まいど憶良(おくら)です。
ビカビカに光り輝く新鮮魚の海鮮丼がワンコイン!
それがまた信じられないクオリティ!という、驚きの情報を仕入れて、大阪市中央区は、黒門市場にやって来ました。
黒門市場は天下の台所の中の台所!旨いものがあつまるのは道理
大阪は江戸時代から天下の台所と言われ、全国から美味しい物が集まる都市として有名ですが、ここ黒門市場は、その大阪の台所と言われているんです。
今では市場そのものも観光地として脚光を浴び、平日でも大勢の人で賑わいます。
そんな中で見つけた、一軒の魚屋さん。
その名も、「名もなき魚屋」が今回紹介するお店です。
ぱっと見たところは普通の魚屋さんです。
「いらっしゃいっ!」と、店長さん。
魚の仕事に携わり、10年以上様々な魚を扱って来た店長さん自身が、朝5時に中央卸売市場や東部卸売市場に、直接買い付けに行って仕入れた魚たち。
刺し身OKの文字が目立ちます。
鮮度が落ちやすく、刺身にするのが難しいと言われるマナガツオも、この店なら刺身OK!
さて、イートインコーナーもあるという事ですが・・・。
こっ、これは・・・。
ワンコインランチ!けれど、これが普通のワンコインランチではなかった!
店内に500円ランチの文字を発見。
海鮮丼、マグロ丼、お造り定食、焼き魚定食の4種類があるようです。
では、中に入っていきましょう。
メチャいい匂いがすると思っていたら、なるほど、タコの干したんです(標準語でタコの干物)。
これがまた、炙るとめちゃくちゃ旨いんです。
売っている魚をその場で調理も可
イートインコーナーでは、調理代が別途かるものの、表で売っているお魚を選んで、これを食べたいとうリクエストにも応じてもらえます。
ただし、時間に余裕のある時のみのサービスになっていますので、そこはご注意を。
ドリンクメニューも発見。
考えたら、魚屋さんに並んでいるものを魚のプロに調理してもらって、その場で食べながら飲めるなんて、メチャ贅沢じゃないですか。
いえいえ、ですが今回はランチが目的です。
ランチメニューより、大人気ニューの海鮮丼とマグロ丼を注文しました。
切れっぱしではない海鮮丼は、もう食感が全然違う!
海鮮丼は日によってネタが変わります。
この日はタイ、カンパチと本マグロでした。
魚屋さんがやっている海鮮丼って、冊(サク)の状態から刺身にして、刺身として出せない部分、言わば切れっぱしの物を置いておいて、それを集めて作った丼というイメージが強いんですが、名もなき魚屋流は違います。
しかもネタの肉質によって、ちょっと分厚い目に切った刺身が用意されます。
カンパチも分厚い目に切られているので、
もっちりとした食感を楽しめます。
マグロは海鮮丼の分と、マグロ丼の分が切られました。
見てみて、この美味しそうなこと。
あかん。
これはあかん奴です。
絶対旨いやつです。
マグロも同じく大きめの刺身状態となり、準備完了。
これを盛り付ける前に、白ごはんには名もなき魚屋特製の
オリジナルタレを回しかけます。
その上に大葉が刻まれて乗せられ、清涼感を演出。
直前に刻む事で香りも立ちます。
厚切りのカンパチが乗り、
その上に鯛が・・・と、
ネタが次々と乗ります。
最後にマグロが並びました。
その刺身を隠すようにして大葉が乗って、
ワサビが置かれます。
再度特製ダレがかけられると、
きざみ海苔がトッピングされて
どんぶりが完成です。
さぁ、丼ぶりをいただきましょう!と、思ったら・・・
実は、まだ食べられないんです。
店の奥でいい匂いをさせていた鍋からもう一品。
小鉢が付きます。
それどころか、お漬物まで。
これで500円?と驚いていると、
お味噌汁までついてきました。
うおおおおっ、お主はあっ!お主って奴はあっ!
