私が高校生の時分、秋葉原で飯を食うのはなかなかの難事業であった。飯屋の選択肢が少なかったのだ。パソコン周辺機器を買ってまわって、ぺっこぺこにお腹が空いても、牛丼サンボをかっこむか、じゃんがらラーメンをすするか、たいていどちらかの店を選んでいた。
時代は移り変わって、現在の秋葉原はアニメ、アイドル、家電の町であると同時に、一大グルメタウンでもある。いろんなジャンルの人気飯屋が点在している。
なかでも、ここ最近、ハマっているのが「牛カツ壱弐参」だ。
店自体は地下にあるのだが、いつ行ってもたいてい満席で、地上にまで列がはみ出ている。
メニューは大変シンプルで、牛ロースカツセット1,200円にビールとハイボールがあるだけ。プラス100円でとろろを、プラス700円で牛ロースカツを追加できる。
かなりの行列に、小一時間はおあずけ食らうだろうと、覚悟を決めて並んでみると、意外なほどスムーズに自分の番が回ってくる。やたらと客の回転が早いのだ。
その理由は、メニューが牛ロースカツ一本に絞られていることもあるうえに、揚げ加減が超絶レアだから。なんでも揚げ時間はわずか60秒ほどだとか。
百聞は一見にしかず。どれほどレアなのかご覧いただこう。 運ばれてきた牛カツはそのままの状態であれば、なんてことはない一般的な外見。トンカツに比べてやや小ぶりだが、きめの細かい衣がカラッと揚がっている。
適当になかほどの一切れを、ころりと横倒しにしてみると、なんとも綺麗なピンク色のお肉が姿をあらわす。ローストビーフを連想させるほどのレア加減、官能的なまでのピンク色だ。 衣に包まれた、外側ほんの数ミリが白くなっているだけで、コアの部分ほぼすべてがレアである。
なんというフォトジェニックな食い物、こんなエロチックな牛カツならばSNS時代で人気が出るわけだ。
牛ロースカツとろろセットは、牛かつにポテサラとキャベツ、味噌汁と丼いっぱいの麦飯にとろろがついて1,300円。ご飯は1杯おかわり無料。
ご飯にとろろをぶっかけて、準備は万端。
わさびをちょんとカツにのせ、醤油につけて食べるも良し
岩塩をかけてシンプルに食べるのも良し
ベーシックにソースをかけるのも自由なら
わさびを溶かした山かけにつけるのも正義だ。
食感はレアステーキに近い。ひと噛みふた噛みするだけで、やすやすとろける肉の柔らかさと、衣のさくっとした食感がいいコンビネーションだ。
各テーブルに設置されてる石のプレートで、さらにしっかり熱を通すことも可能。
両面しっかり焼きあげれば、レアな牛カツとはまた違ったウマさがある。 調味料でいろいろ楽しめて、さらに焼き加減でも変化をつけられる。1枚で何通りものグルメを堪能できる牛カツ壱弐参、変幻自在の恐ろしい食い物だ。
取材したお店
牛かつ 壱弐参
住所:東京都千代田区外神田3-8-17 渡辺ビル B1F
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作者:松澤茂信(まつざわしげのぶ)
東京別視点ガイド編集長。
るるぶとか東京ウォーカーが積極的に載せないようなとこばっかし巡ってます。
そういう人生です。けっこー楽しいです。
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