まいど憶良(おくら)です。
神戸の餃子と言えば味噌だれが特徴ですが、味噌だれの元祖といえば、ぎょうざ苑。という事で、神戸市は南京町にやってきました。
神戸南京町は横浜中華街、長崎新地中華街とともに日本三大中華街として有名です。
関西圏の人でも知らない人が多いのですが、実は南京町という町はなく、元町通から栄町通くらいまでの範囲の、通称なんです。
中華街として決して広くはないのですが、食べ歩きを楽しんだり「春節祭」、「中秋節」、「ランターンフェア」、「興隆春風祭」などイベントも多数行われたりと、楽しみの多い街です。
神戸南京町の中華街にある行列店
さて、この南京町には行列のできる人気店がたくさんありますが、その中でも特にこだわりの強い店として知られているのがこちら。
「元祖ぎょうざ苑」さんです。
清潔感のある、明るい店内。
有名人の色紙も多数あり。
入り口近くでは、実際に餃子を作っている様子を見ることが出来ます。
餃子の皮をローラーで徐々に薄くし、
丸い型でスパンっと型抜きして作ります。
皮、隠し味、油が違う!ここでしか味わえない3つの特徴
このお店の餃子にはその製造工程で、他とは違う3つの特徴があります。餃子の皮と隠し味のA5ランク神戸ビーフ、そしてピーナッツオイルです。ひとつひとつ解説しますね。
特徴その1 皮のもちもちさ
出来上った皮の一枚を手に取り、引っ張る店主さん。すると、なんと、餃子の皮がびょーんと伸びます。
これだけ伸びても切れる事がありません。これが焼かれ、茹でられたときに、もちっとした食感に変わるんです。
特徴その2 隠し味にA5ランクの神戸ビーフ
包まれる餡にもこだわりがあります。まず、にんにく、うま味調味料は一切使いません。
餡を仕込む時にはまず、秘密のソースを作るところから始まります。これに脂肪分が少なくて美味しい、飛騨・美嚢の健豚(けんとん)の豚ミンチを合わせてなじませ、一晩熟成。更に隠し味として神戸ビーフを9.1%入れています。
世界に名だたる神戸牛を、味のバックアップ要員として使う所が凄い!キャベツ、ニラも当然国産。塩は赤穂の天日干し塩を使うなど、こだわれる部分はすべてこだわります。
もちっもちっと、弾力のある皮は水分の含有量が高いため、ヒダも必要なく、ぴたっと包めます。
いよいよ昭和26年から使い続けた鍋で焼いていきます。
たっぷりの水で大量の蒸気を発生させ、
一度蓋をして 蒸しあげていきます。
特徴その3 使う油は高級品。ピーナッツオイル
高級オイルのピーナッツオイルで焼き揚げる事により、胃にもたれず、独特の香ばしさがプラスされて焼かれます。
再度水を入れ、今度は餃子から旨味が出たスープと化した汁をかけていきます。凝縮された旨みの塊をもちもちの皮が再度吸収し、焼き揚げられていきます。
焼きあがった絶品餃子をいざ実食!
焼き上がりです。
カリッと、パリパリっと焼かれた底面と、もちっと感が味わえる上面の食感のコントラストが味わえるのは餃子の身上ですが、ここぎょうざ苑の皮は、底面のパリッとした食感の、最後の0.05%くらいに モチッっと、ぷつんっ。という感触が歯に残るのが楽しいんです。
食べたことあるけれど気が付かなかったという方、一度底面の皮だけ取り出して試してみてください。
なんだか変な分析ですけど、ゆ~っくり噛んでみると、ほほぅ、なるほどと思って頂けると思います。
もちっとゾーンから餡、わずかにもちっと、プツンっと、パリッと。このひと噛みだけでも楽しめる餃子。これは足を運ぶ価値ありです。
世界でここでしか味わえない味噌だれがスゴい!
