕がいかにエリーゼのオムライスを愛していたか、7年越しの告白だ。

おかみさんは「まあ、(店主が)働いてたってだけなんですよ」と一言。僕の情熱はあまり伝わらなかったが、働いててくれて本当にありがとうございます。

 

〈紹介したお店〉

TEL:03-3356-2646

 

5.あらゆることがどうでもよくなるくらい美味しい「たん焼 忍」

 最後は「たん焼 忍」。有名な牛タン専門店である。

 

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「忍」は勤めていた会社の真向かいにあり、当時から行列の絶えない人気店だった。というか、10年間、行列ができていない時がなかった。

 

ちなみに、会社の真向かいにありながら、僕は3回くらいしか行ったことがなかった。お金がなかったし、当時は行列に並んでまで美味しいものを食べようという心のゆとりがなかった。

 

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初めて訪れたのは入社5年目くらいの時だったと思う。

当時、僕と同じ部署に問題児っぽい若手の社員がいて、上層部はその扱い方に頭を悩ませていた。そこで、上司は問題児と比較的年齢の近い僕に「1万円やるからあいつと飲みに行って、本音を探ってきてくれ」との命をくだした。気の進まないミッションだったが、どうせならうまいものを食ってやろうと「忍」の門をたたいたのだ。

 

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そして、とりあえず一番人気だという「ゆでたん」を口にした瞬間、あまりのうまさにいろんなことがどうでもよくなった。

何事かを仰せつかっていたような気がするけど、この極上の逸品に対し、邪念をもって臨むのは失礼だ。僕は職務を2秒で放棄し、問題児と馬鹿話しながら、たらふく牛タンを食った。問題児を更生させるために送り込まれたのに、おれのほうがとんだ問題児だった。上司も誤算であったろう(偉そう)。

 

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そのまま2時間くらい飲み食いしたのだが、もうずっと楽しかった。結果的に彼の口もなめらかになり、悩みや会社に対して思うところを吐き出してくれた。

ただただうまいものを(人の金で)たらふく食って、当初の目的も完璧に果たす。あれほど会心の結果オーライは、後にも先にも他にない。なお、予算を2万円ほどオーバーしたが、上司から後日きっちり取り立てた。ごめん上司。

 

だって仕方ないだろう、忍は全てのものがうますぎるのだ。カネのことなど気にしてられるか。

 

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肉厚の「たん焼」は、うま味と弾力がケタ違い。戦闘力53万くらいの牛を使っている感じがする力強さ。

 

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和風のデミグラスソースで煮込んだ「たんシチュー」。そのままでも無論うまいが、

 

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箸ですっとほぐして、

 

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パンにのせ、からしをつけて食べた瞬間、おいしさのスカウターはぶっ壊れる。

 

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あまりのうまさに、小野くんが昇天してしまった。

 

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その後、問題児は僕の部下になり、まあまあいい関係が築けたと思う。それが今の小野くん……ではなく、ぜんぜん別の人である。元気かな、あいつ。

うまいもの食って馬鹿話すれば、たいていの問題は解決する。しかし、そればっかりだと「あいつはただ飲みたいだけ」と陰口をたたかれるので注意が必要である。

 

〈紹介したお店〉

TEL:03-3355-6338 

 

素晴らしすぎるぞッ! 四谷

(1. 支那そば屋 こうや 2. 旭川らあめん こもり 3. かつれつ 四谷たけだ 4. キッチンたか 5. たん焼 忍)

 

今回巡ったのは以上の5件。だが、久しぶりに四谷を歩いてみたら他にも好きだったお店をわんさか思い出し、改めて界隈のグルメ偏差値の高さに唸らされた。

 

まあ、思い出補正で多少バイアスがかかっている部分もあるかもしれないが、それがスパイスになるなら素直に感動しておくほうが人生は楽しい。次はまた、違う街の思い出グルメを巡ってみようと思う。

 

プロフィール

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榎並紀行(やじろべえ)

1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。
> ツイッター: Twitter (@noriyukienami)
>ホームページ:やじろべえ

                             
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