読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

【東京別視点ガイド ぐるなび支店】津軽じゃ大体みんな知ってる? スコップ三味線が聴ける田無のスナック「スリーナイン」

新連載!東京別視点ガイドの松澤さんが登場! 東京のディープなスポットを案内します。第一回はスコップ三味線(?)が聞ける田無のスナックです。(田無のグルメバー

【東京別視点ガイド ぐるなび支店】津軽じゃ大体みんな知ってる? スコップ三味線が聴ける田無のスナック「スリーナイン」

東京別視点ガイド 田無 グルメレポ

f:id:mgohan_cn:20141111152139j:plain

田無駅ほど近く、目的のスナックは雑居ビルの地下一階にある。「バン!バン!バン!」と外にまで打撃音が響いている。金属の打撃音が聞こえるスナックなど、本来なら恐ろしくってとても入店できないが、ここスリーナインはご安心を。ただスコップ三味線を弾いてるだけなのだ。

・・・スコップ三味線ってなに?

f:id:mgohan_cn:20141111154930p:plain

▲スコップ三味線スリーナインのマスター・小関さん

「津軽じゃ、だいたいみんな知ってますよ」とスコップ片手におっしゃるのはマスターの小関さん。「昼間は広告会社を経営してて、夜はこっち」と2つの顔を持つ男だ。


「スコップ三味線はね、基本的には宴会芸ですわ」とマスター。「やり方は簡単で、音楽に合わせてスコップを叩くだけ。バチは栓抜きで良いよ」とのこと。曲も好きなものをカラオケでかければOK。津軽じょんがら節でもいいし、ベンチャーズでも女子十二楽坊でも矢沢永吉だっていい。

 

f:id:mgohan_cn:20141111155056j:plain
▲常時10本ほどスコップが用意されている。大抵ホームセンターで買うそうだ。

 

f:id:mgohan_cn:20141111155131j:plain
▲バチの数々。左のはゴルフクラブをガムテープでつなぎ合わせている。

 

バチも栓抜きではなく、しゃもじでもスプーンでもゴルフクラブでもいい。とにかくスコップを叩けりゃなんだっていいという、自由度の高さが面白い。

 

そもそもスコップ三味線は、30年前、家元の舘岡屏風山さんから始まったもの。スコップの打ち方やピックパフォーマンスは家元によって生み出された。名誉大会長は吉幾三で、競技人口は1万人ほど。腕前に応じて段位が定められ、とくに優れた者は準師範、師範に任命される。「司会の善し悪し」「バチさばき」「曲のプロモーション」「衣装」「客ウケ」を総合評価するそうだ。師範クラスは現在7人で、マスターもそのうちの1人。 なんだか当初想像してたより、妙にスケールがデッカいぞ、スコップ三味線。

 

f:id:mgohan_cn:20141111155245j:plain
▲片時もスコップを手放さないマスター

 

家元は夏の間だけ青森で「スコップ三味線快館」というスペースを運営しているが、冬から4月にかけては、日本中を営業し、布教をしてまわっている。とはいえ、スコップ三味線で食ってるのは家元ぐらい。マスターらも依頼されて弾くこともあるが、老人ホームでのボランティア慰問だったり、足代だけの飲み屋での営業だったりがほとんどだとか。迫真のプレイに弦が無いとは気づかず「どこから音出てるの?」「どういう仕組み?」と不思議そうに覗きこまれることもしばしばだという。

 

とにかく酒の場を盛り上げるのにうってつけで「花見でやったら、何重にも人だかりができて大変だった」そうだ。 

 

f:id:mgohan_cn:20141111152736j:plain
▲6代目世界チャンピオン 松幸さん

 

スコップ三味線の全容をちょっとずつ把握してきたところに「どうもー」とマイスコップ持参で入店してきた、大竹まこと似のダンディーなおじさま。「お、ちょうど良かった。この方ね、6代目世界チャンピオンの松幸さん」と紹介をされた。

 

え、世界チャンピオン?スコップ三味線なのに? なんでもスコップ三味線は、東京と青森だけでなく、名古屋や大阪などにも支部があり、果てはオーストラリアやアメリカにまで支部が存在するらしい。

 

世界大会は年1度、12月に青森県五所川原市で行われる。出場料は3000円、ネットで申し込み可能。個人の部と団体の部があり、個人戦は20名、団体戦は15組ほど出場する。6分間のパフォーマンスを審査員が裁く。

 

f:id:mgohan_cn:20141111152830j:plain
▲世界チャンピオンのネタ帳。150曲以上のレパートリーが記されている。

 

第6回世界チャンピオンの松幸さんは、師匠・幸月さん(本業は保育園の先生)に弟子入りし、1年半の猛特訓のすえ優勝した。「練習しまくりの1年間半でしたよ。電車のなかでも手首だけぷるぷる動かしてイメトレしてた。アル中だと思われてただろうね。自宅では、刺身の発泡スチロールをしゃもじで叩いて練習したな」と厳しかった一年間半を振り返る。

