「峠の釜めし」の容器を有効活用しよう…!第一回「俺の釜めし」選手権開催

日本全国の駅弁でもっとも有名なもののひとつに、信越本線横川駅の「峠の釜めし」があります。生誕の地である群馬県安中市松井田町横川のほかにも、現在では高速道路のサービスエリアや銀座の販売店などで購入可能です。そして誰もが食べ終わったあとに感じるのが「このお釜、立派すぎて捨てられねえよ…!」ではないでしょうか。植木鉢や小物入れにする手もありますが、実はおぎのやの公式サイトにはこのお釜での「ごはんの炊き方」も紹介されています。というわけで家庭でのおぎのやお釜炊飯を極めた玉置標本さんが、お仲間に声をかけて「第一回『俺の釜めし』選手権」を開催しました。参加メンバーが作り出す「オリジナル釜めし」は、具のセレクト、味の方向性と、その組み合わせは無限大。おぎのやのお釜がなくても(別の方法でも)ご家庭でチャレンジしたくなるものばかりです。ぜひ読者の皆さんも「第二回『俺の釜めし』選手権へのエントリーメニューを考えていただければ嬉しいです。(銀座のグルメ居酒屋

「峠の釜めし」の容器を有効活用しよう…!第一回「俺の釜めし」選手権開催

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あなたの家、あるいは実家の戸棚に、釜めしの容器は眠っていないだろうか。

そう、信越本線の横川駅で売られる駅弁として誕生した、おぎのやが誇る峠の釜めしの器だ。

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我が家には高速道路のサービスエリアで購入したものがある。

なんといっても益子焼の立派な釜だ。釜めし代の何割かはこの容器代だと思うと、そう簡単には捨てられないのが人情である。

ある家では小物入れとして、ある家では子供のおままごと道具として、ある家では植木鉢として活用されることもあるだろうが、何も利用方法が思いつかず、とりあえず取っておくだけという家庭が一番多いのではなかろうか。

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写真を観たら蕎麦とのセットを食べていた。お腹が空いていたのだろう。

この容器の一番有効な利用法は、やはりご飯を炊くことだろう。なぜなら釜めし用の容器だからだ。その方法は、おぎのやの公式ホームページに「ご飯の炊き方」として詳しく掲載されている。ただし「容器が割れることがありますのでご注意ください」と書かれているので、ちょっと運だめし要素があるのかも。

 

【目次】

 

実際に釜めしの容器で米を炊いてみよう

この釜で一合の米が炊けるらしいという話はなんとなく知っていても、実際にやったことがあるという人は少ないだろう。私も未経験だった。だって炊飯器、持っているし。

しかし、である。ものは試しにと実際に炊いてみたら、これが実におもしろいのだ。古民家のかまどにて、羽釜でご飯を炊くかのような哀愁が手軽に味わえるのだ。

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オフィシャルの作り方は、なんとフタを少し開けて炊く方式だった。

日本人が忘れてかけていた直火で炊飯をする楽しさ。何度も繰り返し炊いて水と火の加減を学習し、吹きこぼれを最小限に抑え込み、理想のご飯が炊けたときのカタルシス。

ただ、この釜で一合(150グラム)の米を炊こうとすると、どうしてもフタを開けないと盛大に吹きこぼれる。そこで私が開発した方式は、炊く量を少しだけ控えめにして、フタをしたまま炊ききるというスタイルだ。

その炊き方を紹介させていただくと、まず米130グラムを優しく研ぎ、水と合わせて合計330グラムにして釜へと入れる。

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水の量は米の状態や好みで調整しよう。

そのまま15分以上浸水させたら、付属のフタをしてコンロの弱火で加熱するのだが、その上に適当な缶詰を一つ置くのがポイントだ。缶詰を温めて食べるためではなく、重さが足りなくて吹きこぼれやすいフタを強制的に押し付けるためだ。羽釜のフタを思い出してほしい。すごく厚くて重いから。

ただし重すぎると内部の気圧が上がりすぎて、容器が割れる可能性もありそうなのでほどほどで。

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火加減はこれくらい。焦って強火ですぐに沸騰させてしまうと、おいしく炊けない気がする。

気温や火加減にもよるが、だいたい6分ほどで沸騰してくるので(具が多いと時間が長くかかる)、缶詰で抑えたフタが持ち上がりそうになる気配を目と耳で感じたところで、すかさず火を一番弱くする。

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米が少なめなら、この火加減であれば吹きこぼれない。

そこから7分ほどとろ火で加熱したら火を消して、そのまま15分ほど蒸らす。

浸水15分、加熱13分、蒸らし15分。計量の時間を入れて45分といったところだろうか。

吹きこぼれないか、焦げ付かないか、釜が割れないかと不安要素がいっぱいなので、加熱中はコンロの前からほとんど離れられないが、上手に米が炊けた時の達成感はなかなかのものだ。炊飯器では味わえない喜びがここにある。

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はい、上手に炊けました!

