石山勇人×佐藤真一ラーメン対談

石山勇人×佐藤真一のラーメン対談!ラーメン食べ歩き~ラーメンの未来まですべてを語りつくすラーメン好きには、たまらない夢のラーメン談義がついに実現!石山勇人さんと佐藤真一さんのそれぞれ独自の目線で語ってもらいました!

ラーメンの誕生から、現在。そして未来のラーメンの行く末

ラーメンの誕生

佐藤:
今日はラーメンの誕生から、現代のラーメンへどのように変化してきたのか?また、この先ラーメンはどうなっていくのかについて石山さんの見解を教えていただきたいんですが。
石山:
まず、最初のラーメンについては本当にいろいろな説があるので。
佐藤:
水戸黄門?
石山:
儒学者の朱舜水が、徳川光圀がうどん好きということを聞いて中国の食文化である麺料理を紹介したそうです。当時の麺はカン水が入っていなくて、小麦とレンコンを混ぜて、伸ばした麺。スープは塩味の清湯スープだったとか。ただ、それがそのまま江戸時代に浸透したというのではなくて、ラーメンが食文化として日本に入ってきたのは、横浜、函館の開港ですよね。明治維新の頃ですね。
佐藤:
日本初のラーメン店ていうのは。
石山:
もう、そこ行っちゃいますか??浅草の『来々軒』って言われていますよね。中華街から連れてきたコックと、日本人創業者の尾崎貫一氏が中国料理ということではなく、ラーメンと点心の店、まあ手軽な中華料理の店としてオープンしたのが、ラーメン専門店のはしりだと言われています。その前にも中華料理店だったら、既にあったんですが、『来々軒』のような身近な中華料理が庶民にうけたようですね。それまで塩味だったものが、日本人と中国人コックが一緒になって初めて醤油ラーメンというものが考えられて、日本人好みの味になった訳です。塩味じゃどうしても動物系のスープの臭いが消せなかったものですから。醤油っていうのは臭いを消す効果もありますので。チャーシュー・メンマ・その辺のトッピングが出来上がったのもこの頃と言われています。
佐藤:
今で言う"東京ラーメン"ですね。
石山:
そうですね。全ての原型だと思います。ラーメンという呼び名の始まりも諸説あるんですが。
佐藤:
ラーメンという呼び名はどこから来たんですか?
石山:
中華料理で、「拉麺」(ラーミェン)という麺を打つ手法があるんです。麺ていうのは、中国では小麦で作る餅みたいなものも、餃子もワンタンも全部麺っていうんですよ。その中でも拉麺は手で伸ばしたもの。「ラー」って伸ばすっていう意味なんですけど。それがラーメンの語源なんじゃないかというのが、一番有力ですかね。でも結局、今の日本のラーメンは伸ばすラーメンじゃないんです。浅草の『馬賊』とかは伸ばすタイプの拉麺ですけど。今のラーメンは中国でいうと、切麺(チェミェン)が近いですね。包丁で切るタイプ。まあ、ほとんどが製麺機なので中国の表現をするのもどうかと思いますけど。他のもう一つの説は北海道。大正11年だったかな。竹家食堂という大衆食堂が北海道大学の前にできて、最初は「肉絲麺」というメニューが人気だったようです。
佐藤:
ラーメンとは呼ばれてないですよね。
石山:
オーダーを受けるときに、「了解しました」とか、「OKです」とかを意味する言葉が中国語で"ラー"って言うようで、それで"ラーメン"って言う名前にしようかっていうのが始まりという説も聞きますよね。
佐藤:
竹家食堂説はインターネット上で流れているだけという感じがしますね。
石山:
実際のところはどうなのか確かめられていませんが。

