ビール党・中川淳一郎が激推し!生ビールが美味しい東京三大ビアホール幹事道【第七回】

ビール党で、水以上の頻度でサッポロ黒ラベルを飲むと自称している中川淳一郎氏。夏の風物詩ビアガーデンに頻繁に出没しているかと思いきや「ビアガーデンよりもビアホール」を頑なに説いておりました。そんなビール党の中川氏がおすすめする東京ビアホールはこの3つ「ビヤホール ライオン 銀座七丁目店」「ランチョン」「ビアライゼ98」。中川氏を惹きつける魅力は何なのでしょうか?早速ご紹介します!(忘年会特集・人気エリア秋葉原 忘年会)

ビール党・中川淳一郎が激推し!生ビールが美味しい東京三大ビアホール幹事道【第七回】

ビール党・中川淳一郎が激推し!生ビールが美味しい東京三大ビアホール幹事道【第七回】

三大〇〇

東京三大煮込み」という言葉がありますよね。
北千住「大はし」、森下「山利喜」、月島「岸田屋」がソレです。これは居酒屋の専門家・太田和彦さんが提唱した概念ですが、この「三大」という概念は案外あやふやなものであり、案外個人的嗜好が影響していたり、根拠不明とも考えられます。

「世界三大料理」は「トルコ」「フランス」「中国」で、「世界三大珍味」といえば、「フォアグラ」「キャビア」「トリュフ」で、中国三大珍味が「フカヒレ」「アワビ」「ツバメの巣」です。
日本三大珍味は「ウニ」「カラスミ」「コノワタ」。

世界三大料理になんでイタリア、日本、タイが入ってねぇんだ、オラ、と思うほか、「世界三大珍味」って言ってもフランスだらけじゃねぇか、この野郎、「日本三大珍味」って酒のつまみだらけじゃねぇかよ、と反論したくなるわけです。

故に、ここでの結論としては「三大○○」というものは自由に言っても構わない、ということにしましょう。
恐らく選考委員(存在するのであれば)が「ワシが好きだった」みたいな観点から選んでいるだけだと思うのであります。よって、私も「東京三大ビアホール」を勝手に認定してしまいます。

その時の基準は「ビール注ぎの名人がいる」「ビールに合うつまみが豊富」「酒好きが集う」こととしましょう。
これまで何千回とビールを外で飲んでいますが、オレが「三大ビアホール」と考えるのは下記三軒。
【1】ビヤホール ライオン 銀座七丁目店(銀座
【2】ランチョン(神保町
【3】ビアライゼ'98(新橋

三大ビアホールの魅力

ビアライゼ'98(新橋

改めてこれらのお店の魅力を語っていきましょう。
まずは【3】のビアライゼ’98から。ここは、松尾光平氏という名人がスーパードライの前身ともいえる「アサヒ樽生」を丁寧に入れてくれるのですが、元々サッパリとした「アサヒ樽生」なものですから、いくらでもゴクゴクと飲めてしまう。

私自身、あんまり店の開始時間の直後に生ビールは飲みたくないと考えています。というのも、ダメな店は、前日の残りのビールが出てくるほか、サーバーの洗浄を怠っているのか妙に酸っぱいビールと感じてしまうのです。
以前、某所の「こだわりの食材」みたいな店の生ビールには痛い目に遭いました。食材は大事にしているのかもしれませんが、ビールへの愛情が一切感じられず・・・酸っぱいだけでなく、ジョッキの底には澱が溜まっていくのでした。こうしたハズレを引かないためにも私は現在は飲食店で「瓶ビール」を頼むようになったのです。

一口飲んだ瞬間のあの酸っぱさと、同行の方がそれに気付かず「プハーッ!やっぱ一杯目のビールはウマいね!」と喜んでいる時の複雑な気持ちったらないですよ。
明らかに2つ目以降の樽になった場合はそれほどマズくはないと思うので生ビールを頼むこともあるのですが、泡のキメ細やかさが一切なく、バカでかいツブツブだらけの隣の席のビールを見たら絶対に頼みません。古いビール+洗浄不足+ヘタクソな注ぎ手が揃ったら、もはやその生ビールに価値はない。サッサと瓶ビールに変えるべきです。
いや、店を出ても良い。

今回ご紹介する3店は、こんなことは絶対にないと断言できるお店で、とにかくビールはウマい。
ビアライゼ’98については、メンチカツが名物でして、度々グルメ雑誌等でも紹介されるほどです。巨大なメンチカツは4人で分けても充分なほどで、満足度は高いことでしょう。

なお、私が一番好きなのは「トロトロ豚肉軟骨の沖縄ソーキ」です。
普通の居酒屋ではモツ煮込みやら牛筋煮込みがありますが、それの代わりとしてもオススメですね。

で、画像がまったく出てこなくてすいません。これについては私が記憶で書いているんですよ。改めて取材に平日昼間に行ってみたのですが、生ビールを飲んでいる人がいない。イヤな予感がしつつも席に着いて「生ビールとソーキとメンチカツ」と言おうとしたら、店員のお姉さんが申し訳なさそうな顔をして「昼はこれしかないんです」と言って厚いラミネート加工された1枚のメニュー表をくれました。

