野菜を中心とした中国の田舎料理が味わえる店、「蓮香」でおまかせコースを堪能する旅

白金にある「蓮香」(東京都港区白金4-1-7)では、野菜を中心とした中国の野菜料理をおまかせコース5,900円から楽しむができます。例えば前菜だと「傣族式牛皮コラーゲン トマトハーブサラダ仕立て」「細切り豆腐 野菜の葱油風味」「毛瓜の上湯煮 怪味ソース掛け」「太モヤシとミント 木姜子風味」といったように、メニュー名だけで手の込んだ様子が伝わってきます。純粋な中国料理ではなく、日本でだからこそ食べられる中国郷土料理。ちなみにワインと紹興酒はボトルでオール2,900円です。落ち着いたらぜひ外食を楽しんでください。(白金・白金台のグルメ中華

野菜を中心とした中国の田舎料理が味わえる店、「蓮香」でおまかせコースを堪能する旅

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先日、南インド料理と中国料理を学んだ料理人が腕を振るう「牧谿」という店で、スパイスや発酵食品の魅力を再確認させてもらった。知らない味付け、馴染みのない香りなのに、心が弾む不思議な食の体験だった。

その日以来、私の貧弱な食のアンテナではこれまで圏外だった店をもっと試したい、味覚の幅を広げてくれる異国の刺激を試したいという思いがとても強くなっている。

そんな話を牧谿に連れていってくれた友人のBさんにしたところ、「牧谿が気に入ったのなら、次は蓮香(レンシャン)だな。ちょっとディープな中国料理を食べに行こう」と誘ってくれた。

蓮の香りでレンシャン。そういえば先日、たまたま蓮の花を見に行ったことを思い出しつつ、そういう料理が好きそうなTさんも誘って、その申し出に乗らせていただくことにした。

 

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蓮の花。どんな香りなのか、ちゃんと嗅いでおけばよかった。

 

白金高輪でいただく、中国の田舎料理

Bさんに予約をしてもらった蓮香は、これまで全く縁のなかった白金高輪駅から、少し歩いたところにあった。いわゆる町中華的な店で食べるラーメンやギョウザ、エビチリに麻婆豆腐あたりが馴染んでいる舌と金銭感覚なので、こんな機会でもなかったら一生たどり着くことのなかった店だろう。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130255j:plain店のオープンに合わせて18時に予約をしてもらった。

 

まったく土地勘のない場所だったので、だいぶ余裕をみて出発したため早く着いた。とりあえず店の外から情報を探ってみよう。もう予約をしてあるので、今更チェックしても仕方がないのだが、より楽しく食べるためのヒントがあるかもしれない。

店の看板には〈郷村菜 蔬菜〉と書かれている。スマホで検索してみると、郷村菜は田舎の郷土料理、蔬菜(そさい)はキノコなども含む野菜全般という意味のようだ。

前に佐渡島の山奥で、地元のおばちゃんたちが作る地場野菜たっぷりのご当地宴会料理を食べさせてもらったが、なんとなくそんなニュアンスが〈郷村菜 蔬菜〉の文字から頭をよぎった。その中国版だとしたら、旅に飢えている身としては最高のコースになりそうだ。

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なんて腕組みしながら1人で唸っていたら、その下に「中国の田舎料理、野菜を中心にしたおまかせ5,900円からのコース料理です」と、わかりやすい説明が書かれていた。

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時間通りに3人が揃い、額をピっとやる検温、手のアルコール消毒をして入店。コロナ対策のためか席のレイアウトはかなり余裕があり、入り口の扉は換気のため開けたままになっていた。

BGMこそ中国っぽい歌謡曲のようだが、私がイメージする大衆中華の店とはだいぶ違う落ち着いた雰囲気。ここに何度か来たことがあるBさんに、「ずいぶん大人の店ですね」と小声で素直な感想を伝える。

だいぶ前に初老(40歳)を迎えておいて、いまさら大人の店もないのだが、この手の店に来た経験がほぼないので、やっぱり緊張してしまう。コース料理なので予算を読めるのが正直ありがたい。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130421j:plainワインや紹興酒は自分で選んで持ってくるセルフチョイスのスタイル。どのボトルも均一料金なので、金銭感覚の不一致で友情が壊れることはなさそう。

 

f:id:tamaokiyutaka:20200808130357j:plainビールやソフトドリンク、中国茶なども用意されている。

 

