意識の高い飲み会の幹事道【第三回】

「意識が高い」という言葉を調べてみると「ある事柄に対して強く意識している。ある理念をよく理解している。」と書いてありました。つまり、幹事で例えるなら「飲み会に対して強く意識している。飲み会をよく理解している。」ということでしょうか。幹事道第三回は「意識高い系」研究者の第一人者である常見陽平氏に中川淳一郎氏が意識高くインタビューしてきました。(忘年会特集秋葉原 忘年会)

意識の高い飲み会の幹事道【第三回】

意識の高い飲み会の幹事道【第三回】

中川淳一郎の幹事道【第三回】

「意識高い系」研究者の第一人者 常見陽平氏

千葉商科大学国際教養学部専任講師であり、コラムニストとしても活動中の「若き老害」こと常見陽平氏は『「意識高い系」という病 ~ソーシャル時代にはびこるバカヤロー』(ベスト新書)という著書を持つ「意識高い系」研究者の第一人者である。

そんな常見氏に、「意識の高い飲み会」はどうやってやるのかを聞いてみたゾ! 常見氏の言う通りの宴会をし、それをSNSなどで積極的に発信すればセルフブランディングに最適らしいので皆さまも是非参考にしていただければ、と考える次第である。(←重厚な文章で意識高く始めてみたゾ!)

意識高く『ビジョナリーカンパニー2』を読む中川淳一郎

中川:
常見さん、常見さん、あなたは「意識高い系」研究の第一人者として高名な方ですが、どうすれば意識の高い宴会ってできるのでしょうか。
今日はその技を伝授していただけませんでしょうか。

キミぃ! いい質問だねぇ! まずはだねぇ、キミ達の「幹事の味方」というコラムはいいね。幹事ってのがやはり宴会においては「キモ」なのだよ。
宴会が終わりに近付いたら「宴も高輪プリンスホテルでございます。
お時間も帝国ホテル! 外はすっかりホテルオークラ! ◯◯君、福岡に異動しても、住めば都ホテル!」とキチンと幹事ならではの盛り上げ芸を混ぜ込むなど、幹事の重要性について私はこの20年間、論じ続けてきたッ!

そして最近は「意識高い系」について高度な分析を試みるとともに、これについて言及するとなぜかネットで意識高い系に叩かれ炎上するという事態を続けるにつれ、いわゆる~! 万国の労働者の~! 資本家による~! 搾取構造を粉砕すべく~、団結を呼びかけ~!

中川:
常見さん、常見さん、のっけから意識高すぎですよ!
もっと飲み会の話に寄せてくださいよ!

意識の高い飲み会の分類

失敬、失敬。それでは意識の高い飲み会の分類をしてみようか。
一つは、同世代、同業界集まれ交流会みたいなものだな。クリスマス会もそうだし、同業界、同世代、若手スタートアップで集まろうぜ的なものは意識の高い宴会だ。

中川:
なるほど! そうやって同じ志を持った者同士が切磋琢磨し合い、情報交換をする場、ということですね!

そういう会を開催し、集まった人数自慢、顔ぶれ自慢、どこでやったゾ!
という「こんなにすごい人達がこんなに集まっちゃったゾ!」ということをきちんとSNSで報告することによって「意識の高い飲み会」になるのである。リクルート時代に「パワーディナーの会」なるものを主催していた意識高い系がいました。「パワーブレックファスト」とか「パワーランチ」とかってあるじゃないですか。朝ご飯や昼ご飯を食べながらビジネスの会議を進めていくようなアレね。

彼はこの「パワーディナーの会」を代官山でやっていました。「毎回170人を動員!」とかアピールしていましたね。「人数いっぱい集まってるゾ!」「交流しちゃってるゾ!」というのを徹底的に他者に伝える。これが「意識の高い飲み会」です。そいつは、それで本まで書いちゃいました。

田中康夫氏との宴会の様子を写真でレポートする常見氏

場所選びが重要

中川:
ここでは「人数」とか「代官山」とかが重要なのですか?