メンチカツ¥930
コロッケ¥680
とり唐揚¥780

などと書いてあり、要するに昼は瓶ビールのみ提供する「定食屋」なのですね。
メインのおかずを頼んだら、店の中央あたりのテーブルからサブおかずや味噌汁を取るシステムだったのでした。松尾氏がいないのでそれも致し方ないわけでして、勉強不足を痛感したのでした。料理はビアライゼ’98のものなので、味は間違いなくおいしいのでしょうが、あくまでもビールを飲みに来たのでこの日は退散。
今度はちゃんと夜に伺おうと思います。

ランチョン(神保町

というわけで、そのまま都営三田線に乗り、神保町の「ランチョン」へ。ここは漫画家の東海林さだおさんも絶賛のお店でして、昼間からエビフライでビールを飲む男性のことが羨ましくなった、的なことを以前書いておりました。

私は現在神保町で週に2回仕事をしている関係で、打ち合わせ等でこの店に来ることもあります。昼間から落ち着いてビールを飲める店というのもそれほどないですからね。
それで、この店もアサヒのビールを使っています。頼むのは当然、アサヒの生。他には黒生ビール、レーベンブロイ生ビール、琥珀の時間生ビールがあります。

一緒に頼むのは個人的に最もビールに合うと思う「ベークドポテト」です。「豆チリソース煮込み」と「エスカルゴ」も捨てがたいのですが、今回はこちらで。
後は、東海林さんオススメのエビフライです。こちらは2200円のデラックス価格ながらその巨大さは一度味わってみたいと考え、満を持して初めて頼んでみました。

ランチョンのビールの特徴は、ガシッと蓋をしているかのような泡です。これを作っているのが四代目マスターの鈴木寛さん。いかにして泡を作っているのかを聞いてみました。

――どうやってこの泡は作っているのですか?
鈴木:一度に注ぐのではなく、数回に分けて、時間をかけて注ぐのがポイントです。最初は勢いよく注ぎ、ビールと泡を5:5にします。そこから30秒置きます。それで泡が固くなりまして、2回目ないしは3回目の注ぎで終わることとなります。固い泡はビールの蓋になるんですよ。

――これは、ランチョンで扱っているビールでなくてはできないのですか?
鈴木:いや、そんなことはありません。ご家庭でもできますよ。コツは勢いよく注いだら30秒ほど置き、その後、2回、3回と分けて注げば大丈夫です。

というわけで、この「固い」泡は自宅でも作ることは可能なようです。となれば一杯飲むか。

ゴクゴクゴクゴク、プハーッ、うめぇ!


最初にふんわりとした泡が口に入り、冷たい液体がドバドバと入ってくるこのバランス!
となれば、つまみが欲しくなるじゃないですか。というわけで、今度はつまみに対する考え方を鈴木さんに聞いた。

――ランチョンのつまみは、ビールに合いますよね。どんな考えでつまみは開発したのですか?
鈴木:味は濃くしていますよね。場所が下町ってのもありますが、ビールに合うおつまみにするため、味を濃くしています。より、ビールが進む味です。

――メニューにわざわざ「コーヒーはありません」とありますが、これはなぜですか?
鈴木:コーヒーの香りで生ビールの風味を邪魔されるので、コーヒーは置いていません。

――おぉ! では、さっそくつまみもいただきまーす!

まずやってきたのは「ベイクドポテト」。茹でて薄切りにしたジャガイモに塩味をつけたもを軽く揚げ、細切りのベーコン、タマネギ炒めに加え、フライドガーリックも加わり、ビールが進みまくる一品です。私はここにさらに黒胡椒をかけます。

続いては、エビフライ。20cm超のホワイト海老です。これが二匹、生野菜とポテトサラダ、レモンとタルタルソースがついています。

もちろん尻尾も食べられますし、頭の中のミソ、あとは脚もパリパリと食べられ良いビールのつまみになります。

一緒に行ったライター氏家裕子さんと一緒にパチリ。

生野菜にはランチョンのオリジナルドレッシングをかけます。

ランチョンは午後の3時ぐらいに行くと味わい深いですよ。本を探しに神保町にやってきた人が一人本を読みながらビールを飲んでいたり、どことなく文化の薫りがするのでした。夜は21時ラストオーダーなので早めの来店がオススメです。

ビヤホール ライオン 銀座七丁目店(銀座

最後はビヤホール ライオン 銀座七丁目店。
日曜日の夕方、銀座の歩行者天国を新橋方面に向かっていくと出てきました。ライオンのビルが!

