大崎裕史×北島秀一ラーメン対談

大崎裕史×北島秀一のラーメン対談!ラーメン食べ歩き~ラーメンの未来まですべてを語りつくすラーメン好きには、たまらない夢のラーメン談義がついに実現!大崎裕史さんと北島秀一さんのそれぞれ独自の目線で語ってもらいました!

ラーメン食べ歩きの面白さ、楽しさ、素晴らしさ

「桂花」の一杯で人生が激変!

ラーメンジャーナリスト 北島 秀一

大崎:
ご好評をいただいているこのスペシャル対談もいよいよ最終回。そこで今回は真打ちにふさわしく、ラーメンジャーナリストの北島さんにお話を伺います。
北島:
現在は雑誌での執筆を中心に、TV番組などの仕事もこなしていますが、きっかけとなったのは、やはり第4回ラーメン王選手権。石神さんと戦って準優勝でした。インターネットで情報を収集・交換してラーメンを食べに行く世代の出始めの頃ですかね。今はブログなどで誰でもがカンタンに情報をサイトにアップできますが、当時はホームページを作るだけでも大変な時代でした。
大崎:
ラーメン評論家の先駆者のような存在でもありますよね。当時、我々は「ラーメン四天王」なんて呼ばれたこともありました(笑)。
北島:
でもラーメンに開眼したのはかなり遅くて、大学への進学で上京してからなんです。もちろんそれ以前からラーメンは好きだったんですけど、渋谷にあった「桂花」の熊本ラーメンを食べて人生が変わりましたね!まさに劇的な出会いでした。スープは白いしキャベツはのってるし麺はカタイし、最初は「なんだコレ?」って思いましたよ。ところがものすごくうまくて本当に感動しました。それ以来、一番多い時で年間300杯くらい食べましたね(笑)。
大崎:
同じ店にそこまで通い詰めるのは北島さんしかいませんよ!
北島:
「桂花にあらずんばラーメンにあらず」って感じで、桂花通いは大学時代いっぱい続きました。その後、就職直前くらいに全国のラーメンを紹介した「ベストオブラーメンinpocket」という本が出版されたんです。見たら桂花が高評価だったんで「この本は信頼できる」と思って、ベストオブ~を教科書代わりにラーメンの食べ歩きを始めたって感じです。今持っている本は3冊目で、それ以前のは使い過ぎてもうボロボロ(笑)。

自分のホームで足場を確認!

ラーメンジャーナリスト 北島 秀一

大崎:
ハードリピーターとして知られる現在の北島さんの志向は、学生時代の「衝撃の出会い」から始まったんですね(笑)。
北島:
面白いから通うというのではなく、自分の基準点だからだと思います。「そこに行けば必ずいつもの味のラーメンが食べられる」という安心感がありますからね。また「いつものラーメンをいつものようにおいしく食べられるか」という自分のコンディションの確認にもなる。いろいろなラーメンを食べ歩いた後など、ホームとなる店のラーメンを食べると自分の足場が確認できるし、感覚をリセットできる。
大崎:
ある意味ソウルフードでもあると思うんですけど、そのホームとなる店は変化するんですか?
北島:
ラーメンに関しては子供の頃の刷り込みがないから、年齢や嗜好とともに変わったりもします。桂花の次は「博多一風堂」で、これもバカみたいに通いましたね~。一風堂の後はしばらくなかったんですけど「春木屋」がラーメン博物館に入ってからは、そこが僕のホームになって、今も続いてます。大好きなラーメンに徐々に近づいている感じですね。とはいっても、コッテリ系が嫌いになったわけではないので、今でも「ラーメン二郎」にも行きますしトンコツ系も食べます。もちろん新店にも行きますよ(笑)。
大崎:
地方に食べ歩きに行く時の店の選び方も個性的で、北島さんは歴史や文化的な面まで知ろうとして、老舗と新店が半分ずつって感じですよね?

北島:
それはラーメン博物館時代の経験がかなり影響していると思います。地方の店を誘致する時は、なぜその土地でそういうラーメンが根ざしているのかを知るために、街を歩いてラーメン屋を見つけては飛び込んでましたし、文化全般を視野に入れながら徹底的に調査しました。
大崎:
本当はそういう食べ方をしないとわからない…?
北島:
一番忙しかった時は、北海道と九州をそれぞれ3週間で80杯ずつ食べ歩いたかな~(笑)。要はなるべく同じ時期にガッツリ食べると、その土地の状況がかなり見えてくるんです。その時の経験が今の自分の基礎になってて、後は新しい店を食べ歩くことで、その土地のリアルな感覚がつかめる。店選びはその土地の原型になっているラーメンを押さえないと、どうも腰のすわりが悪い。新店ばかりだとなんか見通しが良くないと言うか、スッキリしないし…。

東京よりうまい東京ラーメン!