キミィ!いい指摘だねぇ!
そうなんだよ。「意識の高い飲み会」においては、「場所選び」も実に重要だ。「さすが○○さん、アソコ選んだか!」「さすが○○さん、代官山みたいなオシャレな場所に顔が利くんだ!」となるんですよ。

もちろん「こんなに集まるんだゾ!」というアピールも重要ですが、人数が少なかったとしても、超高級ホテルの一室でやっちゃったゾ! みたいなアピールも案外効くでしょう。

あとは、とあるベンチャー企業の経営者がオーナーをやってる店とかも良いアピールになりますよね。

中川:
これは「アピールをするにあたり、いい要素」ということですね。でしたら、実際にこうした「意識の高い飲み会」をするにあたっての諸条件はいかなるものになるのでしょうか。

L字型席はダメ

まぁ、経営者同士の集まり以外であれば、会費は大体7,000円から1万円くらいが妥当ではないでしょうか。やはり意識の高い飲み会は、参加者同士が交流しやすいかどうかを考えなくてはいけません。
衝立があったりしたらウザかったりはしますので、立食形式の飲み会であれば、そういったものはないようにしましょう。あと、席にしても「L字型」はダメです。

中川:
えっ! だって、最近は『DEATH NOTE』が舞台劇になったりして「L」が脚光を浴びてるじゃないですか! なんで「L字型」がダメなんですか!

そのLかッ!

Lの奥の方だと声が聞こえないんですよ……。だからL字型だと全体でゲームができないんです。「ちゃんと顔が見えるのがいいよね」となります。そして、意識の高い飲み会ではできればPC等の画面を映せるプロジェクターやディスプレイが置いてあって欲しいですよね。ゲームがやりやすいですし、プレゼンもできるし、映像を流したりもできる。

ですからお店にプロジェクターとマイクがあるかどうかもイベント的には考慮すべき要素でしょう。

No Facebook?

中川:
こうして「外」に向けて飲み会の様子を伝えることが「意識が高い飲み会」の要素であることはよく分かりましたが、必ずしも外に対して飲み会の様子を伝えなくてはいけないのでしょうか?

そうですよね。友達同士でも意識の高い飲み会はできます。
その時の意識の高い言葉が「NO FB」です。

中川:
ハッ? ノーエフビー?

「No Facebook」のことです。

つまり、この飲み会の様子をフェイスブックに載せるな、という言葉ですね。貴重な出会いの場、下々の者では会えない方々が集う高級店の様子は我々だけのものにしておこう、というこれまた意識の高い飲み会であります。しかし、ここではフェイスブックに乗せるのがOKな飲み会という文脈で考えていきましょう。重要なのは「個室」であること。

あとはフェイスブックに載せた時に「オッ!(すげー)」となる食べ物があるかということです。幻の焼酎「魔王」とか日本酒「獺祭」を囲んでいる写真。話題のおいしそうな料理とかも含め、フェイスブック映えするかどうかがポイントとなります。個室、半個室であれば、内緒の話をゆっくりできるので、「意識の高さ」はより高まることでしょう。

これは「NO FB」ではない写真。新進気鋭の若手論客・砂流恵介氏を囲む常見氏と中川

重要な店選びのポイント

中川:
あと、店選びのポイントとして重要なものはなんでしょうか?

その場合でいうと、誰かが過去に使ったことがある店というのが大事ですね。意識高い系の初心者は、口コミサイト等で何点なのか?
しか重視しません。これでは真の「意識の高い飲み会」はできません。「ベテラン意識の高い幹事」は勝手知ったる常連となった店に行くのです。そうすれば「○○さんの顔が利いたお陰で突然フォアグラのお寿司がサービスで出てきた。口の中でとろける」とか後でフェイスブックに書いてもらえるわけですよ。

中川:
なるほど!
そういって自分の権力を一緒にいる人にもアピールできる環境をいかに作り出すかがベテラン意識の高い幹事への道なのですね!

そういうことだよ。
そしてね、宴会において重要なのは「一次会・二次会問題」だ。一次会でちゃんと満足して、流れてくれ、というパターンももちろんアリでしょう。しかし、ベテラン意識の高い幹事、つまり「意識の高い名人」は、二次会の場所も用意しておくんですよ。一次会が盛り上がっているかどうかの空気を読み、そこにいるメンバーの顔触れなどから、次をどうするかを途中考える。

カラオケがいいかな? 秘密の話をしっぽりできるバーがいいかな? と名人は考えるんだ。盛り上がっていて会計が終わったところで「実はこの後も用意しています!」と言ったらみんな、その幹事を尊敬しますよ!