一体どこまでワシを感動させれば気が済むんじゃあぁ~っ!
海鮮丼だけじゃない!マグロ丼もすごいんです
マグロ丼がこれまたすごい。
マグロの冊を切っていき、
刺し身状態になるんですが、これがまた綺麗なんです。
舌の上で脂が溶け出して・・・という話をよく聞きますが、
見ているだけで私が溶け出しそうです。
どんどんマグロがが乗っていき、
どんぶりが覆われていきます。
大丈夫なんですか?
その・・・。
原価割れしない?
同じような工程を経て、
マグロ丼も完成となりました。
作るところを見ていると、いや、見たからこそ、500円っていう値段が信じられません。
海鮮丼の
マグロです。
旨っ!
厚切りのカンパチは存在感あり。
味の厚みまで増す感じです。
プリッとして、これまた旨い!
鯛も、良い鯛ですと声を大にして言いたい。
好みで追加の醤油をかけて食べます。
ネタだけを食べてもそりゃ旨いんですが、丼になるとグンっと満足感が増します。
特製ダレとワサビ、醤油が混ざり合って、ごはんと一緒に掻っ込むと、当然のことですが、刺身定食とはまた違った幸せを感じてしまいます。
続いてマグロ丼も頂きます。
見てください、この美しさ。
作るところを見ていた私ですら、うわっ、いっぱい入っているなぁ!と思ってしまう、圧倒的な量。
これも、海鮮丼も、余ったものを置いてたという物でなく、全て冊から切りたてという贅沢さ。
「旨いっ、これは旨いなぁ」以外に話すことなし。
はっ、と気づいて、思い出したように小鉢や
味噌汁も頂きながらの、あっという間の
完食です。
おいしかったぁ。
これはもう、文句なく、「憶良のコスパが高すぎて、注文に罪悪感を感じるメニュー」に認定させて頂きます。
原価率は驚異の70%
店長さんにお話をお聞きしました。
憶良 : めちゃくちゃ美味しかったです。
店長さん : ありがとうございます。
憶良 : 鮮度が違うと、同じ魚でも、別物くらいおいしいですね。
店長さん : その辺は魚屋さんなのでこだわる部分です。
憶良 : 普通は、安く食べられる海鮮丼のネタって、細切れっていうイメージがあるんですが、ネタ、大きいですよね。
マグロなんて、冊の状態でそのまま売っても500円で安いと思うくらいの物なんじゃないかと思ってしまうんですが、これで儲けって出るんですか?
店長さん : 出ません。(きっぱり)
憶良 : もし、お聞きしてもいいなら・・・、原価率ってどれくらいなんですか。
店長さん : そうですね、70%前後ですか。
とても儲けは出ないので、全ランチメニューを合わせて10~15食限定とさせてもらっています。
これで原価割れしないという謎…その答えに納得
憶良 : それどころか、赤字が出るんじゃないですか。
店長さん : それも出ません。
憶良 : それはまた何故でしょう。
店長さん : ウチは、魚屋さんであると同時に、卸もやっているんですよ。
魚屋として仕入れるだけなら原価も上がりますが、この店から卸す魚も合わせると、それだけ大量に仕入れる事となりますので、元々の原価を抑える事が出来るんです。
憶良 : と、しても普通の飲食店なら原価率は25~30%程度。
原価率70%のランチを提供する理由がよくわかりません。
定食屋とか、居酒屋だったら目玉メニューで人に来てもらって、他で儲けるという手もあるかと思うんですが、手間がかかるだけで、人件費とかを考えると割に合わないんではないですか。
店長さん : それでもいいんです。
この店のランチの目的は売り上げではなくて、店の宣伝でもないんです。
憶良 : と、すると?
