こんにちは。ライターのヤスミノです。
先日、焼肉店に行ったときのことです。
数種類の肉をまとめて注文し、次々に肉がテーブルに運ばれてきました。焼く前にドリンクバーに行き、飲み物を持ってテーブルに戻ってきたその時、あることに気づいてしまいました。
どの肉が、どの部位なのか分からない。
「まあ、食べれば分かるだろう」と思い、焼いて食べたのですが、
分かりませんでした。全く。
「バカ舌だからじゃないの?」と思われるかもしれませんが、待ってください。これって本当に僕だけでしょうか? 焼肉マニアを自称する人なら分かるでしょうが、大部分の人はそうではないはず。
知ったふうな顔をしてるだけで、肉の味の違いなんてたいして分かってないのでは?
実際のところ、我々は与えられた「情報」を食らっているだけなのでは?
今回はそんな疑問を解消するべく、ある検証をします。
「タダで肉が食える」と伝えたら簡単に集まったこちらのメンバーに協力してもらいます。
メンバー紹介
Webディレクター、ライター。焼肉に行く頻度は2カ月に1回ぐらい。
ライター。焼肉に行く頻度は3カ月に1回ぐらい。
編集者、ライター。焼肉に行く頻度は3カ月に1回ぐらい。
この記事を書いているライター。焼肉に行く頻度は2カ月に1回ぐらい。「肉」「肉じゃない」が判別できる。
検証内容・手順
テイクアウト専門の焼肉店で、タレで味付けされた5種類の肉を買ってきました。低価格帯の焼肉チェーン店と同じくらいの値段でした。
肉にタレの色がしみ込んで、見た目で判別するのが難しくなっています。またタレの味によって本来の肉の風味が薄れ、さらに難易度が高くなっているかもしれません。
これらの肉を使って、「肉の専門家でもない限り、味や食感だけで部位を判別するの不可能説」を検証していきます。
非常に単純明快ですね。
「説を全否定するようで申し訳ないけど、普通にぜんぶ当てられる」
「自分も分かると思います。一般的な肉であれば」
「私は正直あんまり自信ないですね……」
検証開始
それでは検証を始めていきましょう。Aから順番に焼いていきます。
「焼肉ってもっと心躍るものなのに、全然楽しい感じがしないですね。紙皿に『A』って……」
「すごく被験者って感じがしますね」
「見た目だけでは判別できないな。でも脂身の多さとかは判断材料になりそう」
「牛肉と鶏肉の違いならまだ分かりますけど、同じ『牛肉』の部位を判別するのって、もはや特殊技能に近くないですか? 訓練してないと分からないと思うんですよね」
「そんな大げさなもんじゃないだろ」
「うん、うまい……と思う」
「なんだろう。おいしいけど、何の肉か分からない状態で食べると不安な感じしますね」
「味覚に集中したら味が鮮明になるかと思ったけど、そんなことないですね。情報がないと味が分からなくなる気がする」
「情報があるからこそ味が分かるってことですよね」
「焼肉」という祝祭的な感覚は希薄になり、ぼんやりとした不安を抱えながら黙々と食べていきます。
「疑心暗鬼で焼肉しても、あんまりおいしく感じないのは分かった」
「私は今のところ、『全部うまい』という感想ですね」
「正解はすべてアメリカバイソンの肉でした、みたいなドッキリじゃないですよね?」
「違うし、どうやって入手するのか知らない」
回答発表
というわけで、5種類を食べてもらいました。
3人の回答を見てみましょう。こちらです。
3人とも答えが一致したのは、Aの「カルビ」。
検証前に自信を見せていた神田とマンスーンは、Bを「ハラミ」、Dを「ロース(上ロース)」と回答。
「食べてるうちにだんだん分からなくなってきた。Aがカルビなのは間違いない」
「肉の名前が思い浮かばなかったから、上カルビと上ロースを入れてみたけど、方向性はズレてないと思う」
「私も名前が全然浮かびませんでした。Eを『赤身』って回答しちゃってますし……」
「ちなみにみなさん、何が一番おいしかったですか?」
「Cかな」
「Eですかね。他のよりさっぱりしてて」
「自分はAです」
「好みがハッキリ分かれますね」
正解は……
読者のみなさんには、先に正解を発表します。実はこうなっていました。
A 特上カルビ
B ハラミ
C カルビ
D 上カルビ
E ロース
