湘南の片隅にある昭和感抜群なお蕎麦屋さんで、美味しい蕎麦をお腹いっぱい食べる至高の幸せを味わってきたよ。【フミコフミオの夫婦前菜 部長篇 第49回】

人気連載「フミコフミオの夫婦前菜」です。今回は茅ヶ崎の庶民的なお蕎麦屋さん「やぶ茂」(神奈川県茅ヶ崎市室田1-9-6)をご紹介します。フミコフミオさんは、お義父さんが蕎麦アレルギーであるため、蕎麦を食べる機会に恵まれず、そのストレスを解消するために今回、「やぶ茂」へと向かいました。また近所にも「オッチャン個人が切り盛りしているような、手打ちで、美味しいお蕎麦を食べさせるお店」が存在せず、茅ヶ崎の駅からも離れた住宅街にあるお店まで遠征し、鴨せいろを注文。しかし、もともと並盛りが他店の大盛り級である「やぶ茂」で、大盛りを注文してしまい、フミコフミオさんの食事は意外な結末をたどることになりました…。 (茅ヶ崎・寒川のグルメランチ

湘南の片隅にある昭和感抜群なお蕎麦屋さんで、美味しい蕎麦をお腹いっぱい食べる至高の幸せを味わってきたよ。【フミコフミオの夫婦前菜 部長篇 第49回】

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突然、個人的な趣向をカミングアウトして大変恐縮であるが、僕は、蕎麦が好きである。毎日、蕎麦を食べたいくらいの好物である。出来ることなら、1日24時間蕎麦の傍にいたいものだ。だが、そんなささやかな庶民の夢でさえ、叶わないのが僕の現状である。さまざまな要因が僕と蕎麦とを、まるでロミオとジュリエットのように引き裂いている。

 

まず、近所にお蕎麦屋さんがない。ここでいうお蕎麦屋さんとは、「オッチャン個人が切り盛りしているような、手打ちで、美味しいお蕎麦を食べさせるお店」を指している。もちろん、駅前にある立ち食い蕎麦屋や、古民家をリノベーションしたオシャレカフェ的要素を持つ蕎麦屋を否定するわけではないが、僕が欲しているのは昭和の時代から街中にあるようなザ・蕎麦屋というわけである。建設中の店舗を見かけるたびに、僕が抱く「あら?蕎麦屋さんが出来るのかしら?」と淡い期待は、こだわりの豚骨スープ!ライス無料!をアッピールするどぎついラーメン屋ののぼりに打ち消されてきたのである。

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▲テンションあがる手書きのメニュー

僕が蕎麦を食べられないのは、お蕎麦屋さんが見当たらないだけではない。義父の存在も大きい。義父は重度の蕎麦アレルギーである。妻の話によれば、蕎麦アレルギーが爆発して泡を吹いて死にかけたこともあったらしい。そんな義父が「ムコ殿は、まさか、まさか、まさか、蕎麦が好物なはずはないよねえ」とプレッシャーをかけてくるのである。その目には、俺の目の前で蕎麦を食す者は全員抹殺する、という尋常ならざる殺気があって、とても蕎麦が好きとは言えず、「いやだなあお義父さん。僕は生まれついてのウドン派ですよ。ウドン・イズ・最高!」と隠れ切支丹が踏絵をさせられているような気持ちで、自分を偽り、嘘をついて、付き合ってきたのである。そもそも、義父は若い頃、大好物の「蕎麦がき」を大量に食べて勝手にアレルギーになったのである。そのとき、彼は暗黒面に堕ち、蕎麦は愛情の対象から憎しみの対象へなったのである。蕎麦に対する歪んだ感情を持つのは個人の自由だけれども、それを周囲に押し付けてウドン派への改宗を迫るとはとんでもない非道だと僕は思っている。

 

蕎麦屋がない、蕎麦アレルギーの義父の存在に加えてもうひとつ、僕を蕎麦から遠ざけている要因がある。それはお蕎麦ボリューム問題である。蕎麦をランチタイムに食べると、夕刻あたりになって腹が減ってきてしまう問題であり、これは僕ら夫婦の共通の認識である。結果的に夕刻に間食を取らざるをえなくなり、メタボへゴーとなるのだ。「あなたはもしかしてバカなんですか?お蕎麦と同時に丼ものを食べる、いわゆる丼セットを注文すればいいではないか」という反論もあろうかと思う。だが、待ってほしい。あくまで僕はお蕎麦が食べたいのである。そして丼は胃袋をみたしてくれても、絶対にお蕎麦のかわりにはならないのである。つまり、丼セットは蕎麦で胃袋を満たしたいという願望に対する解決策にはならないのだ。