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蒸らしが終わったらかき混ぜる。焦げてない!

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加熱時間を長くしたり、最後に強火にすればおこげを作ることも可能だ。

f:id:tamaokiyutaka:20200323232827j:plain固形燃料でも炊ける一合炊きの羽釜(旅館とかで使うやつ)は、このようにフタがしっかりしている。この重さを再現したのだ。この羽釜があるなら無理に釜めしの容器を再利用する必要ないじゃんとか言ってはいけない。

 

第一回「俺の釜めし」選手権、開催!

こうして美味しい白米を炊く自信がついたところで、当然のようにオリジナル釜めしを作り始めたのだが、これがまた楽しいのである。具のセレクト、味の方向性と、その組み合わせは無限大だ。寸胴鍋いっぱいとかでなく、一食分だけで試せるのもいい。

そこでこの楽しさをみんなと共有すべく、こういう試みが好きそうな友人たちと第一回「俺の釜めし」選手権2月某日開催した。ただ峠の釜めしの容器を都合よく持っていない人もいるので、「1合くらいの米が炊ける炊飯道具なら何でも可」とする。

それすら持ってないという人は(普通はないかもね)、頭の中でレシピだけ考えてきてもらい、貸し釜を使ってぶっつけ本番でやってもらおうか。

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集まってくれた心強い選手の方々。

 

玉置標本選手の「俺は峠の魯肉飯(ルーローハン)」

選手権と名乗ったが、とくに審査とか順位付けは行わない。ほら、喧嘩になるし。どちらかというと発表会。勝ち負けはないけれど、「釜が割れたら負け」とする。

最初のエントリーは、言い出しっぺとして私がやらせていただいた。

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玉置標本選手(この記事を書いている人)

選手談:「炊くときに米と具をしっかり分けることで、白米に甘じょっぱい豚肉を乗せる台湾スタイルの魯肉飯を釜めしで実現しました。肉汁は意外と漏れません。もし台湾の駅弁に釜めしができるとすれば、これが採用されると思います!タイトルは『俺は田舎のプレスリー』へのオマージュです」

  1. 豚バラ肉の塊60gを好みの大きさに切る。
  2. 1.を醤油、オイスターソース、味醂、砂糖、五香粉(八角が効いたスパイスミックス)、おろし生姜で甘めに味をつけて、その汁ごとクッキングシートでしっかりと包む。
  3. 釜に浸水させた米を入れ、通常よりちょっとだけ少ない水加減にして、その上に2.を乗せて炊飯する。
  4. 蒸らし終わったら、具をご飯の上に乗せる。付け合わせはお好みの漬物を適当に。

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台湾で食べた魯肉飯を釜めしにアレンジしてみた。

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炊き込み方式なら簡単なのだが、白米に具を乗せてこその魯肉飯なので、具はクッキングシートに包んだ。

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米の上に乗せて、フタをしてそのまま普通に炊く。

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具が多いので、弱火7分、とろ火8分と長めに加熱した。具の汁はこぼれていないようだ。

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食べる直前に具を白米の上に汁ごと乗せる。この作業が楽しい。ちょっと味が薄かったかな。

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普通の魯肉飯に比べると肉が大きかった。

なんと肉々しい釜めしだろうか。具が肉だけだとちょっと食べ飽きる気もするが、漬物を入れた容器もあるから大丈夫。この調理法を応用すれば、インド風キーマカレー釜めしとかも作れそうだ。

みんなの感想:「お米の上で具材を蒸し煮にするのが面白いですね」「台湾の甘い香りのお肉がたっぷりで大満足!」「クッキングシートを使ったためか、お肉がむちゃくちゃジューシー」「茶色い!」