まずは乾杯用のドリンクを注文。隣に座ったBさんは極上レモンサワー、そして斜め向かいのTさんはチンタオとやらを注文。そんなドリンク、メニューにあったかな。

「じゃあ私はアオシマ……」と言いそうになったところで、青島と書かれたビールの読み方がチンタオであることを思い出した。

あぶなく今日のあだ名が、アオシマになるところだった。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130336j:plain中国の代表的なビールである青島の読み方はチンタオ。これまでに10回くらい覚えて、10回くらい忘れている知識だ。極上レモンサワーは炭酸が強めで酸味がまろやかとのこと。さすが極上。

 

無事に乾杯をしたところで、マスクをしたスタッフさんが本日のコースを説明しつつ、苦手なものの確認をしてくれた。大丈夫、香菜も唐辛子でもどんとこいだ。〈毛瓜〉とか〈怪味〉とか〈白骨〉とか、味の想像ができない危険そうな文字もいくつか並んでいるが、おまかせコースなのだからおまかせしよう。知らない味だからこそ試したいメンバーだ。

これは当たり前の話なのだろうけれど、こうして苦手な食材を確認するということは、すでに用意してある料理を出すのではなく、これから一品ずつ調理して出来立てを提供するということなのだと理解して感動した。

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今日のコースは中国だけではなく台湾の料理も出てくるようだ。

 

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最近になって中国の酒に目覚めたというTが、金朱鷺黒米酒と書かれたボトルを選んできた。私が知っている紹興酒よりも爽やかで飲みやすい。

 

前菜の盛り合わせからすごかった

最初に運ばれてきたのは前菜四品の盛り合わせ。どれも見た目の印象よりも一味深く、あっさりしつつも食感や香りがとても豊かだ。

一つ一つの小さな皿から「これでいいでしょ」ではなく「これがいいんだよ」というシェフからのメッセージを強く感じる。とても丁寧に作られた前菜で始まるおまかせコース、もう次の料理が楽しみで仕方がない。味覚と胃袋の準備はバッチリ。ようやく少し緊張感がほぐれてきた。

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どれも丁寧に作られてることが伝わってくる前菜四品。

 

f:id:tamaokiyutaka:20200808130626j:plain傣族式牛皮コラーゲン トマトハーブサラダ仕立て」。傣族(たいぞく)は中国雲南省あたりに住む少数民族とのこと。クニュクニュした食感の牛皮コラーゲンが独特の存在感だ。

 

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「細切り豆腐 野菜の葱油風味」。細切りの豆腐は何度か食べたことがあるけれど、どの記憶よりもうまい。

 

f:id:tamaokiyutaka:20200808130541j:plain毛瓜の上湯煮 怪味ソース掛け」。毛瓜(モーウイ)は冬瓜(トウガン)の仲間の産毛が生えたウリとのことで、さっくりした歯ごたえ。怪味は複雑な味という意味だそうで、甘酸っぱくてちょっと辛くてうまい。「怪味は四川料理かな。数年前に唐揚げ屋さんのフレーバーとして流行りましたよね。実は初めて食べるけど、こんな味だったのか……」と感慨深げなT。

 

f:id:tamaokiyutaka:20200808130612j:plain太モヤシとミント 木姜子風味」。木姜子(ムージャンズ)はクスノキ科の山蒼子(さんそうし)の実で爽やかな風味。「食べ慣れない不思議な味わいなのに、絶妙においしくてお酒が進んでしまう」とマタタビを前にした猫みたいになったBさん。

 

どの料理もおいしく、そして新しい発見がある

手の込んだ前菜を食べたことによって食べる前よりもお腹が空いてきたところで、続いての料理は「白骨空心菜 傣族の干し豆鼓炒め」だ。

運ばれてきた皿を見て、「骨が白くなるまで煮込んだスープと空心菜を炒めたものでは?」と自慢げに予想を発表したが、軸が白い空心菜の品種だった。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130755j:plain白骨空心菜、覚えました。

 

シャッキリパッキリと炒められた白骨空心菜はもちろんのこと、この皿に溜まったスープがうまかった。干し豆鼓の旨味なのか、私を含めて3人とも愛おしそうに空心菜へと沁み込ませている。フランス料理じゃないけれど、このソースを吸わせるパンが欲しい。

