「東京のご当地グルメ」って結局何なの?→ 探してみたら新発見がけっこうありました

「東京のご当地グルメ」はいったい何なのでしょうか?深川めしやもんじゃ焼き、ちゃんこといったものが思い浮かぶでしょうか。大阪には、たこ焼きやお好み焼きといった有名なソウルフードがある一方で、東京にはこれぞ!というご当地グルメがなかなか見当たりません。今回は東京のご当地グルメを徹底的に調査。誰でも知っているもんじゃ焼きから、地元民に長く愛されているレバーフライ、江戸時代から食べられている由緒正しいべったら漬などを紹介します。(町屋のグルメ日本料理・郷土料理

「東京のご当地グルメ」って結局何なの?→ 探してみたら新発見がけっこうありました

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ライターの周東淑子と申します。

みなさんは出身地の「ご当地グルメ」を聞かれたら、何と答えますか?私は生まれも育ちも大阪ですが、もし聞かれたら「たこ焼き」以外にも「若ごぼうの炊いたん」とか、「とん蝶」とか、相手の意表をつくようなローカルなグルメを紹介したくなります(これらはまた別の機会に!)。

 

しかし、東京出身の人にご当地グルメを聞くと「……ちゃんことか?」と、あまり意外性のない答えが返ってくることが多い気がします。そこで今回は、東京でも“知る人ぞ知る”ご当地グルメの店を訪ねてみました。

 

1. 実は荒川区発祥!? 町屋「浜作もんじゃ会館」のもんじゃ焼き

意外性とか言っておいて、最初は超ベタですみません。しかし、もんじゃ焼きが月島ではなく、実は荒川発祥だという説をご存知の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか? 真相を探るべく、荒川区・町屋の老舗「浜作もんじゃ会館」を訪ねました。

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迎えてくれたのは、もんじゃを焼いて50年という女将さん。

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女将さんによると、もともともんじゃは駄菓子屋さんで出されていた“おやつ”だったといいます。荒川周辺は菓子問屋が多かったために、このあたりでもんじゃ焼きが始まったのではないかとのこと。「昔はメリケン粉(小麦粉のこと)を水で伸ばしたものにソースで味をつけて焼いたものを、おせんべいに載せて食べていたみたい。今と違って食べ物のなかった時代だから、お腹を膨らますための子どもたちの知恵だったんでしょうね」(女将さん)。

女将さんのご好意で、「昔のもんじゃ」を再現していただきました。 

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メリケン粉を水で溶いて、ソースを入れ、

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焼いて…

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ソースせんべいに付けて食べる。ソース味の小麦粉がねっとりとしていて、確かにお腹が膨れそうです。さらに、溶いた小麦粉で文字を書く「文字焼き」がなまって「もんじゃ焼き」になったという説もあるようで、そちらも再現してくれました。 

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手慣れた手つきで…

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「もんじゃ」が完成。こちらは黒蜜を付けていただきました。

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「も」を食べる。なんだか楽しい。
※「昔のもんじゃ」はお店のメニューにはありませんが、お願いすれば作ってもらえるとのことです。

 

もちろん、「現代のもんじゃ」もいただきました。

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「浜作もんじゃ(900円)」は、えび、かに、ひき肉、いか、人参、しいたけ、ピーマンなど具だくさん!

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なお、具をドーナツ状にする「土手」は作らず、よく混ぜてそのまま鉄板に伸ばしていくのが荒川流なのだとか。「荒川区にはすでに土手がたくさんあるから、もんじゃに土手はいらない」というジョークもあるようですが、おかみさん曰く「単純に混ぜて焼いた方が美味しい」とのこと。香ばしい香りが漂ってきます。

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具が多いので、食べる箇所によって味が変わります。ピーマンが入っていることに驚きましたが、食べてみるとさっぱりして美味しい。ヘラで具材を集めて“優しく”鉄板に押し当てるとうまくすくえるそう。でも、結構難しい。