郡山「トクちゃんラーメン」の中華そば
画像1:郡山「トクちゃんラーメン」の中華そば

郡山「春木屋郡山分店」の中華そば
画像2:郡山「春木屋郡山分店」の中華そば

郡山「正月屋」のラーメン
画像3:郡山「正月屋」のラーメン

大崎:
これまでの食べ歩きで印象に残っている土地というと?
北島:
福島県では喜多方と白河あたりがラーメン処として知られていますが、実は郡山も外せないエリアで、東京でもめったに食べられないレベルのうまい東京ラーメン店が3軒も揃ってる。
大崎:
それはすごい!
北島:
まずは「トクちゃんラーメン」で、3軒の中心的存在。来々軒をはじめとする東京ラーメンを食べて育った浅草出身のご主人が改良を重ねて作った、鶏ガラと醤油のラーメンには驚きました!(画像1参照)「春木屋郡山分店」は荻窪春木屋の創業者の一番弟子と三番弟子が開いた店。(画像2参照)もう一軒は「正月屋」。葛西に「ちばき屋」というあっさりした醤油ラーメンで有名な店があって、そこのご主人の和食時代の後輩が作った店で、今では麺まで自家製。(画像3参照)僕はリピーターの本領発揮で、この3店はすでに4~5回ずつ行ってますが、3軒とも甲乙つけがたいくらい。どれも確かに東京ラーメンなんですけど「昔ながらの」って訳でもなく洗練されてるんで、若い人が食べてもおいしいと思いますよ。どの店もご主人のラーメンに対する愛情が感じられますし…。
大崎:
そういうところが味にも表れたりするんですよね~。では逆に、ラーメンの食べ歩きで今後訪ねてみたい地方は?
北島:
年内に行きたいと思ってるのは南紀ですね。和歌山、奈良、三重といった熊野の方、多くの関東のフリークからすると、まだ誰も真剣に調査したことがない未開の地です。紀伊半島のあのエリアは伊豆七島や小笠原諸島と同様に、日本で最後に残ったラーメンの秘境。隠れた名店が見つかるかもしれないし何もないかもしれない。僕は時々そういう冒険をするんですよ。5年程前には、当時まだ何も詳しい情報がなかった鳥取と島根を折りたたみ自転車で旅したこともあった。

大崎&北島の最強タッグがオススメの店!

経堂「季織亭」の雉ラーメン
画像4:経堂「季織亭」の雉ラーメン

金沢「神楽」の醤油ラーメン
画像5:金沢「神楽」の醤油ラーメン

大崎:
リポートもぜひお願いしますね(笑)。それでは最後に、ぐるなびユーザーに向けてオススメの店を紹介してください。
北島:
1軒目は経堂の「季織亭」。昼は元々の弁当屋ですが、夜になるとラーメン屋に変身。さらに2階では居酒屋もやってるという三毛作営業がユニークな店です。ラーメンはシンプルな醤油味で、もっちりした麺を使うのが特徴なんですけど、料理センスと素材の選び方が素晴らしい。その店が昨夏から出すようになった雉ラーメン(画像4参照)は、独自のルートで雉ガラと肉を仕入れてくるため¥1,500と、ラーメン一杯としては高価なんですけどオススメです。2軒目は地方の店で、金沢の「神楽」を推します。金沢はご存知のように食文化のレベルは高いんですけど、ラーメンのイメージはこれまであまりない。ところがそこに、すごく繊細で、東京でも立派に通用する店が出来た。それが醤油系の「神楽」です(画像5参照)。ところで、今回は最終回ということで特別に、大崎さんのオススメ店も教えてくださいよ!
大崎:
インタビュアーの立場が逆転しちゃったようですけど、いいでしょう、教えましょう!まずは1月中旬に幡ヶ谷にオープンしたばかりの「不如帰」(画像6参照)。トンコツのチンタンスープと魚介のスープ、さらにハマグリのだしを加えたトリプルスープで、感動的にうまかったですよ。ハマグリの味がすごく活きていて、最初は慣れないからちょっと違和感あるんですけど、食べ終わるとかえって印象に残る(画像7参照)
次は高校時代に通った天ぷらラーメンの店「マルキ食堂」。学校の近くの食堂で出してたラーメンで、ま~よく食べましたよ。今思えばそんなにおいしいラーメンではないかもしれないですけど、発想が面白いし、私の中では思い出に残るラーメンですね。もう一軒は博多の「まるげん」。福岡といえばトンコツが有名ですが、そこは醤油ラーメンでがんばってる。東京で流行っているトンコツと魚介を併せたようなタイプではあるんですけど、ビックリするくらいうまかった。お代わりすることはまずないんですけど、この店ではツケ麺とラーメンで2杯も食べちゃいましたからね。
北島:
ではお開きにする前に、ラーメンの食べ歩きをこれから始めたい思ってる人に向けて、先輩からぜひアドバイスを!

幡ヶ谷「不如帰(ホトトギス)」の外観
画像6:幡ヶ谷「不如帰(ホトトギス)」の外観

幡ヶ谷「不如帰(ホトトギス)」のラーメン
画像7:幡ヶ谷「不如帰(ホトトギス)」のラーメン

大崎:
ラーメンはただでさえおいしい食べ物ですが、食べ歩きを通して面白くて、楽しくて、素晴らしいことも経験できます。だからお腹が減った時に「ラーメンでも食べに行くか」と思うのではなく「ラーメンを食べに行きたい」と思ってください。「じゃあ、どこに食べに行く?」となった中で、必ず何か発見できます。ラーメンの食べ歩きはエンタテインメントなんです。
北島:
食べ歩きにルールはないので、興味を持ったところへ素直に食べに行って、思った通りに感じるのが一番。大崎や北島が何と言おうが、自分の感想は自分だけのものですから、それを素直に自分の中に取り込んでください。時にはあまり舌に合わないラーメンにあたることもあるかもしれませんが、うまいラーメンは必ずあります!それを信じて自分のペースで食べ歩いてください。

ホストプロフィール
大崎裕史
株式会社ラーメンデータバンク

自称「日本一ラーメンを食べた男」。2005年8月現在6,200軒13,500杯を食破。ここ数年は毎年850~900杯を食べている。東京一週間でラーメン連載中。携帯の「超らーめんナビ」担当中ラーメン複合施設をいくつか監修。他、TV、ラジオ、雑誌などの登場多数。2005年4月株式会社ラーメンデータバンク設立。代表取締役に就任。