こだわり1 和食

外国で気づいた自分の目指す料理の道

佐藤氏の和食に至る道は紆余曲折だ。調理学校を卒業して就職したのは高級ホテルの中華部門。そこで修業をし「外の世界を見るために」とニュージーランドに1年間語学留学した。「日本の良さを多くの人々にアピールしたい。日本人として自分が外国人に伝えられるもの、喋ることは何かと考えた末に和食に行きついた」という。

こだわり2 新鮮食材

20歳代で目指した35歳までの独立

出身地北海道の料亭で修業を積んだ後上京し、新宿御苑の名店に勤務。「ここで鍛え直されました。掃除や配膳など一からのスタート」だったという。その甲斐あって29歳で料理長となり厨房を任される。そして、2014年9月にこの店をオープンさせた。カウンターでの大らかな話し方からも、魅力的な人柄が伝わってくる。

  • 店主は、早朝から築地に足を運び、自分の目でその日の素材を吟味する。「料理は素材を選ぶところから始まっていますから」と事も無げに語る。この日は、旬の松葉ガニ。中でも兵庫県柴山港に揚がって活きたまま築地に運ばれる「柴山ガニ」が供されるという。時折「カニビル」の話などの説明もあり愉しい食事の時間となる。

  • 先付に使われる「香箱ガニ」とは、本ズワイガニの雌。北陸地方の水揚げされる浜にもよるが、季節限定の食材だ。雄に比べて身は小ぶりだが、茶色い外子とオレンジ色の内子を持っていて、この二つの食感の違いと濃厚な旨味を堪能できる。食材には妥協しないという佐藤氏の目利きが味に顕れる。

こだわり3 そば打ち

最後の一口にまで真心のもてなしを

〆に出されるのは、手打ちの十割蕎麦。店内に置かれた特注の石臼で、その日に使う分の常陸秋蕎麦の実を自家製粉してから、手打ちする。佐藤氏の蕎麦打ちは、蕎麦粉も水回しに使う水も一切計量しない。「できあがりをイメージするという、感覚を大事にしています」という言葉は、料理に対する真摯な姿勢にもつながっている。

  • 蕎麦には、料理に使うものとは異なったダシのひき方が求められる。冷たい辛汁には本枯れ節と荒節で芳醇な風味を出し、温かい甘汁には宗田節と鯖節でコクを出す。どちらも別の鍋でぐらぐらと長時間煮詰めてダシを作る。「決して、気を抜いた『作業』にはしない。自分が決めたことを貫くのみです」と手間や暇を惜しまない。

  • あくまでもコースの〆としての位置づけなので、エッジの効いた細めの蕎麦に仕上げる。茹で時間は30秒程度で、キリリとした喉ごしの良いせいろ蕎麦が完成する。碾きたて、打ち立てだからこそ香りが口の中に広がる。食べ終えた後に出される濃厚な蕎麦湯のトロミ感も絶妙で、その日の食事の満足感を際立たせる演出のようだ。

こだわり4 お酒の品揃え

和食に合う高価なワインを気軽に満喫

日本料理店なので日本酒と思いがちだがワインの品揃えも豊富。しかも「あくまでも料理の味こそが自分の表現方法」という佐藤氏にとって、ワインは「お客様に喜んでいただきたいので、お手頃な価格で提供しています」という。この心意気が、リストの価格にも反映しており、ワイン好きのゲストは思わず快哉を叫ぶに違いない。

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