店長さん : このランチをきっかけに、魚の美味しさを知って欲しい、そして魚を好きになって欲しいんです。
ここで食べたランチで、生まれて初めて食べた魚が気になって、「あの魚、ある?」と買って行って下さるお客さんもいますし。
そういう時には、「そうでしょう?魚って美味しいでしょう?」
と、こちらも嬉しくなります。
魚屋さんやっててよかったと思う瞬間ですね。
憶良 : なるほど。
店長さん : ランチもそうですが、魚の魅力をもっと知って欲しい。
そのために出来る事は、出来る限りで、ではありますがやって行こうと思っています。
憶良 : 例えばどういう事でしょう。
店長さん : 魚を敬遠する人って、捌く方法も分からなかったりしますよね。
分かっても、面倒だったり。
そんな時は、魚屋さんでさばいて貰ってすぐに食べるのが美味しいと。
店長さん : そう言って頂くと嬉しいですね。
買って頂いたお魚も、三枚におろすくらいだったらすぐに対応させていただきます。
憶良 : 手数料は、一匹どのくらいで?
店長さん : いえいえ、メチャ面倒な魚とかは別として、一般の魚を三枚におろすくらいであれば、サービスでやらせてもらってます。
憶良 : この周りもすっかり観光地として有名になって、観光地価格のお店もずいぶん増えたと思うんですが、もっと高値でも十分お客さんは来るのでは?
店長さん : そうかもしれませんが、ウチのコンセプトが「安くて新鮮、地域に根付いた店」という事でスタートしたので、そこは曲げたくないんです。
結局はいろんな魚の美味しさをアピールして、魚好きの人が少しでも増える事が、自分を助けてくれると思って頑張ってます。
憶良 : と、いう事は、ランチでも色んなお魚が食べられるという事ですか?
店長さん : マグロ丼はしょうがないとして、海鮮丼は季節によっても、日によっても、基本的には違う魚が楽しめるようになっています。
憶良 : 魚好きには堪らない店ですね。
安くて美味しいランチを求めて取材させて頂いた、「名もなき魚屋」さんですが、なるほど、色んな思いをもって料理って作られているんだなぁ、と改めて考えさせられる一軒となりました。
では最後に、ここまで読んでくださった方へのメッセージを頂けますでしょうか。
店長さん : そうですね。こういうのはちょっと苦手なんですが、とにかくお魚を食べて頂いて、魚のファンになって欲しいと思います。
魚のさばき方とか、どうやったら美味しく食べられるかとか聞いていただければ、出来る限りお答えします。
魚のファンになるそのきっかけに、ウチの店がなれたなら、こんなにうれしい事はないと思いますので、是非よろしくお願いします。
もうひとっ、どうしても気になることが…
憶良 : 店内に流れているBGMが、ずーっとサザンオールスターズだったんですが、これはいつもですか?
店長さん : という事ではありません。今日はたまたまです。
憶良 : もう一つ、店の名前ですが、なぜ「名もなき魚屋」になったんでしょう。
店長さん : なにか名前を付けないとと思ったんですが、いいのを思いつかなくて。
名もなき魚屋でいいかなと。
覚えてもらいやすいですし。
憶良 : 最後に、ミスターチルドレンの歌、「名もなき詩」との関係は?
店長さん : あはははは、ありません。
憶良 : ありがとうございました、気になっていたので、スッキリしました。
店長さん : えっ? 最終的にそこ?
と、せっかくきれいにまとまっていた話をぐだぐだな空気にしたまま、黒門市場を後にしました。
今回取材した名もなき魚屋は、公式ページがありません。
住所 : 大阪市中央区日本1-17-8
電話 : 06-6632-5757
営業時間 : 9時~大体18時半から19時くらいまで
ランチ : 12時~14時くらいまで、10~15食限定。
プロフィール
憶良(おくら) : 元ゲームプランナー、元ゲームプロデューサー。
ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。
休日は高速道路を使わずに名古屋から鳥取あたりの温泉に行って浸かり、道中や行先の地元スーパーで珍しい食材を買い込むと例え深夜に帰ったとしても料理する。
その際食べ歩きにも積極的と、食に対してはかなり貪欲。
「美味しいものを食べている時、美味しいものについて話している時に悪いことを考える人はいない。」という持論を持っている。
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