こだわり1 職人技

開店していない時にこそ手間をかける

店の奥には、契約農家から届く玄蕎麦を保存する冷蔵室。広々とした製粉室、そして打ち台がある。それはまるで店主のラボラトリーのようだ。そこで毎日、玄蕎麦の石抜き、選別、殻剥きなど一連の作業をする。中でも自分に合った碾き方ができるという重い石臼を手で碾く。1日に碾ける量は1kgが精一杯。約8~10人前分だ。

  • 季節や粉の状況を見ながら、碾き方を変える。それは店主の毎日の鍛錬で築き上げられたリズムだ。丹精込めた手碾きの粉は、せいろと蕎麦がきとで味わえる。丁寧に茹で上げ、たぐるゲストが食べやすいようにと、最後まで気を抜くことなく左上から右下へと盛りつける。一口含むと、蕎麦特有の穀物の香りが口の中に広がる。

  • 唐箕の上に、その日の蕎麦の産地が記され、蕎麦の実が並ぶ。毎日打つ蕎麦は、基本的に十割蕎麦2種類と二八蕎麦が1種、そして手碾きだ。それは一人で厨房を守る店主には大変な作業に思える。しかし「自分も愉しみたいから、苦にはならない」という。刈り入れ時期や、粉や水の温度で変化する蕎麦に対する想いは常に熱い。

こだわり2 職人技

「日本の味で勝負しよう」と一念発起

店主の吉川邦雄氏は、学校を卒業後、自分の希望でホテルの洋食部門に就職したという。しかし、23歳で大きく方向転換し駒込の蕎麦店に転職し、一から修業を開始。折しも、店では玄蕎麦から自家製粉することに転換する時期と重なり、共に学ぶこととなる。以来独立までの16年間その店で働き続け、2011年に独立した。

こだわり3 日本酒にこだわる

「蕎麦前」の旨さに美食家たちも満足

蕎麦屋の愉しみは、たぐる蕎麦の味はもちろんだが「蕎麦前」と呼ばれる一献も重要。この店では日本酒の品揃えも多い。店主のこだわり抜いた一皿で杯を傾けたい。「チーズかえし漬け」は、プロセスチーズとクリームチーズの2種類に「かえし」の旨味を染み込ませた逸品。旨いものに和洋の垣根なしという店主の思いが伝わる。

こだわり4 自慢の一品

店主の味に対する探究心は、フル回転

「旨い蕎麦を提供する」という最終目的に対するブレのなさが、店に出されるすべてに行き渡る。それを感じるのが「大豆三点盛」。手前から絹豆腐、豆腐の味噌漬け、汲み湯葉をシンプルに盛りつける。上質な大豆の甘みを引き出した豆腐は醤油がなくとも美味。それを自家製の配合で京都の粒味噌に漬け込み見事な味に仕上げる。

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