浅草エリア在住の自意識過剰なアラサー銀座OL・やままです。
事あるごとに「食パンが好き」と言っていたら、「食パンをくり抜いて作った”グラパン”が食べられるお店があるから、行こう」とのお誘いが。ドラマ「孤独のグルメ」にも登場した鶯谷駅近くの喫茶店「デン」さんに伺ってきました。
名物メニューのグラパンや、孤独のグルメで紹介されたコーヒーフロートが有名なデン。でも魅力はそれだけではありませんでした。子どもの頃から憧れてた「夢の喫茶メシ」がデンには全部あったのです。
まずはグラパンの存在感に圧倒される
なんとデンは土日祝も営業(不定休)! OLにとっては大変ありがたいことです。世のオフィスワーカーたちの想いも共通しているようで、週末になると名物のグラパンを求めてお店の前に行列ができるのだとか。土曜日、オープン時間の9時にお邪魔してきましたが、開店前から待機しているお客様が数名いらっしゃるほどの人気ぶりでした。
創業年は昭和46年、まさに「町(街ではなく”町”と書きたい)の喫茶店」といった雰囲気に心が和みます。
さて、オーダーするのはもちろんグラパン・・・のつもりでしたが、立てかけられたメニュー表に並ぶトーストやサンドイッチの種類の多さにびっくり!
スパゲッティやカレーなどの「ザ・喫茶店」フードも名を連ねていて興味津々ですが、土日祝日はパンのメニュー以外は注文不可なのでご注意を。
ちょっと悩みつつも、初志貫徹ということで名物のグラパンをお願いしました。ホワイトソースのグラパン(エビ・ハム・エビとハムのミックスから選べます)に加え、土日祝限定の「牛スジシチューのデミグラスグラパン」もいただいてみることに。
15~20分ほどで2種のグラパンが焼き上がりました。目の前に現れたときのあの感動、思わず「おおっ」と声を出してしまうあの瞬間・・・なんて、私がぐちゃぐちゃと感想を述べていても伝えきることはできないでしょう、どうか写真をご覧ください。まずは全体像から。
写真という平面でしか表現できないのが悔しいです。そそり立つあのインパクトが伝えきれない!
上記写真で着目いただきたいのは、グラパン本体の横に立てかけられた白いトースト。グラタンを注ぐためにくり抜かれた、食パンの白い部分です。本体と一緒にオーブンに入れると焦げてしまうため、時間差で焼いているのだとか。そんなひと手間をかけて、まるまる全部を楽しませてくださるなんて!食べる前から感動です。
チーズのフタを突き破り、グラタン部分をいただいてみましょう。
泣く子も黙る、ときめきの瞬間。
ちなみに「エビとハムのミックス」にしました。シチューは洋食屋さんのそれよりも、少しあっさりしたお味。だから塩気のあるチーズとも合うし、こんなにボリュームがあるのにもたれることなく最後までおいしくいただけてしまいます。小麦粉を使ってイチから手作りしているとのことでした。
一方、土日祝日にしかお目にかかれない「牛スジシチューのデミグラスグラパン」はというと・・・
ひとくちサイズの牛すじがたっぷり!
煮込みすぎると溶けてしまうアキレス腱の部位は、別途圧力鍋で熱を加えてからシチューに入れているのだそう。もっちりとした食感がたまりません。
そしてグラパンの醍醐味といえば、「ソースとパンの接している面」!
肉まんだったら、白い皮と具の接している面。かた焼きそばだったら、汁に浸かって柔らかくなった麺の底辺。日の丸弁当だったら、白米という海原に光るレッドオーシャン(梅干し跡地)・・・そういうところこそ、ウマイ。
シチューの水分を吸ってぐにゃりとした食パンの壁を内側から少しずつ壊していく、その悦びといったらもう、最高。あんなに大きかった立方体は、見る見る間に崩されていきます。
テーブルには通常の塩に加えて「スパイス塩」が常備されているので、ちょっとした味変も可。
お腹いっぱいの苦しさを感じることなく、ぺろっと完食できてしまう不思議。ふわふわの焼きたてパンと、しっかりとした味わいがありながらも濃厚すぎない手づくりシチューのタッグの力に違いありません。
もうひとつの名物「フロート」
「デン」はグラパンが名物のお店ではありますが、店頭で力強く標榜しているのは「ソフトクリーム」なのです。かの『孤独のグルメ』でも、主人公のゴローさんが食べていたのは「コーヒーフロート」。
グラパンのあまりのおいしさゆえ、舌も胃もすっかり「もっと食べたい」モードに。せっかくなのでコーヒーフロートも、いっときますか。
「ハイ、おまたせしました」
効果音は「デン!」で決まりでしょう。
ドラマの映像や写真では見たことがあったけれど、ここまでの存在感があったとは・・・。3Dでお伝えできないことが悔やまれます。
少し引いてみると、この通り。
ドラクロワの名画「民衆を率いる自由の女神」が脳裏をよぎりました。輝いている。
フロートを食べるときの鉄則は「先に飲み物を少し飲むべし」。ソフトクリームやアイスクリームに心奪われて先にそちらを食べようとすると、ドリンクが溢れます。母によく言いつけられてきました。アイスコーヒーはほんのり甘く、ほっとする喫茶店の味です。
とんがり帽子になっていたコーンにソフトクリームを盛り付けて、いただいてみましょう。
「アイスクリン」を思わせるような、シャリっとした軽さが特徴的。濃厚タイプのソフトクリームとは対照的な、あっさりとした味わいです。
ふと視線を落とすと、グラパンのパンが少量残っていました。もちろん食べきるつもりで置いてあったのですが、私はアイスコーヒーをすすりながら思いついたのです。
「ソフトクリーム × パン = 超うまい」の方程式を・・・!