「カルビが3種類あるのは、さすがに卑怯だ」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
でも、3種類だけの検証だと、カルビ・ロース・ハラミだろうなと簡単に予想を立てられてしまうと思ったのです。僕の性格が悪いからではありません。あまりにも簡単な問題だと、本来の検証の意味がなくなってしまうからです。
ちなみに何をもって「上」「特上」とするかは、店舗によって定義が異なるようです。今回購入した店で聞いてみたところ、上カルビの端の部分を「カルビ」、上カルビのサシの入った良い部分を「特上」としているそう。
では、3人の回答内容と結果を見ていきましょう。
正解数は、よざが1問、神田が2問。
そして最も自信のあったマンスーンは、堂々の4問正解! ただ、カルビを上カルビ、特上カルビをカルビと取り違えています。「食べ慣れた安価なもの=おいしいもの」として舌が覚えているのかもしれません。
3人には、まだ正解を発表しません。
どれがどの肉なのかはまだ明かさず、食べた5種類の名前だけをいっぺんに発表します。
「A=特上カルビ」といった情報も教えません。教えるのは「この5種類が、A〜Eいずれかに該当する」という情報だけ。
「食べてもらった肉は、カルビ、ロース、ハラミ、上カルビ、特上カルビ、この5種類でした」
「うわー、全然違った! ヒレないんだ……」
「上カルビ、特上カルビって、ひっかけ問題じゃん。分かるわけがない」
「でも、選択肢を与えられたら完璧に分かるな」
「では、何も分からない状態から『5種類の部位の名前だけ分かる状態』になったところで、再度検証していきます」
再検証
さきほどと同様に、Aから順番に食べてもらいます。
「はいはいはい。もう分かるわ。確証を得て食う焼肉、さっきよりおいしく感じる」
「選択肢が与えられたことで、判断の論理がさっきより明確になってる」
「あれ? さっきより分からないかも」
結果発表
2回目の検証が終わりました。
読者のみなさんにはすでに正解を発表しましたが、回答者3人は、ここで初めて正解を知ることになります。
「あんだけ言っといて外してたら恥ずかしいな」
「選択肢が与えられて逆に混乱しました」
「1回目よりは正解してると思うけど……」
「では、正解を発表します。このようになりました!」
マンスーン、全問正解!
「ほらね! 分かるから普通!!」
「本当に分かってたんだ……。虚勢を張ってるだけかと思ってました」
「私もそこそこ正解してます!」
「よざさんも自信なかった割には3問正解してますね。逆に神田さんは1回目に正解してた『ハラミ』をわざわざ違うやつに変えてる」
「なまじ選択肢が与えられて、『ハラミって横隔膜だからこんな薄くないよな』とか、味じゃない部分を判断材料にしてしまった……」
すべて分かった状態で、改めて食べてみましょう。
「Cのカルビをもう一回食べてみると、明らかに他の肉より筋が目立って安い味に感じますね。さっきまで気づかなかったのに」
「逆に、言われなきゃまったく分からないってことですよね」
「なんでだろう。さっきと同じなのに、正解が分かったら急に味がくっきりするような」
「不思議なもんで、いま食べたら味の違いが全然分かるんですけどね」
まとめ
というわけで検証の結果、以下のことが分かりました。
・何の情報もなく肉の部位を当てるのは、それなりに難しい
・「こういう味」という概念も、食べている肉がの部位がはっきりと分かっているからこそ明確になる
・脂の多いカルビは比較的分かりやすい
この記事の冒頭で「テーブルにいろんな肉が並ぶと、どれがどれだか分からなくなる」と書きました。
その共感を得たかったので「部位当てクイズ」的な検証をやってみたのですが、僕が思っていたより正解率が高くて面食らう、という結果になってしまいました。「部位当て」は僕が思っているほど特殊な技能ではないのかもしれません……。
最後はカルビ、ロース、ハラミを改めて食べ比べてみて、味オンチの僕なりに特徴をまとめてみました。肉の違いが全然分からないという同志の方がいたら、参考にしてみてください。
筆者プロフィール
ヤスミノ
フリーライター。新潟出身。チョコパイが好き。スーパーに行くと必ずチョコパイの値段を確認する。
Twitter:@yasumino_boy
編集:うないいちどう(ノオト)