都心ではいろいろトッピングすると軽く1,000円を超えてしまうラーメンもあるが、やはり庶民としてはB級グルメのラーメンに1,000円以上出すのは、ちょっとためらってしまう。
それなのに東京郊外の、しかも住宅街に1,000円オーバーの人気つけ麺があるのだという。果たして野口英世先生を差し出す価値が本当にあるのか、私は話題のお店に行ってみた。
期待より不安が増す立地
やってきたのは、西武拝島線の西武立川駅。「立川」と名が付いてることからわかる通り、立川市にある駅なのだが、デパートが立ち並ぶ立川駅とは全く違う。
駅舎こそキレイだが、降り立った南口にはコンビニとスーパーがあるだけ。あとは住宅ばかり。
電車に乗っている間は、「わざわざ電車に乗ってラーメンを食べに行くんだから、旨くなければ許さないぞ」という勢いだったのだが、ここまで何もない駅前を見ると、「本当にこんなところにラーメン店があるの?」と不安になってしまう。
スマホでマップを見ながら300メートルほど歩くと、あった、あった!
これが今回、1,000円オーバーの人気つけ麺があると聞いて訪れてみることにした「UMA TSUKEMEN(ユーエムエーつけめん)」だ。
店名も変わっているけど、この自由の女神をモチーフにしたデザインは何?
自由の女神が人差し指で上を指しているけど、これって「ウチが一番」っていう意味?
何だか期待より不安が高まってきたよ。大丈夫なのか?
見た目に圧倒!工夫も満載
店内はカウンターのみ13席。
入ってすぐのところにある券売機でチケットを買うシステムだ。私は一番高くて人気のメニューである「極UMA MEGA 海老つけめん」(1,300円)を注文してみた。
同じ値段で中盛りもできるということなので、迷わず中盛りに。こういうところで貧乏根性が出ちゃうんだよね。
さて、待つことしばし。
「お待たせしました」と店長さん自らがカウンター越しに出してくれたのが、こちら。
もうこのビジュアルにビックリ!
何これ?
桜エビがチーズとともにこんがりと焼かれて、いい香りを漂わせているこのパイ包みの容器が、どうやらつけ汁になっているようだ。
これってロシア料理のつぼ焼きみたいだよね。パイ生地でフタをするように焼き上げることでつけ汁の保温性が増し、またパイ生地を浸して食べると旨いんだよねぇ。
それにしてもパイ生地のこの膨らみ具合、凄いねぇ。このパイ生地だけでもかなり食べ応えがありそうだ。
そして手前のアルミホイルの中には分厚くてデカいチャーシューが入っている。
これ、出された時には、アルミホイルは閉じられていたんだよね。
そこでパシャッと写真を撮ればよかったんだけど、「あれ? コレって何だ?」という疑問が先に立ち、つい速攻でアルミホイルを開けてしまったんだよね。
中身を見た時の驚きったら、もうないよね。
つけ麺の場合、チャーシューってつけ汁に入っているか、麺と一緒に盛り付けられているかだから、まさか別皿で、しかもこんなデカいものが出てくるとは思わなかったよ。
麺の中にポツポツと見える茶色の物体は全粒粉。
あとから店長さんに聞いた話だと、つけ汁はアツアツのため、粘り気が少ないので、つけ汁の絡みをよくするために全粒粉を練り込んだのだという。もちろん、麺は自家製。
いやあ、ビジュアルだけで圧倒されてしまった。もうこの時点で1300円の価値はあると思ったけど、こんな住宅街にまで来て、値段通りのラーメンじゃ満足できない。求めているのは、値段以上の満足感だ。
ここまでは期待通り。
問題は味だ。
実はフルコース料理?
では、パイ生地を箸で突いてつけ汁に落とし込んでからいただくとしますかね……と私が割り箸を手にパイ包みのつけ汁に手を伸ばそうとすると、
「パイ生地の上の方は落とし込まず、そのまま食べてください」
と店長さん。エッ、そうなの?
言われるままに上の部分を箸で取ってみた。
モッチリした感蝕が箸から伝わってくる。そして顔に近づけると、桜エビとチーズの香ばしい匂いが鼻を突く。いやあ、たまんない。写真を撮り終えたら、そのままパクッ!
旨いッO(≧∇≦)O!!!
いやあ、まさかつけ麺を頼んで、ひと口目がスープでも麺でもなく、ピザとは思わなかった。これってピザだよ。
旨い、旨いと食べていくと、パイのフタにポッカリと大きな穴ができる。いよいよ、つけ麺を食べる時だ。
麺をつけ汁に浸してしっかりと絡ませてから持ち上げる。パイ生地の桜エビの香りとは違う濃厚なエビの香りがまず鼻に飛び込んでくる。そのままズッ、ズズズッ……
旨いねぇ(´ ▽`).。o♪♪
決してガツンとインパクトのある味ではない。でも丁寧な仕事ぶりが感じられる、しみじみ旨い味わいだ。ビジュアルの勢いそのまんまでガツンと来るかと思ったけど、「いやあ、こう来たか」と逆に唸ってしまった。
つけ汁の中にはメンマなどの具材が入っているのだが、箸で探るとこんなものが出て来た。
エッ、肉?