パンの香ばしさ、ひんやりソフトを吸ったじゅわっと食感、両社のやさしい甘みの掛け合わせ・・・。
私はこの瞬間のためにパンを少しとっておき、コーヒーフロートの追加注文をしたのです!!(すみません、たまたまです)
いやはや、想像を上回るうまさ!「おいしい」なんて美しい日本語は使っていられません。これを「うまい」と言わずにいられようか!!日々、己の無知と馬鹿をひた隠しにしている身ではありますが、この瞬間ばかりは「私、天才・・・」そう確信しました。
「デン」特製プリンとトーストがタッグを組んだら最強だった
翌週の早朝、私は再び珈琲「デン」にいました。9時~正午限定のモーニングセットをいただくためです。
Aセット(680円):トースト・ハムエッグ・サラダ + コーヒーor紅茶
Bセット(500円):トースト・ゆで玉子 + コーヒーor紅茶
モーニングセットは上記2種が存在します。私はBセットをお願いすることを決意していました。そして追加で、とあるメニューを注文するつもりでいたのです。その1品とは・・・
「デン」自家製カスタードプリンをソフトクリームで巻いた「ソフト巻きプリン(500円)」!1日限定12個です。
私がグラパンのパンとコーヒーフロートのソフトクリームを掛け合わせ、勝利の美酒ならぬソフトクリーム食パンに酔いしれていたとき、席の真横にあったこのメニュー表を見つけたのでした。パンを頬張りつつ横目でその姿をチラと確認しながら、
「トースト×プリン×ソフトクリーム = 奇跡のうまさ」
なる方程式を導き出していたのです。
まずはモーニングBセットから。幼いころの自分に見せてあげたくなるような、夢に描いていた理想の厚切り食パン。これだけで心が躍ります。
外はサクッ、中はフワッ。バターが塗られたトーストにそのままかぶりつくもよし、添えられたジャムをつけていただくもよし。
「デン」さんでいただくなら、ゆで卵には「スパイス塩」でしょう。うんまい。
モーニングメニューをひとしきり堪能したところで、いよいよ「奇跡」に向けた一歩を踏み出します。「ソフト巻きプリン」をオーダー!
手づくりプリンにたっぷりとソフトクリームが盛られたスペシャルデザート。プリンが埋もれています。
ひとさじすくって、
トーストの上に!
サクッ・フワッの食感にソフトクリームのひんやりが重なり、軽くてやさしい甘さとバターの塩気が交差します。やっぱり、最高!
次はいよいよプリンの出番。
ひとさじすくって、
ソフトクリームも添えて、トーストの上に!
オーブンで焼き上げた、卵の味わいがたっぷり含まれた手づくりプリンは、言うまでもなくトーストとの相性が抜群です。
市販品のプルプルプリンとは異なるなめらかさ。いただいていると、やさしい気持ちになってきます。
そうそう、モーニングセットにジャムが添えられていたので、こんなこともしてみました。
ジャム乗せソフトクリーム!