 

駄菓子屋さんから始まったということもあり、みんなでワイワイ楽しみながら作って食べられる荒川もんじゃ。予想以上にお腹が膨れるので、複数人で行くのがオススメです。

ちなみに、ソース味で喉が渇いたら、都電荒川線沿線に咲く「バラ」をイメージした「荒川ハイサワー」もあります。赤しそのシロップ+レモンハイサワーでさっぱりと、より美味しくもんじゃ焼きが楽しめそうです。

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紹介したお店

店名:浜作もんじゃ会館
住所:東京都荒川区荒川6-4-11 伸和ビル2F
TEL:03-3819-4855
営業時間:11:30~22:00
定休日:奇数月の第3水曜日
URL:https://r.gnavi.co.jp/9733t6mw0000/

 

2. レバー嫌いでも安心!元祖月島レバーフライ「ひさご家阿部」

もんじゃ焼きが荒川発祥だったとしたら、月島の真のご当地グルメは……?と思って調べてみたら、地元民の間では「レバーフライ」が食べられているとの情報が。そこで向かったのは月島駅から歩いて5分ほどのところにある、1949年創業の元祖月島レバーフライ「ひさご家阿部」です。

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レバーフライは、薄く切った豚のレバーにパン粉を付け、油で揚げた後、ソースにつけて食べるシンプルな食べ物。サクッとしつつ冷めても固くならないので、女将さん曰く「歯が生えたばかりの赤ちゃんからお年寄りまで、親子4代で食べられている」という、まさに“ソウルフード”です。

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1本150円で、手で持つと旗のような形。花見や花火大会のお供としても人気だそうです。テイクアウト専門店ですが、「ここで食べます」というとからしと一緒に出してくれます。

ここまで書いておいて何なのですが、実は私、レバーが大の苦手。今回の取材は、レバー好きの同僚・小野くんにも同行してもらいました。

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「ソースに浸かってるのに、サクサクしてる。ビールに合いそう!」。ということで、私も恐る恐る口に運んでみると…

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あれ……? レバー独特のにおいと、口に入れた時の“ぬたっ”とした感じが全然気にならない。サクっとしていて、揚げ物なのに軽い口当たりで美味しい!

レバーに特別な下処理をしているわけではないそうなのですが、臭みがなく、レバーが食べられないという貧血の女性や妊婦さんもわざわざ買いに来られるそう。ちなみにフライを揚げている女将さんも「私もここ以外のレバーは食べられない」とのことなので、レバー嫌いの人でも安心して挑戦できるはず!

 

取材中、レバーフライを店頭でさっと食べて立ち去るビジネスマンの姿もありました。サッと食べられて元気が出るので、これからの季節、営業途中の栄養補給にもオススメです。

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紹介したお店

店名:元祖月島レバーフライ ひさご家阿部
住所:東京都中央区佃3-1-12
TEL:03-3533-4955
営業時間:11:00~13:00、15:00~18:30
(第一を除く月曜日は15:00~18:30)
定休日:日曜・祝日、第一月曜日
URL:http://hisagoya-abe.jp/

 

3. 宮内庁も認めた日本橋「東京新高屋」のべったら漬

じつはこの企画に際し、私の頭に東京のご当地グルメとして真っ先に頭によぎったものがあります。「べったら漬」です。

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これです。甘くて白い、大根の麹漬けです。小さい頃、たま~に大阪のスーパーにも売られており、見つけると母にせがんで買ってもらいました。関西のお漬物は基本しょっぱいので、これを初めて食べた時、「東京にはこんな美味しいものがあるんだ」と感動しました。

しかし、東京出身の友人に話すと「食べたことない」との声が多数。こんな美味しいものを知らないなんて悲しすぎる。その歴史と美味しさをもっとみんなに知ってほしい! ということで「東京べったら漬」を作っている「東京新高屋(とうきょうにいたかや)」にお話を伺うことにしました。