中川:
常見さん、幹事道って深いんですね!

そうなんだよ。
あとね、「意識の高い二次会」ってのもありまして、一次会の終了間際に「今日は皆さんがいっぱいいたのでじっくり話せませんでしたね。次は二人でじっくり話しませんか?」とナンパをしてしまうというのもなかなかの高レベルなテクニックだよ。

中川:
ふむふむ。意識が高いとモテる可能性もあるのですね。これはモテない私にとっては実に参考になる。

意識の高い飲み会ってのはね、その場だけで終わりじゃないってことも是非とも知っておいてもらいたいね。

中川:
どういうことですか?

翌日のメールだよ!
そこにいた有名な人とかに「昨日はお会いできてたいへん嬉しかったです。○○さんの『××』という著作の頃から好きでした。ネットの発言だけを見ると怖い人かと思ったが、昨日の飲み会でお会いして、暖かい方だと分かりました。私はスタートアップベンチャーで広報の仕事をしておりまして、オウンドメディアを立ち上げたりもしまして、○○さんにいつかお仕事をお願いできればたいへん幸甚でございます。

つきましては、6月にお食事でもいかがでしょうか」なんて書くんだよ。これをアサイチで届けるのが重要だね。

中川:
これはかなり配慮が必要なテクですね!

それができてこその「名意識が高い飲み会幹事」だよ!

キミも頑張ってその道を究めてくれ。そしてね、やはりここでもフェイスブックでキチンと報告をする。「昨日は○○さんの飲み会に行きました、と参加者のタグ付をする。そしてね、たとえば、その宴会で知り合ったマッキンゼーとかボストンコンサルとかあとは外務省でもなんでもいいけど、すごそうな人の名前を出すんだよ。そして「マッキンゼー出身の○○さんって知ってます?

私は彼の弟子みたいなものなんですよ!」と2回会っただけなのにアピールすれば、もうあなたは意識の高い飲み会参加者として有段者になれるだろう! 俺はそういう奴、苦手だけどなw

――というわけで、後日、私も意識の高い飲み会をやってみた。参加したのは某イケイケニュースサイトの若手メンバー7人と私、そして弊社社員のY嬢の合計9人である。当然常見氏の助言通り個室である。行ったお店は「北海道はでっかい道 オホーツクの恵み 湧別町 市ヶ谷店」。絶品の北海道名産品がジャンジャカ出てくるゾ!

私の大好きなサッポロ黒ラベルの生があり、「鹿肉のたたき」などといった絶品や「インカの目覚めのポテトフライ」などが実に美味であった。

↓詳細・ご予約はこちらから↓

某イケイケニュースサイトの若手とネット業界の最新事例の情報交換会の様子。皆、「ろくろ」を回している。当然個室であるっ!

意識の高い盛りつけのポテトサラダだ! 絶品!

意識の高い若手は、常に口元に手をあてる

意識の高い若者は飲み会の席とはいっても歴史等、教養の収集に余念がない

 

常見陽平による「意識の高い飲み会」7か条

その壱
人数の多さを自慢しろ!

その弐
場所も話題の場所や、オシャレな場所で開催しろ!

その参
自分の行きつけの店を選び、そこで特別なサービスをしてもらい、自分の権力を他の参加者に知らしめろ!

その四
何があろうが、SNSで、飲み会の様子を報告しろ!

その伍
特別な料理、特別な酒の写真は必ずSNSで公開しろ!

その六
二次会をやるかどうかはその場の雰囲気を読み、適切な店を選べ!

その七
有名人がいた場合は、その人との親密さをSNSでアピールしろ!

著者・SPECIAL THANKS

中川淳一郎(なかがわ じゅんいちろう)

中川淳一郎(なかがわ じゅんいちろう)

ライター、編集者、PRプランナー 1973年生まれ。東京立川市出身。 一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社し、しばらく無職となったあとフリーライターになり、その後『テレビブロス』のフリー編集者に。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々な、ネットニュースサイトの編集者となる。主な著書に、『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)、『夢、死ね!』(星海社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。割と頻繁に物議を醸す、無遠慮で本質を突いた物言いに定評がある。ビール党で、水以上の頻度でサッポロ黒ラベルを飲む。

                             
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