これがまた甘酸っぱくて絶品でした。ソフトクリームが軽いから、ジャムといい具合にコラボレーションしてくれるのです。濃厚ソフトクリームだと、ジャムが負けてしまっていたかも。
朝から最高のごちそうをいただいてしまいました。
グラパンだけじゃない!バラエティ豊かなメニューの数々
グラパンとフロートドリンクが人気の「デン」ですが、前述のモーニングメニューやプリンをはじめ、どのお料理も、目にも口にも夢のようなおいしさです。
たとえば、
分厚い玉子焼きがサンドされた「タマゴ(オムレツ)トースト(500円)」。
パンと玉子の間にはケチャップが塗られていて、かぶりつくと口の中に「オムレツ」の風味が広がります。
マスターのご子息で、午後の時間帯を切り盛りされている貴規(たかのり)さんの密かなお気に入りのメニューだそうです。食べごたえ抜群で、私もすっかり大ファンに。
そして喫茶店と言えばピザトースト!「ハムと玉葱のピザ風(500円)」です。Winkもびっくりな背中合わせフォーメーションがまた美しい。みじん切りにされた玉ねぎのシャキシャキ感と、ふわっふわの厚切り食パン。それを包み込むたっぷりチーズがたまりません。
平日限定メニューのパスタ・ごはん類も気になるところです。こんがり焼かれた「カレードリア(800円)」は、グラタン皿にたっぷり盛られていてボリューム満点。しかも、中に玉子が!発見したときは、宝を掘り当てたようなうれしさがありました。
辛さは控えめです。ごはんを多めにスプーンに盛り付け、例のスパイス塩を振っていただくのもまた美味。玉子を潰すタイミングに悩みましたが、割と序盤で我慢しきれなくて混ぜ混ぜしてしまいました。一気にまろやかなリゾット風に変身します。
幼いころに憧れていた「夢の喫茶メシ」がそこにある
昭和46年(1971年)に根本マスターが創業した喫茶店「デン」。いまはご子息の貴規さんもお店に入られています。
45年以上の歴史を刻む同店の看板メニュー「グラパン」もまた、販売を始めてから40年は経っているであろうとのことでした。大きなオーブンで、一度に8個まで同時に焼き上げることができるそうです。ちなみに、トースト類やプリンもそのオーブンで焼いているとのこと。
手作りのシチューのおいしさは前述のとおりですが、パンのフワフワなおいしさも、グラパンの大きな魅力のひとつ。こだわりのパンなのかなと思い伺ってみると、意外にも、我々にもなじみのある銘柄の食パンでした。ただし独自のルートで仕入れているとのことで、私たちが購入しているものとは食感が全然異なります。
「届きたての食パンは、柔らかくて、シチューを吸っちゃうんです。だから、あえて少し放っておいてから使っています。・・・といっても、パンが間に合わなくて、届きたてのものを使わざるをえないこともあるんですけどね」
土日の店内のグラパン発注ぶりを見れば、そうなってしまうのも想像に難くありません。
ちなみに外見のインパクトから「食パン1斤を使っているのでは!?」と思ってしまいますが、正確には「1斤弱」だそうです。3斤を4等分して使っているとのこと。
「1斤なんて、きっと食べきれませんよ!でも、女性はグラパンを残さず召し上がっていく方が多いですね」
私もまた、ぺろりと平らげて追加でコーヒーフロートまでいただいてしまった1人。妙な表現ですが、シチューもパンも喉越しがよくて、気づけば目の前から消えているような感覚なんですよね・・・。
何より、「夢にまで描いた食べもの」を前にしての興奮が、私たちを完食に向かわせるのではないかと思います。
グラパンを筆頭に、コーンの帽子がチャーミングなフロートドリンク、分厚~いトースト、ソフトクリームまみれのプリン、宝物が埋まっているカレードリアなどなど、どれも幼いころにアニメやマンガで見た「理想の喫茶店メシ」そのものなんです。「アルプスの少女ハイジ」を観たときの「白パン・黒パン」に憧れる気持ちが蘇ってくるとでも言いましょうか・・・。
そんな「夢の料理」を生み出す根本マスターと貴規さんも、なんだかアニメに登場するキャラクターのよう。親子同士やお客様との漏れ聞こえてくる会話のトーンがやさしくて、かわいくて、とても居心地がよいのです。
与太話の流れで「テーブルにあるスパイス塩、おいしいですよね」なんてお話ししたら、「あれね、赤飯にかけるとうまいんですよ!」と根本マスターがにっこり。どうしよう、試したくなるじゃありませんか。困ったな。
社会の荒波に揉まれる働き人の皆様。お寒いボーナス査定額に涙を流し、社内派閥に気を遣い、流行語の「忖度」が笑えない・・・そんな「大人の事情」で心が疲れたら、珈琲「デン」さんで心の潤いを取り戻しましょう。夢の喫茶メニューを目の前にすれば、気づけば微笑んでしまっているはずです。
最後になりますが「喫茶店」だもの、全席喫煙可能。私自身は非喫煙者なのですが、煙草が吸える喫茶店は、小さい頃に思い描いていた「憧れの大人空間」のイメージと重なりました。
ご紹介したお店
TEL:03-3875-3009
※掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります
著者プロフィール
85年生まれの自意識過剰なアラサー銀座OL。人生の楽しみは食べること。”食べものエッセイスト”を自称し、ブログ「言いたいことやまやまです」にて食べもの関連記事を公開中。好物はスーパーの総菜コーナーの白身魚フライと、料理の汁に浸した白米ORパン。お酒はハイボール&焼酎派です。
ブログ:言いたいことやまやまです
Twitter:@やまま
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