フミコフミオの夫婦前菜第11回「コスパ抜群のインド料理を食べて神奈川の片隅で密かに進行しているインド化計画の謎を解くゼーット!」

人気連載「フミコフミオの夫婦前菜」の第11回目です。今回は神奈川県の片隅で密かに進行しつつあるインド化計画の謎を解くために夫婦は旅立ちます。そこで見つけたコスパ最高のインド料理専門店とは……!?。今回も夫婦のやりとりから目が離せませんが、店員さんのカットインも見所です。(平塚のグルメカレー

フミコフミオの夫婦前菜第11回「コスパ抜群のインド料理を食べて神奈川の片隅で密かに進行しているインド化計画の謎を解くゼーット!」

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過日、妻を連れ、かねてより気になっていた店を訪れてみた。営業職の僕は、一日の大半を外回りに費やしているので担当している地域の栄枯盛衰、諸行無常を目の当たりにするのは日常の一部だ。なので店が変わっても特別な感情を持つことはほとんどない。けれども昔から営業していた蕎麦屋や牛丼屋が、突然、学習塾やクリーニング店に変わってしまうようにまったく別のお店になると話は別だ。それがインド料理屋だったなら尚更のこと。それも一店舗ではなく何店舗もである。人口密集地でもない神奈川県の片隅でなぜインドなのか。

 

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プライドの高い神奈川県民は公には認めないけれど、神奈川県って実は駅前から離れるとかなりカントリーだったりする。そのような立地になぜインド? 僕は神奈川のごくごく一部で進行しつつある日本インド化計画の謎を解くために、当該店舗を訪れてみたのだ。妻を連れていったのは一人では不安だったからだ。

 

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神奈川県平塚市に広がるカントリー調の風景に、突如あらわれる派手な、ラブホテルを想わせるピンクの看板。インド料理「マハトマ」。

 

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濃い。

 

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ランチ520円。安っ!

 

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お持ち帰り専用マハトマおじさん……

 

 

濃い外観とは裏腹、店内にインド感は皆無。スタッフの方は皆インドの人。なぜ神奈川の片隅に小インドが。やはりインド化なのか。緊張感が走る。「イラシャイマセー」。フランクな感じの接客からインド化が順調に進んでいることがうかがえる。

 

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「うわーっ!この価格で本格的なインド料理が食べられるなんて!」

 

隣にいたお客さんから《なんだこいつ、ヤバい奴なのか。目を合わせないようにしよう》というような顔をされつつも、わざとらしく大きな声をあげ520円のランチセットAのメリットを列挙しそれを頼もうとしたのは経済的な事情からである。僕の態度に納得がいかない妻は「今月はボーナス支給月でしょう。少しは贅沢をしませんか?」と仰った。追い詰められた僕は秘密を打ち明けざるをえなくなる。

 

「ないんです」「何が?」「今夏のボーナス……」途方に暮れた僕はインド国籍の店員さんと目があってしまう。彼は《経済大国日本の失墜は目も当てられないヨ……》とでもいうふうな哀しげな笑みを浮かべ、目を逸らした。

 

「冗談はやめにしてください」「冗談ではありません。ないんです」「どうするんですか」「何が」「ボーナス払いで買った空気洗浄機の支払いですよ」「そうだね。諭吉さんを数枚僕にいただけませんか?」「よござんす。差し上げましょう!……と言うわけがないでしょう」そんな不毛な経済談義の果てに「じゃあ景気付けに」と妻が注文したのは最も高価な【マハトマセット】。ナンとターメリックライスにカレー2種類にサラダその他が付く、ボーナスがない極貧サラリーマンの身分には不相応な豪華セットである。


カレーはチキン・野菜・豆・マトン・謎(日替わり)からセレクト。辛さもセレクト。カレーを選べるように会社も選べればいいけれど…41歳資格才能なしの我が身を呪いながらオーダーした。

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どーん。皿がテーブルからはみ出そうだ。

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豆カレーとチキンカレーもスパイシーで美味しい。チキンもカレーが染み染み。ナンにカレーをつけて食べる食べる。暑い夏にぴったり。

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妻は野菜とマトンのカレーを頼んでいた。やはり夫婦はシェアをすべきだろう。味の異なるカレーをシェアするために結婚したといっても過言ではない。

 

「キミの食べているカレーを少し味見したいのだが」「イヤです」「わかった」

 

結婚生活はカレーよりも辛い。

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カレーも美味しいけれどもナンが、焼き立てだからなのだろうね、甘味があり柔らかい食感がしてとても美味しかった。詰めたくて固いナンだったらインドの人を呼びつける覚悟だったけれども。

 

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スパイシーな脇役たちも主役級の存在感。なぜ神奈川の片隅でこんな美味しいナンが焼かれているのか意味がわからない。もちろんいい意味で。

 

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人生だけでなく辛さに負けてドリンクをガブガブ飲んだ僕はドリンクバーへ足を運んだ。しかしボタンを押せども押せどもアイスコーヒーが噴出してこない。くそ。ボーナスがないだけで生計維持関係のないマシンまでもが僕をバカにしている……ガンジーは非暴力を提唱したというのに……。そのときである。自暴自棄になりかけていた僕の耳元で天使の声が囁いた。

 

「ドレニスルノ……」

 

声の主は店員さんであった。声はどこまでも優しくいつまでも甘かった。くさくさした気分は消え去り、思わずホレてしまいそうになる僕なのであった。これがインド化……。

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いやはや料理は美味しいし、安くて、コスパ最高なので、マジでオススメのマハトマであった。しかしなぜ神奈川の片隅でインド化が進行しているのかはわからないままなのでありました。ボーナスがないことが妻の暴力性を呼び起こしませんように……、そう、ガンジーに祈りながら今回のレポは終了~。

 

今回のお店

 

書いてる人

フミコフミオ

海辺の町でロックンロールを叫ぶ不惑の会社員です。90年代末からWeb日記で恥を綴り続けて15年、現在の主戦場ははてなブログ。内容はナッシング、更新はおっさんの不整脈並みに不定期。でも、それがロックってもんだろう?ピース!

 ブログ「Everything you've ever Dreamed」:http://delete-all.hatenablog.com/

ツイッター:https://twitter.com/Delete_All

                             
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