▲ニュー新橋ビル
サラリーマンの町・新橋のシンボル的存在といえるのが、SL広場のわきに建つ「ニュー新橋ビル」だ。
地下には飲み屋やスナックがひしめき合い、1階にはチケットショップ、たばこ屋、靴屋など種々さまざまなお店がならぶ。2階より上に足を運ぶと、一転、マッサージ屋さんだらけ。背もたれのない小さなイスに腰かけて、気だるげに客引きをしているお姉さんたちのあいだを歩いていると、アジアの繁華街を旅しているような気分になる。
駅前一等地にあるとは思えないほど怪しげで雑多なオーラをまとっているけれども、この場所には、サラリーマンに必要なものが、ほとんどすべてそろっている。
もちろんご飯どころも充実している。立ち食いソバ屋に、カレーに、かつや。さっと食べられて、がっつりお腹がいっぱいになるお店ばかり。以前、みんなのごはんでも猛烈プッシュした、肉めしの「岡むら屋」もある。大鍋で煮込んだ肉と大根を、ほかほかの白米にぶっかけた丼メシだ。
とりあえずニュー新橋ビルに行きさえすれば、何か月だってランチに困ることはない。食はニュー新橋ビルに在り。
▲オザワフルーツ
硬派な飲食店が居並ぶこのビルのなかでも、とりわけ渋いのがフルーツバーのオザワだ。たばこの自動販売機に挟みこまれた角地に存在している。
若い女性をメインターゲットにしたおしゃれなジュースバーが増えているなかで、オザワが独特の渋さを醸しだしている理由は、この真っすぐで媚びないメニュー構成にあるのではないだろうか。
「かぼちゃ」「しそ」「小松菜」などと野菜やフルーツ単品の名前がでかでかと書かれ、「われ、加藤清正なり!」と名乗りをあげる戦国武将のようである。
たとえば大根であれば「動脈硬化・糖尿病・気管支炎・せき・便秘・胃炎・冷え性・二日酔い・神経痛」と、もはや万能薬なのでは、というほど効用が書かれている。けっして「~に効く」とは断言せず、たんに病名を列挙するだけにとどめるあたりが、ビジネスの町・新橋の知恵だ。
好きな食材から選んでよし、効用から選んでもよし。
人気メニューはあらかじめジューサーにかけられている。
今回は、だいこんジュースを注文。「うまいから飲むのではない、食事バランスのために飲むのである」とばかりに、青物野菜のジュースを一気飲みするおじさんが、ストイックであり「これぞ大人!」という憧れがあるので、甘くておいしそうなスイカや桃はあえて避けて、だいこんを選んでみた。
ミキサーに、大根とセロリ、レモン汁、あとは大量のリンゴを投入する。リンゴとレモンを投入すると、飲みやすくなるのはもちろんのこと、ビタミンやミネラルの吸収が高まるそうだ。
▲だいこんジュース430円 味付けたまご100円
ほんの30秒ほどでジュース完成。レジ脇に置かれていた自家製の味つけたまご(100円)と合わせてみた。卵は黄身の中心部がほんのり柔らかく、ちょうどいい茹で加減。味もよく染みていて、ジュースバーで食える味つけたまごとして、これ以上望むべくもない代物であった。
泡立っている大根ジュース。大根の主張よりも、セロリの香りとリンゴの甘味がまさっている。少々青臭さはあるものの、それでこそ、ニュー新橋ビルで飲むにふさわしい大人の飲料といった感じ。ぐいっと一気に飲み干した。
▲アロエジュース 430円
連れが注文したのはアロエジュース。見た目は大差ないのだが、大根ジュースとはまるで別物。ねっとりとした感触が口に残る。
一筋縄ではいかない大人の飲み物を、ニュー新橋ビルで味わってはいかがだろうか。
取材したお店
オザワフルーツ
住所:東京都港区新橋2丁目16−1 ニュー新橋ビル
電話:03-3501-3704
作者:松澤茂信(まつざわしげのぶ)
東京別視点ガイド編集長。
るるぶとか東京ウォーカーが積極的に載せないようなとこばっかし巡ってます。
そういう人生です。けっこー楽しいです。
(編集:編集プロダクション studio woofoo by GMO)
東京別視点ガイド:http://www.another-tokyo.com/
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