コミュニケーションが苦手なネットユーザーにとっては悩ましい時期ですが、なかでも飲み会の席で最も苦痛な状況が”会話モーゼ”と呼ばれ恐れられているそうです。
“会話モーゼ”にならないためにはどうしたら良いのでしょうか?
“会話モーゼ”とは
モーゼとは旧約聖書の中で「海を分ける」という奇跡を起こした預言者ですが、飲み会におけるモーゼはもっと分けても仕方のないものを分けるようです。
図のような飲みの席で、中央下段の人物に注目してください。
この人物が会話に積極的に参加しないため、テーブルの会話が大きく中央で分かれてしまっています。そしてどっちつかずのポジションに置き去りにされ、沈黙してしまう中央の人物・・・
一体なぜこのようなことになってしまったのでしょうか?
・・・一対多のコミュニケーションでは、自分が何かを話したり、聞き手に回るだけでなく、誰かの話したことを受けて他の人に話題を振ったり、会話と会話を繋げるハブの役割を求められる場面が多々あります。
しかし、そういった役割が苦手なタイプの人もいるようです。
「一対一だと饒舌なのに三人以上の会話が苦手」という方はその極端な例なのではないでしょうか?
”会話モーゼ”にならないために
歓送迎会や忘年会などの飲み会において“盛り上がらないこと”ほどの大罪はありません。
特に会社の飲み会では”盛り上がらなければならない”というのはただの強迫観念ではなく、全員の努力と根性とチームワークで絶対に達成しなければならない最低限の目標であり、上司やお偉いさん方は常に”盛り上がることに協力せず和を乱す奴”がいないか隅々まで目を光らせているのです。
そのような状況で“テーブルの中央付近で黙る”という状況に陥ったら目も当てられません。
どうやってそのような状況を避ければよいのでしょうか?
隅っこに陣取る
上記の図を見てください。
上下関係のある会社の飲み会など、あらかじめ席次の決まっている場合は仕方ありませんが、逆に「入店したときの感じでランダムに座らないと真の懇親にならない」というような飲み会においてはコミュニケーションを苦手とする方はできれば3番や6番のような通路側の席、続いて壁際でも隅っこの席を確保したいところです。
間違っても2番や5番のようなところには座ってはいけません。
2番や5番には周囲に気を配り、会話の流れをコントロールしつつ自分も盛り上がれるコミュニケーションの鬼しか座ることは許されません。
では、「ランダムに座らないと」という雰囲気の中で3番や6番に座るにはどうしたら良いのでしょうか?
この場合はいささか強引ですが、「入店するなりトイレに行く」という方法が考えられます。
「最後に着席する」という状況が作れれば通路側の席に陣取れる可能性が高くなります。
なぜ端っこがいいのか?
先述のとおりコミュニケーションが苦手な方は3番や6番といいった端っこの席に座るのが望ましいですが、ここに座るメリットは具体的に何があるのでしょうか?
まず、端っこの席というのは会話に常に参加していなくても時々チャチャを入れるだけで十分に「参加している感」が出せるということがあります。例えば・・・
このようにほとんどの時間を時計を気にしたり、おしぼり畳んだり広げたりしているだけでも・・・
定期的に「やいやい」と横槍を入れるだけで「おっ、あいつ盛り上がってるなあ~」という印象を与えることができるのです。
あとの時間はグラスからテーブルに伝った結露を執拗に拭ったり、人が開けたお皿を店員が取りやすい位置に回収したり、ニヤニヤしたりしていれば「何もせず黙っている」と思われる心配はありません。
人とコミュニケーションしよう
しかし、いつまでも「やいやい」だけで乗り切れるわけではありません。
中には気を遣ってコミュニケーション不適合者のあなたに話題を振ってくれる人もいるわけです。
それがこのような漠然とした質問だった場合どうでしょうか?
四六時中ネットを見たり匿名で誹謗中傷を書き込んでいるだけのあなたにそんな高度な質問は無理難題というものです。
「休日、インターネットしかしてないな・・・でもインターネットって言ったら暗いやつだと思われそうだし・・・」
変なプライドが結果、だいたいこのような感じになるのではないでしょうか。
ああ、終わった! なんてつまらない奴!
あなたが家に帰ってから50回このことを思い出し、悶絶することは想像に難くありません。
ささやかな会話ですらこのように0点を叩きだしてしまうのは「気の利いたことを言わなくては」という気持ちが強すぎるがゆえかもしれません。
もうひとつ、このような問題が起こるのには原因があります。
それは・・・
という点にあるのです。
意味のないGIFを作ってまで言っているのだから本当にそうなのです。
これは道理で、もし相手に対して微塵でも興味があれば何かを訊かれて「特に・・・」となった場合、「あなたはどうですか?」とすぐに質問で返すことができるはずです。
その質問を受けて答えに困窮していながら相手に同じことを訊かないというのは、「あなたに興味がないです」と言っているようなものであり、ひいては「相手に興味がないことがバレたら負け」というコミュニケーションの本質における敗北を意味するのです。
それでは、ここで円滑なコミュニケーションの基礎である「オウム返し」を使ってみましょう。
このように、ウィットに富んだ面白い返しをしたわけでもないのにここまで盛り上がることができました。
人が人に質問する内容は、そのまま自分が話したいことである場合が多く、本当に求められているのは質問に対する面白い回答ではなく自分が話し始めるきっかけであると考えてもよいほどです。
ほとんどの人は聞きたい欲求より話したい欲求のほうが強いということを忘れないようにしましょう。
あとは、相手がどんなにつまらない話をしていようが指さして笑っていればなんとかなります。
それでもダメなときは・・・?
しかし、世の中にはどうしようもない不向きというものがあり、これらの方法を駆使しても”盛り上がってる感”が出せない・・・あるいは”盛り上がってない感”すら出てしまう場合があると思います。
そんな時は最終手段を使わざるを得ません。
このためにはまずあえて幹事を買って出る必要があります。
そして・・・
そう、喋っている場合ではなくなるくらい美味しい店を選べば良いのです。
料理が常軌を逸して美味しいと、人は食べるのに夢中になり、黙ってしまいます。
そのような状況下であなたが黙っていることを誰が気にするでしょうか?
さあ、コミュニケーションが苦手な皆さんは今すぐ幹事を買って出ましょう!
著者・SPECIAL THANKS
小野ほりでい
がんばってイラストも文章も書くライター。トゥギャッチ(http://togech.jp/)やオモコロ(http://omocoro.jp/)などで連載中。