 

辻村哲也選手の「峠の釜ビリヤニ」

本業はプロダクトデザイナーでありながら、ツジメシの名前で料理ライターとしても活躍中の辻村さんは、なんとビリヤニの釜めしに挑戦するそうだ。

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辻村哲也選手が持参した釜はおぎのやの容器ではなく、釜として単体で売られていたもので微妙に形が違う。

選手談:「マリネした生肉と半茹での米を重ね蒸しして仕上げるカッチ(生)ビリヤニを、釜めしの釜で作ってみました。米を茹でるのに別鍋を使うのは釜めしとしては反則な気もしますが。付け合わせのライタ(塩味のヨーグルトにきゅうりなどを入れたもの)を釜めしの漬物ケースに入れたのは僕が世界初だと思います」

  1. 皮なし鶏もも肉150gは大きめ一口大に切りわけ、マリネ材料(ヨーグルト30g、おろしニンニク小さじ1/2、おろし生姜小さじ1/2、塩2g、コリアンダーパウダー、クミンパウダー、ターメリックパウダー、カイエンペッパー、ガラムマサラ各適量)を揉み込んで、冷蔵庫で半日~1日置く。
  2. 水300mlに茹で用スパイス(クローブ4個、シナモン3cm、カルダモン2粒、ベイリーフ1枚、八角1個)と塩3gを入れて沸騰させ、バスマティライス80gを8~9分茹で(この時点では硬め)、ザルに上げて水気を切り、広げて水分を飛ばす。スパイスは取り出しておく。
  3. 釜に1.の肉を入れ、刻んだパクチーとミント、フライドオニオンそれぞれ適量を敷き、その上に2.の米を入れる。さらに茹でる時に使ったスパイス、バター10g、倍量の水で溶いたターメリック小さじ1/2を回しかける。
  4. フタをして中火にかけ、湯気が出てきたら最弱火にして10分、火を消しそのまま10分蒸らす。下からざっくり混ぜ、紫玉ねぎ、ミントを飾る。

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別鍋でバスマティライスを半茹でしておくという自由さを発揮。釜めしとは何か。

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釜にマリネした生の鶏肉を敷く。五徳の上で釜が安定するように金網を持参していた。

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フライドオニオン、パクチー、ミントを重ねる。

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半茹でしたライス、スパイス類などを乗せて加熱。

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フタには密閉度をアップさせるためにアルミホイルを巻くという丁寧さ。

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釜ビリヤニの完成。添えられたライタがチャームポイント。

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「こうして全体をかき混ぜてから食べて……混ぜにくいな」

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「ボウルで混ぜちゃってもいいですか?」

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今度こそ本当に完成!

すごい、確かに釜の中でビリヤニが見事に完成している。さすがはスパイスを使った料理に詳しい辻村さんだ。

みんなの感想:「おしゃれ!映える!美味しいー!」「笑えるほどちゃんとビリヤニになっている」「炊いているときの香りからしてもう最高、釜の中に小宇宙を感じた」「漬物容器のライタがかわいい」

 

小松ヌンチャク選手の「峠の海獣大決戦」

昨日たまたま釣りに行ってきたという小松さんは、その釣果を持参しての参戦だ。家に釜がなかったので、ぶっつけ本番でのエントリーである。峠なのに海の幸で勝負!

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釜飯を作るのは生まれて初めてだという小松ヌンチャク選手。

本人談:「前日にタチウオを釣りに行ったのと、以前釣って冷凍していたマダコもあったことから、釣果で海鮮釜飯にしたら良いんじゃないかと考えました。『出オチ』と言われて心外です!」

  1. タチウオを三枚におろす。中骨はグリルで焼いて鍋に移し、水で煮て出汁を取る。
  2. 釜に研いだ米、出汁、ささがきにしたゴボウ、タチウオの身と頭、茹でたマダコの足の順に乗せる。
  3. フタをして中火で12分(でフタを開けたら生煮えだったのでプラス数分)、火を消して15分蒸らす。
  4. フタを開け、仕上がりを堪能する。堪能したらタチウオの頭を除いて、マダコの足をキッチンバサミで切り分ける。針生姜を加え、よく混ぜて完成。

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小松さんが料理を始めた途端、周囲がざわつきはじめた。

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ぬめりをとったタコを下茹でする。でかいな。

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タチウオの中骨はこんがりと焼いて出汁にする。

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ざわざわ……ざわざわ……

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そして完成。これは確かにタチウオ対タコの海獣大決戦だ。勝ったのはどっち?