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会社の玄関には「東京べったら漬」の提灯が下がっていました。

もともと、べったら漬は江戸時代、日本橋大伝馬町の宝田恵比寿神社の例祭で売られていた“縁起物”だったといいます。当時はもちろんビニール袋なんてなかったので、麹が付いた大根をそのまま縄で縛って「べったり付くぞ~」と囃し立てながら持ち帰ったことから「べったら漬」と呼ばれるようになったとか。今でも毎年10月19日、20日には「日本橋べったら市」が開催されているそうです。

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甘いお漬けものは全国でも珍しく、なかでもべったら漬は「キレのある甘さ」が特徴なのだとか。脂っこいものにもよく合い、オーソドックスなべったら漬のほか、「ゆずべったら漬」なんかも。目黒のサンマ祭りでは「すだちべったら漬」も数量限定で販売されるそうです。1人暮らしでも食べやすいよう、スライスしたものをパックに詰めたものもあります。

 

東京新高屋のべったら漬は、かの昭和天皇も好んで召し上がっていたとのこと。社内には「宮内庁御用達」の看板もありました。

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日本橋名物のべったら漬ですが、今は全国のスーパーで販売しているといいます。自宅で食べるときは、

(1)袋から出すとき、麹は水で洗い流さず拭う程度に!
(2)幅は7~10mm。厚めに切った方が美味しい!

とのこと。さっそく試してみました。 

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 麹は拭う程度で、厚めにカット。「白飯」派と「お茶受け」派があるそうですが、私は白飯で。

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あ~。やっぱり美味しい。パリパリとした歯ざわりと、さっぱりした甘さでご飯が進みます。特にしょっぱいおかずが多いときは、べったら漬があれば、いい箸休めになります。 

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暑くて食欲がない時でもさっぱり食べられるので、早くも夏バテ気味……という人はぜひ一度ご賞味あれ。

 

お話を聞いたところ

メーカー名:東京新高屋
(べったら漬は全国のスーパー、オンラインショップで販売。本社での販売はしていません)
住所:東京都中央区日本橋浜町3-2-2(本社)
TEL:03-5614-9090
URL:http://www.niitakaya.co.jp/

 

4. 元気の出る地元グルメ、十条「味の大番」のからしやき

酒場の聖地として知られる十条界隈に、知る人ぞ知るご当地グルメ「からしやき」があると聞きつけ、やって来たのは十条駅すぐの「味の大番」。

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こちらが「からしやき定食(850円)」。黄色い「からし」を想像していたら、まったく違うものが出てきました。深めのお皿に、赤く染まった豆腐や豚肉がたっぷりと盛られています。見た目はマーボー豆腐っぽいですね。

 

いただきます。

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あま!……辛っ! 

口に入れた瞬間甘みが広がるのですが、その後すぐに唐辛子の辛さが広がります。「甘辛い」というよりは、「甘い→辛い」の順で訪れる感じ。しかし嫌な辛さではなく、クセになるような辛さ。箸が進みます。

大きめにカットされた豆腐には味がよくしみていて、豚肉は油で揚げたようなしっかりとした食感。噛めば噛むほど旨みが広がります。油が多めですが、上に載ったキュウリの千切りと白ネギで口の中がさっぱりします。

さらに食べ進んで行くと……

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にんにくが丸ごと登場。ただ、においはそれほど気にならず、ホクホクとしていてお芋のよう。にんにくを見つけるころには辛さにも慣れ、白飯が欲しくなってきます。残った汁をスプーンですくい、白いご飯と一緒にかきこむと、うまい……。なんだか元気が出てきました。

ちなみに「からしやき定食」はボリューム満点なので、少食の方には「ミニからしやき定食(750円)」が良いかもしれません。

 

