ホタルイカといえば富山である。
それは二十代の頃、まだ漫画家になる前、私の住む四国・松山から知人のいる富山へ車中泊の貧乏旅で遊びに行った時のことだ。当時、松山―富山は罰ゲーム並みの長い道のりだった(それが今や、北陸新幹線も開通し今や破竹の勢いである)。着いてまず驚いたのが海だ。初めて見る日本海はまさに演歌の世界。ダークグレーの海面は荒々しく穏やかで呑気な瀬戸内海とはまったく違った様相を見せていた。活字にすれば「ザッパーン!」である。
そんな富山の旅だがこちらは車中泊の身で、従って日本海の海の幸を味わう余裕も無い。せめて最後にと回転寿司へ入ったがそう安くもない店で、甘エビの鬼高い値段に戦慄し安い巻物ばかりを食べて富山の旅は終った。
後日、そんな姿を哀れに思ったのか知人から見事なホタルイカが届いた。本当は甘エビの方が良かったのだが。……ダメか。
和田ラヂヲ
愛媛県松山市在住。
著書に『和田ラヂヲのここにいます』
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これまでの「味の断章(フラグマン)」はこちらから。
【和田ラヂヲ・味の断章(フラグマン)その1】カレイの煮つけ - みんなのごはん
【和田ラヂヲ・味の断章(フラグマン)その2】あんこう鍋 - みんなのごはん
【和田ラヂヲ・味の断章(フラグマン)その3】おでん - みんなのごはん