壮絶の一言。料理のレシピに「仕上がりを堪能する」と書きたくなる気持ちがわかる料理である。何も知らずにフタを開けたら、さぞやびっくりすることだろう。しかし魚介の出汁がしっかりと染みた味は間違いなし。出オチっていってごめんね。

みんなの感想:「ヤバい第一印象に反して出汁を吸ったごはんが強烈に旨い」「タチウオとタコの出汁が滋味深い」「魔女の釜みたいだけど、お米が劇的に美味しかった」「アグレッシブな見た目に反して、繊細で複雑な出汁がたっぷり染み渡ったご飯にうっとり」

 

マダラさん選手の「牛ミンチと玉子の香港式土鍋ごはん」

家庭用製麺機を複数台所有する自作ラーメンマニアのマダラさん(本業は会社員らしい)は、中華料理の再現レシピでエントリーだ。

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試作したら釜にヒビが入ってしまったというマダラさん。俺の釜、割らないでね。

本人談:「中華街の南粤美食というお店で食べた香港式土鍋ごはん(煲仔飯)が美味しくて、日本で入手しやすい材料で作りました」

  1. 牛挽き肉80gに醤油小さじ1、塩小さじ1/2、ごま油小さじ1で味をつけ、真ん中を凹ませ丸く整形する。
  2. 洗ってないジャスミンライス120g、水160g、サラダ油小さじ1、塩小さじ1/2を釜に入れたら、吸水させずに少しフタを空けて中火にかけ、沸騰したら最弱火に落とす。
  3. ジャスミンライスの表面から水が引いたのを確認したら、1.の肉を乗せて、フタを完全に閉めて、釜からお焦げの香ばしい匂いがしてくるまで10分程度待つ。
  4. フタを開けて小口切りの万能ネギを散らし、中国のたまり醤油(老抽王)小さじ2を一回ししたら、肉の凹みに卵黄を乗せて再度フタをして、5分蒸らしたら完成。

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油と塩を加えた水でジャスミンライスを炊く。

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水がこの程度まで引いたら、そこに肉を乗せる。

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水分が減ってから肉を乗せることで、挽き肉が塊のまま火を通すことができる。

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仕上げに黄身を乗せて蒸らす。フタで潰さないように注意。

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そりゃおいしいだろうというヴィジュアルだ。

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蒸らすことでネットリする程度に温まった黄身を崩していただく。

さすがは店で食べた料理を再現する腕前に定評のあるマダラさん。私はそのオリジナルを食べたことがないのだが、きっとこういう味なのだろうという説得力に満ちた釜めしだ。

みんなの感想:「甘じょっぱい味付けが大好きなので、どストライク」「挽き肉と卵が相性抜群。生卵を使えるのは手作り釜めしならでは」「出来立ての熱々を独り占めしてレンゲでワシワシ食べたいおいしさ」「一人で全部食べたかった」

 

鬼頭哲選手の「哲学の峠道」

ミュージシャンでバリトンサックスプレイヤーの鬼頭さんは、名前が哲(あきら)だけに哲学で攻めてきたようだ。名前から具が想像できないが、一体どんな釜めしを作ってくれるのだろうか。

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渋さ知らズやCHIZで活躍する鬼頭哲さん。

本人談:「レシピを考えてる時に湧き上がった【そもそも釜飯とは?】という根源的な問い。『炊き込みご飯とは何かが違う』という概念に対する名辞を求めよ。

導き出した答えは【釜飯とはパカッと蓋を開けた時の『わー』である】

『小さな釜の一人前の世界』は、丼物にも似た初見時のクライマックス(出オチ感)こそが『大釜から茶碗によそう炊き込みご飯』との決定的な違いなのでは?という部分にこだわってみました。だってネットの記事だもの、『栄え』重要。案の定、みんなで食べるために混ぜ合わせた物は、すでに【釜飯】ではなかった。

一応、味わい的には洋風な具材の中に、和の実山椒で爽やかなパンチを効かせたトコがポイント。とはいえ、洋の果物であるアボカドって『さといもごはん』みたいにねっとりして、炊き込みご飯(←言っちゃった)と普通に合うんですよ」

