日本酒に地域性はあるの?
日本酒の味は蔵の特色が大きく出るのだそうです。
地域性で分類すると、海が近いところは干物、山間部では根菜類が合い、平野地帯では食中酒としてバランスがいいものが多いとのこと。
とはいえ、同じ魚介の出汁でも、豪快な漁師汁のお出汁と、乾物で仕上げた上品なお出汁では合うお酒が違って当たり前。山間部のものでも、大吟醸酒はアクの強い根菜や赤味噌を使った料理にはマッチしません。
日本酒は、地域ではなく「蔵や銘柄で選ぶ」のが正しいようですね。
日本酒の味タイプを5種類用意
東海地方の日本酒を例に飲んでみよう!
日本酒を選んだらそれに合う料理が食べたくなりますよね。今回は私が住んでいる名古屋から、フルーティーなものからどっしりしたものまで、東海の日本酒を5種類ピックアップして、それぞれに合うお料理を作っていただきました。
こちらが本日のラインナップ。
右から順に
・清水清三郎商店「作 プロトタイプH 無濾過槽場直汲」(三重県鈴鹿市)
⇒味わい:ほんのり甘め
・御代桜醸造「津島屋 純米吟醸」(岐阜県美濃加茂市)
⇒味わい:ミネラル感・すっきり
・菊石「菊花の宴 純米」(愛知県豊田市)
⇒味わい:すっきり
・長珍酒造「長珍 特別純米」(愛知県津島市)
⇒味わい:熟成から来る旨み
・青木酒造「米宗 ふなくち純米吟醸」(愛知県愛西市)
⇒味わい:コクがある
をセレクト。
すっきり飲みやすい日本酒には味噌を使った料理が合う
名古屋では「菊花の宴 純米」と「きのこと鴨の朴葉みそ焼き」
さっそく、赤味噌文化のメッカともいえる三河地方の日本酒からいきましょう。
愛知県豊田市、浦野合資会社菊石の「菊花の宴 純米」です。
豊田市といってもとても広く、北は岐阜県、東は静岡県、一部は長野県にも接しているんですよ。
比較的飲みやすい「菊花の宴 純米」に合わせるのは、きのこと鴨の朴葉みそ焼き。朴葉みそ焼きは岐阜県飛騨地方の郷土料理です。本日はゴマと赤味噌、にんにくで仕上げています。
東海地方の人にはおなじみの、炊きたてご飯がすすむ一品。
「いきなり濃い料理がきたなぁ~」と思いましたが「菊花の宴 純米」は負けない――といいますか、主張しすぎない、ほどよいパートナー。鴨の脂も赤味噌のコクもすっと流してくれるんです。
白いご飯みたいでふしぎ!
「菊花の宴 純米」はバランスがよく飲み疲れしないので、食中酒に最適なのだそう。
ガツンとした日本酒には根菜類が合う
名古屋では「長珍 特別純米」と「手羽先」
産地を西に移しまして、愛知県西部の津島市からは長珍酒造の「長珍 特別純米」。
さきほどの「菊花の宴 純米」に比べるとガツンとした味わいです。
こちらに合わせるのは甘辛いことで有名な名古屋名物の手羽先と栗の炊き合わせ。
「根菜類に合う味」という意味がわかりました。れんこんやゴボウのような、土の香りがするのです。これなら、こってりした濃い味付けでも負けません!
ひつまぶしにも合いそうです。
コクがある日本酒にはどっしりした濃い味付けが合う
名古屋では「米宗ふなくち 純米吟醸」と「チーズとローストナッツのハチミツがけ」
津島市よりさらに西の愛知県愛西市から、青木酒造の「米宗 ふなくち純米吟醸」です。
「米宗 ふなくち純米吟醸」は「長珍 特別純米」よりもコクがあるので、どて煮や串カツにも合うのだとか。
日本酒は発酵してできるものなので、みそやチーズなどの発酵食品とは相性抜群!
とのことなので、ちょっと趣向を変えて、赤ワインやウイスキーのおつまみにもなりそうな濃厚な一品を合わせてみます。カマンベールチーズ、クリームチーズにローストナッツのハチミツがけです。お米からできた日本酒に合わせるのはさすがにちょっと……と不安になってしまいます。
ところが、全くもってノープロブレム!
豪速球ピッチャー相手にホームランが決まったような、記憶に残るマッチング。
どっしりした濃い味付けのお料理が合う日本酒があるんですね~。
これは新しい発見です。
他の産地のものでも「山廃仕込み」というタイプは、豚の角煮やチョコレートのようなどっしりしたものでも負けないのだとか。
なごやめしに合う日本酒は、ありました!
