山手線の日暮里駅といえば、古くからの寺社と古民家を改装したオシャレカフェが混在するエリアとして有名。下町ならでの惣菜屋も数多くあり、買い食いしながらの散策が楽しめる。
一方、1つ隣の西日暮里駅ときたら、これといった目立ったトピックを耳にしない。日本でも有数の進学校たる開成中学、開成高校があるぐらいで、観光スポットがあるわけでもない。偏差値70以下の人間には、縁もゆかりもない土地と思っていた。
が、この西日暮里駅、じつは、『お持ち帰り惣菜の激熱エリア』なんだとか。
あまりの人気ぶりにお昼には売り切れてしまうこともしばしばとのことなので、朝10時に実態調査に行ってきた。
駅前は、食い歩きができそうな雰囲気ではまるでない。交通量の激しい道路があるだけで、商店街もない様子。
「こんなところに惣菜が買える店なんぞ、本当にあるのだろうか」と、疑問を抱きつつも1分ほど歩くと……
あった。
第1のお目当てである「サンドイッチの店ポポー」だ。
道路をはさんで、開成高校の向かい側にある。
ショーケースには「カツ」「ハム」「チキン」など手作りのサンドイッチが15種類ほど並んでいる。どれも値段は200~300円ぐらい。開店はかなり早くて朝6時から。部活で朝練をする学生でも、朝飯にと買っていける営業時間だ。
朝10時の来店にもかかわらず、人気メニューの「ポパイ」「イチゴ」は売り切れていた。「ミックス」「ハンバーグ」を購入し、次の惣菜屋へとハシゴする。
ほんの30秒も歩けば、第2のお目当て「おにぎりのもがみ」に到着だ。こちらのお店は朝6時半からの営業。
ポポー同様、昼までに売り切れてしまうこともあるとあって、ひっきりなしに客がやってくる。
赤い看板に白抜きの文字、質実剛健なこじんまりとした出で立ちまで、「サンドイッチのポポー」とうりふたつ。関羽と張飛が劉備の蜀を支えたように、ポポーともがみが日暮里の食を支えている。
おにぎりのラインナップは20種類ほど。梅・おかか・鮭といった定番ものから、から揚げ・ちくわ天など学生ウケしそうな具材まで幅広い。
このご時世、すべてのおにぎりが100円ぽっきりというのも豪胆だ。
ショーケースの横っちょに
背の低いイスが置かれていたが、まさかイートインスペースだろうか。
西日暮里駅から2分もあれば、この通り、最高にうまいおにぎりと最高にうまいサンドイッチが手に入る。
両店ともに、ビニール袋は白の無地。店名すら書かれていない無骨さがいい。
4品合わせてもわずか680円
こちらが購入した4品。
ミックスサンド、ハンバーグサンド、エビ天おにぎり、ウインナーおにぎり、4品合わせてもお値段680円だ。
▲エビ天おにぎり 100円
おにぎりはちょっと小さめなサイズ。コンビニおにぎりの8割ぐらいのサイズだろうか。半分以上エビ天がはみ出していて、キスチョコみたいな形状をしている。
ご飯が茶色かったので、炊き込みご飯だろうかと思ったが、かじってみるとほんのり甘い。どうやら甘味のあるタレがまぶしてあるようだ。
▲ウインナーおにぎり 100円
ウインナーおにぎりは、海苔の合間からちょっこりウインナーが顔を出している。赤子を背負った母親のような形状をしている、愛にあふれたオニギリである。
「サンドイッチ」と印字されたビニールに包まれているのだが、さながらエイリアンに寄生された船員の腹部がごとく、はちきれそうなほど具がギュウギュウ詰めにされている。
ビニールによったシワが、豊満な太ももを内包するタイトなズボンを連想させ、購入者の欲を刺激する。
▲ミックス 240円
ビニールをほどいて、あらわになったミックスサンド。これだけのボリュームで240円は安い。
よくよく見ると、タマゴ、トマト&きゅうり、ハム&チーズと3種類の具があるにもかかわらず、パンの枚数は4枚。かなり厚みがあるのだが、3種で一体となっているので分割は不可能。このままかぶりつくほかない。
暖かくなるこれからの季節。
谷根千エリアからちょっと足をのばして、ポポーともがみをつまみながらの下町散策というのはいかがだろうか。
お店の情報
おにぎり もがみ
住所:東京都荒川区西日暮里4-23-13
電話:03-3828-3013
サンドイッチ ポポー
住所:東京都荒川区西日暮里3丁目6-12
電話:03-3821-8553
作者:松澤茂信(まつざわしげのぶ)
東京別視点ガイド編集長。
るるぶとか東京ウォーカーが積極的に載せないようなとこばっかし巡ってます。
そういう人生です。けっこー楽しいです。
(編集:編集プロダクション studio woofoo)
東京別視点ガイド:http://www.another-tokyo.com/
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