一緒に盛られている大きな唐辛子は食べるものではないんだろうなと思いつつも、せっかくなのでと皮部分をちょっと齧ってみたところ、恐れていた辛さはあまりなく、すっきりした香ばしい香りが口から鼻へと抜けていった。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130843j:plain青いボトルがかわいい花雕酒(長期熟成させた紹興酒)を追加。まろやか。

 

大豆とモヤシの中間みたいな食材である発芽大豆、ささげという細長いサヤインゲンのような野菜の漬物をひき肉と炒めた「発芽大豆 ささげ漬物 ひき肉炒め」もまた組み合わせがおもしろかった。これをずっと箸で口へと摘まみあげていたい。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130859j:plain発芽玄米ならぬ発芽大豆、大豆にこんな食べ方があったのか。

 

「カリカリっとしたひき肉、ホクホクの発芽大豆、酸味のあるササゲが相まって、絶妙のおいしさですね。ちょうどササゲの漬物を仕込んだところだったので、出来上がったら絶対に家でも作ってみます」と静かに興奮するBさん。

実は私もササゲの漬物を作ろうとしていて、でもささげが手に入らなかったので畑から採ってきた適当なインゲンを漬けている。果たしてどちらがこの味に近いものを再現できるのだろうか勝負だ。いや勝つのはBさんだろうけど。

 

「琵琶湖天然稚鮎 葉ニンニク 山盛り唐辛子炒め」は細い竹で作られたカゴのようなものに、稚鮎と葉ニンニクと唐辛子を炒めたものが豪快に盛られていた。鮎を捕るため川に掛ける簗(やな)という罠を彷彿とさせる盛り付けだ。

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唐辛子はほとんど辛くない品種のようで、見た目ほど強烈ではない。ほんの少し入った葉ニンニクが実に効果的。

 

おそらく純粋な中華料理ではなく、この時期に東京で手に入る魚の中で一番ふさわしい食材として琵琶湖の稚鮎が選ばれたのだろう。丸ごとサクッと揚げられた稚鮎が隠し持つ内臓の苦みが嬉しい。稚鮎は私の大好物、それに唐辛子の辛さと香りを纏わせるとは。これぞ日本でだからこそ食べられる中国郷土料理だ。

「大量の唐辛子は辛さというより香ばしさ担当かな。あと見た目のインパクトとして重要」と分析するT。ちなみにスタッフさんにこの唐辛子は食べるものなのかと聞いてみたところ、あくまで香りをつけるためのものなので、食べられなくはないけれど食べなくていいそうだ。でもせっかくだからと食べてみたが、やっぱり口ではなく鼻と目で楽しむものだなと納得した。

 

続いては「夏野菜 台湾バジルのオムレツ」。台湾バジルは九層塔という野菜で、これを食べてある記憶が呼び起こされた。

昨年台湾旅行をしたとき、港町のまったく英語が通じないお店でお任せコースを頼んだところ、貝と一緒に炒めたレモングラスとバジルとミントを足したような刺激的な葉っぱに驚いたのが、これだったのだ。オムレツを食べた瞬間に独特の味が引き金となって、あの日、あの場所の空気感が蘇ってきたのである。

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味が記憶を呼び起こすことがあるんだなと実感。もし台湾で台湾バジルを食べることがあれば、この店の記憶が蘇るのだと思う。

 

このオムレツは出汁巻き卵をスクランブルエッグ風に作ったようなフワッとした仕上がり。卵という日常的な食材と合わせることで、台湾バジルが持つ個性が輝いている。種を取り寄せて、畑に植えてみようかな。

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野菜中心の料理なので白ワインも合う。

 

「エビとさつまいも春雨 発酵唐辛子煮込み」は、さつまいも料理が出てくるのかと思ったら、さつまいもの澱粉で作った春雨だった。緑豆やジャガイモの澱粉で作られたものに比べてだいぶムチムチムニュムニュと太めの春雨に、プリプリのエビというコントラスト。

春雨の原材料なんて気にしたことが無かったけれど、さつまいも澱粉で作るとさつまいもらしい味がするのか。原料の香りを残す蒸留酒のようだ。

真っ赤な唐辛子が山盛りで辛そうに見えるけれどそんなに辛くない料理があったけれど、これは逆で辛そうじゃない見た目なのに不意打ちのような辛さが隠れているという嬉しい罠。しっかり発酵唐辛子煮込みって書いてあるけどね。

f:id:tamaokiyutaka:20200808130953j:plain太いさつまいもの春雨、おいしい。

 