元々店主のおじいさんが満州で食べていた本場の餃子はもちろん、水餃子でした。
地元の方は餃子を食べるとなるとその都度必要な分量だけ皮を作り、餡を作り、水餃子で食べていたのですが、そこで生活する日本人は一度に沢山餃子を作ってしまうために、食べきれなくなってどうしても余ってしまう。
その余った餃子を食べる時に、もう一度火を通したのが焼き餃子の始まりと言われています。現地の方は黒酢や赤酢ベースのタレで食べていたのですが、赤酢や黒酢になじみのない日本人は味噌をベースにしてタレを作り、食べていたそうです。
ぎょうざ苑の味噌だれはその当時のタレを再現したもの。日本で最初にその味噌だれを提供したのがこの店なので、味噌だれの元祖、というわけなのです。
かなり長い間、味噌だれで食べるなんて。という風潮があったたため、餃子界の異端児扱いをされていたそうなのですが、徐々に認知され、支持されて、更に味噌だれを提供する店も増えて行き、神戸スタイルが定着していったのです。
また、ニンニクについては、本場中国では入れないものなのですが、ニンニクが欲しいという方のために、タレに混ぜて、もしくは薬味のように付け加えて楽しめるようにと、席にはセットされています。
好みで入れてみてください。
私は何もつけずに食べ、味噌と醤油、酢を混ぜたタレで、そして味噌だれのみで、等いろんな味を楽しみました。
お勧めの比率などは各テーブルのタレの作り方を参考に、
そしてそこから自分の好みで比率を変えるなどして楽しむことができます。
頑ななまでにラー油は置かないお店のポリシー
タレは自分の好みカスタマイズできるのですが、頑としてラー油だけは置いてありません。
ニンニクが好きな人もいるでしょう、それはオプションとして楽しんでください。でも、ここだけは譲れないものがある。
それはラー油の風味で、微妙な味付け、バランスを壊してしまう事だそうです。それは避けたい。
おそらく、日本で唯一ラー油を置かないと決めた餃子屋さんだと思います。
中にはラー油を出さないんなら、食べないっ、と、怒って店を出ていく人もいたそうです。それでも、譲れない味をかたくなに守る、そういう店なんです。
ラー油で食べたいならどこででも食べられます。
しかし、ラー油を置かないこだわりの餃子を味わいたいならば、もうここで食べるしかない、という事になります。
ぷるっぷるの水餃子!皮のわずかな厚みの差にもこだわりが
たっぷりのお湯で湯掻かれた餃子は
見てください。つやっつや、ぷるっぷるです。
つるんっ、ぷるんっとした食感。水餃子の舌触りがいいんです。
水餃子と焼き餃子の皮は同じものですが、その厚みが違います。
もちろんこの厚みの違いで食感も変わってきます。
醤油と酢をちょいがけして食べてみました。
つるんっとのどを通ります。
もちろん酢醤油を作って、そこにつけながらでもいいのですが、なんとなく蓮華の上で酢と醤油をかけると楽しいかな、と思っての事です。
味噌だれだけつけるのも、アリです。
実際には、味噌だれに酢と醤油を加えて食べる方が多いようです。
中国では水餃子で食べるのが当たり前という事を考えると、ここが原点という食べ方。
そう考えるとなんだか感慨深い気がします。
パリッパリの食感が楽しめる揚げ餃子
揚げ餃子はパリッとサクッと、楽しい食感。
軽く岩塩が振ってある状態で出てきますが、
好みで卓上にある 岩塩を振って食べます。
熱いので気を付けてくださいと言われていたのですが、上品に食べるより、ええいっ、火傷なんて気にするものかっ、くらいの勢いで食べたほうが美味しく感じました。
もう一つの人気メニュー、ジャジャ麵
中国北東部のソウルフード的存在のジャジャ麺。
最初は餃子の皮を伸ばして麺のように切ったものを使っていたそうですが、うどんを使うようになり、今の形、平麵におさまったとの事。
この麺も製麺所の方と試行錯誤を繰り返して作った特注品。ここに肉味噌、シャキシャキ食感の野菜をトッピング。
想像していたより辛くない、辛さより優しい旨みを味わえる仕上がり。になっています。いわば中国版ミートソースパスタとでもいう、特に女性に人気のメニューです。
味噌だれが受け入れられず1日のお客が1組だったことも・・・
このお店のこだわりは、まず餃子の餡にニンニクを入れない、化学調味料を使わない、そして、味噌だれ。この味噌だれの作り方を知っているのはたった4人。店主さん、そのお父さんとお母さん、そして初代店主のおじいさんのみ。まさに一子相伝の味です。
何を使っているのかどころか、作っているところも誰も見たことがない、人がいるところでは作る準備すらしないという徹底ぶりです。
そして、旨いと思ったらそれが高価であろうと、ピーナッツオイルや神戸ビーフを投入するという味に対する貪欲さ。
そして、頑固さ。
味噌だれが受け入れられない時期、認知されなかった時期もかなり長かったようです。1日営業してお客さんがたった1組だったことも。
それでもぶれない、頑固さ、信念という物があって、今の店がある。
行列のできる人気店、ずっと順風満帆だったんだろうというイメージを持っていたのですが、お話を聞いてみると歴史があって、努力があって、信じる何かがあるから今があるんだなぁ、という事がわかりました。
そうそう、お昼時、特に土日祝などは行列が出来やすいのですが、平日の夕方は行列を避けられる、狙い目かと思います。
リピーターの方のために、会員カードも用意されていますので、詳しくはスタッフにお尋ねください。
ついでに中華街をあちこち楽しむのも良いかと思います。
それでは、また。シェシェ。
紹介したお店
今回ご紹介のお店、ぎょうざ苑さんの場所、営業時間など詳しくはこちらのサイトで。
【公式HP】元祖ぎょうざ苑(神戸南京町)神戸餃子味噌ダレ発祥
プロフィール
憶良(おくら) : 元ゲームプランナー、元ゲームプロデューサー。
ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。
休日は名古屋から鳥取あたりの温泉に浸かり、地元スーパーで珍しい食材を買っては料理する。
その際食べ歩きにも積極的と、食に対してはかなり貪欲。
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