  1. 釜に研いだ米、白ワイン少々を加えた適量の水を入れ、刻み玉ねぎ、実山椒、乱切りのアボカド、細かく切ったスモークサーモンを順に乗せ、黒胡椒を挽いて炊飯する。
  2. 炊き上がって蒸らしたら、フタを開けて歓声をあげる。
  3. たっぷりの削りたてペコリーノロマーノチーズをかけていただきます。

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アボカドとスモークサーモンという、火を通さなくても美味しい組み合わせを釜めしにするという大胆な作戦。

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胡椒はガリガリとたっぷり。

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フタを開けた時の意外性こそがご馳走だ。たっぷりと入れた青い実山椒が味とヴィジュアルを引き締めている。

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「混ぜるのはボウルでもいいんでしょ?」と、辻村さんが作ったルールを踏襲。

加熱によってネットリとしたアボカドと米の出逢いに拍手。釜めしでは定番的な食材であるサケだがスモークサーモンを選ぶことで、より香りがプラスされている。そして驚きは青い山椒を噛んだ瞬間の刺激だった。

みんなの感想:「個人的に今回一番なのがこの釜めし、また食べたい!」「アボカドサーモンで炊飯してしまう素敵アイデア」「さすがミュージシャン、味のハーモニーだ」「素材の組み合わせから想像したのとは違う初めてのおいしさ、加熱したアボカドの食感と山椒のプチプチが楽しい」

 

香鈴選手の「峠のカオマンガイ」

鉄製の羽釜で東南アジアのアレを作ってくれるのは、絶版となった業務用洗濯機を所有するほどのコインランドリーマニアである香鈴選手だ。実際は私が2種類目を披露したくて、食べにだけきていた香鈴選手に名義を借りての隠れダブルエントリーである。

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なんとなく巻き込まれてエントリーした香鈴選手。

本人談:「がんばります!」

裏方談:「東南アジアで広く愛されている海南鶏飯、今回はナンプラーを使ったのでタイでの料理名であるカオマンガイとしてエントリー。エスニック鶏釜めしですね」

  1. 米130gを研いだら、ナンプラー、酒、醤油を各3グラムずつ加えて通常より気持ち少なめの水加減(合計320g)にして浸水させ、一口大に切った鶏モモ肉140gと生姜の細切りを乗せて炊く。
  2. しっかり蒸らしてから、たっぷりの胡椒、パクチーを乗せて完成。

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鉄製の羽釜を使うと熱効率がいいためか沸騰が早いので、より弱火で炊くこと。

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タイ米ではなく日本米を使ってみた。タイに鳥貴族があったらメニューにありそうだ。

炊飯器で作るレシピも多数あるカオマンガイだけあって、釜めし化の相性は抜群。迷うことなく作れるし、まったく違和感なく食べられる。この一人前をギュッと釜に詰め込んだ感じは、通常のカオマンガイでは味わえない喜びだ。

みんなの感想:「大好きなカオマンガイが一人前ちょうど作れるのよいですね」「一見和風、でも食べるとちょっとエスニック」「鶏釜飯とカオマンガイの良いところドリ!魚の容器(醤油入れ)に魚醤を入れて添えるのもよいかも」「漬物の容器にタレを用意してほしかった」

 

さぐっちゃん選手の「タコとエシレバターとエシャロットの釜めし

この選手権のために峠の釜めしをわざわざ買ってきたというさぐっちゃん。都内で販売されているものは紙製の容器が多く、益子焼の釜の入手が大変だったとか。

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本人談:「浸水せず、生米から作ったリゾットのような米の食感を残して炊いてみました。硬めの米に対してプリプリの歯ごたえのタコをと思いましたが小松さんと被りましたね。エシャロットとシナモン、エシレバターで風味にアクセントをつけてあります」

  1. 玉ねぎ1つを微塵切りにして、醤油、オリーブオイル、酢を1:1:1で適量混ぜて、電子レンジに2分かけて冷まし、特製ピクルスを用意する。
  2. 米120g、出汁160ml、タコ110g、輪切りにしたエシャロット2つ、ニンニクのみじん切り1片分、エシレバターをキャラメル1つ分、シナモン2センチ、ピクルス液大さじ2、ピクルス適量を釜に入れて、中火4分、弱火15分、蒸らし13分で炊く。