日本酒のポテンシャルは高い!
ほんのり甘めの日本酒にはあんきもが合う
名古屋では「作プロトタイプH 無濾過槽場直汲」と「あんきも」
東海産の日本酒には、濃い味付けに合うものだけではなく、繊細で華やかなタイプもございます。
こちらは、三重県鈴鹿市、清水清三郎商店の「作 プロトタイプH 無濾過槽場直汲」。
「作」と書いてザク!
ザクですよザク!
しかもプロトタイプと名がついています。「もしかして……」と言いかけますと、「ガンダムは意識していなかったそうです」とのこと。
でも、ガンダムファンのマンガ家、雷門さんがマンガの中で「作」を紹介したことがきっかけでガンダムファンにも広まったのだとか。
ほんのり甘めの微炭酸で、どことなくお花の香りすら感じます。
すだちをちょっと絞ったクリーミーなあんきもとの相性が最高です!
ミネラル感のある日本酒には山菜など苦味がある料理と合う
名古屋では「津島屋 純米吟醸」と「山菜の天ぷら」
岐阜県美濃加茂市、御代桜醸造の「津島屋 純米吟醸」は、ミネラル感たっぷりのすっきりしたもの。
こちらは山菜の天ぷらと合わせました。山菜の苦味とすっきり感が妙に合います。
なるほど、さきほどの「作」は、山菜にあわせるにはちょっと甘みが強いかもしれません。日本酒にもマリアージュってあるんですね。
この2種類は、同じものを何杯も飲み続けられるものではなく、最初に1、2杯味わう程度がいいそうです。
東海地方の銘酒・レア酒に毎日出会える
海側、山側、平野地域と、日帰り圏内にいろんな酒蔵が集中しているのも東海地方の特色です。
名古屋市だけでも7つの酒蔵があります。名古屋市の水源は木曽川なので、お水がおいしいところなのですよ。
なかなかお目にかかれないような試験醸造のものもありました。「白隠正宗 試験醸造 河津桜酵母使用 純米」は、アルコール度数は低めで、お米のジュースのよう。
ワイナリーが作った日本酒もあります。「ソガペール エ フィス」は、ワインの酵母がどこかで混じるのか、ほんのりワインの風味がします。
「各地の日本酒とお料理の様々な発見を楽しんでもらいたい」とオーナーの大山さん。
大山さんはなごや朝大学という市民大学で開講されていた「日本酒クラス」の受講生チームでアドバイザーをされたこともあります。
有名酒だけではなくて、いろんな日本酒を楽しんでほしいとの思いから、「ぽろ」では日本酒がすべて1杯650円なんです。
お店の4合瓶も酒屋さんと同じ定価+999円で、なんと、お酒の持ち込みも1本999円でOK(Facebookでの「いいね!」が条件)という、日本酒の聖地のような存在なのです。
これから春先にかけて、毎週蔵開きが行われます。どんな魅力的なお酒が登場するのか楽しみですね。
東海地方の方ならすぐにでも、遠方の方なら出張帰りにぜひお立ち寄りください。
毎回、違った日本酒との出会いがありますよ!
ぽろ ホームメイドキッチン 新栄店
今回は「来るたびに新しい日本酒に出会える」ことで知られる、名古屋市の「ぽろ ホームメイドキッチン 新栄店」でお話を伺いました。「ぽろ」では東海地方のものを中心に全国の日本酒がすべてで1杯650円(120ml)。
こちらは、地元びいきのオーナーが「とにかくお米が好きで、東海地方の日本酒と炊きたてご飯を料理と一緒に楽しんでもらいたい」という想いでつくったお店。
名古屋の日本酒好きなら知らぬ人がいないほどなのです。
銘柄がわからなかったり、新しいものを試したいときは、お店にあるイメージシートを使って「キリッとした」とか「力強い」とか、好みを伝えるとスタッフがそれに合わせて選んでくれます。
紹介したお店(愛知県名古屋市)
ぽろ(新栄・CBC/食堂・定食)
愛知県名古屋市中区新栄1-6-28 CBCセンタービル B1F
052-238-2882
ランチ11:30~14:00(月~金)
ディナー17:00~25:00
年中無休
ぽろ ホームメイドキッチン 円頓寺店(名駅/和食)
愛知県名古屋市西区那古野1-6-18
052-462-9884
ランチ11:30~13:30(月~金、日)
ディナー17:00~24:00
年中無休
※掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。
著者・SPECIAL THANKS
綾部綾
ライター。 長崎県出身、名古屋市在住、元自衛官。