夜の恵比寿に、光で浮かび上がるカウンターが映える。
ここはJR恵比寿駅の西口から歩いて約4分。
訪れたのはステーキレストランの「アイテーブル」だ。
ガラス張りのため、その美しい内装は外からも目立つ。
そして今回のゲストは、着物が似合うシズカさんだ。
凛としたその雰囲気から、
着物関係の仕事かと思いきや、普段は会社員だ。
オシャレな店内だが、椅子の下に荷物入れがあり実用的な面もある。
そして大量の肉と共に出迎えてくれたのはこの店のシェフ、木屋太一さんだ。
木屋さんは75年生まれで21歳からこの業界に入り、一貫して牛肉にこだわってきた。その豊富な経験から、ブランドには一切こだわらずに美味しい牛肉を選ぶ。そのため、この味でこの値段?と食べ終わった時にコスパの良さに驚く。
日替わりで入荷する牛肉は100グラム1000円~3000円で、好きな部位を好きな量だけグラム単位で注文できる。部位は豊富で、自分の好みを伝えると気さくにおすすめしてくれる。
さらにはおおまかに、
「その日の気分」に合ったものをおまかせで焼いてくれる。
着物なので「和な気分」で何か焼けないかと言って出てきたのがこちら。
牛肉の「シンシン」を中心に、さまざまな「和の調味料」を揃えてくれた。
シンシンはきめ細かく、なめらかな食感で油も少なく和のテイストに合う。
ちなみにリクエストがあれば魚やアワビなども焼くこともあるという。
相手に合わせて自由自在、これぞおもてなしだ。イタリアンといったジャンルを超えて、あくまでお客様ベースで肉を焼いてくれる店なのだ。
醤油、ワサビ、ゆず胡椒、大根おろし…
シンシンをさまざまな角度から味わう。
和の味のメリーゴーランドである。
極上の柔らか肉を食べたせいか、
固かったシズカさんの表情もゆるまっている。
食べ物だけでなく飲み物のコスパも良い。
美味なスパークリングワインもボトル3千円から選べるコスパの良さ。
さらに赤ワインに合わせて…
シェフが焼いてくれたのが、牛肉のイチボと、赤ワインと生姜のソース。
赤ワインを着物で飲む様子を、味と見た目の華やかさで表現してくれた。
まさに自由自在だ。
そしてこの店のもうひとつの名物が、こちらのラクレットチーズだ。
ラクレットとはフランス語で「削る、引っ掻く」という意味だそうだが、
まさに溶けたところを目の前で削ってサーブしてくれる。
自然と気分が高まる。
トロットロのチーズをパンに絡めて堪能する。
至福の瞬間だ。
こちらはきのこのサラダ。さまざまな種類のきのこがぎっしりと並ぶ。数種のきのこを組み合わせることで香りも旨みも深くなるという。
こちらはハーブバター醤油をつけてシンプルに。
きのこ本来の味わいが素直に楽しめる。
器もきのこに合っていて美しい。
「普段の服でもまた着てみたい」とシズカさん。
その時はまた違った焼き方で楽しませてくれるだろう。
まるで美容院に行くかのように、毎回違った焼き方を味わえる店だ。
さて、レストランの次は恵比寿のバーを紹介したい。
こちらも恵比寿駅の西口からすぐ近くの「Bar 松虎」だ。
店に入ると暗闇が広がる。暗すぎることでも有名な店だ。
暗いと怖いと思う方もいるかもしれないが、木をベースにした空間のためか、非常に温かで落ち着いた雰囲気だ。
闇に包まれる着物。谷崎潤一郎は著書「陰翳礼讃」で、電灯がない時代の陰影の美しさこそ日本古来の芸術と唱えたが、実際にこの店は単に暗いのではなく「和」がコンセプトのバーだそうだ。このように暗がりによる美しさを堪能できる。
ただ二店目ということで、シズカさんには普段の服に着替えてもらった。
どちらにしても美しいシズカさんであった。
さきほどの店と同じくカウンター席が中心となるが、奥にはテーブル席もある。
テーブルには旬な野菜や果物と干物が並ぶ。
メニューはなく、ズラリと並んだ食材から好きなものを選んで炭火で焼いてくれる。
女性の人気の「季節のフルーツカクテル」では、旬の果物をカクテルにしてくれる。こちらは安納芋のカクテル。芋独特の甘みがとても美味しい。
こちらは抹茶とウォッカのカクテル。
このような様々なカクテルに加え、ウィスキーやブランデー、ワイン、シャンパン、日本酒や焼酎など、お酒の種類も多様だ。
「丸氷」がうれしい、マッカランのウィスキー。
こちらは色鮮やかなザクロのカクテル。
「LECOMPTE」という、りんごのブランデーがベースとなったこだわりの一品だ。
店の中央に炉があり、この炭火で干物と野菜を炙る。
今回おすすめで選んでもらった、ゴロイカ・干し明太子・ウルメ・イワシ・アスパラ等を焼いてもらう。
焼きあがった干し明太子。旨味がたっぷりの辛子明太子を「うす皮」ごと干すことでさらに旨味を濃くした逸品で、日本酒によく合う。
迫力のゴロイカ。ゴロとはイカの内臓のこと。苦味のある内臓を抜かず、干して旨味を凝縮することで、深い味わいを醸し出している。これらのように、店内の雰囲気とお酒へのこだわりだけでなく、酒の肴にも強いこだわりを感じる。
奥には4〜8名が座れるテーブル席もある。暗闇の中で飲む会も斬新ではないだろうか。
店内にBGMはなく静寂が広がる。炭が燃えるパチパチとした音だけが響く、静かな店内では店員も出すぎることなく、さりげないサービスをつとめているという。
自然と自分たちの声も小さくなり、気がつくといつもより近い距離で話している。暗闇と無音が人を引き寄せるのだ。
中々ない斬新なBarなので、ぜひ立ち寄ってみてほしい。
さて、今回はいかがだったろうか。
ステーキに暗闇バーと着物、盛りだくさんになってしまったが、いずれもオススメだ。ちなみに着物は、浅草か銀座なら数千円〜1万円前後でも良い物を借りられて着付けもしてもらえる。着物デートは思ったより手軽なので、こちらもぜひ試してほしい。
今回ご紹介した店
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