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エシレバターとは、フランス中西部・エシレ村で生産される発酵バターだそうです。

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特製ピクルスを具と付け合わせにたっぷりと使うのがポイント。

欧風タコめしとでも呼びたくなる釜めしで、エシレバターのコクと香り、ピクルスの歯ごたえと爽やかな酸味がオリジナルの味わいになっている。ちなみに使ったのは小松さんが釣ったタコだ。

みんなの感想:「見た目は純和風なのにヨーロピアンテイスト」「同じタコを使えどあちらは大海獣、こちらは地中海の風を感じた」「タコとバターのハーモニーに白ワインが飲みたくなる」「隠れ家バーとかで出てきそうな(行ったことないけど)大人味の釜めし

 

ララ選手の「サバシソご飯」

デザイナーのララさんは、釜めしの容器ではなく、最近流行のキャンプギアであるメスティン(取手付きアルミ製飯盒)で参戦だ。大きさにちょっと余裕のある調理器具だと、やはり吹きこぼれの心配は減るようだ。

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友人から借りたメスティンで何度も試作をしてきたというララ選手。

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お弁当箱っぽいが、このまま火にかけられる調理器具なのだ。

本人談:「釜めしの容器でふきこぼし経験あり。そこで友人に借りたおしゃれ飯盒メスティンで参加です。サバの魚こってりをシソでさっぱりと!」

  1. 米1合は洗って1時間ほどザルに上げておく。
  2. ショウガ1片とゴボウ5cmを刻み、熱したフライパンでごま油大さじ1と炒め、みりん大さじ1を加え、火を止めてから米を投入。全体を混ぜ合わせてメスティンへ入れる。
  3. 1カップの水を注ぎ、サバフレーク大さじ4、シソふりかけ(ゆかりなど)大さじ2、ゴマ大さじ1を乗せて蓋をする。
  4. 弱火で20分ほど火にかけ、その後20分蒸らす。刻んだ柴漬けをお好みでかけて出来上がり。

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柴漬けの量はお好みだが、個人的にはたっぷりと入れたい。

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お弁当型の四角い釜めしが完成。

こってり具沢山にしがちな釜めしだが、あえてシソと柴漬けであっさり仕上げたお弁当タイプ。このメスティンがあれば、キャンプ場などでも釜めし選手権ができそうだと、この場ですぐ注文しそうになってしまった。

みんなの感想「いろんな歯ごたえが隠されていて、食べ飽きない」「これは釜めしの宝石箱や!」「仕込みまでして花見とかに持っていって、その場で炊いたら最高なのでは」「あればあるだけ食べ続けてしまいそう、個人的に今回一番のストライク!」

 

山田選手の「峠のもっちりチャーハン釜めし

今回の選手権に向けて、フリマアプリを活用し、釜めしの容器を複数手に入れたという山田さん。そんな本気モードで挑むのは、釜めしとは対極にある米料理のチャーハンだ。使う材料の種類がすごいため、レシピはいただいた原文ママで載せさせていただく。

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釜めし選手権なのにチャーハンを作ると言い出した山田選手。

本人談:「チャーハン味の釜飯です。お店でパラッパラだけどご飯がまったく美味しくないチャーハンを食べた際、ご飯を美味しく炊ける釜でチャーハン作ったら、とても美味しいチャーハンができるかと思って創作しました。

味が濃いのを生かすため、餅を入れて味の薄い部分を作りました。水を多少減らして下のほうは焦がすことでお焦げともっちり感で食感も楽しめるように工夫しました」

〈米150g / 水 220mlのレシピ〉
※おぎのやの釜の場合はカッコ内()の値で、調味料は適宜少な目で。

①米     150g(120g)
②水     220ml(176ml)
③化学調味料 小さじ1〈ミタス推奨〉
④塩     小さじ1
⑤鶏ガラの素 小さじ1
⑥ごま油   大さじ2
⑦ネギ    少々
⑧ニンニク  少々
⑨乾燥玉ねぎ 小さじ2
⑩焼豚    どさっと
⑪マヨネーズ 大さじ1
⑫こつぶ餅  15-20個
⑬万能ねぎ  適量
⑭錦糸卵   適量
⑮紅しょうが 適量
⑯コショー