味噌ラーメン

佐藤:
日本のラーメンは醤油が最初で、次が味噌。味噌ラーメンは北海道からですよね?
石山:
そうですね。
佐藤:
北海道の『味の三平』が札幌味噌ラーメンの発祥ですけど…
石山:
札幌味噌ラーメンが味噌ラーメン発祥って言うことでいいんじゃないですか?
佐藤:
うーん…
石山:
『龍上海』のこと言ってますか?
佐藤:
まあ。
石山:
あれは新たな説で非常に興味深いところですけど、結局全国に味噌ラーメンが広まったのは、札幌味噌ラーメンからなので。いわゆる「味噌ラーメン」の始まりは札幌「味の三平」で、東京から札幌に出稼ぎに来ている人たちに、豚汁に麺を入れて出したことが始まりだと言われています。全国に広まったのは"暮しの手帖"でしたっけ?
佐藤:
"暮しの手帖"ですね。
石山:
そういうメジャー誌があって、「札幌味噌ラーメン」として取り上げられたのが、全国に広まったきっかけだと言われていますよね。その後、「サッポロ一番みそラーメン」をサンヨー食品がだして、全国的に展開していったというのが昭和40年代。
佐藤:
それからとんこつが。徐々に出始めると。

スープの時代

石山:
とんこつラーメンが引き金になったラーメンブーム。1980年代(昭和50年代)からですかね。そして、ラーメン博物館が1994年にオープン。全国のラーメン店が集まり"ご当地ラーメン"が注目されました。ラーメンは既にブームじゃなくて文化。定着した日本の食文化ですよね。
佐藤:
ラーメンって味だけじゃなくて、店もかわりましたよね。例えば、女性一人でも入り易くなったでしょ。ラーメン店といえは汚いイメージがありましたけど、最近はおしゃれですよね。
石山:
それこそ、よく言う"96年組み"ですよ。1996年にできた、『武蔵』『青葉』『くじら軒』ですよね。『くじら軒』『武蔵』あたりは味もさることながら、内外装ともにこだわったハイセンスなラーメン店です。それを真似する店がたくさんできて、ラーメン店がおしゃれなものになっていったのだと思います。味のこだわりの変遷というのでしたら、最初のころは「タレの時代」。ラーメンのタレをどういじるかがラーメンだったんです。塩も醤油も味噌も全部タレですから。次に、80年代のとんこつブーム。とんこつラーメンというのはスープ次第じゃないですか。九州系の濃厚なものから、背脂を浮かべたものまで業界全体が今度はスープで差別化しようとして、「スープの時代」に移ったわけです。

佐藤:
それから魚介系もきましたよね。
石山:
結局、それも"96年組"なんですよ。『青葉』ですから。動物系の濃厚なダシに魚介系を加えるというダブルスープ。魚介系が流行ったのもそのころからですよね。その前から"荻窪ラーメン"を筆頭に魚介系はあったんですけど、それに対する動物系のスープが濃くなったのは1996年位からですよね。その頃は動物系の濃厚なスープに魚介ダシが入るのって『青葉』もしくは、"青葉インスパイア"といわれるお店位しかなかったんですよ。
佐藤:
だんだんと、それが主流になってきた。
石山:
2000年位からは魚粉ですよね。埼玉の『もちもちの木』と、『頑者』ですよね。
佐藤:
『もちもちの木』は衝撃的でしたよね。本当に本当に美味しくて。

石山:
香味油たっぷりのところに魚粉どっさり。すごいインパクトでしたね。
佐藤:
駅から遠かったのが、辛かったですけど…
石山:
あとやっぱり『頑者』ですね。
佐藤:
あの香りが。
石山:
あの頃は魚粉という言葉もなくてもっと荒々しい、鰹節のかけらが入っているのが『頑者』ですよね。麺も当時だったら、一番太かったと思います。極太麺に魚粉、すごいインパクトでした。
佐藤:
魚粉があれだけラーメンに合うと思わなかったですよね。
石山:
それから『渡なべ』ですよね。魚介系だったら。かなり濃厚でした。
佐藤:
博多なみですね。
石山:
『青葉』とかは確かに、スープが白濁はしていたけれど、そこまで濃厚なものではなかった。
佐藤:
『渡なべ』は本当に濃厚で取材させてもらって驚きました。

