まいど憶良(おくら)です。
京都の酒どころに、酒粕を使ったラーメンがあると聞き、京都は伏見にやって来ました。
伏見では弥生時代から酒造りが行われていた…!
ここ伏見は京都の酒どころ。
兵庫の灘、広島の西条と並んで日本三大酒どころとして有名です。
中でも伏見は稲作が始まった弥生時代から酒造りが行われていたと言われていて、20以上の酒蔵があります。
桃山丘陵から湧き出る地下水の水量も豊富で、かつて伏水と呼ばれた水が酒造りに適しているとか。
そんな酒どころ伏見の酒粕を使ったラーメンが食べられるのがここ、酒粕ラーメンの「玄屋」さんです。
店内は落ち着いた雰囲気で、ラーメン屋さんというよりは酒蔵のような雰囲気です。
ん?なんでしょう、酒蔵のジオラマ?
この答えは、後程。
メニューもいろいろありますが、当然のように酒粕ラーメン、そして辛味酒粕ラーメンを注文しました。
月桂冠の酒粕を使用したラーメン
この近くには月桂冠という全国的にも有名な酒蔵があり、玄屋の酒粕ラーメンにはこの月桂冠の酒粕が使われているんです。
大袋で届けられた酒粕は、兵庫県は小豆島から取り寄せた醤油をベースにして、
秘密の工程を経て煮られ、完全にアルコールを飛ばした状態で仕上がります。
ですから、ドライバーの方、それからお子さんでも問題なく食べることができます。
味噌にも見えますが、酒粕のペーストです。
この酒粕ペーストが味の決め手
ここに素早く返しを加えると、この先の工程はさらにめちゃくちゃ早く行われます。
ノーマルの酒粕ラーメンがこちら。
ピリ辛には辛子味噌がセットされます。
ぐらぐらと白濁した、鶏ガラ豚骨スープを、
先ほどのペーストの上に注ぎます。
この時点で、ふわっと酒粕の匂いが広がります。
取材のため厨房に入らせていただいた特典ですね。
高速で混ぜ合わせて、
スープが完成しました。
トッピングは珍しい「剣」と「油揚げ」
麺は特注の細麺。
固さは注文時にオーダーすると応じてくれます。
ここにもやし、
自家製のチャーシューをセット。
更にネギが乗って、
ここからがまた珍しい。
まず大根の剣(けん)が入ります。
大根と酒粕ってのはめちゃくちゃ相性イイですからね。
それからこれも酒粕に合う。
油揚げが入りました。
でも、ラーメンと油揚げっていう組み合わせは珍しい。
実際に食べるとどうなんだろう、違和感はないのかなぁ。気になります。
赤い揚げ玉は、辛味に乗ってます。が、揚げ玉自体は辛くないです。
スープの見た目、雰囲気は味噌ラーメン風。
赤い揚げ玉が乗っているのが辛味酒粕ラーメン850円。
こちらはノーマルの酒粕ラーメン800円です。
いよいよ実食。酒粕ラーメン初体験!
先ずは酒粕ラーメンから。
一番気になるのはもちろんスープですが、想像していた、かす汁感はありません。
もっとずーっと上品な味です。
胡椒ではなく、七味をかけて食べてくださいというお勧めでしたので、七味を振りかけます。
麺のリフト。
細麺ストレートですが、そこにしっかりとスープが絡みます。
ずぞぞっ、と頂きました。
味は……おおっ、これは新しい!
酒粕にうどんというのは聞きますが、ラーメンと酒粕って、合うんだなぁ。
なんだろう。
酒粕うどんって、かす汁の中にうどんを入れました、という感覚だと思うのですが、
玄屋の酒粕ラーメンは、そういうのではないんです。
なのでストレートにかす汁にラーメンが入っている感じの食べ物を想像して食べると、ほおっ、こういう仕上がりになっているんだ、と意外に思うかもしれません。
チャーシューは自家製。
モモ肉使用の、噛み応えのあるタイプ。
優しいスープと対照的に力強さのあるチャーシューです。
気になっていた油揚げですが、全く違和感なし。
とっても美味しいです。
七味、ニンニク、
そして胡麻。
するすると食べられます。
ちょっと不思議なのがニンニクの存在。
入れた直後は若干の違和感がありますが、ものの10秒と立たずにスープに馴染みます。
ついつい入れ過ぎてしまいそうで怖い。
優しい、じわっとした辛さの「辛味酒粕ラーメン」
こちらは辛味酒粕ラーメン。
もやしはシャキシャキ。
こちらの方が味にパンチがあり、人気も上がってきているのだとか。
辛みが効いている分、旨味は口に含んですぐに感じます。
対してノーマルの酒粕ラーメンは、じわぁっと奥の方から旨味が広ってくる様子を楽しめます。
食べてすぐに、「旨ッ!」となるんじゃなくて、何口か食べていくと、「ふーむ。なるほど、美味しい。いい味だねぇ」となるラーメンです。
同じくニンニクと
胡麻を入れて食べました。
大根の剣がいい味出してます。
清涼感があり、特に辛味バージョンに合います。
こちらもスープまで完食しました。
というより、スープはじっくりと味わって頂きました。
このラーメンの面白い所は、スープにファーストインパクトがあまりなかった所。
これは、酒粕ラーメンってどんな物なんだろう、と考え、かす汁の味を想像しながらスープを口にしたことが原因だと思います。
暫く食べ進め、こういうスープだと思ったころから、この味の深さがわかって来たんです。
滋味深い、懐の深い味です。
スープもすべて飲み乾し、
ごちそうさまです。
30年作り続けた酒粕ラーメン
憶良 : 酒粕ラーメンって珍しいと思うのですが、作り始めたきっかけは何だったんでしょう。
店長さん : この店を立ち上げた時に、何かこの店ならではというか、独自性が欲しいと考えていた時に、この近くの月桂冠さんが有名だから、それにちなんで・・・と、酒粕ラーメンを作る事を考えました。
粕汁は元々美味しいのが分かっていたので、うまく取り入れると看板メニューになると思いました。
憶良 : 店が出来た当初からのメニューなんですね。
店長さん : そうですね、ですから同じ味を作り続けてもう30年以上になりますか。
憶良 : 頑なに守り続けた味ですね。
店長さん : そうですね、かたくなですね。
憶良 : それはつまり、この味が愛され続けてきた証拠とも言えますね。
店長さん : 最初は物珍しさで食べに来てくれたお客さんが何度も足を運んでくれる、それは作り手にとっては嬉しいですし、励みになります。
憶良 : 遠くから来ましたというお客さんも多いんですか?