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▲やぶ茂さんの外観。こういうお店を求めてました。

ここまで約1200字。原稿用紙3枚分にわたって、現状を嘆いてきたが、ついに、「オッサンが切り盛りするオイシイお蕎麦」「多いお蕎麦」「お義父さんが知らない蕎麦」というスリーオーを満たすお蕎麦屋さんを発見した。それが今回ご紹介する「やぶ茂」さんである。茅ヶ崎の駅からも遠い住宅地にあるやぶ茂さんは、ごく一部の湘南民にのみ知られた名店である。昭和のザ・蕎麦屋を体現したような外観もさることながら、飲料の自動販売機が脇にならんでいるのが庶民的でいい。

 

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▲自動販売機がいい味を出している外観

もちろん北海道産のソバを使用した本格手打ち蕎麦である。噂によれば、ボリュームも、ものすごいことになっているらしい。確認していないし、してしまったらミイラ取りがミイラになるのでしなかったが義父も知らない。条件は完璧。こうしてお蕎麦を愛してやまない僕と妻は期待に胸を膨らませてやぶ茂への店内へゴー。店内はカフェ感ゼロの昭和の蕎麦屋スタイルでこれまた完璧であった。豊富なメニューの中から、先日、野山に繰り出して、野鳥を眺めた経緯もあり、僕と妻は、ふたりとも鴨せいろを注文した。本来、食レポならば、二人別々のものを注文するのが常道だとわかってはいたのだが、生来の負けず嫌いの性格が災いし、おたがいの「ファーストチョイスを譲ったら負け!」という意識からこのような事態になってしまった。サーセン。

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▲妻が来ている無駄にカッコいいパーカー。

言い訳がましいが、厳密にいえば、同じ鴨せいろではなかった。僕の方は「大盛り」の鴨せいろであったからである。もともと量が多いお蕎麦屋さんで、僕自身も注文するつもりもなかったのに、なぜ大盛りにしたのか。それは妻の「男らしい男は女性の前で大盛りをがっつり食べるもの」という迷惑な幻想のためだ。「私、鴨せいろー」という妻に続いて「じゃ僕も同じで!」と頼むと、妻は「男なのに冗談ですよね?」という無言の重圧をかけてくるので、精神面で弱い部分のある僕は、すみません、大盛りにしてください、と口にしていたのである。

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▲鴨せいろ(並) この盛り方で並である。

噂にたがわぬ蕎麦の量であった。妻の普通盛りでさえ、通常のお店の大盛りレベルであり、僕の大盛りはそれを上回るボリュームであった。もともと食の細い僕である。これは無理と絶望しかけていると店員のおばちゃんが「あとで大盛り分が来ますね」と無慈悲な宣告をして去っていきました。追加分の麺がこれまた多くて、麺が食べたいという願望がよからぬ方向にブーストしてしまったみたいであった。

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▲鴨せいろ(大) 上空からだとわかりずらいがスゴイ量。

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▲鴨せいろ(大)を横から見た図。これに追加盛りが加わる恐怖。

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▲鴨せいろ(大)の追加分。これだけでも普通のお店の大盛りレベルだ。

麺は新そばをつかっていて、コシと風味があってとても美味しかったし、少し濃いめの汁の方も、鴨の肉の脂の甘さがよく出ていて、僕が待ち望んでいた、昭和の美味しい蕎麦屋さんのお蕎麦で、大満足であった。ただ、この大盛りを完食するのは、蕎麦の美味しさをもってしても、加齢にともなって食が細くなっている僕にはなかなかハードルが高いものであった。

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▲濃いめの汁がオイシー。


美味しいお蕎麦がたくさん食べられる喜びと中年の胃をみたしていく蕎麦の重みとのあいだで、完全に静止してしまった僕をみて、妻はひとこと「男のくせに情けない…。お蕎麦美味しいのに…」と吐き捨てると、ヒョイパクヒョイパク、すべてを平らげてくださいました。

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▲僕が攻略できなかった追加分の蕎麦を光速で食べていく妻。

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▲食べきったよ…。かっこいいパーカーを着ているだけはあるな。

すげえ妻。美味しい手打ち蕎麦をたっぷり食べられる「やぶ茂さん」、超おすすめだよ。

 

今回のお店

r.gnavi.co.jp

 

書いてる中間管理職

フミコフミオ

海辺の町でロックンロールを叫ぶ不惑の会社員です(再就職しました)。90年代末からWeb日記で恥を綴り続けて15年、現在の主戦場ははてなブログ。最近は諸行無常を嘆く日々。更新はおっさんの不整脈並みに不定期。でも、それがロックってもんだろう?ピース!

ブログ「Everything you've ever Dreamed」:http://delete-all.hatenablog.com/

ツイッター:https://twitter.com/Delete_All

                             
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