麺の時代

取材協力店「ぶらり」のつけ麺
取材協力店「ぶらり」のつけ麺

取材協力店「ぶらり」のラーメン
取材協力店「ぶらり」のラーメン

石山:
魚粉・魚介が流行ったことによるつけ麺の台頭がありましたね。『頑者』とか、『勢得』。スタートは大勝軒のまかないですけど。
佐藤:
大勝軒のカップラーメン出てましたね。エースコックだったかなぁ。
石山:
そういえば、つけ麺のカップ麺も出してましたね。つけ麺ってことは、麺にこだわらないと美味しいものは出来ない。それで、今は「麺の時代」なんです。タレの時代・スープの時代を経て麺にこだわる時代になりました。
佐藤:
麺を強調して出していこうと。最近ですと汁なし麺ですとか。
石山:
"汁なし"が流行ったというのはやっぱり『ラーメン二郎関内店』の存在が大きいですよね。二郎の刺激に卵黄・チーズ・揚ネギをごちゃまぜにする。そのビジュアルに一瞬ひるみますが、食べ終えたあとの満足感は格別です。そのインスパイア店が『ジャンクガレッジ』。トッピングが豊富で、いろんなバリエーションを楽しめます。
佐藤:
"二郎系"になっていますよね。
石山:
"汁なし"が流行ったのも"二郎インスパイア"人気に便乗したところがあるのかもしれません。進化・変化というのはそういうカリスマ性のあるお店によるところが多いですから。
佐藤:
まあ、一般的な人からすれば、もうラーメンは来るところまで来た感覚ですよね。
石山:
そうですね。
佐藤:
今後向かうとしたらどういう方向なんですかね。
石山:
注目するところではラーメンの"洋風化"ですね。トマトラーメンや、カレーラーメンなど、以前ならばキワモノって言う感覚があったんですけど。麺の向上も手伝って料理としての完成度が高くなってきています。もちろんまだまだ主流は「魚介豚骨」のジャンルなんですが。
佐藤:
麺がよくなったのは"汁なし"の影響もありますよね。

ラーメンのパスタ化

取材協力店「ぶらり」のつけ麺

取材協力店「ぶらり」のラーメン

石山:
"汁なし"というのは本当に革命的。ラーメン=スープだと思っていたのが、スープが無くなってしまったわけですから。もうなんでもありですよね。そうなった場合、みんなどこへ行くかといったら、慣れ親しんだ麺料理ですよね。そばとかうどんとかいうのは、そこまでの拡張性がないじゃないですか。ダシが主体という風潮もありますし。そうなると汁なしという点も含めパスタですよね。
佐藤:
パスタ化。
石山:
パスタと言えばトマト。また生クリーム系でしょうか。いずれもトマトソースやベシャメルソースというのが頭に浮かびます。そのジャンルの料理は既に多く開拓されているので、麺さえしっかりとしていればいろんなアレンジが可能です。そして、そうなったらチーズの存在が欠かせません。日本でもしっかりと定着している人気食材で、既に多くのラーメン店で使用されていますよね。
佐藤:
『ジャンクガレッジ』の上に載っているチーズは本当に絶品でしたからね。
石山:
醤油とチーズって合いますよね。まさに和洋折衷な組み合わせで、今後のキーワードにもなってくるかもしれません。
佐藤:
ただ"チーズラーメン"と定義づけると正直わからなくて。
石山:
そうですね。チーズ主体のラーメンなのか、それともトッピングとしてのチーズなのか。それによっても変わってくると思うんですよ。チーズはスープでもなければ、調味料でもないので。もちろんトッピングという位置づけならそれで納得もできるんでしょうけど、それではおもしろくない。存在感がありすぎなんですよね。だから魚介が入るラーメンを「魚介系」というように、チーズが入ったものに対して「チーズ系」というようなジャンル分けでいいんじゃないでしょうか。
佐藤:
うーん。
石山:
ここで定義づけをしないで、ラーメン店の人とかに聞いてみましょうか?
佐藤:
いいですね。お願いしたら作ってくれる店もあったり!?
石山:
それ面白いですね。ぐるなびさんでそういうのできないですか?協力しますよ。

ラーメンマン
石山勇人
(タウン全国ネットワーク)

学生時代に大学公認ラーメン研究会を立ち上げ、28歳にして既にラーメン食べ歩き歴10年の若手ラーメン評論家。全国津々浦々のラーメン店をまわり、取材した軒数は500軒。TV出演、情報誌、webなど数々のメディアでラーメン情報を発信し、ラーメンの魅力を国民に伝えるべく日々奔走する。