こだわり1 そば打ち

「やるからにはとことん」という姿勢

店主は、多彩な人物だ。割烹と韓国料理以外のあらゆるジャンルを経験したという。そして、2011年に辿り着いた場所は、父親の店だった。蕎麦好きで蕎麦打ちが趣味だったという先代はサラリーマンだったが、福島県山都町の十割蕎麦に感銘を受け、現地まで修業に行ってから1998年に開業した。

  • 開業から13年後、代替わりにあたり、店主もまた山都町で徹底的に「柳腰」と呼ばれる蕎麦を学ぶ。今でも時折ブラッシュアップに山都町に出向くという。蕎麦の道に入ってからは、捏ね・延し・打ちといった一連の作業はもちろんだが、使う蕎麦の実、蕎麦粉、その他の食材についても、全て自分の舌で味わってから使う。

  • 「蕎麦粉は生き物のようで、午前1時頃に打った蕎麦が特に旨い気がするのです。蕎麦が暴れない」という。真摯に蕎麦に向き合うからこその比喩が象徴的だ。「最終的には、感覚、感度、感性が美味しい蕎麦を作るので、その味と香りが一番美味しい瞬間に食べていただきたい」。一つひとつの言葉にその想いが表れている。

こだわり2 看板料理

蕎麦の味を引き立てている名脇役揃い

店一番人気のメニューは「天然大海老と野菜天付きざる蕎麦」。天ぷらがテーブルに運ばれると、思わず目を見張るほど海老が大きい。しかも、薄い衣しか身に纏っていないのにこのサイズだからプリプリとした食感はたまらない。その他に季節の野菜が5品付く。海老とは対照的に繊細に揚げた人参も見事。蕎麦との相性も絶妙だ。

  • この店の蕎麦湯は、蕎麦の茹で汁ではなく、そのためだけに作っている。その濃厚なトロリとした食感と味わいは、最後の〆にふさわしく体と心を温かくしてくれる。蕎麦前に揃えてある焼酎の割りものとしてもオーダー可能。この蕎麦湯を自宅でも味わいたいというリクエストに応えて、500mlのペットボトルでも販売している。

  • この店では、冷たい蕎麦の出汁と温かい蕎麦の出汁を別々にとる。奥の濃い出汁は、まだ醤油を入れる前の盛り汁用だ。これまで使っていた鰹節の量を大幅に増やして旨味エキスを抽出しているため、ここまで濃い色になる。そこに横浜で老舗の醤油醸造を行う会社の醤油を使って本返しを合わせる。蕎麦には少しだけ付ければ良い。

こだわり3 日本酒にこだわる

蕎麦屋で傾ける一献は贅沢なひととき

蕎麦屋の愉しみの一つは蕎麦前。日本酒は季節に合わせ厳選し黒板メニューで表示。ツマミに選びたいのは、江戸っ子たちが好きだったという「竹虎」。柔らかな絹豆腐を、表面がパリッときつね色になるまで揚げてから、縞模様を付け細ネギを散らす。縞の部分が香ばしく、江戸の粋を感じながら「もう一杯」と頼みたくなる味だ。

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