かわいらしいピンク色の花。そこには不思議な力が・・・

なぜひな祭りは「桃の節句」というの?

3月3日は「上巳(じょうみ・じょうし)の日」。これは古代中国の陰暦に従ったものですが、現在の暦で言うと3月末から4月中旬にあたります。この時期は梅が咲き終わり、ちょうど桃の花が咲く頃だったのです。春の訪れと共に咲き、春の季語でもある桃の花にちなんで、 上巳の日は別名「桃の節句」と呼ばれるようになりました。桃の花が咲き誇る「花盛り」の時期、愛らしい女の子のお祭りにピッタリな花です。

桃には厄除け、魔除け、長寿のパワーが

桃は2500年ほど前に中国で栽培されました。中国でも日本でも、古来よりさまざまな書物に桃の記録が見られ、日本には弥生時代以前に伝わったことがわかっています。

桃の花は美しいだけではなく、厄払いや魔除け、長寿をもたらす力も持っているといわれています。桃が持つ不思議な力によって人々が救われたという数多くの伝説からも、そのパワーの強さがわかります。このような理由から、生命力の象徴ともいえる桃をひな祭りに飾る習慣が続いているのです。

ひな祭りには桃の花びらが浮かぶ桃花酒を

現在ではひな祭りにはアルコール度数の高い白酒やノンアルコールの甘酒が一般的ですが、これは江戸時代から始まった風習で、平安時代には桃花酒(とうかしゅ)が盛んに飲まれていました。桃花酒は清酒にたくさんの桃の花を刻んで浮かべたり、杯に花びらを浮かべて飲むお酒です。古来には、美しく、邪気を祓う力をもつ桃のお酒を飲み、季節の節目を無事乗り越えるという意味があったようです。桃の花を眺めながら桃花酒を一杯。子どもだけではなく、大人も楽しめるひな祭りになりそうです。

女性にうれしい食用桃の効能あれこれ

実桃の旬は夏。桃の節句に桃を食べることはできませんが、実桃も女の子の健康と成長を願うひな祭りと深く関わりのある食べ物です。

桃は食物繊維を多く含むため、老廃物排出効果があり、便秘の解消も期待できます。また、桃の葉は、あせもやただれ、日焼けに効き、子どもにも適した入浴剤や収れん水としても知られています。さらに、桃の種を使った漢方薬「桃仁」は、女性の疾患に効き目があります。芳醇な香りは鎮静効果もあり、桃は女性にうれしい効能が詰まった食べ物なのです。

ひな祭りに飾る桃は「ハナモモ」の花

以上のように、花から実まですべてが女性のためにあるような桃、ひな祭りに欠かせない理由がわかりました。

ひな祭りの飾りには、親しみのある実桃の花ではなく、観賞用に改良されたハナモモが使われています。ハナモモの花は実桃の花に比べ少し大きい八重桜ぐらいの大きさで、色は桃色、白、赤などがそろい、実に華やかです。枝を埋め尽くすように咲く桃の花は、すくすくと成長していく女の子のようにも見えます。かわいらしいピンク色の内側に数々の不思議なパワーを持つ桃の花に、美しく強い女性像が重なります。