だってチャーシューは別にあるじゃん。まさかこんな肉塊が入っているとは思わなかったから、これはうれしかったなぁ。
食べると、これがまた思いのほか柔らかくて旨い、旨い。
あわせて別皿のチャーシューに手をつけると、これは塩コショウだけのシンプルな味付け。食べると……
旨いッO(≧∇≦)O!!!
何じゃこれ。こんなに分厚いのにホロホロと柔らかい。そのままでも旨いけど、つけ麺ならぬ“つけ肉”で、つけ汁に浸して食べても旨い。
もうね、ハッキリ言って、この時点でお腹はかなりパンパンです。でも店長さんが、
「時間が経ってクッキーみたいに少し硬くなったパイ記事をつけ汁に落として食べると、美味しいんですよ」
というから、言われるままにやってみましたよ。
まずは器の周りに付いているパイ生地を箸ではがす。
そしてたっぷりとつけ汁を染み込ませてから、いただきま~す……
これも旨いねぇ(´ ▽`).。o♪♪
パイ生地がほんのり甘いせいか、まるでデザートのような感じでスルッと胃袋に入ってしまった。
考えてみたら、この「極UMA MEGA 海老つけめん」、最初のパイ生地の上の部分が前菜で、つけ麺が魚のメインディッシュ、別皿のチャーシューが肉のメインディッシュ、そして最後の浸したパイ生地がデザート、という感じに思えなくもない。
そうか、フルコースなのか。そう考えると、何だか1300円という金額が急に安く感じられてきた。
つけ麺の〆と言えば、スープ割り。
私は割らなくても十分旨かったから、そのまま飲んだけど、もし皆さんが行ったら、ぜひスープ割りをやって欲しい。ここでもちょっとしたひと工夫があるんですよね。
この記事で全部紹介しちゃうと面白くないだろうから、これは行ってからのお楽しみということで、ご自身の目と舌で確認してください。
さらなる進化を計画中
食べ終わったあと、店長の皆川富士雄さん(52)と話すことができたので、いろいろと聞いてみた。
――店名はどういう由来でつけたのですか?
皆川:「旨い」のUMAと「未確認生物」という意味のUMA、どっちもかけているんです。ほかにないつけ麺をつくろうってことでね。
――マスコミによく登場しているから、かなり人気なんじゃないですか?
皆川:いや、そうでもないよ。そりゃ一時期はズラーッと列ができた時があったけど、今は土日の昼ぐらいかな。
だけどテレビを見て来るお客さんは「美味しいもの」と期待してくるから、大変だよ。こんな場所だしね。美味しさはもちろん、それ以外でも勝負しないとね。だから見た目はこだわるよ。見た目が悪くて美味しいものはあり得ないから。お店のキレイさもそう。厨房の壁はいつもピカピカにしてるよ。
――どちらかと言うと、夜よりも昼間の方がお客さんは多いんですか?
皆川:そうだね。場所柄のせいもあると思うよ。もう少し、夜のお客さんを増やしたいから、今いろいろやってるんだよ。
――外のボードに書いてあった、「昼のメニューにない新メニュー」ですか?
皆川:そうそう。まだメニューには書いてないんだけど、ハンバーグやローストビーフを300円~500円ぐらいの値段で出してるんだよ。私はもともと洋食と和食の料理をしていたからね。ちょっとローストビーフ、食べてみます?
そう言って、出てきたのがコレ。
何、このクオリティーの高さ。ローストビーフにアボカドを合わせる斬新さもさることながら、かかっているステーキソースも自家製というから凄い。
アボカドと一緒にひと切れいただいてみると……
UMAいッO(≧∇≦)O!!!
これを300円で出しているというのだから驚きだ。
皆川:この辺は住宅ばかりで、飲み屋もあんまりないんだよね。だから夜はラーメン屋じゃなくて、地元の人がちょっと一杯立ち寄れるお店にしようかなと思ってるんだよ。「BISTRO UMA」とかね。
これは気になる話だなぁ。
つけ麺といい、あのローストビーフといい、皆川さんのつくるメニューはひと味違う。これまで一度も来たことのなかった西武立川駅だが、再訪しそうな気がするよ。今度は夜にね。
紹介したお店
UMA TSUKEMEN
住所:東京都立川市西砂町1-3-15
電話:042-520-0038
営業時間:月・水・木・金曜は11:30~15:30/18:00~21:00、火曜は11:30~15:00、土・日曜は11:30~16:00/18:00~21:00
※麺がなくなり次第終了
著者:薄井政美
食べ歩くのが好きな中年オヤジ。志村けんでおなじみの東京都東村山市に限定した超ピンポイントのグルメ情報サイト「東村山グルメ日記2」を不定期更新中。
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