料理研究家のYUICHIです。今回は「ふわふわの出し巻き卵をおいしく焼くための科学」をお送りしたいと思います。
きっかけは、恵比寿のお店に誘った意中のMちゃんが、「だし巻き卵がうまく作れないんだけど、どうやったらうまく作れるんだろう?」とつぶやいたこと。私は「作れるよ!」とふたつ返事。「え、本当に!? かっこいい〜、じゃあ明日おうちに行くから説明して!!」ということになりました。
かっこつけてできると言ったものの、高校時代に理科は補講の常習犯だった私。お店で食べるあのふわふわジュワーなだし巻き卵をうまく焼く方法の科学的説明に解明してみました!
材料(2人分)
- 卵・・・・・・・・・・3個(Lサイズ)
- だし汁・・・・・・・・大さじ3
- しょうゆ・・・・・・・小さじ1(あれば薄口)
- 砂糖・・・・・・・・・小さじ1
- 塩・・・・・・・・・・適量
科学その1:卵を混ぜすぎずにコシを残そう
まず、始めに卵をとくわけですが、だしと調味料を入れた後、卵を混ぜすぎないのがポイント。白身を切る程度にさっとすませます。
混ぜ過ぎてしまうと卵液がコシを失って、固まる力が弱まってしまうんです。菜箸の先をボウル(容器)の下につけながら混ぜると簡単。シャカシャカ強く混ぜずにすみます。
見た目の目安としては白身の固まりが残る程度。卵液が空気をつかまえて、ふわっとした食感を生み出します。白身は菜箸に乗せて、上に持ち上げるとうまく切ることができます。
また、 だしの量は、卵1個につき大さじ1が目安です。プロはもっと入れるみたいですが、だしが多いと作るのが難しくなるので、これぐらいが適量です。
科学その2:フライパンを熱して、多めの油と強火で一気に作ろう
いよいよ焼いていくわけですが、火は強めがおすすめです。フライパンを熱して、白い煙が出るくらいでOK。このときのフライパンの表面温度は約180℃の高温。そこに卵液を流し込むと、ジュワーっと音を立てて細かい気泡がたくさんできるんです。細かい気泡がたくさんできることで柔らかさを生むほか、冷めたときにだしが外に出てべちゃっとするのを防ぐことができます。
十分に熱したフライパンにキッチンペーパーを使って油をムラなく引いて焼いていきます。
科学その3:卵液はたっぷり入れて、すぐに固まらないようにしよう
卵液はボール半分くらいたっぷり入れると、おいしく焼き上がります。だしの水分が卵液全体の温度を下げることにつながり、一気に焦げてしまうことを防げるんです。その後は先ほどもお伝えした通り、細かい気泡がたくさん出てきます。
大きい泡は菜箸でつぶしながら、表面がドロドロに固まってきたところで、奥から手前に向かって卵をパタンと畳んでいきます。この時のポイントは、卵が半熟のうちに一気に畳んでいくこと。形は後からでも整えることができるので、気にしなくて大丈夫です。うまく畳むことにこだわると、卵が固まって食感が固くなるので注意してください。
形については、できたてをこうやってラップに巻いてしばらくおけばOK!冷めたときには綺麗な形に整っています。
完成です!
まとめ
だし巻き卵をうまく作るには、タンパク質の特性を知ることがポイントです。タンパク質とは多くのアミノ酸が立体的に結合してできています。ここに熱を加えると、構造に変化が起こり、卵で言えば、固くなります。
出し巻き卵の場合は、熱で固まるのをいかにして遅くするかがポイント。だしを加えることで温度の急激な上昇を防げますし、砂糖を入れることでタンパク質の熱による変化を遅くすることができます。高温で一気に焼くのも、固まりすぎを避けるためです。とは言っても適度に固まらないと困るので、ふわっとした食感を出すために、卵は混ぜすぎずにコシを残すようにします。
では、「だし巻き卵を上手に焼くポイント3つ」をお教えします!
- 卵は混ぜすぎず「物足りないな」と思うくらいにとく
- フライパン煙が出るくらい熱し、多めの油を入れて一気に焼く
- 卵は半熟のうちに一気に畳む
いかがでしたか
難しいというイメージが強いだし巻き卵ですが、タンパク質の特性をちょっとだけ知ることで、ふわっ、ジュワーとしたお店で食べるものが作れるんですね! 次はどんな料理の科学に迫ろうか思案中のYUICHIであります。
お楽しみに!
料理研究家/食の広報 YUICHI
1984年7月1日 神奈川県生まれ。
学生時代はスペイン語を専攻、卒業後は貿易会社、翻訳会社に勤務し、料理とは無縁の生活を送る。現在の会社で勤務を始めた2010年、慣れない大阪での一人暮らしと仕事の厳しさで落ち込んで帰宅したある日、夕飯にみそ汁を作って気持ちが前向きになったことで料理が気持ちを癒す力があることを体験。以来たくさんの料理を自炊するようになり、料理家としての活動を目指すきっかけとなる。企業の広報を仕事をこなしながら、一人暮らしの人でもシンプルに作れるレシピの発信と、マスコミ向けのリリース記事を4年間書いてきた経験を生かし、グルメ媒体の記事連載を行っている。