  • 研いだ米を釜に入れ、⑤~⑪を乗せる
  • ③④を混ぜた水を上から注ぐ
  • 中火で沸騰する加熱し、さらに極弱火で17分
  • フタを開け、ご飯に⑫の餅を押し込み、蒸らし15分
  • フタを開けて⑬~⑮をのっけて混ぜる
  • 最後に⑯をお好みで

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米と具を乗せた状態。

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果たしてこれがチャーハンになるのだろうか。

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蒸らしを終えた段階。マヨネーズって水に溶けないんですね。

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トッピングを乗せたら完成かと思いきや、山田さんもボウルに移して混ぜ始めた。

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二度目の紅ショウガが乗せられた。確かに見た目はチャーハンかも。

炊きあがった釜飯を混ぜる前は、マヨネーズは塊で残っているし、餅の意味は分からないし、どこら辺がチャーハンなのか謎だったのだが、よく混ぜたものを食べてみると、確かにこれはチャーハン風の釜めしだった。マヨネーズの油分が全体にいきわたり、お焦げと合わさって、香ばしく油で炒めた感じになっているのだ。

みんなの感想「混ぜる前だけ見れば正統派釜めし、でも食べるとチャーハン!」「餅が入ったところを食べるとなんだか嬉しい」「釜をひっくり返してお皿に盛れば、丸いチャーハンになるね」「炒めていないのに本当にチャーハン、ビールが飲みたくなる」

 

オカヤイヅミ選手の「黒蜜釜プリン

そろそろみんな、お米ばかりの試食でお腹いっぱいになってきた。この圧倒的に不利な状況で最後にエントリーしたのは、漫画家・イラストレーターのオカヤイヅミさんだ。

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料理を主題とした作品も多いオカヤイヅミさん。

本人談:「釜の茶色と丸みにはプリンが似合いますね」

  1. 卵3個を溶きほぐし、砂糖50gを数回に分けて加えながら、泡立てないようによく混ぜる。
  2. 牛乳250ccを沸騰するちょっと前まで温め、1.にゆっくり混ぜ、ザルで数回濾す。
  3. オーブンを160℃に予熱する。釜に2.を流し込みフタをして、熱湯を張ったバットの中に置き、天板の下段で具合を見ながら30分ほど加熱する。
  4. 小鍋に黒糖と水を適量入れ、焦げないようにかき混ぜながらトロッとするまで煮詰める。
  5. オーブンから釜を出し、粗熱をとってから冷蔵庫で冷やし、4.の黒蜜を好きなだけかける。

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そろそろ甘いものが欲しいなというタイミングでプリンを作るオカヤさん。

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茶わん蒸しっぽいがプリンである。

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黒蜜はもちろんたっぷりと。

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まるで星空のような輝きを見せる黒蜜釜プリン。この容器はプリンを作るために存在するのかもしれない。

釜めしならぬ釜プリンの登場によって、ここにきてさらなる釜の可能性が開花した。これは嬉しい変化球、同じように茶碗蒸しを作ってもよさそうだ。それにしてもプリンってシンプルな材料で簡単に作れるんですね。

みんなの感想:「お腹がふくれた所にデザートが出てくる気配りと優しさに感動!」「みんなで食べられる大きさだし、和な黒蜜味もよかった」「釜プリン、お土産の新定番になるのでは」「その場でささっと作っていてかっこいいなあ」

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ちょっとヒビが入ったのもあるけれど、最後までどれも割れることなく無事終了。

こうして第一回「俺の釜めし」選手権は無事に閉幕した。あえてフワッとしたルールにしたことで、食材や調味料の組み合わせだけではなく、調理手順や炊飯方法にも無限の広がりを感じることができたのが収穫だ。

ここまで料理の内容がバラバラだと、やはり順位付けや勝敗は無意味だろう。みんな違って、みんないい。個人的にどれが優勝だと思うか、どれを作って食べてみたいかは、どうぞ読んだ人が好きに決めていただきたい。

この第一回の開催は2月でそろそろまたやりたいところだが、しばらくはみんなで集まることが難しい状況なので、各自で次のアイデアを練っていただくとしよう。それでは第二回「俺の釜めし」選手権で、また近いうちにお逢いしましょう。

 

著者プロフィール

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玉置標本
趣味は食材の採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は古い家庭用製麺機を使った麺作りが趣味。

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製麺活動:趣味の製麺

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