ここは以前取材したことがあるのですが、地下に生ビールの巨大タンクが設置されており、チューブで上の階のサーバーまで繋ぐのです。1934年創業、そして、注ぎ手は名人で、カウンター総責任者の井上克己氏。さらには、「生ビールの達人」として知られる海老原清氏も月・金の19:15からビールを注ぎます。
2005年に「本当にいいもの特集」をやった時に海老原氏には取材させてもらい、2014年に東洋経済オンラインの「行きたいところに行ってみる」的な企画では井上氏の取材をさせてもらいました。

とにかくここのビールはウマい!


ということは分かっていたのですが、甘かった……。夏の日曜日の夕方に入ろうと思うのが無謀でした。満席なのですよ。しかしながら、ここには2階に「BEER&WINE GRILL銀座ライオン銀座七丁目店」もある!

井上氏の注ぐビールではなくなるものの、気を取り直してこちらに変更。何しろ、全身生ビール男になってしまっているので、ここで諦めるわけにはいかないのだ。1階と似たようなメニューを楽しむことができます。そして、な、なんと個室を案内してもらえました! 

8月31日まで「大ジョッキフェア」をやっているので、当然選ぶのはサッポロ黒ラベルの大ジョッキ。大ジョッキを頼めば1杯につき1回三角くじを引けます。なんと、いきなり1等(サッポロ-0℃ ※缶チューハイ)と3等(次回使えるドリンク一杯券)をGET!
2等はGREEN SHOWERというペットボトル飲料です。黒ラベルは800ml入って1000円。他にもエビス生、エビスプレミアムブラック、エーデルピルス、白穂乃香などが用意されています。

この店も混んではいるものの、従業員が多いせいかサクサクと注文にやってきてくれ、すぐに飲み物・食べ物を出してくれます。お通しはサラミとホタテ。けっこう塩辛くてすでにビールに合いそうですね。

ビール登場!プハーッ!


このために水分断ちをしていただけに一気に上から三分の一ほど飲んでしまいました。250mlぐらいは一気にいっちゃいました。

チキンバスケット登場!
竜田揚げ風の下味がついていて、かなり味が濃く、これまたビールが進む進む!
1ピースを食べる間に大ジョッキが空になるほど優秀な酒のツマミであります。

こちらは焼き立てベーコンのシーザーサラダ。カレーのルーの容器みたいなものに、シーザードレッシングと温泉卵が入っており、これをサラダにかけてかき混ぜるのです。特筆すべきは分厚いながらもカリカリに焼けたベーコン。塩味の効いたベーコンをかじってはビールを飲むも良し、野菜で味を中和するもよし、の絶品つまみでございました。

さすがに3杯も大ジョッキを飲むともうこれ以上は飲めなくなり(だって量が多いんだもん…)、有楽町で映画でも観るかということに。『ターミネーター 新起動/ジェニシス』が東宝シネマズで19:15~ということで、ちらほら帰ることに。映画は長丁場になりそうなので、最後にシメのステーキガーリックピラフを頼みました。
ピラフの上に、切ったステーキを乗せ、さらにその上にガーリックチップスを乗せるというボリューム満点のもの。

しかしね、困ったことに、ステーキとガーリックチップスだけでビールが飲みたくなるワケなんですよ。慌てて小グラスを頼み、ステーキを満喫したのでした。ビールが終わってからピラフに移り、大満足でございます。

ビアホールの優れた幹事道

夏になるとビアガーデンもいいですが、ビール大好き人間としては、ビアホールに軍配を上げたいもの。その理由は以下の通り。

その壱:
エアコンがついているため、ビールがぬるくなりにくい

その弐:
ビアガーデンは基本的には季節モノのため、スタッフも慣れていない人が多く、ビールの注ぎ方、頼んだものが届くまでの時間についてはビアホールに負ける

その参:
ビアガーデンの食事は作り置きのエダマメやらソーセージであることが多く、選択肢が少ない

その四:
ビアガーデンではバーベキューやジンギスカンのコースもあるものの、焼くのに集中し、ビールが主役にならない

その伍:
夏の風物詩であるために、ビアガーデンはなかなか予約が取りづらい。(某ビアガーデンを8月29日(土)に予約したら7月26日段階ですでに満席だった!)

ビアガーデン、夏しかいけない貴重な場所ですが、ビアホールも負けてはいませんヨ!

著者・SPECIAL THANKS

中川淳一郎(なかがわ じゅんいちろう)

中川淳一郎(なかがわ じゅんいちろう)

ライター、編集者、PRプランナー 1973年生まれ。東京立川市出身。 一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社し、しばらく無職となったあとフリーライターになり、その後『テレビブロス』のフリー編集者に。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々な、ネットニュースサイトの編集者となる。主な著書に、『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)、『夢、死ね!』(星海社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。割と頻繁に物議を醸す、無遠慮で本質を突いた物言いに定評がある。ビール党で、水以上の頻度でサッポロ黒ラベルを飲む。

                             
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