 

f:id:mgohan_cn:20141111152904j:plain
▲プロ用バチ

 

「バチさばきを覚えるまで栓抜きしか使うな、と師匠から制約されてたけど、そろそろプロ用バチを解禁しようかな」ともおっしゃっていた。家元プロュースのプロ用バチは、ピックの両端が叩けるようになっていて、使いこなせば凄まじい連打を実現できる。

 


爆笑 津軽スコップ三味線世界大会Part2. LOL scoop Japanese-guitar world championships part2. - YouTube

 

世界大会の動画を見せてもらったのだが、出場者の層がかなり幅広い。若い女の子もいれば、80代のおじいちゃんもいる。なかでも異色の存在が地元工業高校の先生。彼は毎年「ロボスコップ」と呼ばれるロボットを制作し、そいつにスコップ三味線を弾かせる。床屋のマネキンが取りつけられた不気味なロボが、スコップをぺしぺし叩いている光景は、サイコホラーの趣きだ。年を経るごとにロボの精度も増しており、これが楽しみでやってくるギャラリーも多いとか。

 

家元、世界大会、プロ用バチ、ロボスコップ・・。聞けば聞くほど、世界が広がる。理解できたと思った矢先、スコップ三味線は一歩先を行く。アキレスと亀のようにいつまでも追いつけない存在、それがスコップ三味線。

f:id:mgohan_cn:20141111153102j:plain

「まずは一曲お見せしましょう」とおもむろに立ち上がる6代目世界チャンピオン。 ステージにあがり、奏でるのは津軽じょんがら節。スピーカーから流れる爆音のじょんがら節に合わせ、ベシベシとスコップを乱打する。背筋はピンと伸び、見事なピックパフォーマンス。時折、私のほうに目をやり、不敵な笑みを浮かべる。

 

な、なんだ、この謎の格好良さは!

 

自然と体がノってしまう。1曲弾き終わる頃にはすっかり心を鷲掴みされてしまった。

f:id:mgohan_cn:20141111153143j:plain

 

「松澤さんもやってみましょう」とスコップを渡される。連打と単打、溝を叩く”すり上げ”、バチで表面を擦る”コスリ”などの技をレクチャーされる。「スコップの柄は低音なら下を、高音なら上のほうを握ると、雰囲気出ますよ」とネックパフォーマンスも伝授してくれた。基本を覚えたら、あとは、演奏者のセンスと発想だと言う。
スコップ業界ではアゲアゲ曲として定評のある長山洋子「じょんがら女節」を、お2人に混ぜって、弾かせてもらった。単純なようで、やってみるとこれが案外難しい。チャンピオンのように、ギャラリーを意識したパフォーマンスなど行う余裕もなく、ひたすら下を向き、スコップを単調に叩くのが精一杯。音痴ゆえに叩くテンポもずれている。こりゃ、まともに叩くだけでも相当トレーニングが必要だぞ。

 

f:id:mgohan_cn:20141111153242j:plain
▲矢沢を歌い弾くマスター。一転、ベースのような奏法に。スコップ1つが三味線にもベースにもなる。

ひとたび場のテンチョンがあがれば客総出、みんなでスコップを叩きまくるという。「歌うだけで満足なんだけどな~」という人は、スコップを叩かなくっても大丈夫。普通にカラオケすれば、それに合わせてマスターやチャンピオンがスコップ三味線を弾いてくれる。盛り上げ役に徹してくれる。「スコップ三味線は自分の世界に陶酔しちゃダメ。客も自分も楽しくするのがコンセプトだから」とモットーを語ってくれた。

 

f:id:mgohan_cn:20141111153322j:plain

「年末は2人で第九をやろうかな」と語り合うお二人。スコップ三味線で暮れる年の瀬。聞くだに楽しそう。 お通し代は1000円だが、それ以外にかかるのはドリンク代ぐらい。お通しは、割烹料理の板前さんによる本格的なもので、最後に味噌汁までついてくる。時間制限も無いから3~4千円あれば、飲んで歌って充分楽しめるぞ。
なお、家元を含め、本物の三味線が弾ける人はほとんどいないそうだ。

お店の情報

スコップ三味線スリーナイン

住所:東京都西東京市田無町2-9-1山岡ビル地下1階
営業:19時~AM2時
定休:日曜

 作者 松澤茂信(まつざわしげのぶ)

f:id:mgohan_cn:20141111153842j:plain

東京別視点ガイド編集長。
るるぶとか東京ウォーカーが積極的に載せないようなとこばっかし巡ってます。
そういう人生です。けっこー楽しいです。
(編集:編集プロダクション studio woofoo

 

東京別視点ガイド:http://www.another-tokyo.com/
Twitter:https://twitter.com/matsuzawa_s

                             
ページ上部へ戻る