店長さん : いやぁ、こちらから話しかけて、「どちらから」と聞けばわかるんでしょうが、話をするのが苦手なので、あまり知らないんです。
「酒粕感」をどこまで出すのか
憶良 : この味を作り上げる上で苦労されたことは?
店長さん : 酒粕は特徴にもなりますが、存在感がありすぎて、そのまま使うと全てが酒粕になってしまいます。
かといって、量を減らしたり、風味を飛ばし過ぎるとなんだかわからなくなってしまいます。
この酒粕感の出し加減が一番苦心したところだと思います。
なるほど、それでわかりました。
最初は何だろう酒粕の感じがしないなぁ、と思いながら食べていて、中盤あたりからじわっとその存在感を増してくる感じは、この絶妙な風味の活かし方にあったんですね。
鶏ガラ、豚骨と、酒粕が混ざり合い、あっさりとしているがコクがある独特のスープを是非味わってほしいと思います。
憶良 : では、最後にこの記事を呼んで頂いている皆さんに、何かメッセージをお願いします。
店長さん : 唯一無二の味を目指して、日々時間をかけて丁寧に仕込みをして皆さんをお待ちしていますので、是非一度お越し頂き、酒粕ラーメンをご賞味ください。
また、酒粕が苦手な方は醤油ラーメン650円もご用意していますので、こちらもよろしくお願いします。
派手なばかりが名物料理じゃない
確かに見た目の派手さ、味の派手さはないですが、地道に30年作り続けた、滋味深いラーメンを是非味わってほしいと思います。
さて、インタビューが終わった所で、近くのお客さんからも少しお話を聞きました。
「あっ、私、東京から来ました。」
という女性は京都に来ると必ずここの酒粕ラーメンを食べて帰ると言います。
きっかけは伏見観光に来た時に、周辺で食べるところを探していて見つけたという事でした。
元々かす汁など酒粕が好きだったこともあって、いっぺんにこの味にハマってしまったのだとか。
三大酒どころの一つを堪能したその締めくくりに酒粕ラーメンを食べて帰るとか、ここでお腹を満たしてから散策など、旅の思い出にもなりそうです。
さて、冒頭の問題ですが、答えはレジでした。
酒蔵の前に立っているのは、坂本龍馬!
壁には寺田屋の絵がかかっていました。
伏見奉行による坂本龍馬襲撃事件でも有名な、伏見の観光名所です。
店長さんの「この近くだから、折角なんで見て行かれるといいですよ。」
との勧めもあり、帰りに寄っていくこととしました。
酒どころの美しい街並みの一部をご紹介します
月桂冠大倉記念館は、伏見の酒造りと日本酒の歴史をわかりやすく展示してある資料館です。
貴重な酒造用具類も見る事が出来ます。
日本酒について勉強した後は、きき酒コーナーで3種類のお酒の利き酒を出来るだけでなく、純米酒(180ML)1本 のお土産までついてくる(未成年の方は月桂冠大倉記念館絵はがき)というのですから、300円は安すぎます。
日本酒好きなら、ここと酒粕ラーメンのセットを是非楽しんで欲しいと思います。
踏切を渡ってしばらくすると寺田屋さんが見えてきました。
竜馬や長州の三吉慎蔵らが幕府伏見奉行の捕り方に囲まれたところ、風呂に入っていたお龍がそれに気づき、裸のまま2階に駆け上がってこれを知らせたため、竜馬らは首尾よく逃げおおせたのだとか。
それより驚いたのが、この寺田屋、どうやら今でも泊まることができるらしいです。
私もこの日は久しぶりに伏見稲荷にまで足を延ばしたりと、楽しい一日を過ごさせていただきました。
酒粕ラーメン玄屋には公式ページがありません。
住所 : 京都市伏見区東組町698
電話 : 075-602-1492
定休 : 木曜日 時々臨時休業有り
11:30~19:30 注 : 売切れ次第終了となります。
プロフィール
憶良(おくら) : 元ゲームプランナー、元ゲームプロデューサー。
ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。
休日は高速道路を使わずに名古屋から鳥取あたりの温泉に行って浸かり、道中や行先の地元スーパーで珍しい食材を買い込むと例え深夜に帰ったとしても料理する。
その際食べ歩きにも積極的と、食に対してはかなり貪欲。
「美味しいものを食べている時、美味しいものについて話している時に悪いことを考える人はいない。」という持論を持っている。
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