取材に伺ったのは金曜日の18時前。店内はすでに地元のお客さんで賑わっていました。おつまみメニューも揃っているので、夏バテ予防のためにも、からしやき+ビールで酒盛りを楽しむのも良いかもしれません。

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紹介したお店

店名:味の大番
住所:東京都北区上十条2-11-10
TEL:03-5993-4182
営業時間:11:00~14:30、17:00~22:00
定休日:水曜日
URL:https://r.gnavi.co.jp/khetjta40000/

 

5. 区役所で独自の進化を遂げた「品川めし」

最後にやってきたのは、品川区総合庁舎。第2庁舎の2階にある食堂で、品川の地元グルメ「品川めし」が食べられるといいます。「深川めし」は有名ですが、はたして品川めしとは……?

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区によると、江戸時代、漁業が盛んだった品川近郊で賄いめしとして出されていたのが「品川めし」の原型。もともと具はシャコだったそうですが、その後シャコが取れなくなるとアナゴなどが使われるようになったとか。ただし、文献やレシピが残っているわけではなく、「甘辛く煮たり、卵でとじて丼にしたりと、それぞれ味付けが違ったのでは」(品川区人事課・野口香織さん)とのこと。

 

区役所食堂では以前から「品川めし」を提供していたのですが、2016年に食堂を運営する事業者が変わり、メニューもリニューアルしたといいます。それがこちらの「品川めし(500円)」。

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あれ、オムライス……?

区によると、以前は甘辛く煮たアナゴに温泉卵を載せた丼だったそうですが、リニューアルに合わせて姿を変え、今では区のPRに一役買っているといいます。 

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PRということで、「わ!しながわ」の焼印が。一見洋風ですが、玉子をめくってみると……

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ちらし寿司が登場!甘辛く煮たアナゴも載っています。ケチャップのようにかかっている“のり”は、その昔、品川の名産品として知られていたそうです。

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こんなにも見た目はオムライスなのに、味はいたって和風。ちらし寿司には、人参、しいたけ、レンコンなどがふんだんに入っています。酢飯はさっぱりしつつ、お米がしっかり詰まっているので結構ボリュームがあります。

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カメラマンとして同行してくれた小野くんは、スプーンでがぶり。「ちらし寿司に玉子ってお祭り感があって良いですよね」だそうです。

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添えてあるガリはピリッと辛く、いい味出してます。

そんな「品川めし」ですが、区民の認知度はイマイチだそうです。昔はメニューとして提供する飲食店もあったようですが、「今品川めしを出しているのは、ここだけじゃないでしょうか」(野口さん)とのこと。食堂は、区職員だけでなく一般にも開放されています。品川区民の方もそうでない方も、独自の進化を遂げた「品川めし」を食べに、ぜひ足を運んでみて下さい!

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紹介したお店

店名:品川区役所食堂
住所:東京都品川区広町2-1-36 区総合庁舎第2庁舎2階
TEL:03-3777-1111
営業時間:11:00~14:00(ランチ営業)
定休日:土日祝日

 

というわけで、意外と東京にも独自に進化を遂げた「郷土食」が存在していました。その背景にある食文化やウンチクも込みで楽しい東京ご当地グルメを、ぜひ味わってみては?

おまけ

ちなみに、品川区役所食堂の隣には初期消火や放水体験ができる「しながわ防災体験館」があります。 

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かなり本格的な訓練が体験でき、けっこう体力を使います。「品川めし」で腹ごしらえをして、防災について学ぶのも良いかもしれません(しながわ防災体験館は無料で、開館時間は9:00〜17:00。月曜、土曜、祝日、年末年始が休み)。

 

プロフィール

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周東淑子(やじろべえ)

大阪府出身。地方新聞記者、ウェブ編集者を経て、東京の「やじろべえ」という会社でライター、編集者をしています。
ホルモンはテッチャン、お酒は「奥丹波」が好きです。

やじろべえ https://www.yajirobe.me/

                             
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