「月桃叶排骨 台湾阿美族風スペアリブ月桃の葉蒸し」は、今日のコースでは唯一の肉料理。台湾の原住民である阿美族が好んで使うという、月桃というショウガ科ハナミョウガ属の葉で包んで蒸した豚の骨付きばら肉だ。

f:id:tamaokiyutaka:20200808131005j:plain月桃の葉でフタをされた状態で登場。

 

「月桃のちょっと薬草っぽい香りがしますね。スペアリブは柔らかくてゼラチン質がぷりぷりになって口の中に絡みつく。濃厚なタレにレンコンが合いますね」とBさん。

「むっちりスペアリブとさっくりレンコン、しっかりした味付けの組み合わせがうまい」とTさん。

「白いご飯がほしくなる味」と私。舌と鼻に未知の経験が積まれることで、おいしいと思える食の守備範囲、ストライクゾーンがどんどんと広がっていく。これぞ外食の醍醐味。

f:id:tamaokiyutaka:20200808131015j:plainまた台湾に行きたくなってきた。

 

なんだか本日のコース料理を通して、厨房で鍋を振るっている小山内耕也シェフから土産話を聞いているような気分になってきた。きっと現地でこれらの源流となる料理を学び、それに日本独自の食材を加えて再現したものを、こうしてお客さんに旅の成果として提供しているのだろう。

だからこそ客が料理を選ぶのではなくシェフが料理をセレクトするコース仕立て。なんて勝手に深読みをしたり。ちょっと飲み過ぎたのかもしれない。次はカウンターに座らせてもらい、中華鍋を振るシェフから近い位置で土産料理を食べてみたい。

 

メニューに書かれていないサービス料理が登場

ここまででかなり満腹になったのだが、スタッフさんからコースの締めとして、メニューに掛かれていなかった炒飯と坦々麺を選んでくださいと促されて驚いた。そして迷った。この店の炒飯と担々麺、そんなのおいしいに決まっている。それを選べというんですか。

出されたものをおいしく食べるだけだったのに、ここにきて究極の二択。大いに迷った挙句、「両方を食べることは可能ですか?」と勇気を出して聞いてみたところ、500円プラスでできるとのこと。お願いします!

f:id:tamaokiyutaka:20200808131112j:plainシンプルながらも後を引く炒飯。炭水化物は別腹だ。

 

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意外と量が多かった汁なしの担々麺。「花椒の辛味、肉味噌の旨み、少しだけ入ったササゲの酸味が麺に絡み、辛い辛いと言いながらもどんどん食べてしまう」とBさん。「日本式とは違う複雑な風味で、空腹時にこれだけを一人分食べてみたい」とTさん。

 

もうさすがにお腹いっぱい、さあ家に帰りましょうと立ち上がりそうになったところで、最後にお茶とレンコンの澱粉で作った葛餅風のデザートがやってきた。

後半にレンコンやその澱粉を使った料理を出してきたのは、「蓮香」という店名へのこだわりなのかな。レンコンといえば蓮の地下茎だ。

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もしかしたらこのお茶も蓮茶だったのかも。

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レンコン澱粉の葛餅風。食べると確かにレンコンの味がする。

 

完全におまかせのコースだったが、シェフが食べさせたい料理とこちらが食べたい料理が見事に結ばれた、とても幸せな食事となった。ただ正直に言えば、私の知識不足、舌の経験不足で、料理の意味や奥行きを受け止めきれなかった部分も多かった。同行の2人はさらに楽しめたのだろう。

もう何度目かの来店であるBさんによると、4名以上の予約で一品、6名以上なら二品、8名なら三品と、コースの品数が増えるというシークレットサービスがあるのだとか。通常のコースでも十分満足できる量だが、とても気になるサービスだ。

大人数での会食が難しい状況ではあるが、どうにか落ち着いたらこの店の味を一緒に楽しんでくれそうな人を誘って、また食べに来たいと思う。やっぱり外食は楽しい。

 

紹介したお店

蓮香
〒108-0072 東京都港区白金4-1-7 1F
8,000円(平均)

著者プロフィール

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玉置標本
趣味は食材の採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は古い家庭用製麺機を使った麺作りが趣味。

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